気合いでなんとかする。~煙草でポックリ逝ってTS転生させられたからがんばる 作:ひろぉ
「......ぅん、んぅ...?」
気がつくと、柔らかいフカフカの感触に包まれていた。
背中に感じるシーツの肌触りが心地よい...
「......んん~」
だるさのない身体の感覚に、少し驚きながら上半身をゆっくりと起こす。
清潔な布団が擦れる音、窓の隙間から差し込む朝日の眩しさで、瞼を細める――。
「おれは、たしか」
あ、そうだった。ほんとうにてんせい、したんだ...
呂律がうまく回らないように、思考もまだ寝ぼけている。
「ん~」
......顔を下に向けてみる。
そこには慎ましく主張してる胸。――本当に女の子に転生したんだなぁ...
転生前はオタクゆえ、TSとかにも理解はある...ただ、やっぱりいざ己が。ってなると何というか、感慨深いものがある。
こういうのって自分に興奮するものなのだろうか...?
白くて細い綺麗な手を、胸の前に持ってくる。
下を向く目線の先には自身の胸と、自身の手...
「ええいままよ」
――もにゅっ
「......ん//」
思わず漏れた鈴の音色。
――もにゅ、もにゅっ
「ちょっとだけくすぐったい...?」
掌には、弾力のあるおもちの様な感触が、全体に伝わって気持ち良い。
これが胸かぁ。神様...ありがとう。
~~~~~~~~~~
「......ふぅ。これ客観的に見たらやばいのでは」
「いつまでも胸の感触を堪能してるわけにもいかないし...」
柔らかいおもちの感触に後ろ髪を引かれつつ、シーツを跳ね除けてベットから足を下ろす。
「ほそ...」
床に触れた足首の細さに、また少しだけ驚いた。
部屋を見渡してみると、神様が用意しただけあって、白を基調としたオシャレで小綺麗なワンルームだった。
「だるぃ..」
まだ眠気が残る身体を引きずる。まずは部屋の隅にある大きな姿見の前に立ってみる。
「うわあ」
鏡の中にいたのは、純潔の天使、そのもの。きらきらとした金髪のツインテールに、お人形さんみたいな白い肌。
「......これがおれ、か..。かわいいな...」
「とりあえず何か服を...」
備え付けの大きなクローゼットを開けてみる。
「......っ!?神様はこれを、着ろと...?」
開けたそこには、フリフリのゴスロリドレスや、透けそうなレースのついたネグリジェ、お姫様みたいな可愛らしい服がこれでもかと並んでいた。
「......着るしか、ないん...だよね。とりあえず、ほかにも...」
いくらTSに理解があっても、いきなり自分自身がこんなフリフリドレスを着るエネルギーなんて、今の瑛留には持ち合わせてない。何より気恥ずかしい...
密かな希望と諦め半分でクローゼットの奥を漁っていると、一番手前に、一枚のシンプルで大きな白いTシャツを見つけた。
清潔で、驚くほど肌触りの良いプレーンなTシャツ。
「これこれこれこれ、絶対にこれしか着たくない」
それを手に取り、これまた、神様が用意したであろう、可愛らしくてシンプルな白い下着をなんとか身に着けてから、ずるりと頭からTシャツを被る。
「あ’’~落ち着くぅ~...とりあえず、ひとだんらく...」
「胸が覆われてる違和感に慣れない...」
小さな身体に対してTシャツが大きすぎて、完全にダボシャツ状態になってしまった...
袖は肘の下まで隠れ、裾はふともものあたりまでストンと落ちている。
「......一応どんななのか、確認してみるか...」
鏡の前に立ってみると、清楚な天使のガワが、ぶかぶかの男物Tシャツを着ているという、なんとも言えないアンニュイな姿。
「男の時は普通の格好?だったのに、この身体だと妙に惨めというか、着られてるというか...もはや服を被ってるよね...」
「まぁ、それはそれでギャップなんだろうけど...ていうか、なんでこんなフリフリの中からTシャツ一枚を用意したんだろう。一応、神様が気を使ってくれたんだろうか...この姿も神様の趣味全開だし」
――思考が回り始めた......
相変わらずの考え癖...嫌だなぁ...考えたくねぇ...いったんなにか、きっかけ...
「......ぅしょ。」
惰性に回る思考を無理やりとめるようにベッドに飛び込んで、寝そべる。
自分の体臭であろう匂いと、心地の良いシーツに包まれて、自然と身体が脱力していく。
「おれってこんなキンモクセイみたいな匂いしてるのか...なんか不思議だなぁ、自分の体臭だから、身体は慣れているんだけど、この身体を使い始めた“自分”は新鮮に感じる。ふしぎ」
~~~~~~~~~~
寝そべってから目を瞑って、十数分たっただろうか。
自然とリラックスされた身体と一緒に、もう一度起きる。
「......そういえば、身分証明書とかあるのだろうか。」
部屋の端にあるデスクトップPCが置いてあるデスクを見てみると、スマホやら通帳やら身分証明書が置いてあった。
「意外と準備万端...」
とりあえず、通帳と一緒に置いてあった身分証明書を見てみる。
【氏名:白瀬 瑛留(しらせ えいる)】
「ふむふむ...おれの名前はえいるって言うのね。年齢はぁ...この身体だし精々17とかかなぁ...?」
【生年月日:200X年 3月14日】
「誕生日円周率じゃん。それで?200X年...今がX年だから...」
......20歳じゃん。
ハタチかぁ~。思わず、もう一度鏡を見る。
この見た目で?身長150にも満たない華奢な身体。
なにより、どう見ても中学生以下の高画質な金髪ツイン美少女が、ハタチと記載されている身分証明書の横側に写っている。
思わずカードを顔に近づけて凝視してしまうほどに。
「......はぁ。見た目こんななのに、成人なのかぁ......。まぁ、タバコ吸っても補導されないのは、ありがたい、けど......」
コンビニで年齢確認されたら、絶対にひと悶着ありそう...。
胃が心なしか、痛い...
「...あぁ、しんど..。でもタバコは絶対にゲットしたい...」
一気にだるさが押し寄せてきて、カードを机に置かれてた財布に詰め込むと、えいるはその場にペタンと座り込んだ。
「......とりあえず、タバコが吸いたい。から、コンビニに、行こう...」
「もうこのTシャツでいいよね」
下着の上にぶかぶかの白いTシャツを被ってだけの、ほぼ生足ワンピース状態。
だけど今のえいるには、まともな服を選んで着替えるエネルギーなんて一ミリも残っていなかった。
とにかく、一刻も早くニコチンを脳に入れたい。前世で培ったニコチンとタールの快楽な記憶が、この新しくて健康的な身体と脳を、無性に刺激する。
財布とスマホだけを手に持ち、軽いのにだるい身体を引きずって部屋を飛び出した。
~~~~~~~~~~
「まぶっ、しぃっ...」
まだ昼間で日差しも強い。
外の空気は、前世の記憶にあるものよりずっと澄んでいる。生涼しい風に吹かれると、自分のキンモクセイの香りが少しだけ鼻腔をくすぐった。
「コンビニどこだろう...」
とりあえずスマホを開いて...地図でコンビニと検索して...
――あった。
「100mくらい...ちょっとだけ歩く...」
歩き始めて、約二分くらいたったけど...
なんかちょくちょく見られたり、四度見くらいされてるよね...
まぁ、なんとなく、察しがつくんだけど...こんな格好だし...
初めてこんなに向けられる視線にかなり困惑しながら、やっとコンビニに到着したえいる。
「......ついた。」
見覚えしかないコンビニ、されど別世界。少しおそるおそるとした気の持ちでコンビニに入る。
......うん。なんか、見覚えしかないな...緊張して損したというか...コンビニはコンビニだな。
とりあえず、癖でとってしまった一番小さいサイズのミルク入り缶コーヒーと一緒にレジに向かう。
レジの前に立つと、一見ダウナーだけど、穏やかそうな若くてきれいな女性店員さんが「ん...?」という顔でフリーズした。
「タバコ...見ていいですか?」
できるだけ低く喋ったつもりだった...けど、口から出たのは鈴を転がすような鈴鳴りのロリ声...
ぶかぶかのTシャツから細い手足を覗かせた金髪美少女がタバコを要求している図、女性店員さんは完全に警戒態勢になっていた。
「ええ、どうぞ...」
「......220番、10mgの王冠みたいなデザインのやつ、鳩が逆さまになってるやつ...一つ、お願いします...」
「こちらでお間違いないですか...?」
店員さんの訝しんだ目が痛い...
「...はい」
女性店員さんが缶コーヒーとタバコをスキャンする。
「...年齢確認のボタンタッチをお願いします」
「はい...」
「すみません、あの...年齢確認できるものはありますか?」
「......あります。はい...」
もはや、やけくそ...
少しひりつく胃の痛みを感じながら、財布からさっきお家で入れた身分証明書のカードを差し出す。
「え......あ、えっと...えっ。20歳、ですね。ありがとうございます」
「...」
返されたカードを財布の中にしまいながら、店員さんの、本当に身分証明書を出してきた驚きと、この外見で20歳という驚きの感情が、ひしひしと伝わってきた。
「お支払いは何でされますか?」
「現金で...」
「――はい。二点で、合計718円になります」
お支払いボタンを押す店員さん。
「はい。1000円で...」
財布の中から1000円札を取り出して渡す。
「お預かりします」
ジャラジャラーと小銭の音が聞こえる。
「282円のお返しとなります」
お釣りを手渡しで渡してもらい、財布の小銭入れにお釣りを入れた後、タバコと缶コーヒーを回収した。
「ありがとうございます...」
「ありがとうございました~」
店員さんの落ち着いた声を聞きながらコンビニをでて、コンビニの端にセッティングされてるスタンド型の灰皿に向かう。
幸運なことに喫煙所周りには人はいなく、昼間なのに駐車場にも車はなく、視線もなにもない環境に自然とリラックスしていく。
――でもまぁ、そんなことより、まずは。
「......タバコ、げっと...!!」
「さっそく...!」
ラッピングをはがし、ボックスを開け、タバコが包装されてる上側の紙をビリリと破り、最初は取りづらい一本目と数秒格闘してから、取り出し、口に咥える。
「いい香り...やっぱりPeaceしか勝たん...!」
タバコに火をつけようと、ライターを探ろうとした時。
「あ、ライター買ってないじゃん...」
テンションガタ落ちまっしぐらのミスに心の中で嘆く。
「もっかい買いに行こ...」
口に咥えてたタバコをボックスの中に戻し、戻し...地味に戻しづらい...
タバコをボックスに戻してから、トボトボとまたコンビニの中に向かおうとした時。
さっき聞いたばかりのようなお姉さんの声が聞こえた。
VTuber関連は次かその次あたりで出します