ちょっとルークが家出した話   作:サリエリキキ

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 感想・ここすき・評価づけ、皆さんありがとうございます。


 勘違いされて低評価されたのが辛いので一言。

 私は絵が描けないので、AIでイラストを作ることはあります。
 ただ、小説にAIは使っていません。ようこそ淫蕩な教室へが2019/01/03 23:44ハーメルン様での初投稿のように、AIが一般的になる前から自分で小説を書いています。


兄弟二人~アナキンとオビ=ワン

 美しい星、ヴァードス。

 帝国の強権的統治の象徴であったこの星は、今やダース・ベイダー直轄領・特区の首星として、全銀河のエイリアンや難民たちを受け入れる公平な統治で知られる星へと変貌を遂げつつあった。

 

 そのヴァードス総督府の、厳重な警備が敷かれた来客用の一室。

 旗艦から降り立ったベイダーが重い足音を響かせて扉を開けると、そこにはカミーノからの難民輸送という大役を(勝手に)終えたばかりの青年、ルーク・スカイウォーカーの姿があった。

 その傍らには、共に救助を完遂した密輸業者のハン・ソロと、オルデランのレイア・オーガナ姫。そして、深くフードを被った一人の『来客』の姿も。

 

「ベイダー卿! 難民船団の輸送、無事に完了しました!」

 

 無事に大役を終えた達成感からか、パッと顔を輝かせて報告するルークに対し──黒い装甲服の巨漢は無言のまま大股で歩み寄り、その機械の拳を、青年の頭頂部に向かって躊躇なく振り下ろした。

 

「この馬鹿者!」

 

 ゴツッ! 

 

「い、痛っ!? な、何するんですかベイダー卿!?」

「ちょっと、いきなり何をなさるの!」

 

 頭を抱えて涙目になるルークを庇うように、気の強いレイアが鋭い声でベイダーを睨みつけて前に出た。

 

「おい嘘だろ姫さん!? 相手はあのダース・ベイダーだぞ、下がってろ!」

「でも、彼は命懸けで難民を──!」

 

 ハンが血の気を引かせて慌ててレイアの肩を掴んで引き留める。

 だが、ベイダーは彼らを権力やフォースで黙らせたりはしなかった。ただ、自らの息子と共に危険な戦場を駆け抜けてくれた若者たちを、静かに、しかし厳格な大人の目で見下ろしていた。

 そして、ヘルメットの奥から雷鳴のような大音声の合成音声を響かせる。

 

「誰がそんなことを命じた! 『困っている人を放っておけない』などというふざけた置き手紙一つで、無断で最前線に突っ込む馬鹿がこの銀河のどこにいる!!」

「えっ!? あ、いや、それは……」

「インコム社の試作機を勝手に持ち出し、友人を連れてターキン艦隊が星を焼いている死地へ突入するなど正気の沙汰ではない! しかも帝国軍の識別を切ってターキン艦隊に突撃しただと! 何を考えていた! お前だけではない! 友人の身さえ危なかったのだぞ!」

「……すみません」

 

 ベイダーの容赦のない、しかし反論の余地もないド正論の剣幕に、ルークはシュンと肩を落とした。

 確かに、自分はターキン艦隊の恐ろしさを完全に舐めていた。自分の腕ならなんとかなると思い込んでいたが、もし一歩間違えれば、自分だけでなく、付き合ってくれたマラ、そして救うはずだった難民たちまで宇宙の塵になっていたのだ。

 

(僕は……なんて浅はかだったんだ。命を救うつもりが、みんなを死の淵に引きずり込んでいたなんて)

 

 自分の身勝手な正義感が、どれほど無責任で無鉄砲で危うい綱渡りだったのか。

 叱られた事で己の未熟さを痛感した若者は、返す言葉もなく足元に視線を落とした。取り返しのつかない悲劇を引き起こしていたかもしれないという後悔と恐怖に、その小さな肩が微かに震える。

 

 そんなルークを、ベイダーはその太い腕で力強く抱きしめた。

 

「えっ……べ、ベイダー卿?」

 

 まだ叱られるのか、と身を固くしたルークの耳に届いたのは、さらなる怒声ではなく、誇りに満ちた絞り出された声だった。

 

「よくやった」

「ベイダー……卿」

「お前のその無謀な行動で、数え切れないほどの命が救われたのも事実だ。……無事で本当によかった。よくやったぞルーク。お前は、私の誇りだ」

 

 分厚い装甲と機械の腕越しに伝わってくるのは、冷たい金属の感触ではなく、深く、痛いほどの暖かな愛情だった。

 タトゥイーンの過酷な砂漠で、両親の顔すら知らずに育ったルークの瞳に、ぶわりと熱い涙が浮かんだ。自分の命を本気で心配して、本気で怒り、そして最後にはすべてを包み込むように抱きしめて褒めてくれる。

 それはまさに、ルークが幼い頃からずっと夢に見て、渇望し続けていた『父親』そのものの温もりだった。

 

「……はいっ!」

 

 涙ぐみながらルークは強く頷き、黒い装甲の背中にそっと腕を回し返した。そして密かに、この誰よりも心優しい上官を、本当の父のように慕ってしまっていることがばれないようにと強く願った。

 そんな二人のやり取りを、レイアは先ほどまでの怒りをすっかり忘れて、穏やかで温かな笑みを浮かべて見守っていた。

 

(あんなに大声で怒鳴っていたのは。本当に、ルークのことが心配でたまらなかったのね)

 

 昨今の統治によるものに変わったとはいえ、その見た目から恐怖のイメージが強いダース・ベイダー。

 しかし、今目の前で機械の装甲に身を包んだダース・ベイダーが、一人の少年に見せているのは、あまりにも真摯な情愛そのものだった。

 その姿に、彼女の中で今までの統治を見て好感を抱いていたベイダーという人物への評価が、底知れぬ優しさを持った素晴らしい人物へと上書きされ、更なる好感を抱いていた。

 

 傍らで「おいおい、あのベイダーがハグってマジかよ」と呆然と目を丸くしているハンのブーツを軽く踏みつけながら、レイアはこの微笑ましい光景から目を離せずにいた。

 

 しかし、その感動的な空気も束の間。

 ルークから体を離したベイダーは、黒いマントを翻してゆっくりと向き直り、次にそのヘルメットの奥の真っ直ぐな視線を、微笑んでいた小柄な少女へと向けた。

 

「そして、レイア・オーガナ姫。貴女もだ」

「えっ……私、ですか?」

 

 自分には関係ないと思って温かく見守っていたところへ唐突に矛先が向き、レイアは思わず目を丸くした。そんな彼女に対し、ベイダーは帝国の高官としてではなく、極めて真っ当な大人としての苦言を呈した。

 

「貴女は平和を象徴するオルデランの姫君である身だ。そのような者が、十分な護衛もつけず、最前線の戦闘宙域へ飛び込むなど、あまりにも軽率すぎる。貴女の身に万が一のことがあれば、誰が一番悲しみ、誰が責任を負うことになるのか。自分の立場と、貴女を愛する者たちの痛みをよく考えなさい」

「……っ」

 

 その言葉には、嫌味や政治は一切含まれていなかった。ただ純粋に、無謀な真似をした子供を案じ、帰りを待つ親の心情を代弁する深く重い愛情の響きがあった。

 普段ならどれほど目上の相手であろうと理路整然と言い負かす気の強いレイアだったが、あまりにも大人としての優しさと正論に満ちた直言を前にしては、一言の反論も口にできなかった。

 

「オーガナ議員は今、この総督府内の会議室に来ている。彼に、これ以上の無用な心配をかけてはならない。早く彼のもとに行ってあげなさい」

「…………わかりましたわ。ご心配をおかけして、すみませんでした」

 

 先ほどまでの威勢はどこへやら、完全に叱られた子供としてしゅんとなってしまったレイアは、素直に小さく頭を下げた。

 そして、銀河の恐怖の象徴からお小言をもらっている姫君という謎の状況が飲み込めず、ポカンと呆然としているハンとチューバッカの腕を強引に引っ張った。

 

「ほら、行くわよ二人とも」

「お、おい引っ張るなよ姫さん。なんだって俺までっ……痛っ!」

 

 文句を言うハンの足を踏みつけながら、レイアはそそくさと部屋を後にした。それと同時に。

 

 

 

「──久しいな」

 

 部屋の奥、あえて照明の当たらない暗がりで静観していた初老の男が、深いフードを脱ぎながらゆっくりと歩み出た。

 刻まれた皺と、白髪交じりの髪と髭。タトゥイーンの双子太陽に灼かれたその顔には、かつて不毛の岩石惑星で絶望と悲哀を剥き出しにして刃を交えた時の面影はない。

 今の彼に浮かんでいるのは、ひどく懐かしむ穏やかな笑みだった。

 アナキン・スカイウォーカーのマスターオビ=ワン・ケノービだった。

 

 部屋に入った時から、フォースの静かな波紋を通じてその気配には気づいていた。

 だが、実際にその声を──かつて毎日のように自分を窘め、そして誰よりも案じてくれていた兄の生の声を聞いた瞬間、ベイダーの巨躯は微かに、しかし確かに強張った。

 マスクの下で湧き上がる数多の感情を強引に押し留め、ベイダーは一度大きく頷くと、努めて平静な合成音声でルークに言葉を発した。

 

「ルーク。君も、オーガナ姫たちと共に行ってくれないか。私はこの御方と、少し積もる話があるのだ」

「えっ? ベ、ベンとですか?」

 

 ルークは驚きに目を瞬かせた。元ジェダイ・マスターとはいえ、何年も辺境の砂漠で隠遁していた老人ベンに対し、銀河帝国の高官であるはずのベイダーが、この御方と明らかな敬意を払っている。

 その奇妙すぎる光景に、ルークは好奇心を抑えきれずに二人の顔を交互に見比べた。だが、大人の間に流れる「これ以上踏み込んではいけない」という特有の張り詰めた空気を察し、少年は素直に口を閉ざした。

 

「……はい、わかりました、ベイダー卿。ベン、また後で」

 

 ルークは深く一礼し、後ろ髪を引かれる思いで部屋を退室した。

 彼が通路へ出た直後、分厚い金属の重厚な爆破扉が鈍い音を立てて完全にロックされる。外の喧騒も、ルークという眩しい光も、すべてが遮断された。

 

 

 

 

 

 シュー……コー……。

 無機質な生命維持装置の呼吸音だけが、不自然なほど静まり返った部屋に響き渡る。

 扉が完全にロックされたのを確認した瞬間、先ほどまで威厳を保っていた黒い巨躯から、ふっと力が抜けた。

 

 ダース・ベイダーは、いや、アナキン・スカイウォーカーは、ゆっくりとオビ=ワンに背を向けた。

 そして、顔を伏せるようにして、ただじっと床を見つめ、ピクリとも動かなくなった。

 

「アナキン。こっちを向いてくれないか」

 

 オビ=ワンの静かで、一切の咎める気配がない優しい声が背中に届く。

 かつてムスタファーの溶岩の畔で、「弟だと思っていた」「愛していた」と血の涙を流して叫んだ男の声。

 その無償の愛情と導きを自ら裏切り、破滅をもたらしたという絶望的な罪悪感が、アナキンの胸を無残に抉っていく。

 

「……できません。マスター」

 

 背中を丸めたまま、アナキンは絞り出すように答えた。

 

「なぜ?」

「あなたに顔向けが、出来ないからです……」

 

 あの時、暗黒面に呑まれた自分が怒りに任せて首を絞めたパドメを、彼は救い出し、無事に子を産ませてくれた。

 ジェダイを滅ぼし、銀河を焼き、彼自身にすら明確な殺意の刃を向けた大罪人の残した子供を、ルークを、辺境の砂漠の星でずっと見守り続けてくれたのだ。

 あれほどの決定的な裏切りと凶行を働いた自分に対し、この兄は無償の献身で応えてくれた。

 その果てしない慈悲と自らの罪の重さを思えば、どんな顔をして振り返ればいいというのか。

 合わせる顔など、この銀河のどこを探しても無かった。

 

「あなたの言う通りだった。パルパティーンは……悪魔です」

 

 言葉が詰まる。喉の奥から込み上げる凄まじい後悔が、人工声帯の音声をノイズ混じりに乱していく。

 オビ=ワンは何も言わず、ただ優しく続きを待った。

 

「パドメが……パドメが何度も言ってくれたのに。あなたに相談しろと。あなたなら、絶対に助けてくれると。……なのに、私は、悪魔を信じていた」

 

 妻の命を救いたい一心で悪魔に魂を売り、その結果すべてを失った。

 自分がいかに愚かであったか。兄と慕った男の愛を、いかに無下にしてしまったか。

 そして今更になって、自らがひれ伏したその悪魔の、底知れぬ恐ろしさに絶望しているのだ。

 

「……シディアスの力は、私が想像していたよりも遥かに底知れない」

 

 懺悔に続いて吐き出されたのは、銀河屈指の権力者らしからぬ、あまりにも無力な本音だった。

 

「かつての私は、ダークサイドを極めればいつか奴を越えられると思い上がっていた。だが、違った。奴は純粋な混沌と闇そのものだ。盤上の駒がどれほど足掻こうと無意味だ。正面から一対一で戦っても、今の私では到底勝てない。マスター、悔しいが、あなたと共に戦っても絶対に勝てない」

 

 それは、誇り高きアナキン・スカイウォーカーによる完全な敗北宣言だった。部下を含めた誰にも言えないことを兄に対してだけは漏らした。

 かつての弟子が絞り出した悲痛な声を受け止め、オビ=ワンはゆっくりと首を縦に振った。

 そして、独りで絶望と己の弱さを抱え込もうとする不器用な弟の心を少しでも軽くするために、自らの無力をも明確に言葉にした。

 

「ああ。分かっているとも、アナキン。私も勝てない。絶対に」

 

 オビ=ワンの静かで、しかし確かなその言葉が、冷たい部屋に響いた。

 

「私たちがかつてのように背中を預け合い、挑んだとしても……あの巨大な闇を打ち払うことはできないだろう」

 

 彼自身も痛いほど理解しているのだ。あの絶対的なシスの暗黒卿を前にしては、最強の師弟と呼ばれた自分たちの力すら及ばないという残酷な現実を。

 だからこそ、否定も慰めもせず、ただ同じ目線に立ってその絶望を肯定した。

 

 痛切な懺悔と、目の前にそびえ立つ絶対的な絶望を静かに共有した後、アナキンは藁にもすがる思いで、ひどく掠れた声で希望を口にする。

 

「……マスター・ヨーダは?」

 

 かつて全ジェダイの頂点に立っていた、最強のグランド・マスター。彼ならば、あるいは。

 それは、戦士のプライドすら些事とした親の願望だった。

 だが、オビ=ワンはゆっくりと首を横に振り、無情な現実を告げた。

 

「老いられた」

 

 その短い一言には、いかなる願望も挟む余地がない諦観が滲んでいた。

 

「十四年前のあの日ですら、マスター・ヨーダはシディアスを討ち果たすには至らなかった。そして今、銀河はダークサイドの深い闇に覆われ、シディアスはより強力になったのに、彼はダゴバの沼地でさらに年老いた。認めねばならない。今のマスター・ヨーダが再び挑んだとしても、私たち三人がかりで挑んでも、決してあの悪魔には勝てない」

 

 最後の希望すらも完全に絶たれた。

 オビ=ワンも、自分も、そしてあのヨーダでさえも。今現在のこの銀河に、パルパティーンを正面から打ち倒せる者は誰一人として存在しないのだ。

 

「では、どうすればいい! パルパティーンを倒せる可能性が、今訓練されているルークたち若者の世代しかいないというのか。だが、皇帝と正面から戦うには、あの子たちにはまだ、若すぎる!」

 

 自分とオビ=ワンの力では、あの悪魔には届かない。かといって、愛する息子や若者たちを、勝てる見込みの薄い凄惨な戦争の矢面に立たせることなど絶対にできない。

 かつての自分が背負わされたような重すぎる運命を、次代の若者にまで押し付けたくはないのだ。

 

 オビ=ワンは、かつての弟が親として、そして責任ある大人として次代を思いやるその確かな成長に、深く、静かに頷いた。

 

「……ああ。全くだ。彼らに私たちの過ちの尻拭いをさせるわけにはいかない。そうしなければならん。だから」

 

 我々も出来る限りのことをしなければ、と。オビ=ワンは一歩だけアナキンの背中へと歩み寄り、再び優しく語りかけた。

 

「アナキン。こっちを向いてくれないか」

「……できません。マスター」

 

 黒い巨躯はピクリとも動かない。背中を丸めたまま、アナキンは頑なにそれを拒絶した。

 

「君はもう、過去の憎しみに囚われただけの愚かな弟ではないだろう。立派な父親だ」

「……それでも、です。私があなたや、あの子から奪ったものは、決して取り戻せない。どんなに悔いても、私はあなたに合わせる顔などないのです」

 

 自らの罪の重さに押し潰され、頑なに床を見つめ続けるかつての弟子。その背中に滲む深すぎるほどの罪悪感と不器用さと相変わらずの頑固さに、まったく、いつまで経っても世話の焼ける不器用な弟だと吐息を吐いた。

 だからこそ、オビ=ワンはどこか昔のやれやれといった悪戯っぽいトーンで、まるで「そういえば今日の夕食だが久しぶりに美味いものが食べたい」とでも言うような、あまりにも場違いなほど軽い調子で言葉を継いだ。

 

「ああ、そういえばアナキン。あの時の子供なんだが……実は双子だったんだが、それは知ってたかな?」

 

「………………」

 

 シュー……コー…………ピタッ。

 規則正しく鳴り続けていた生命維持装置の無機質な呼吸音が、一瞬完全に止まった。

 ダース・ベイダーの黒い巨体が、まるで中枢システムに致命的なエラーを起こしたドロイドのように完全にフリーズしている。

 

「………………」

 

 ヘルメットの下で、アナキンの思考回路が凄まじい音を立ててショートを起こしていた。

 ふたご。双子。パドメが産んだのは、ルークだけではない? 

 もう一人、いる? 私と、パドメの子供が? 

 え? 待て。ルークの他にもう一人? どこに? 

 ………………まさか。

 いや、待て待て待て。たった今、自分がこの部屋で、大人の正論で説教して追いだした、あのやけに気の強い小柄な娘は。

 オーガナ議員の養女という、あの少女は。

 顔立ちだけでなく性格も……ひどくパドメに似ていた。

 特に、傍らにいたハン・ソロという若者を見上げる瞳と顔は、自分に向けていたパドメの顔にそっくり…………で……。

 

「………………………………What!!!???」

 

『合わせる顔がない』という先ほどの血を吐くような懺悔と意固地さなど、もはやハイパースペースの彼方へと吹き飛んでいた。

 弾かれたように、いや、爆発に巻き込まれたような凄まじい勢いで、アナキン・スカイウォーカーは背後のオビ=ワンの方を力強く振り向いた。

 シューッ、と喉の奥から冷却ガスが激しく噴き出す音が鳴る。生命維持装置が、持ち主の制御不能な動揺を感知し、過剰に酸素を供給しようと警告灯を点滅させていた。

 

 オビ=ワンは、驚愕に硬直する黒い巨躯を見て、してやったりとばかりに口角を上げた。

 

「あの子の名はレイア。オルデランのオーガナ議員の元で、あの子もまた、ルークと同じくらい立派に育ったよ。……気付いただろうが、つい先ほど君が『護衛もつけずに戦場に出た』と説教していたのが、まさにその子だ」

「…………え」

「ひょっとしたら知らないかもしれないが、ドロイドだけ連れて密輸業者の船に乗り込んだのだ。勿論、オルデラン政府に一言も言わずに自分の金でかき集めた資材を積むだけ積んで密輸業者を雇って飛んだ」

「14歳の女の子が、ドロイドだけ連れて、み、密輸業者の船、に」

「うむ。そして、途中でやっぱり護衛いるなと思い立ちタトゥイーンの私の所に来て「この度、特使に任命されました。協力してくださいオビ=ワン」と大嘘を言い放ったのだ。そこで、ハット族にオルデランの姫とバレてしまってな。

 当然攫おうとした彼らと色々あったのだが。まあ、賞金首になった程度で済んだのは僥倖だろう──何と言っても、ジャバ・ザ・ハットが最中に死んだのだからな」

「ハットに、賞金首にされ……た。え? ジャバ・ザ・ハットが、しん、だ」

「ああ、私以外は気付いてないが、レイアが放った流れ弾でな……ふふ、それから中々愉快な冒険をしたよ。君の所の軍は優秀だな。補給のために寄った港で、麻薬密売組織の通報をしたら直ぐに応えてくれた。

 レイアとハン、あぁ、密輸業者の若者だよ。素晴らしい若者だ。二人が大量の麻薬を発見して燃やそうとした時に、戦闘機まで持ち出した組織構成員に囲まれたのだが大事無かった。

 君の軍のお陰で、久々にライトセーバーを抜く覚悟を決めた意味はなかったよ。レイアは君の軍の立派さに感動していたぞ──よく頑張ってるなアナキン」

「……麻薬密売組織……戦闘機持った、麻薬、まさか、ブラック・サン……か」

「お前とパドメの子だな、友よ。ハイパースペースを抜けた時、突如現れた輸送船に驚きつつも囲んできた帝国戦闘機の誰何を聞いた途端に、ハンに『ぼんやりしてないで船を出して!』と一喝しながら自ら砲座に座ってフォースの導くままに撃ち落としたのだよ──つまり、先にターキン艦隊に喧嘩を売ったのだ」

「………………………………そのままでは捕らえられたに違いないので、正しい決断と判断だと思いますマスター」(先ず庇う悲しい親心)

「まさに、だ。友よ。あの優雅な顔立ちに似合わない、躊躇いなき決断力と過激なまでの正しい判断力。かつてジオノーシスの闘技場で、君の隣でブラスターを撃ちまくっていた彼女にそっくりだった。

 私は懐かしさを感じながら、慌ててシートベルトを締めたよ──君たちの娘が、大人しく拿捕されて連行されると認識していたとは、老いたな。……腰を痛めた」

「…………………………………………直ぐに部屋を用意させます。おくつろぎくださいオビ=ワン」

「すまんな催促したようで」

「いいえ、オビ=ワン。ご自分の家と思ってくださればこの上なく嬉しいです」

「ありがたく暫く滞在させてもらおう。何と言ってもハットに賞金首にされた挙句、家を粉々にされてはな。もはやタトゥイーンには帰れんのだよ」

 

 オビ=ワンは「ウチの娘がご迷惑を」と罪悪感に苛まれる弟に対して「気にするな」という兄の笑みを浮かべた。




 書き溜めなくなったので、次回遅くなります
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