ちょっとルークが家出した話   作:サリエリキキ

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コルサントの戦い~空中戦~

 コルサントの防衛網は、まさに光の壁と化していた。

 帝国軍の将校たちが血の叫びと共に作り上げた三次元のキルゾーンは、一機でも空間に入れば即座に霧散する、過密で冷酷な火線の死の迷路。

 しかし、その死の迷路を、先頭を行く漆黒のXウイングはまるで踊るように駆け抜けていた。

 

 ベイダーは計器など見ない。空を飛んでいる時には、瞑想などせずとも彼は常にフォースを感じられる。

 帝国のレーザー砲が火を噴くコンマ一秒前、機体は既にそこにはない。無数の光条が空を切り、背後の空間を焼き払うが、ベイダーの編隊は無傷のままその隙間を縫い続ける。

 

『ついてこい、諸君。道を拓く』

 

 ベイダーの声に呼応し、背後の一万五千機が一体となって機体を傾ける。

 無数の光条が背後で交差するが、連邦のパイロットたちは冷静にただ目前の黒い影だけを追い続けた。彼らにとってのコンパスは計器ではなく、あの漆黒の総大将が切り拓く空の道(スカイウォーカー)だった。

 

「ふざけるな! 全機キルゾーン抜けやがった! なんだあの先頭の機体!」

「まるでアナキン・スカイウォーカーだ。あの伝説のパイロットだ……いや、やっぱ、スカイウォーカーは生きてるんだ間違いない!」

「アナキン・スカイウォーカーは! 17年前にオビ=ワンと一緒にドゥークーを倒して、コルサントを救ってくれた英雄は! 死んだだろ!」

「でもよ。アウター・リムの無法地帯であんな現実的な善政してくれる人なんて、他にいるか? クローン戦争の時もあの人だけは、アウター・リムの現実を分かってくれてたし。やっぱりベイダーはスカイウォーカーなんだよ!」

「ガタガタ言ってる場合か! 来るぞ……!」

 

 地表の対空陣地に絶望と懐古の悲鳴が響く。僅かの間呆気に取られたとはいえ、彼らも帝都を預かる精鋭だ。

 

「面制圧(キルゾーン)を破られた! 各砲塔、ただちに近接防御(ポイント・ディフェンス)へ移行! 撃ち落とせ!」

 

 大口径の弾幕から、無数の自動追尾式対空機関砲へと火線が切り替わる。だがそれとほぼ同時に、雲海を切り裂いて帝国軍の迎撃部隊が頭上から強襲をかけてきた。

 無数のTIEファイター、そして精鋭が駆る真紅と漆黒のTIEディフェンダーが、キルゾーンを抜ける為に固まっていた連邦の陣形を食い破ろうと牙を剥く。

 

『ブレイク! 摩天楼の谷間へ飛び込め!』

 

 ベイダーの短く鋭い号令と共に、一万五千の光点がコルサントの空へ、まるで巨大な花火が弾けるように四散した。

 密集した編隊行動から、個々の技量が物を言う極限のドッグファイトへの移行。

 戦場は上空から、無数の超高層ビルが林立するコルサントの市街地──底なしの摩天楼の谷間へと一気に移り変わる。

 そこは、想像を絶する大混乱の只中であった。

 エマージェンシーが流れてから三十分。そんな短時間で、一兆以上の人々が生活するコルサントが避難出来るはずがない。

 突如として現れた大軍勢と、頭上を飛び交う巨大なレーザーの火線。それに気づいた途端、帝都の空を何層にもわたって埋め尽くしていた無数の民間エアスピーダーや貨物船、豪華な遊覧船がパニックに陥った。

 本来、高度な管制システムによって整然と流れているはずの空中ハイウェイは一瞬にして崩壊。交通レーンを無視して蜘蛛の子を散らすように逃げ出そうとした機体が空中で次々と玉突き衝突を起こし、逃げ遅れた無数の民間機が、宙域を埋め尽くす巨大な障害物と化して罵声を交わす。

 

「どけ! どけぇっ!」

「前方に輸送トラック! 衝突する!」

「俺らを先に行かせろ!」

 

 そんなパニックと大渋滞の只中へ、両軍の戦闘機群が超高速で雪崩れ込んだのだ。

 常ならば、こんな状況で乱戦になれば民間人に甚大な巻き添え被害が出る。流れ弾でビルが崩壊し、無数の命が散るのが戦争の常だ。

 だが、この空で繰り広げられていたのは、常識を凌駕する精鋭たちの殺し合いであった。

 連邦で極限の訓練を積み、ジェダイの導きすら受ける連邦軍の精鋭たち。

 対する帝国軍もまた、帝都防衛を任された最高練度とモラルを誇るトップエースたちである。

 ビルとビルの狭い路地を、一機のXウイングとそれを追うTIEディフェンダーが音速を超えてチェイスする。その軌道上に、逃げ遅れた民間人の大型スピーダーがフラフラと立ち塞がった。

 

『──チッ!』

 

 連邦のパイロットと帝国のパイロットが、全く同時に舌打ちをする。

 両者は撃ち合っていたレーザーを瞬時に止め、機体がへし折れんばかりの急旋回で、立ち塞がる民間機を左右から完璧に避けきった。そして民間機を通り過ぎたコンマ一秒後には、再び互いの死角を取り合う凄惨なドッグファイトを再開する。

 帝国軍にとって、帝都のインフラや市民を無闇に巻き込むことなどあり得なかった。辺境の星々で略奪紛いの弾圧を行って特区時のベイダー軍に駆逐された、野盗同然の質の悪い駐留軍と一緒にされては困る。帝都を預かる誇り高き精鋭である彼らにとって、市民は護るべき存在だ。

 対する連邦軍にとっても、無辜の民を撃つことは、彼らが掲げる大義と反逆の誇りに反する。

 両軍ともに、一切の通信を交わしていないにも関わらず、狂気的なまでの操縦技術とプロフェッショナリズムによって『民間機と民間設備には絶対に手を出さない』という暗黙のルールが完全に成立していた。

 ビルの窓ガラス一枚割ることなく、超高速で機体を滑らせる。民間機が横切れば、反射神経の限界を超えたスロットルワークで避け、直後に敵の背後を狙う。

 それは逃げ惑うコルサントの住人たちにとって、恐怖と同時に、どこか美しさすら感じさせる光景だった。

 撃墜された機体の残骸が墜落する被害を除けば、民間への巻き添えは一切ない。

 そんな一切の無駄を省かれた、純粋で高度な殺し合いの芸術が、摩天楼の隙間で無数に繰り広げられているのだ。

 そして、その恐るべき乱戦の中心を、漆黒のXウイングが揺らぐことなく進んでいた。

 ベイダーは逃げ惑う民間機が作る複雑な迷路を、目を閉じて歩くかのようにすり抜けていく。

 彼を追う機体たちもまた、民間機を巧みに避けながら苛烈な攻撃を仕掛けてくるが、ベイダーの機動には僅かな乱れも生じない。逆に撃墜し返す。

 それどころか、彼は撃墜した敵機が民間施設へ激突しないよう、墜落の軌道すら完璧に計算しながら次々と返り討ちにしていく。

 

『待っていろパルパティーン』

 

 撃墜された機体による被害以外は、互いの血だけを流し続ける両軍。

 狂乱の摩天楼を抜けながら、連邦の編隊は確実に皇帝の座所たるインペリアル・パレスへと肉薄しつつあった。

 

 

 

 

 だが、インペリアル・パレスの威容が彼方の空に浮かび上がったその時、ベイダーの肌を刺すような悪寒が走った。

 フォースの暗黒面が、局地的に、そして異様な密度で前方の空域を制圧し始めたのだ。

 

『連邦のネズミどもめ。これ以上、陛下のお膝元を汚させるわけにはいかん』

 

 通信機からノイズと共に響く、傲慢と愉悦の声。

 雲海を抉り開けるようにして急降下してきたのは、帝国軍の航空技術の結晶たるTIEディフェンダー──そのさらに上位機種にあたるTIEディフェンダー・エリートの編隊だった。

 機体を禍々しい真紅に染め上げたその機体群に搭乗しているのは、かつてベイダーの手足としてジェダイ狩りを行っていた帝国の猟犬、尋問官(インクイジター)たちである。

 彼らはダークサイドの力と恐怖こそを信奉する者たちだ。

 だからこそ彼らはベイダーに深く軽蔑し失望した。

 かつての冷酷無比に振る舞いながらも、無抵抗な者を虐殺することを避けるような『シスらしからぬ生温さ』を持っていた頃にも疑問を抱いていたのもある。

 だが、決定的な契機となったのは五年近く前──彼ら尋問官は知る由もなかったが、息子ルークと出会ったことだ。

 それ以来、ベイダーはアウター・リムで民を護る善政などという、吐き気を催すような偽善にうつつを抜かし始めたのだ。

 かつての疑問は、ここに至って明確な侮蔑へと変わった。

 そんな牙の抜けた主君を完全に見限り、彼らは真なる闇の支配者である皇帝のもとへ出奔したのである。

 

『総大将! 敵の新型、速すぎます! レーダーの捕捉が追いつかない!』

『なんて火力とシールドだ! Yウイングの魚雷が弾かれたぞ!』

 

 連邦の精鋭パイロットたちが悲鳴を上げる。

 標準的なディフェンダーでさえ厄介極まりないというのに、尋問官たちが駆るエリートは別格だった。

 その極限まで引き上げられたスペックは、連邦の技術を注ぎ込んでチューンされたベイダーの専用カスタムXウイングすら明確に凌駕している。

 重装甲、高出力シールド、圧倒的な機動力。それに加えて、搭乗しているのはフォースによって未来を先読みし、常人を超越した反射神経を誇るダークサイドの使い手たちだ。

 一機、また一機と、ここまで生き抜いてきた連邦の猛者たちが、やすやすと破られ火球へと変えられていく。

 圧倒的な性能差とフォースの融合。帝国が誇る最凶の切り札たちを先頭にしたディフェンダー部隊の前に、連邦の進撃は完全に押し留められ、激しい乱戦の泥沼へと引きずり込まれた。

 

『かつての恐怖の象徴も、弱者に媚びる哀れな腑抜けに成り下がったか! いや、お前は最初から腑抜けだったのだ! ベイダーァァァ!』

 

 通信回路に、大尋問官の底なしの憎悪と嘲笑が響き渡る。

 

『シスの誇りを最初から持たなかった愚か者の首、ここで頂くぞベイダー!』

 

 その叫びと共に、十三機のディフェンダー・エリートがベイダーの漆黒のXウイングへと襲い掛かった。

 彼らが放った圧倒的な火線は、ベイダーのみならず、その射線上に運悪く取り残されていた数機の民間輸送船をも躊躇なく包み込んだ。

 

『邪魔だ、ゴミ屑ども!』

『なっ──!? 何をしているお前たち! 民間機だぞ! 護るべき市民をっ!』

 

 火球となって摩天楼へ墜落していく遊覧船。両軍の精鋭たちが守り抜いていた『暗黙のルール』など、力と恐怖のみを信奉する彼らには何の価値もない。

 非道を非難する一般の帝国軍パイロットからの悲痛な通信を、大尋問官は嘲笑と共に切り捨てた。

 

『帝国の足を引っ張る弱者など不要だ。陛下の敵を討つための礎となるのだ、本望であろう!』

 

 十三機の尋問官たちは民間施設への被害など一切考慮せず、ダークサイドのフォースを通じた精神リンクによって、互いの死角を完全に補い合っていた。

 三機が退路を断ち、五機がビルごと薙ぎ払うようなレーザーの網を張り、残る五機が致命の一撃となるプロトン魚雷を一斉に放つ。

 圧倒的な火力が、文字通り四方八方からベイダーが乗るXウイングを包み込む。

 ベイダー自身は、フォースによる予知で迫り来る魚雷の軌道も数千に及ぶレーザーの雨も完璧に見切っていた。

 彼自身の反応速度に狂いはなく、直撃すれば機体が消滅する五発のプロトン魚雷を、スロットルの微細な調整と超絶的な機動で間一髪すり抜けてみせる。だが、その直後に押し寄せるレーザーの網に対して、機体の挙動がほんの僅かに間に合わない。

 連邦の技術で極限まで強化された彼のXウイングであっても、帝国が全精力を傾けたエリートの前には、どうしても加速力と旋回性能でコンマ数秒の遅れが生じてしまうのだ。

 致命的な直撃だけは紙一重で回避し続けるものの、逃れきれなかった数十発の光条がXウイングの装甲を浅く掠め、至近距離で逸らされた魚雷の爆風が猛烈な衝撃となって機体を揺さぶる。

 

 ピーッ! ピーッ! ピーッ! 

 

 コックピット内に、偏向シールドの限界を告げるけたたましい警告音が鳴り響く。

 機体が激しく揺さぶられ、計器盤の一部が火花を散らした。どんなエースパイロットであれ、この性能差と十三対一の絶望的な包囲網の中では、数秒生き延びることすら不可能な状況だった。

 

『どうしたベイダー! アウター・リムの善政遊びで、ご自慢の腕も鈍ったか!』

 

 尋問官たちの嘲笑が通信機から響く。

 

『弱者に媚びる哀れな腑抜けめ! シスの面汚しめ! 貴様の首を陛下に捧げ、我らこそが真のシスの後継者であると証明してくれる!』

 

 彼らは自らの勝利を確信していた。カタログスペックで上回り、数で上回り、連携で上回っている。計算上、ベイダーに逃げ道はない。

 

(……目に見える計算に溺れ、フォースの導きに耳を傾けることを忘れたか、愚か者どもが。だから、貴様らは『ダース』を与えられなかったのだ)

 

 警告音の鳴り響くコックピットの中で、フォースの導きに耳を傾けるベイダーの呼吸音だけが、ひどく静かに、そして冷静に一定のリズムを刻んでいた。

 圧倒的に不利に見えるだろうが、彼にとっては違う。数の差や性能差など、彼にとってはほんの少し操縦桿を重くする程度の障害に過ぎない。

 それに、彼には帝国のTIEシリーズ──最高傑作たるディフェンダー・エリートであっても決して設計に組み込まれない『相棒』がいた。

 ──「僕が分裂できればっ。アナキンもルークも僕が居ないと駄目なのにっ」と苦悩したR2−D2に、「あー、それもう昔の話ね。僕がね。僕がっ、ご・主・人・に選ばれたんだよ。後は任せておきな。お払い箱になったセ・ン・パ・イ」と優越感たっぷりに返して以来、D2とひどく仲の悪いR2−G9が。

 

『ピロロッ! ピギャーッ! (「遅い遅い! 帝国の最新鋭のくせに処理がトロいんだよバーカ! シールド偏向コンマ2秒短縮! ご主人、もっと無茶苦茶に飛んじゃって!」)』

 

 機体後部のソケットに収まる漆黒に自分の色を塗り直したR2-G9が、煽りスキル全開のけたたましい電子音を上げながら躍動する。

 生意気でヤンチャな性格だが、こと性能に関してはルークとコンビを組んでくれた先輩ドロイドのD2に全く引けを取らない素晴らしい相棒だ(※後輩を宿敵扱いしているR2−D2には言えないが)。

 出来の良いこのアストロメク・ドロイドは、火花を散らす計器のバイパスを瞬時に繋ぎ直し、シールド出力を被弾箇所へミリ秒単位で偏向させて機体の崩壊を完璧に防いでいた。

 TIEディフェンダーは機体単体で完結するがゆえに、パイロットの負担が極めて大きい。

 しかし、Xウイングには頼れる副操縦士がいる。機体の演算とダメージコントロールのすべてをR2ユニットが担うことで、ベイダーは己の100%を操縦とフォースのみに集中できていたのだ。

 

(やはり──TIEディフェンダーにもアストロメク・ドロイドを積めるように改良すべきだ。もしくは、Xウィングとその系譜の改良に集約するかだ。アストロメク・ドロイドという相棒無しでは戦えん。参謀長たちに何としてでもカネを捻出して貰わねばならん。あとアストロメク・ドロイドを含めた汎用ドロイドの生産ラインも何とかして増やさなければ……誰を責任者にするか、運営能力のある者は既に多忙を極めている)

 

 次の一撃で撃墜出来る──尋問官たちの脳裏にその確実な未来が視えた瞬間、ベイダーは予算と生産力とマネジメントの心配をしながら操縦桿から片手を離し、エンジンの出力を突如としてゼロに落とした。

 

(ふむ、若いがこれも経験だ。そろそろレイアに大きな運営の仕事をさせるべきだろうか。あの子は今までやった小さい運営は完璧に熟せていた)

 

 超高速のチェイスの最中での、完全な失速。

 Xウイングは推進力を失い、コルサントの摩天楼の底なしの暗がりへ向けて、まるで石のように真っ逆さまに墜落していく。

 

『なっ──!? 自殺する気か!』

 

 完全に意表を突かれた尋問官たちは、ベイダーを追って慌てて機体を急降下させる。だが、それこそがベイダーの狙いだった。

 重力に引かれて落下する中、ベイダーは眼下を横切る巨大な民間輸送船の航跡が起こす暴風(スリップストリーム)をフォースで感知した。乱気流の渦の中へ飛び込んだ瞬間、機体を錐揉み回転させながらメイン・スラスターを全開にする。

 

(うむ、いいな。ベイルも『そろそろレイアには、多種族と関わる足の着いた大きい実務を経験させるべきだ』と言っていたしな)

 

 物理法則と機体リミッターを完全に無視した、常軌を逸した急反転。

 Xウイングのフレームが悲鳴を上げ、機体がひしゃげるかと思われた直後、R2−G9が即座に慣性キャンセラーを限界突破(オーバーロード)させて機体崩壊を瀬戸際で食い止める。

 

(よし、レイアにしよう。補佐する異種族の幹部のみに密かに「私の娘」だと明かしておけば、彼らは恩に報いようと喜んで彼女を手厚く支えてくれるはずだ。次代の統治者としての地盤固めにもなる。C−3POを補佐につければ万全だろう)

 

 落下から一転、猛烈な速度で真上へと跳ね上がったベイダーの機体は、急降下で追ってきていた尋問官たちの真正面に、下から突き上げるように肉薄した。

 

『な──!?』

 

 すれ違う一瞬の交差。

 ベイダーは一切の躊躇いなく引き金を引いた。

 放たれた四連装レーザーは、ディフェンダー・エリートの強力なシールドが持つ波長の隙間──フォースでしか視えないコンマ数ミリの綻びを正確に貫き、二機のコックピットを同時に蒸発させた。

 

『馬鹿な! 撃墜されたぁ! このシールドを抜いただと!?』

 

 大尋問官が驚愕に顔を歪める。精神リンクで繋がっていた二人の死が強烈なノイズとなって逆流し、残る十一機の連携に致命的な乱れが生じた。

 その隙を、天駆ける才覚の持主スカイウォーカーが見逃すはずがない。

 ベイダーは摩天楼の壁面を削るほどスレスレの軌道を取りながら、ディフェンダーの死角へと滑り込む。どれほど機体性能が高かろうと、それを操るパイロットの空間認識能力と、未来を視る眼の格が違いすぎた。

 左へロールしながらシールドの綻びをまたも撃ち抜き二機を撃墜。

 爆発を盾にして敵のロックオンを外し、慌てて放たれた敵編隊の誤射を誘導しながらさらに三機を立て続けに粉砕。

 圧倒的な性能差と数の差を、純粋な空を飛ぶ技術とドロイドとの連携だけで捻じ伏せていく。

 これこそがスカイウォーカーである。

 

『ひっ、ひぃぃぃっ! ば、馬鹿な! こんなのあり得るはずっ……ギャアアッ!』

『どこだ!? レーダーに映らな……う、後ろにいるぅぅっ!? いやあああっ!』

 

 もはや狩猟だった。先程までの傲慢さは綺麗に消え失せ、尋問官たちはフォースの暗黒面すら見失うほどの恐怖に駆られ、無様に命乞いをしながら逃げ惑う。だが、スカイウォーカーの黒い翼は彼らを決して逃がさない。

 

『降伏します! 降伏するから撃たないでくれ、くださいぃっ! もう一度あなたに忠誠を……アギャーッ!』

『私が愚かでした! 皇帝陛下の、いえ、シディアスの、皇帝の場所を教えま──グァアアアッ!』

『待ってくれ、いえ、待ってくださいベイダー卿! 我々はあなたにっ……ああっ!』

 

 次々と火球に変わるディフェンダー・エリート。

 最後に残った大尋問官の機体は、恐怖のあまり己が掲げていた力と恐怖の信奉すら忘れ、盾にするため民間機の群れに逃げ込もうとした。

 だが、その見苦しい逃走経路の到着点には──既にベイダーの機体が静かに回り込んでいた。

 

『ひぃぃっ! お助けくださいぃぃぃ! お許しくださいぃぃっ! ベイダー卿! た、助け──』

 

 すれ違いざまの一撃が、命乞いを遮るように大尋問官のエリートのエンジン部を正確に撃ち抜く。真紅の機体は黒煙を噴き上げながら、コルサントの闇の底へと墜ちて爆発した。

 

 ──かくて、スカイウォーカーに対して空中戦を挑むという自殺願望者たちは散った。

 

『……道は開いた』

 

 通信機に響く、ベイダーの静かな、しかし確かな勝利の宣言。

 帝国軍最強の切り札が単機によって全滅させられたという事実は、両軍の士気に決定的な差を生み出した。

 

『総大将に続けぇぇ!!』

『連邦を見せてやれ! 蹴散らせ!!』

 

 連邦の精鋭たちが歓喜の雄叫びを上げ、爆発的な反撃に転じる。

 尋問官という要を失い、さらに眼前の悪夢的な光景に動揺した帝国軍のディフェンダー部隊は、完全に統率を失った。連邦軍のXウイングとディフェンダーが猛然と牙を剥き、編隊を食い破り、次々と帝国の戦闘機を撃ち落としてYウイングの道を切り開いていく。

 戦局は完全に傾いた。

 乱戦の泥沼を力ずくで突破した連邦編隊は、再び圧倒的な猛威となってコルサントの空を突き進む。

 彼らの視線の先、摩天楼の先に君臨する巨大な建造物。

 皇帝パルパティーンの玉座たるインペリアル・パレスが、いまや遮るものなくはっきりとその姿を現していた。




 尋問官全滅しました! ライトセーバー戦なら勝ち目まだあるんやけどね。スカイウォーカーに空中戦挑んだら死ぬしかねえ(遠い目
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