ターキンが絶望の淵で何とか踏みとどまり、マス・アミダ宰相が大深度シェルターで卒倒した、まさにその時だった。
再び、コルサント上空の空間が不自然に歪んだ。今度は、小型機のものではない。尋常ではない質量を持つ『何か』が、次元の壁を突き破ろうとしているのだ。
「第二波のジャンプ反応!? これは、特大級(スーパー・クラス)の質量……それも五百隻!? 馬鹿な、重力井戸のジャミング網は健在だぞ! 大艦隊がこんな速度で、しかも現空域に正確に跳躍できるはずが──ッ!」
司令部のオペレーターが絶叫するなか、空間を切り裂いてアウター・リム連邦の主力機動艦隊が実体化した。
その中心で威容を誇るのは、エグゼクター級に匹敵する全長十七キロメートルの超大型空母『ヴァイカウント級スター・キャリアー』──それがなんと八隻。
規格外の搭載量を誇る青い巨体群のハンガー・ハッチが一斉に開かれた直後、オペレーターが再び狂乱した。
「敵増援、次々と射出されています! 戦闘機とガンシップ、およそ二万機に迫る大編隊です!」
ホロテーブルの戦況図が、まるで血に染まるように二万近い赤い光点で完全に塗り潰されていく。
八隻のヴァイカウント級から殺人蜂の群れのように吐き出された大編隊は、即座に二つの奔流へと分かれた。
防空網の穴を突いて帝都の軍事施設を直接すり潰すべく大気圏へ雪崩れ込む、地表降下部隊。そして、主力艦隊と共に宇宙空間に留まり、帝国艦隊を捕捉すべく迅速に攻撃陣形を整える宇宙航空部隊である。
圧倒的な大戦力の出現。それを目の当たりにしたターキンは、己の頭を抱えそうになるのを必死で堪え、この神業の種明かしを悟った。
先行した一万五千機の戦闘機群は、単なる奇襲部隊ではなかったのだ。先頭を征くジェダイたちのジャンプ軌跡をビーコン(灯台)として利用し、後方の大艦隊がジャミング網の隙間を縫って安全に跳躍するための『道』を構築していたのだと。
『こちらスカイウォーカー大尉。アクバー提督、全艦隊の道案内完了しました。座標のズレはありません』
『ご苦労だった、若きジェダイよ。見事な先導だった──さて、では諸君、仕事をしようか』
旗艦の艦橋で、ギアル・アクバー大将は満足げに通信を切った。
ヨーダやベイダーがこじ開けた防衛の穴を、ルークたち次世代のジェダイが的確にトレースし、この巨大な機動部隊を帝国艦隊の背後──最も致命的な位置へと送り届けたのである。
「敵艦隊! 我が艦隊の後方に出ました!」
連邦艦隊が出現した位置の致命的な意味を理解したコルサント司令部に、絶望的な悲鳴が響き渡る。
「わ、我が艦隊は地表の敵を迎撃するため、既に降下体勢に入っています! 艦首を下げ、防護シールドの出力も大気圏突入のために下方に集中させています……ッ! 駄目だ、装甲の薄い背面のエンジンブロック側が、現れた連邦の大艦隊に完全に向いています! 丸裸です!」
「敵艦隊、全砲門にエネルギー充電完了してます! 距離が近すぎる! 今から反転もシールドの再展開も間に合いません!」
「この位置関係で無防備な背後から撃たれれば、全滅します!!」
「敵のガンシップ大群も大気圏に突入! 宙域の我が艦隊は迎撃に回れません! 帝都の空へ一直線に雪崩れ込んできます!!」
帝国艦隊は今、敵艦隊に向けて一番無防備な背中を突き出している状態だった。
連邦航空戦力が暴れ回るコルサントの危機を救うために、帝国艦隊の全艦が艦首を下げて防護シールドを大気圏側に集中させるその瞬間。
帝国艦隊の背後が完全に無防備になるその瞬間を狙って奇襲を仕掛けるという、刹那のタイミングを読み切った悪魔のような指揮をギアル・アクバーはやってのけた。
「アクバーぁ!! こちらの全艦が地表に向かった瞬間に、背後から大艦隊をぶつけてくるかっ! 奴は悪魔かぁ!?」
防衛指揮官の一人の口から、ついに悲鳴に近い怒号が迸った。
味方にとって最高、敵にとって最悪の瞬間。それを作り上げたアクバーは、冷静沈着な指揮官の顔でためらわずに攻撃を命じる。
『最大の戦果を得るとしよう。我々が罠にかけたのだからな(イッツ・ア・トラップ)。目標、敵艦隊の無防備な後背部。全艦、全機、一斉攻撃』
アクバーの号令のもと、連邦艦隊のターボレーザーが嵐のように火を噴き、宇宙空間にとどまったルークたち増援戦闘機群がシールドを下に向けた無防備な帝国艦隊の背後へと容赦なく襲い掛かる。
コルサント防衛に参加せんと降下体勢にあった帝国艦隊は、装甲の薄いエンジンブロックのある背後を完全に宇宙空間へ晒していた。そのため、回避行動すら取れず、座して射たれる家畜の群れと化した。
連邦のターボレーザーと、一万を越える戦闘機による飽和攻撃が、無防備な帝国艦隊の背後に容赦なく叩き込まれる。
一瞬にして、数十の火球が宇宙空間に咲き乱れた。
帝国の威信を象徴するエグゼクター級スター・デストロイヤー『オプレッサー』すらも、旗艦と見定めたアクバー艦隊の集中砲火の餌食となり、装甲を紙のように引き裂かれて内部リアクターが誘爆する。
その横では、百隻近い主力艦が断末魔の閃光を放ちながら、あっという間に冷たい宇宙のスクラップとなっていく。
地表で暴れる連邦軍を止めるべく、コルサントの重力圏へと慌てて降下体勢に入っていた帝国艦隊は、その慌てた機動が完全に裏目に出た。
上へ反転してアクバー艦隊に応戦すべきか、それともこのまま下へ突っ込んで地表を守るべきか。
宙域の艦隊を束ねる指揮官であり、かつてのクローン戦争時代から生き抜いてきた歴戦の将、ウルフ・ユラーレン提督。
彼をエグゼクター級『オプレッサー』ごと一瞬にして葬り去られた帝国艦隊は、その二者択一の答えを出すことができなかった。
アクバーの狙い通りに。
「総司令部より艦隊へ! 直ちに降下を中止せよ! 各個に散開して退避しろ!」
それを見て取ったコルサント司令部は直ぐ様動いた。
防衛指揮官が血相を変えて緊急退避命令を叫ぶ。現場の指揮系統が崩壊した今、司令部が直接艦隊を動かして全滅を防ぐしかなかった。
だが、コンソールを叩く通信士の顔は既に絶望に染まっていた。
「駄目です、命令が届きません! 連邦の大艦隊と降下中の敵ガンシップが放つ強力な広域ジャミングによって、データリンクも音声通信も完全に遮断されています!」
「なんだと!? バックアップ回線を使え! 発光信号でも何でもいい、どんな手段を使ってでも退避させろ! このままでは彼等は全滅するぞ!」
「すべて妨害(ジャム)されています! 我々の声は、どの一隻にも届きません……ッ!」
司令部からの統率という命綱すらも断ち切られた帝国艦隊は、目隠しをされたまま背中を撃たれる哀れな獲物へと成り果てた。
瞬きする間に戦力の二割近くを喪失し、通信を妨害され、艦隊の要たる古参の指揮官を失った彼等は、もはや統率の取れた行動など不可能な大混乱の泥沼へと突き落とされた。
速やかに攻撃を重ねる連邦軍。ひたすらに被害を受け続ける帝国軍。五百隻を超えていた帝国艦隊は、瞬く間にその数を減らしていく。
連邦軍は帝都コルサントの制宙権すらも手にしつつあった。
その圧倒的な制宙権を傘に、大気圏へと雪崩れ込んだ数千の重武装ガンシップと護衛戦闘機群。
分厚い雲海を突き破った彼らの眼下に広がっていたのは、かつて高層建築で地表を埋めていた帝都コルサントの変わり果てた姿だった。
墜落したアナイアレイターの巨大な残骸が突き刺さり、地表はマグマのような業火と分厚い黒煙に包まれている。その地獄絵図を見下ろしながら、連邦のガンシップ部隊を統括するカーリスト・ライカン少将が、激しく揺れる指揮機のコックピットで静かに命令を下した。
「全ガンシップ部隊、射撃用意。多少の流れ弾はやむを得ん──軍事設備及び政府中枢機能を徹底的に叩け」
「よろしいのですか、将軍。市民に被害が出る可能性が……」
通信越しに、部下の指揮官が青ざめた声で懸念を口にする。連邦軍の掲げる大義からすれば、民間人への被害は極力避けるべきだ。だが、ライカンは苦渋を滲ませながらも、断固として命令した。
「我々に、この巨大な帝都を占領・維持する力も時間もない。だからこそ、この一撃で決める。──ためらうな。全火力をもって、帝国の心臓たるコルサントの鼓動を止める。物理的に噛み砕け!」
ライカンの確固たる命令と共に、コルサント各地の帝国の軍事工場と政府中枢施設へ向けて、無慈悲な破壊の雨が降り注ぎ始めた。
数千機のガンシップが一斉にミサイル・ポッドを開き、無数のプロトン魚雷とレーザーと貫通爆弾の火線が摩天楼の合間を縫って工場や施設へと殺到する。
防空網という盾を失った帝国の軍事工場と政府施設は、ろくな抵抗もできぬまま次々と連鎖的な爆炎に飲み込まれていった。
銀河の富を吸い上げ続けてきた帝都の心臓部が、容赦のない爆撃によって徹底的にすり潰されていく。自分たちは撃たれないと理解した民間船が蜘蛛の子を散らすように脱出していく中、コルサントの空はさらなる業火の赤に染め上げられていった。
(……元老院議事堂は攻撃目標ではなかったんだが、まさか帝国の艦艇によって破壊されるとは──これで最初にコルサントに火をかけた汚名は帝国のものに出来ると思えば、悪くない)
業火に沈む帝都を見下ろしながらの、そんなライカンの内心の呟きは誰にも聞こえなかった。
「対空砲火網はどうなっている! 残存している砲台を手動に切り替えろ! 弾幕を張って敵ガンシップの降下を少しでも遅らせるんだ!」
「駄目です、主要な防空陣地は既に完全に沈黙! 残存の対空砲も上空からの爆撃で次々と潰されています! 本星の対空防衛網は事実上、壊滅しました!」
「周辺宙域の駐留艦隊はどうだ! 至急、帝都防衛のための援軍を要請しろ! 何隻呼び戻せる!」
「要請は既に発信済みです! しかし……跳躍計算を含めて、最も早い増援が到着するまで、あと八時間はかかります!」
「八時間だと……ッ!? この状況で、八時間も帝都が保つわけがないだろう!」
「暗号化回線を捨てろ! 平文の指向性通信でいい、現宙域の残存艦隊に散開と大気圏外への離脱を命じろ! 一隻でも多く逃がせ!」
「上空の艦隊、既に各艦が独自に回避行動をとっています! ですが! 連邦の猛攻により逃げ切れません!」
「残存していたエグゼクター級『ラヴェジャー』および『テラー』、敵航空部隊の雷撃がエンジンブロックに集中しています! シールド限界、装甲貫通! ああっ……両艦とも内部リアクターが誘爆……轟沈します!!」
「中央データバンクをネットワークから物理的に切り離せ! 各セクターの長官たちや主要職員の退避状況はどうなっている!」
「すでに大深度シェルターへの避難を完了しています! 人員は無事です! ですが、敵の爆撃は施設に集中しています! 地盤ごと根こそぎ破壊しています!」
「地下のドックで発進準備中のエグゼクターは!? 構わん、多少無理を押してでも空へ上げろ! 巨大な盾代わりにでもして帝都の空を塞ぐんだ!」
「駄目です、機関の起動シークエンスが終わっていません! ドックを離床して発進するまで、最低でもあと三十分はかかります!」
「この爆撃の雨の中で、あの巨体が三十分も無事で済むわけがないだろうッ!」
帝国軍総司令部の将校たちは、恐怖で泣き叫んでいるわけではなかった。
皆、誇り高き帝国軍人としての職務を全うすべく、最悪の状況下で考え得る限り最も正確で的確な対処を次々と指示していた。
だが、その正解のすべてが、ギアル・アクバーという怪物に率いられた連邦の猛攻の前に、無慈悲にすり潰されていく。
彼らは有能であった。有能であるがゆえに、自分たちの打つ手立てがすべて無駄であり、援軍が到着する八時間後にはコルサントの心臓が止まっているという詰みの盤面を、誰よりも正確に理解してしまっていたのだ。
それは無能な者が陥るパニックよりも、遥かに深く冷たい絶望だった。
的確な指示と、それが即座に無力化される絶望の報告。
それらが入り混じり絶望に染まり行く司令部の中で、ターキンはホロテーブルの縁に手をかけ、ついに崩れ落ちそうになる身体を必死に支えた。
空を制され、帝国の手足と内臓をガンシップに潰され、頼みの綱であった巨大な大艦隊すらも背後から無惨に葬られていく衝撃は流石のターキンでも耐えきれなかった。
ターキンを最も戦慄させたのは、連邦軍の鮮やかすぎる手際から透けて見える真の意図だった。
これだけの大戦力を注ぎ込み、帝都の空を完全に支配していながら、彼らにはコルサントを制圧する気など毛頭ないのだ。いや、その能力を未だ持っていないのだ。
一兆を超える人口を抱える巨大な帝都の治安維持や、複雑極まる行政の管理。そんな泥沼の占領コストを負うつもりなど微塵もないし出来ない。彼らがガンシップを差し向けたのは、軍需工場や官庁施設といった、帝国の根幹を成す施設のみ。
彼らは最初から、帝国の軍事力と経済力、そして国家としての威信を可能な限り破壊し、あと『一つの用』さえ済めば、帝国の援軍が来る前にさっさと撤収する腹積もりなのだ。
急速に拡大した彼らの領星──連邦の言葉で言えば『解放』した無数のエイリアン星系──の内政基盤を固める時間を、確実に稼ぎ出すために。
そう──あと一つの用。あとに残る最後の標的はただ一つ。
ダース・ベイダーたち連邦上層部、そしてジェダイたちの真の狙いである、インペリアル・パレスの最深部に座す皇帝パルパティーンの首である。
(この状況で皇帝陛下までもが討たれれば、帝国はどうなる……!?)
破滅するしかない。
ただでさえ顔と心臓と内臓と手足と大動脈に傷をおったのだ。ここで絶対的な求心力すらも失えば、手負いの巨大国家は完全に瓦解し、いずれ内政基盤を整え終えた連邦によって各個撃破され、歴史から抹消されるだろう。
この数十分の凄惨な現実の連続で、開戦初日にしてまるで二十年は年を取ったかのような顔貌となったターキン。
彼は縋るように、ホロプロジェクターの片隅に浮かぶ究極兵器──デス・スターの青白い立体映像を見据えた。
その頃、高軌道上に鎮座する帝国の究極兵器デス・スターと、その周辺を固める直衛艦隊五十隻は、かつてない屈辱と大混乱の渦中にあった。
「右舷より敵艦隊接近! 数、およそ二百!」
低軌道上の帝国艦隊をほぼ片付けたアクバーの本隊から分派され、デス・スターの破壊という重大な任務を帯びていたのは、歴戦の自由闘士であるチャム・シンドゥーラ中将率いる連邦の一個艦隊であった。
連邦の強大な工業力と大量の資金を注ぎ込み、連邦の造船所で独自に建造された複数のインペリアル級スター・デストロイヤーを含む二百隻の艦隊がデス・スターたちに牙を剥く。
圧倒的な火力と艦載機の搭載量、そして制圧能力。設計の基礎からして汎用性に優れたスター・デストロイヤーは、その極めて高い使い勝手の良さから、アウター・リム連邦においても青い塗装を施され、主力艦として正式採用されていた。
結果としてコルサント上空には、帝国の象徴である巨大な三角形の戦艦群が、敵味方となって互いにターボレーザーを撃ち合うという、皮肉にして異様な光景が広がることになっていた。
「主砲(スーパーレーザー)は使えません! 敵艦隊との距離が近すぎます! 外せば背後のコルサントに直撃します!」
「ええい、ならばターボレーザーで近接防空網を敷け! 全砲門を開け!!」
クレニックの怒号と共に、要塞表面に敷き詰められた無数のターボレーザー砲が一斉に火を噴く。だが、直径百六十キロメートルという天体サイズの巨体は、艦隊戦という高機動の三次元戦闘においては絶対に外れることのない巨大すぎる的でしかなかった。
シンドゥーラ中将の的確な指揮の下、連邦艦隊はデス・スターの砲塔の射角外や死角を執拗にキープし、青いインペリアル級が巨体に向けて容赦のない舷側射撃を浴びせ続ける。
さらに、連邦の戦闘機や爆撃機の群れが要塞の表面スレスレを飛び回り、対空砲火を嘲笑うかのようにセンサー・タワーや砲座を次々と火ダルマに変えていた。
規格外の装甲と質量があるため、すぐに沈むことはない。だが、それは裏を返せば、連邦軍からすればどれだけ撃っても反撃してこない、巨大で安全なサンドバッグとして好き放題に蹂躙され続けている状況に他ならなかった。
要塞そのものが巨大な的として機能不全に陥る中、皮肉なことにこの宙域で最も防衛に貢献しているのは、デス・スターから緊急発進した無数のTIEファイター部隊であった。
彼らは無力な母星(要塞)の表面を障害物として巧みに利用しながら、へばりつく連邦の戦闘機や爆撃機と激しいドッグファイトを繰り広げて多大な損害を出しながらも被害を食い止めていた。
国家予算を注ぎ込んだ究極兵器本体よりも、安価な量産機であるTIEファイターの方がよほど実戦の役に立っているという皮肉な現実。
だが、己の半生をかけた超兵器が何一つできないという屈辱に囚われたクレニックの目には、そんな現場の将兵たちの血を吐くような奮闘など一切入っていなかった。
「なぜ落とせん! 我が究極兵器が、ただの鉄屑扱いされているだと!? これではターキン大総督に何と言われるか……ッ! 直衛艦隊は何をしている、早く奴らを追い払え!!」
「だ、駄目です! 敵は本要塞の重力井戸と死角を巧みに利用し、直衛艦隊と本要塞の間に割り込んできます! このままでは味方を誤射します!」
「直衛艦隊に回避させろ! そして私の要塞の射線を開けさせるんだ! 全く、あの無能な直衛の連中め、我がデス・スターの完璧な火線を自分たちの鈍重な機動で塞ぐとは何事だ!!」
味方の陣形や敵の機動など一切考慮せず、ただ「自分の要塞が活躍する状況を作れ」と理不尽な命令を繰り返すクレニックのヒステリックな絶叫に、司令部のクルーたちが凍りつく。
本来ならば、この究極兵器の防衛指揮席には、相応の実戦経験を持つ正規の指揮官が座るはずだった。しかし、連邦の襲来があまりにも早すぎた。
着任するはずだった将官の到着は間に合わず、実戦を知らない一介の高級官僚に過ぎないクレニックが、なし崩し的に実戦指揮を執らざるを得ない状況に陥っていたのだ。
連邦の圧倒的なスピードがもたらした帝国の不運が、この致命的な大混乱を招いていた。
そんな帝国の大混乱を、実戦経験豊富なシンドゥーラ中将は正確に見抜いていた。
『どうやら、デス・スターの敵指揮官は正規の指揮官ではないな。実戦を知らん。足を止めるな! デス・スターの死角を縫うように機動し、まずは無能な要塞に振り回されている直衛艦隊から削り落とせ!』
シンドゥーラ中将の的確な指揮の下、連邦軍の青いインペリアル級を中心とする二百隻とその航空戦力は、巨大なデス・スターの周囲を執拗に飛び回り、文字通りきりきり舞いにさせる。
強大な火力を誇る要塞は小回りが利かず、ヒステリックな指揮官の無茶な命令によって連携を瓦解するだけ。
直衛艦隊は、クレニックの「射線を開けろ」という無茶な命令に従おうとして陣形を崩したところを、連邦艦隊と航空戦力により次々と宇宙の塵へと変えられていく。
究極兵器は、コルサントを救うどころか自分の身を護るので精一杯だった。
その様子をホロテーブルで見るコルサント司令部のターキンは、自分の中で繋ぎ止められていた最後の希望の糸が、プツンと無慈悲な音を立てて途切れるのを聞いた。
(……完全に、封じられたか)
余りの衝撃に棒立ちになったターキンは、ホログラムの中で滑稽なほど翻弄されている巨大な球体を見つめ、己の致命的な過ちを悟った。
指揮官云々が問題なのではない。デス・スターとは、圧倒的な恐怖によって反乱の芽を摘むための究極の抑止力である。無力な惑星を一方的に脅し、言うことを聞かなければ灰にする。
言わば、持たざる者を蹂躙するための
だが、今の敵はどうだ。
帝国の総力には劣るとはいえ、強大な軍事力と経済力を備え、銀河で数千隻の艦艇を高度な戦略をもって動かす正規の軍隊──連邦である。
そのような同格の軍隊同士が入り乱れる戦において、極端に大味で取り回しの悪いデス・スターなど、味方の射線を塞ぎ、直衛艦隊の手間を増やすだけのただの巨大な障害物でしかなかった。
(我々は……戦争の形を見誤っていたのだ。あの兵器は、本物の戦争には向いていない)
国富を傾けて建造した切り札が、正規戦を前にしては何の役にも立たないという冷酷な事実がターキンの背筋を寒くする。
……いや、主要なハイパースペース航路を物理的に封鎖する巨大な盾、あるいは要塞として運用すればどうか?
(……あのジェダイの非常識な『道標(ジャンプ)』の前には、それすらも通じないな)
航路など無視して、要衝の真上や背後に直接艦隊を送り込んでくる敵に対しては、定点防衛の要塞など容易く迂回されるか、背後から無防備に撃たれるだけか、今のように機動力に蹂躙されるだけの存在に成り下がる。
(無駄な物を作ってしまった)
デス・スターを作ってしまった帝国軍の軍事ドクトリンそのものが『弱い者虐めに特化している』という根本的な欠陥を突きつけられたターキンは、今、その慢心の代償を将兵の命と失われる高価な兵器により支払わされていることを痛感していた。
敗北──その重すぎる十字架が、確かな現実として己に迫り来ていることを。
寄せ集めじゃなく正規軍を率いたギアル・アクバー≒チート
なので、ベイダーは自分含めた指揮権をアクバーに投げて暴れてます。