ちょっとルークが家出した話   作:サリエリキキ

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コルサントの戦い~銀河帝国軍~

 一方、デス・スターが足止めされたことで、コルサント低軌道ではギアル・アクバー大将率いる主力三百隻とその航空戦力が帝国艦隊を駆逐し、いよいよ帝都の制宙権を完全に掌握しようとしていた。

 

「帝国の防衛艦隊、後退していきます! 制宙権の掌握まで、あと──」

 

 連邦のオペレーターが勝利の報告を上げようとした、まさにその時だった。

 

「──ッ! コルサント宙域外縁に、大規模なハイパースペース反応! ば、馬鹿な、早すぎます! 周辺宙域からの増援は、最速でもあと八時間はかかるはずでは……っ!」

 

 空間が大きく裂け、猛烈な速度で戦場に躍り出たのは、ターキンの緊急指令を受けて限界を超えたジャンプ機動でコルサントに到着した帝国軍の増援艦隊であった。

 安全な航路計算をかなぐり捨て、艦用コンピューターとハイパードライブを文字通り焼き切る覚悟で跳躍してきた彼らは、後、八時間かかるはずの距離を乗り越えて駆けつけたのだ。

 その数、二百隻。それほどの無茶をしても陣形を崩さなかったことが、この艦隊の指揮官の有能さと将兵の練度を示していた。

 そして艦列の中央には、先ほど連邦に容易く沈められた同型艦の仇を討つかのように、全長十九キロメートルの威容を誇るエグゼクター級スーパー・スター・デストロイヤー第四艦『ヴェンジェンス』が、巨大な矛先として陣取っていた。

 

「コルサント上空の連邦の三百隻に対し、我が方は二百。数では劣勢だな──航空戦力では更に」

 

 艦隊旗艦ヴェンジェンスの艦橋で、大軍拡により提督になった帝国の将ギラド・ペレオンは、ホロテーブルの絶望的な戦況を見ても微塵も動揺しなかった。

 燃え盛るコルサントと、敗走している味方の姿にパニックに陥りかけていた艦隊の将兵たちは、そのあまりにも落ち着き払った将の姿を見て、嘘のように冷静さを取り戻していく。

 帝国軍において最も理知的で、冷静沈着な用兵術に長けた歴戦の指揮官。今も未来でもそう謳われる軍人である彼は、瞬時に連邦軍の陣形の唯一の隙を見抜いていた。

 

「高軌道のデス・スターは敵の別働隊に包囲され、完全に無力化されているようだが……気にするな。あの巨体と分厚い装甲だ、容易く落ちることはない。今はせいぜい、優秀な囮として敵を引き付けてもらうとしよう」

 

 星を砕く究極兵器(過去形)を『ただの囮』として戦術に組み込むペレオンの言葉に、艦橋の空気が引き締まる。

 

「我々が叩くべきは敵の本隊だ。奴らの陣形は地表への爆撃と降下部隊の援護のために、平面的に広がりすぎている。この隙を突く」

 

 ペレオン提督の静かで、しかし絶対的な威厳を持つ声が全二百隻に飛ぶ。

 

「ヴェンジェンスを楔とし、敵陣の中央へ突撃。敵艦隊を物理的に二つに分断し、各個撃破の乱戦に持ち込む。我らの任務は勝つことではない。一隻でも多く敵を道連れにし、陛下と帝都を守り抜くことだ。全艦、前進!」

『はっ!!』

 

 無能な指揮官であれば、数の不利を見て消極的な動きを見せただろう。だが、ペレオンは違った。エグゼクター級という最強の矛の絶大な質量を最も効果的に使い、三百隻のアクバー艦隊の陣形の横腹に、完璧なタイミングと密集陣形で思い切り喰らいついたのである。

 全長十九キロメートルのヴェンジェンスが連邦艦隊の陣形を強引に引き裂き、生じた綻びにインペリアル級の群れが次々と雪崩れ込んでいく。

 彼らはあえて敵艦と接触するほどの超近接距離での乱戦に持ち込むことで、連邦軍の最大の強みである圧倒的な航空戦力に味方艦を巻き込む危険性を与え、その衝撃力をある程度封殺してみせた。

 後世の歴史家はこう記している。『銀河帝国皇帝パルパティーンが推し進めた無計画な大軍拡は、国家を疲弊させるだけの百害あって一利のみの愚策であった。ただ一つ、ギラド・ペレオンという男を取り立て、この新鋭艦隊を預けたことだけが、帝国にとって唯一の“一利”であった』と。

 

 

 

 

『──アクバー提督! 敵増援、エグゼクター級を先頭に我が軍の中央突破を図っています! 艦隊の指揮を執っているのは、ギラド・ペレオン提督です!』

「ペレオンか。流石は帝国軍の誇る名将だ。一筋縄ではいかんか。……帝国軍は人が揃っているな」

 

 急激な拡大によって大艦隊を指揮できる有能な将官が慢性的に不足し、最高司令官でありながら自ら前線で指揮を執らざるを得ないアクバー大将は、相手の指揮官の迷いのない完璧な用兵に、深い感嘆と僅かな羨望の息を漏らした。

 だが、連邦が誇る最高司令官もまた、この猛攻で手玉に取られるような凡将では決してない。

 

「乱戦を挑むその胆力は見事だ。だが、宇宙は平面ではない。海中と同じ三次元なのだ」

 

 アクバーはホロテーブルの戦況図を見つめ、即座に陣形の再編を命じた。

 

「中央の戦隊はヴェンジェンスの突撃を正面から受け止めるな。左右、そして上下へ立体的に散開し、敵の突撃を『筒の中』に誘い込め! モン・カラマリ・クルーザーとスター・デストロイヤーのシールドを相互にカバーさせながら、全方位からの十字砲火を浴びせるのだ! 脆弱なスター・キャリアー群は直ちに前線から引き離し、敵の砲撃が届かない安全圏へ退避させろ!」

『はっ! しかしスター・キャリアーを下げれば、地表のガンシップ部隊への補給が絶たれます! それに、爆撃機をはじめとする宇宙の航空部隊はどうしますか!? 乱戦空域では味方を巻き込みます!』

「ライカン少将へ伝達、以後の補給は不可能。各機、現在積んでいる弾薬を撃ち尽くし次第、速やかにコルサントの重力圏を離脱し帰還せよ。 ──宇宙の航空部隊は、第一から第四航空師団を除いて直ちに艦隊戦の空域を離脱! 残りの八個師団には高軌道のデス・スター直衛艦隊の背後を突かせろ。シンドゥーラ中将と連携し、あの厄介な球体を完全に無力化するのだ! 

 デス・スターさえ無力化すれば、シンドゥーラ中将の艦隊がフリーになる! 手が空いた彼らに、我々に気を取られているペレオン艦隊の横っ腹を突かせるのだ!」

 

 見事な采配であった。

 ペレオンが航空戦力を封じるために作った乱戦という状況を逆手に取り、敵を包囲網の奥深くまで引きずり込みながら、装甲の薄い母艦を確実に逃がす。そして、浮いてしまった自軍の航空戦力を別の戦線(デス・スター)へと振り向ける。

 目の前の猛攻を捌くだけにとどまらず、別働隊を解放してペレオンの横腹を砕くという『次の一手』までも完全に計算に組み込んでいる。奇襲されて瞬時に作り上げた一切の無駄がないその戦術は、アクバーという指揮官がどれ程の怪物であるかを物語っていた。

 連邦艦隊はペレオンの猛烈な突撃に合わせ、陣形を漏斗のように変形させた。

 巨大な槍の如きエグゼクター級を柔らかく包み込みながら、四方八方から容赦のないターボレーザーの雨を浴びせ返し始めたのである。

 

 だが、冷静沈着なペレオンはその十字砲火の嵐の中でも、微塵も怯むことはなかった。

 

「アクバーめ、包囲して外側からすり潰す気か。──だが、個艦の火力と装甲ならば我が軍が勝る。ならば、陣形ごと内側から食い破るまでだ」

(デス・スターの別動隊をフリーにする采配……見事だ。分かっていても、手持ちの戦力では目の前の本隊を殴り続ける以外に対処のしようがない。劣勢の、苦しい戦いになるな)

 

 ペレオンは冷静な分析のもと、即座に各艦へさらなる乱戦の激化を命じた。

 

「全艦、機関最大! 敵の包囲網へさらに深く食い込め! 距離を詰め、一対一の殴り合いに持ち込んで帝国の火力を見せつけろ!」

 

 その号令に応え、被弾を恐れず突進したインペリアル級スター・デストロイヤーの群れが、漏斗の陣形を構成する連邦のインペリアル級スター・デストロイヤーたちへ肉薄し、至近距離からの強烈な舷側斉射を撃ち合う。

 連邦の艦艇が次々と装甲を破られ甚大な損傷を負うのに対し、帝国艦艇は激しい反撃を浴びてもほぼ損傷を受けなかった。

 重装甲と大火力においては、帝国の艦艇は連邦の艦艇を明確に凌駕している。ペレオンはアクバーの敷いた戦術的な包囲網を、個艦の能力を極限まで引き出した力任せのインファイトによって次々と粉砕し始めた。

 だが、連邦艦隊もただ粉砕されるままではなかった。艦艇のスペック差という致命的な不利を埋めたのは、彼らの最大の強みである優秀な航空戦力であった。

 ペレオンの狙い通り、敵味方が入り乱れる乱戦空域では、味方を巻き込む危険から広範囲への無差別な爆撃は不可能に近い。しかし、連邦の熟練パイロットたちは恐るべき技量で巨大な艦と艦の僅かな隙間を縫うように突入したのだ。

 連邦の艦艇が盾となって帝国の猛火を引き受けている隙に、戦闘機編隊がインペリアル級の死角へと滑り込み、シールド発生器や巨大な砲塔群、エンジンノズルといった装甲の薄い局所へプロトン魚雷を精密に叩き込んでいく。

 圧倒的な質で押し潰そうとする帝国の個の暴力を、連邦は艦艇と戦闘機が一体となった連携の技で完璧に相殺する。

 戦場はもはや陣形すら意味を成さない、船体と船体が削り合うような泥沼の超近接格闘戦へと雪崩れ込んでいった。

 圧倒的優勢だったはずのアクバー主力艦隊三百隻と、ペレオン率いる帝国増援艦隊二百隻、そしてペレオンの見事な指揮に勇気付けられそこに合流しようとする帝国残存艦隊百隻。

 ここにきて、戦況はどちらに転ぶか全く分からない、銀河最高峰の提督同士による血みどろの艦隊格闘戦へと突入していった。

 

 

 

 

 

 そして、その神業のような反撃と攻防の様子は、コルサント司令部のホロテーブルにもはっきりと映し出されていた。

 

 つい先ほど、自分の中で最後の希望が途切れる音を聞いたはずのターキンは、食い入るようにホロプロジェクターの光を見つめていた。

 完全に崩壊したはずの帝国の防衛線が、ペレオンという一人の将の卓越した手腕によって持ち堪え、逆に優勢な連邦軍へと強烈な出血を強いている。そしてアクバーの猛反撃を受けながらも、決して崩れることなく食らいついている。

 それに呼応するように、ズタズタにされ生き延びていただけの百隻の残存帝国艦隊すらもが、死に物狂いでペレオンのもとへ集い、統率を取り戻し始めていた。

 

「見事だ、ペレオン提督。まだだ、我が帝国は、まだ負けてはおらんッ! 指揮系統の乱れは致命傷になる、今すぐ統合する! ペレオン提督に、現宙域の戦力の全指揮権を委ねる!!」

 

 ターキンの絶望に濁りきっていた瞳に、再び鋭い闘志と希望の光が宿る。

 帝国の軍人たちが意地と誇りをもって、この地獄の淵で猛然と牙を剥き返しているのだ。

 ならば、彼らを束ねる帝国の最高司令官であり、大総督たる自分が、こんなところで屈するわけにはいかない。

 ターキンは己を鼓舞するように背筋を伸ばし、同じく絶望から立ち直り始めた司令部の将校たちへ向け、戦線を支えるための的確な指示を続々と飛ばし始めた。

 

「我々が為すべきは地表の維持と、彼への徹底した後方支援だ。通信管制。ペレオンの旗艦へ暗号回線を繋げ。 同時に、地表の防空システムの全センサー・データを『ヴェンジェンス』の指揮中枢に直結させろ。乱戦に持ち込んだ彼に、後方からの完璧な目を与えよ」

「はっ! 妨害電波を迂回する予備回線で構築します! ──リンク完了! 当方の戦術データ、ペレオン提督のホロテーブルと同期しました!」

「上空の超近接格闘戦により、間もなく莫大な数の艦の残骸が地表へ降り注ぐぞ。非常用トラクター・ビームと広域リパルサーを展開せよ。落ちてくる残骸は連邦により崩壊した区域に誘導して落とせ」

「了解しました! 残骸の落下予測軌道を計算、非常用トラクター・ビームによる弾道偏向作業に入ります──これ以上、コルサントを傷つけさせません」

「敵のガンシップによる爆撃で燃え盛る、地表の火災はどうなっている!? 延焼で避難民が居る地下の換気システムを潰されるわけにはいかんぞ!」

「すでに各管区のダメージコントロール部隊が防火隔壁の完全封鎖を終えています! 消火不能な重度火災区画は強制的な真空引きを行い、酸欠による物理鎮圧を実行中です! 避難民は無事です!」

「よろしい。地表の憂いは全て我々が引き受ける。ペレオン提督には『背後は一切気にせず、存分に暴れ回れ』と伝えよ!」

 

 大総督の矢継ぎ早の命令を受け、司令部のクルーたちは絶望の底から見事に生気を取り戻し、次々と被害の食い止めと戦線の再構築に奔走していく。

 ホロテーブルの中でアクバーの大艦隊に猛然と喰らいつくペレオン艦隊と、眼前で血を吐くような努力で帝国の命脈を繋ごうとする有能な将校たち。

 いかなる絶望の淵にあっても決して折れることのない帝国軍人の真価を目の当たりにしたターキンの胸中に、氷のように冷徹な野心が首をもたげた。

 

(……そうだ。彼らのような将兵が残っているならば、例え皇帝が──いや、パルパティーンが斃れたとしても、帝国は必ず再起できる)

 

 将校たちに的確な指示を出しながら、ターキンの内心は恐ろしいほどに冷え切った計算を弾き出していた。

 ヘイトを稼ぎ過ぎた己やマス・アミダ宰相では得られない求心力のために、適当な悪名の無い無能な善人を象徴(皇帝)としてすげ替えればいい。宗教に耽溺して引きこもる今のパルパティーンより余程マシだ。

 そもそも、この破滅的な戦争の燃料を注ぎ、引き金を引いたのは他ならぬ奴なのだ。この一点だけでも善人の傀儡のほうが遥かに国益にかなう。

 というより、首都が攻撃され、これだけの絶望的な被害が出ているというのに、未だに声明の一つも発しないなど最高権力者としてどうかしている。

 沈黙を貫く皇帝と、祖国の為に血を流して奮戦する帝国軍人。両者の対比を目の当たりにしたターキンの心の中では、元々ゼロだったパルパティーンへの忠誠心が、ついにマイナスへと突入していた。

 

(今回のこれほどの苦戦だけでも奴は万死に値する。奴のせいで帝国は誤ったドクトリンのまま戦い、流さなくて良かった血と金を流し続けているのだからな)

 

 軍事ドクトリンとは、確固たる国家戦略があってこそ機能するものだ。

 自分たちが『銀河を支配する統一国家:帝国』というパルパティーンの国家戦略に従って『圧倒的恐怖による支配(弱い者虐め)』というドクトリンを組み上げたというのに、あの男は国家戦略を勝手に捻じ曲げて、連邦という同格の怪物を自分で育て戦い始めやがった。

 国家と軍隊を私物化するならまだしも、この致命的な背信行為は、帝国の高官として断じて許容できるものではない。

 

(連邦のジェダイ共の目的はパレスの皇帝だ、万を超える機体がパレスにかかりきりになっている。さらに、ペレオン提督の攻撃によって敵の母艦群が後退した影響だろう。地表を火の海にしていた敵のガンシップ部隊が、弾薬を撃ち尽くした機体から次々と宇宙への撤退を始めている。ならば、その隙に!)

 

 ターキンは大深部シェルターにいるマス・アミダ宰相に極秘通信を送りながら、速やかに帝国の存続のための計画を組み立てる。

 先ほど「発進に三十分かかる」と報告された、地下ドックで整備中だったエグゼクター。連邦の無慈悲な爆撃の波が引いたことで、あの巨体は奇跡的にも無傷のまま発進までの時間を稼ぎ出すことに成功していた。

 あれにマス・アミダ宰相や官僚団、そして救出可能な限りの兵たちと共に乗り込み、一時的に空白地帯になったコルサント上空から脱出してペレオン提督らと共に戦う。その後、集まってくる援軍と合流して帝都を解放し、傀儡を立て宰相と共に帝国の立て直しを図る。

 

(皇帝の救出など、その次でいい──いや、そもそもしなくていいのだ!)

 

 現在、一万機を超える連邦の航空戦力が完全にパレスを包囲し、猛爆撃を加えている。これまで何度も救出を試みたが、いずれも敵の猛烈な砲火と絶え間ない崩落に阻まれ、パレスへ接近することすら叶わなかった。

 戦術的に見て、あの老人を救出することは物理的に不可能だ──救出不可能という合理的理由を見出したターキンは、一切の躊躇なくパルパティーンをここで見捨てる決断を下した。

 

(首都が火の海になっても何一つ手を打たない皇帝など、皇帝であってたまるか! ダークサイドとやらと共にくたばるがいい!)

 

 皇帝の命と、帝国という国家の存続。ターキンの中で、天秤にかけるまでもない事項だった。

 覚悟を決めたターキンは、踵を返して司令部のクルーたちへ鋭い声を飛ばした。

 

「司令部要員に告ぐ! 五分以内に本司令部のメインフレーム、及び全戦術データを地下のエグゼクターへ転送しろ。これより我が軍の中枢はあの艦へ移行する!」

「大総督閣下!?」

 

 通信将校がハッと息を呑んだ。

 

「我々がここを離れれば、地上で防衛戦を続ける兵士たちは上層部に見捨てられたと──」

「馬鹿を言え。誰が見捨てると言った」

 

 ターキンは通信将校を鋭く一瞥すると、帝国軍への暗号回線を開かせた。そして、堂々たる大総督の威厳に満ちた声で地表の全将兵へと語りかける。

 

『大総督ターキンである。全帝国軍将兵に告ぐ。私はこれより、地下ドックに待機するスーパー・スター・デストロイヤー『エグゼクター』に座乗し、自ら前線へ赴く。ペレオン提督と共に戦い、来るべき増援と合流し、この帝都から反逆者を叩き出す』

 

 それは脱出のための欺瞞ではなく、戦術的に正しい判断だった。現在のコルサントにおいて、宇宙の激戦に直接関与できる予備戦力など地下のエグゼクターしか残されていないのだ。

 安全な司令部に籠もるよりも、最後の巨大な矛を抜いて自ら宇宙へ上がる、今もコルサントに向かっている援軍の艦隊が来るまでの時間を稼ぐために。その軍事的最適解と覚悟を悟った将兵は、誰もがターキンの決断に深く納得した。

 

『諸君らの死力は、私がこの目でしかと見届けた。帝国のこれからは諸君らの双肩にかかっている。私が艦隊と共に帝都を安全にするまで、何としても生きて戦い続けろ! 帝国万歳!』

 

『『『帝国万歳!!!』』』

 

 直後、通信機越しに、地表で救援や防衛に奔走するストームトルーパーや将校たちの、士気が爆発した咆哮が返ってきた。

 最高司令官自らが巨大な矛に乗って援軍が来るまでの時間を稼ぐのだ勝てるのだと、勝利の希望を抱いて個々の責務を果たしていく。

 事実に基づく勝利の道を示した上で行動することで将兵の士気を最高潮に保ち、責務を果たさせる。それこそが指揮官の責務であり、軍隊という組織を動かす唯一の真理である。

 

 

 

 だから──司令部の将校たちも、地表の将兵たちも。

 そのあまりにも理にかなった帝国大総督としての決断を前にして──この時、ターキンが『意図して皇帝パルパティーンへ一切の連絡を取らなかった』という事実に気がつく者は誰一人としていなかった。

 

 ターキンは帝国という国家の存続を最優先とした、冷酷非情な合理主義の塊となって動き始めた。

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