少し前──
スーパーレーザーが使えなくとも、デス・スターは要塞だった。直径百二十キロメートルという圧倒的な質量に備え付けられた無数の砲台群と無数のTIEファイターが、死に物狂いで迎撃の火線を撒き散らしている。
その光の暴風が吹き荒れる地獄の宙域を、アクバー大将にデス・スターを叩くように命じられた航空隊に所属する一機のXウイングが常軌を逸した軌道で駆け抜けていた。
右へ、左へ。上下の感覚すら喪失するような三次元的な超高速機動。
レーザーの雨の隙間を、まるで最初から軌道を知っていたかのようにミリ単位の精度ですり抜ける。背後に張り付いた三機のTIEディフェンダーに対し、スラスターを反転させた変態的な急ブレーキと背面飛行で一瞬にして自機を相手の視界から消し去り、逆に背後から三発のレーザーで同時に三機とも撃ち抜いた。
ついでに、弾薬庫へ繋がる排熱ダクトへ的確にレーザーを撃ち込み、幾つもの砲台を含めた区画ごと吹き飛ばして大穴を空けてみせる。
『見事な腕だ……いや、凄まじいな』
『あんな機動、人間業じゃありませんよ。まるで……』
『ああ。まるで、かつてのクローン戦争の英雄……アナキン・スカイウォーカーだ』
『親父さんがそのアナキン・スカイウォーカーだからな。ありゃ血だわ』
『……ああ、ベイダー卿な』
『……それは一応秘密だぞ』
通信回線に漏れる連邦軍の古参パイロットたちの驚愕と納得の声。
無理もない。若きエース、ルーク・スカイウォーカーの操るXウイングの軌道は、まさに伝説の英雄そのものかそれ以上だった。
理屈やマニュアルを完全に無視した、フォースと血のなす空間把握能力と直感だけが成し得る神業。あまりの加速に機体が悲鳴を上げているが、相棒を信頼するルークは一切の恐怖を感じることなく、極限の集中力でフォースの導くままに機体を躍らせていた。
『ピロロロッ! ピ──ッ! ポポパァーッ! (これだよこれ、スカイウォーカーの飛び方はこうでなくちゃ!)』
その狂気じみた機動に、相棒こと後部ソケットに収まるアストロメク・ドロイド──R2-D2は、歓喜の電子音をけたたましく響かせていた。
彼にとっては、この機器がひっくり返るような無茶苦茶な飛び方こそが日常だった。かつてクローン戦争を共に戦い抜いた、あの無鉄砲で最高のマスター(アナキン)そのもの。
親子二代にわたって相棒を務める老練なドロイドは喜びを爆発させながら、オーバーヒート寸前の機体出力を完璧に最適化し続けている。
「ありがとう、R2! 次、左からの三機を前の橋に叩き付けて落とす! シールドを前方に回してくれ! 前方に突撃して回避する!」
『ピロロピッ! ピュイイィーッ!!! (了解だ、相棒! 前面出力最大! 僕が居る限り落とさせないぜ! 突撃だぁぁぁ!!!)』
ハン・ソロ曰く「自殺志願者のイカレ坊主にしてアホほど腕の良いイカレ坊主」ことルーク・スカイウォーカーの操縦は、もはや常人の理解を完全に超越していた。
凄まじい速度で迫る巨大な鋼鉄の橋に対し、彼は減速するどころかスラスターを全開にして突撃する。追尾していた三機の敵機が慌てて機首を上げようとした瞬間、ルークは機体を鋭く横転(ロール)させ、橋の支柱と支柱のあいだにある自機の翼幅ギリギリの隙間を、ミリ単位の精度ですり抜けてみせた。
直後、機首を上げるのが間に合わなかった三機の追手は、無惨にも橋に激突して爆炎の華を咲かせる。
ルークはR2の神業的なサポートを受け、背後で連鎖する爆発の衝撃すらも推力に利用しながら、次々とデス・スターの奥底にある弾薬庫へ繋がる排気口にプロトン魚雷を叩き込んでいく。
大爆発とともに幾つかの数キロの大穴が開き、内部構造からはオレンジ色の業火がまるで傷口から噴き出す血のように溢れ出す。
デス・スターはただのサンドバッグと化していった。
直径百二十キロメートルという異常な質量。それは裏を返せば、機動力は皆無に等しく、今のように戦闘機に懐に潜り込まれれば無数の死角を生む『巨大すぎる的』でしかない。
純粋なパイロットであり、シスの教義に全く向いていなかったアナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)が、「あんな鈍重なものはただの棺桶だ。有能なパイロットと戦闘機とそれらを乗せる艦艇を揃えた方がよほど軍事的に理にかなっている」と呆れ果て、その存在意義を欠片も理解できなかったのも当然であった。
彼だけでなく、スローン大提督を筆頭とする有能な前線指揮官たちもまた、内心では一様にこの巨大要塞を冷笑していた。
「莫大な予算と資源を、機動力の欠如した単一の標的に注ぎ込むなど戦略的な愚行に過ぎない。そのリソースをシールド付きの優秀な次世代戦闘機と艦隊の拡充に回せば、銀河全域の星系を同時に制圧しうる防衛網と兵站を構築できるというのに……いや、そうしろよ。何やってんだよ。クローン戦争時代はその方向性だったじゃないか!? 逆行してどうする!!!???」と。
国家規模の資源配分や広域を面で制圧する軍事的合理性を重んじる彼らプロの軍人からすれば、プロジェクト・スターダスト(デス・スター計画)の非効率さは正気の沙汰ではなかったのだ。
それでも彼らが計画を反対できなかったのは、それが他ならぬ銀河皇帝自身の『肝いり』の事業だったからに他ならない。明確な異を唱えれば、いかに有能な将官であろうと反逆者として即座に粛清される。だからこそ彼らは沈黙を守り、己の矜持を殺してまで、この不条理な巨大建造物の完成を見過ごすしかなかったのである。
時に密室で、あるいは信頼できる副官を前にして、有能な将官たちはこう冷笑しながら吐き捨てていた。
「あんなものは軍事兵器ではない、莫大な国費を投じたただの『皇帝のおもちゃ』だ」「元老院最高議長から皇帝へと玉座を登り詰めた過程で、あの御方はかつての理性と合理性を何処かへ捨て去ってしまわれたのだ」「何よりも他者の意見を聞く耳と職務に精励する気持ちを失った」「議長ならばと信じていたのに」と。
彼等、プロの帝国軍人たちの冷笑と落胆は正しい。
なぜなら、このデス・スターは軍事的な兵器などではないからだ。銀河皇帝シーヴ・パルパティーンが、星を砕くという絶望で全銀河を恐怖させ、極上の『ダークサイドの糧』を産み出させるためだけに作らせた、恐怖の『象徴(祭壇)』に過ぎなかった。
今、プロの軍人で構成された正規軍である連邦軍にサンドバッグにされているのがデス・スターの必然だった。
父と同じくデス・スターを理解出来ない故に容赦なくサンドバッグにするルークの規格外の活躍に引っ張られるように周囲の連邦軍機も勢いづき、要塞(祭壇)の表面は着実に制圧されつつあった。
しかし、帝国軍のトラウマになる戦いっぷりを見せるルークの顔に焦りの色が浮かぶ。
(駄目だ……表面をいくら焼いても、巨大要塞を完全に破壊することはできない!)
デス・スターの装甲はあまりにも分厚く、デス・スターそのものが大きすぎる。表面の砲台や幾つかの弾薬庫を潰したところで致命傷にはならない。完全に沈めるには、主反応炉を破壊しなければならないのだ。
「ハン……まだデータは来ないのか!」
ルークはフォースの感覚を研ぎ澄ませながら、心の中で親友に呼びかけた。
ハン率いる501大隊が、イードゥーに捕らえられた要塞の設計者であるゲイレン・アーソたちを救出し、彼らからデス・スターの弱点を教わってから攻撃座標データを作り上げ送信してくる手はずになっているのだ。
それを受け取り次第、母艦からマラが来てくれるはずなのに、まだ来てくれない。
(このままじゃ不味い!)
ルークが焦るのには理由があった。自分を含めたチャム中将率いる艦隊の猛攻により要塞は着実に沈黙しつつあるが、直径百二十キロの巨大な質量を中途半端に宇宙漂わせておくのはあまりにも危険すぎる。
万が一墜落でもすれば、眼下のコルサントに住まう一兆もの命が無為に散ることになる。敵とはいえ、そんな結末をルークが許容できるはずもなかった。
だからこそ、完全に粉砕しなければならない。
「急いでくれ、ハン! いつでも撃てる!」
ルークは焦燥を振り払うように操縦桿を強く握りしめ、次なるTIEファイターの編隊へと猛然と突っ込み、最も腕利きのリーダーを落として混乱する他の編隊機を撃墜していった。
その頃。デス・スターの中枢、オーバーロード・コントロール・ルームでは、オーソン・クレニック長官が血走った目で戦況ホログラムを睨みつけていた。
「ええい、何をモタモタしている! チョロチョロと逃げ回る反乱者の寄せ集めどもではないか! 表面の砲台は遊んでいるのか!」
「長官、敵艦隊はこちらの直衛艦隊を盾にするように死角を縫って機動しており、捕捉が──」
「ええい、小賢しい戦術など圧倒的な火力でねじ伏せろ! 正面の迎撃を厚くしろ! 下層のシールド出力を絞り、全エネルギーを前面の砲台群に回すのだ! 直衛艦隊ごと奴らを蜂の巣にして、この私とデス・スターの完全なる力を証明してやるのだ!」
「み、味方ごと撃つ!? そんな事出来ません!」
「その通りです! 少なくとも上位司令部に、ターキン大総督に宙域司令官に任じられたペレオン提督に確認を──」
「──ならば私がやる」
ドンッ!
無機質なブラスターの銃声がコントロール・ルームに響き渡った。
抗議の声を上げたオペレーターが胸を撃ち抜かれ、コンソールの上に崩れ落ちる。
己の半生をかけた成果が役に立たない絶望。実戦経験が豊富というだけで、ポッと出のペレオンが自分より重用されているという事実。
部下にすら「自分よりもペレオンの許可が必要だ」と下に見られた強烈な劣等感と嫉妬が、クレニックの衝動的な殺意の引き金だった。
銃口から煙を上げるブラスターを片手に握ったクレニックは、死体を押しのけて自ら操作パネルの前に立った。
「誰も私に指図するな。ペレオンだと? ターキンだと!? 思い上がるな、このデス・スターは私のものだ!」
味方を虫ケラのように撃ち殺した長官のヒステリックな狂気に、司令部のクルーたちは顔を引き攣らせ、完全に凍りついた。もはや誰も、表立って彼を止めることはできない。
だが、帝国軍人としてのまっとうな矜持を保っているオペレーター全員が、震える指先でコンソールの暗号回線を開いていた。宛先は、今まさに最前線で激闘を繰り広げている宙域司令官、ペレオン提督の旗艦である。
『……司令部へ、緊急事態。クレニック長官が錯乱し、味方艦隊ごと敵を砲撃しようとしています。部下を射殺し、暴走中。至急、長官を反逆罪で拘束、あるいは射殺する許可を!』
しかし、その悲痛な通信がペレオンの元へ届き、拘束の許可が下りるよりも僅かに早く──クレニックの指が、下層シールドの出力を絞るコマンドを叩き込んでしまった。
それは、艦隊戦に無知ゆえの、あまりにも致命的なミスだった。
チャム・シンドゥーラ中将が先ほどから仕掛けていた『要塞の死角を飛び回り、直衛艦隊から削り落とす』という執拗な嫌がらせは、まさにこうした艦隊戦を知らない指揮官の焦燥を、完璧に誘い出すための布石だったのだ。
シールドの位相が前面へ偏った、わずか数秒の隙。
チャム中将は、これまでの牽制軌道から一転、完全に防御が手薄になったデス・スター下層の死角へと、鮮やかな指揮で自らのスター・デストロイヤー群を滑り込ませた。味方の直衛艦隊ごと吹き飛ばそうとするクレニックの苛烈な砲火を躱し、無駄な被弾を最小限に抑えつつ要塞の懐へ完璧に肉薄する。
『戦を知らん素人は、これだから御しやすい。苛立ちに耐えきれず、自ら一番重要な盾を下げおったぞ。今だ、全門斉射! 狙うは要塞の推進機関部のみ!』
チャム中将の号令と共に、連邦スター・デストロイヤー群から放たれたターボレーザーの集中砲火が、無防備な下層の排熱・推進区画へと一斉に叩き込まれた。
「な、何だと!? 防御スクリーンはどうした!!」
コントロール・ルームに響き渡るクレニックの悲鳴をかき消すように、要塞全土を揺るがす致命的な轟音が鳴り響く。
直撃を受けた推進ブロックが内部から弾け飛び、凄まじい業火が宇宙空間へと噴出した。
デス・スターは激しい痛撃に巨体を震わせる。推進機関の過半を破壊された要塞は、もはや本来の機動力を完全に喪失し、コルサント低軌道(衛星軌道)へと力ずくで押し込められ、ただの巨大な標的として固定されてしまった。そこに粉微塵にせんと連邦の砲火が突き刺さる。
それを振動で味わうデス・スターの司令塔では、敗北を悟ったオーソン・クレニック長官が完全に糸の切れた人形のように発狂していた。
「推力を上げろと言っただろう! 誰か、コルサントをどかせろ! 帝都の重力が我が最高傑作を汚そうとしているのだ! スーパーレーザーの火器管制を復活させろ! 射線を確保しろ、全砲門を敵艦隊へ向けろ! 地表など知らん、すべて焼き払え!!」
「長官、推進機関の80%が沈黙! 砲台の90%も沈黙しました! TIE部隊も50%が撃墜されました! デス・スターはコルサントの衛星軌道からもう動けません! このままでは連邦軍の的です! 脱出を検討してください!」
「うるさい! 貴様らも反逆者か! 私を誰だと思っている! 私の造ったこのデス・スターは無敵なのだ、敗北などあり得ない!!」
クレニックは充血した瞳をひん剥き、怒鳴り散らす。
その時、メインホログラムが強制的に切り替わり、ペレオン提督の姿が映し出された。先ほど、オペレーターたちが送った緊急通信に対する、宙域司令官からの裁定だった。
『──オーソン・クレニック長官。味方艦隊への攻撃企図、および部下の不当射殺の現行犯により、貴官の指揮権をこれより剥奪する。司令部の警備兵に通達する。即座にクレニックを反逆罪で拘束せよ。抵抗する場合は射殺を許可する』
それだけ言うと通信は切れた。アクバーと激戦を繰り広げながら戦場を俯瞰する司令官からの当然の逮捕命令だった。
先ほどまでクレニックの狂気に苛立ちながらも、「司令官に銃を向ければ反逆者になる」と歯噛みしていた警備兵たちが、すぐさまブラスターを構える。
「クレニック。そこから離れろ。手を挙げろ!」
砲台は潰され、スーパーレーザーは撃てず、要塞は動けない。彼が人生のすべてを懸けた『最高傑作』がただの鉄屑として解体されようとしているだけでなく、彼自身の地位も名誉も、ポッと出の軍人(ペレオン)によって無惨に剥奪されてしまった。
その事実が、クレニックの精神の最後のタガを粉々に吹き飛ばした。
「……私を、逮捕するだと? ターキンでも皇帝でもない、下賤な艦隊指揮官ふぜいが……この、デス・スターの創造主たる私を!!」
クレニックは銃口を向けられながらも、歯を剥き出しにして嗤った。
「反乱軍どもめ、ペレオンめ……私の傑作をコケにしおって。私はこの要塞のために友を裏切り、人生のすべてを捧げてきたのだ! 貴様らに奪われてたまるか!」
死なば諸共。
クレニックは突きつけられた銃口を無視して操作コンソールを弾き飛ばすように叩き、残存する姿勢制御用のサブスラスターを反転させ、重力キャンセラーを含む要塞のすべての安全リミッターを強制的に解除するコマンドを入力し始めた。
「貴様、正気かぁ!? 今それをすれば、要塞がコルサントの重力に引き寄せられて──!」
「撃てぇ! 止めろ!」
兵士たちのブラスターが火を噴き、クレニックの肩や腹を容赦なく撃ち抜く。
だが、狂気に憑りつかれた彼の手が最後のエンターキーを叩き込むのが、僅かに早かった。
「ハハハハハッ! 素晴らしい! これぞ究極の力だ! 反乱軍もペレオンも、コルサントの一兆の命も、すべて我が最高傑作の礎にしてやる!!」
自身が皇帝のオカルト趣味(ダークサイドの祭壇作り)に踊らされていた事実など微塵も知らず、『軍事的究極兵器』だと信じて疑わない哀れな男。
その狂気に満ちた妄執が、最悪の引き金を引いた。
オーバーヒートしていた巨大スラスターが限界を超えて大爆発を起こし、デス・スターは『ダークサイドを産むための恐怖の祭壇』から『墜落する直径120kmの隕石』へと変わってしまったのである。
「──っ! メインエンジン停止! 重力圏からの離脱、不可能です! このままではコルサントに墜落します!!」
「姿勢制御スラスターは生きているか!? 軌道を少しでも逸らせ! コルサントには一兆の市民が居るんだぞ!」
「姿勢制御スラスター沈黙! いえ、全ての推進機関関係が死んでいます! 軌道を逸らせません」
「ならば、自爆システムを作動させろ! コルサントには一兆の市民が居るんだぞ、星ごと塵にする気か!」
「本要塞に、即時自爆機能など搭載されていません! 主反応炉の強制暴走には時間がかかりすぎます! 間に合いません!!!」
「……くそっ!! 終わりだ。現状と予測落下地点をペレオン提督へ連絡……その後、総員退艦しろ」
絶望した司令部のクルー、いや、デス・スターにいる全員が脱出ポッドへと逃れるなか、致命傷を負いながらコンソールにもたれかかるクレニックだけが、拡大されていく帝都を見下ろしながらニタリと歪んだ笑みを浮かべていた。
同じ頃。
チャム艦隊のスター・デストロイヤーの広大なメイン・ハンガーから、ルーク・スカイウォーカーは血の気を引かせてその光景を見つめていた。
底を突いたプロトン魚雷を緊急補給するため、彼は一時的に着艦していたのだ。
その彼の眼下で、空を覆うほどの巨大な影が、大気圏の分厚い層へと沈み込み始めていた。摩擦熱によって要塞の底面が赤蓮の炎に包まれ、地獄の業火を纏った直径百二十キロメートルの隕石と化して、コルサントの重力の底へ向けて落下していく。
(落ちていく!もしあの質量がそのまま地表へ激突すれば、コルサントの一兆の命が終わる!)
焦燥感と共に、眼下に広がる一兆の命の繋がり(フォース)が上げる悲痛な叫びが、ルークの心を激しく揺さぶっていた。
急いで出撃し、巨大な質量を残さぬよう内部の主反応炉から完全に吹き飛ばさなければならない。だが、設計図のデータがないまま無闇に突っ込んでも、あの巨大要塞のコアへ至る道など分かるはずがなかった。
──その時だった。
ハンガーの強圧シールドをすり抜け、一機の見慣れた戦闘機が弾丸のようなスピードで滑り込んできた。
着艦すらもどかしいとばかりに甲板すれすれでホバリングした機体から、通信回路に赤い髪のパイロット──マラ・ジェイドの凛とした声が響き渡る。
『ルーク! 待たせたわね! ハンと501大隊が命懸けで引っこ抜いてきた、要塞の完全な設計図よ! 今、艦隊のデータリンクと全機のドロイドに送信したわ!』
『ピロロロロッ! (受信完了! 目標は赤道トレンチの最深部、主反応炉へ直結する排熱ポート!)』
「ありがとう、マラ! ハンたちにも!」
R2-D2の頼もしい電子音と共に、ルークのナビコンに弱点への完璧な突入ルートが描き出される。
だが、それは同時に極めて過酷な死出の旅路を意味していた。目標ポイントである赤道トレンチは、今まさに大気圏の摩擦熱で灼熱の業火に包まれようとしているのだ。
つまりは、文字通り燃え上がりながら駆け抜け、奇跡的な確率の狙撃を成功させなければならない。
タイムリミットは、要塞が完全に大気圏を突破するまでの僅かな時間。それを逃せば主反応炉を破壊しても破片でコルサントは崩壊する。
『さあ、行くわよルーク! 一人で地獄に行く気なら許さないわ。私があなたの後方(テール)をカバーする!』
愛する男と共に死地へ飛び込むことに、微塵の躊躇いも恐れも抱いていないマラの凛とした声。
それに背中を押されるように、ルークは微かに目を細め、力強く操縦桿を握り直した。
恐れはなかった。
リビング・フォースの導きに従い、何の見返りもなく、ただ他者の命を救うために己の命を懸けて地獄へ飛び込む。
それこそが、ベン・ケノービや、実の父であるアナキン・スカイウォーカーたちが歩んできた道なのだと、今のルークには確信できたからだ。
「ああ。行こう、マラ。ジェダイとして……一兆の命を救う!」
ルークのXウイングが、マラのXウイングと共に推力を全開にする。
一兆の命を背負い、二機の戦闘機は連れ立って、大気圏の摩擦で火だるまになりつつある巨大隕石(デス・スター)へと一直線にダイブしていった。
デス・スターからして暗黒面の増幅する手段の一つな辺り、パルパティーン本当にブレねえ。
公式設定を最初に知った私は、ラスボスっぷりに感動しました。