「なんだ!? 連邦の増援か!?」
「いえ、識別信号は帝国軍! だ、第十一艦隊です!! スローン大提督の第十一艦隊です!!! 最短でもあと二日はかかるはずだった第十一艦隊が来ました!! 助かったぁぁっっ!!??」
帝国軍に大歓声が轟く。帝国艦隊を上下から挟み込んでいた連邦艦隊を、さらに大外から包囲するように、巨大なハイパースペースの出口がいくつも開いた。
エグゼクター級を旗艦とした三百隻の艦隊。その全搭載機を最新鋭のTIEディフェンダーで統一し、ペレオン艦隊さえ上回る機動をみせた、帝国最強の艦隊が姿を現した。
ダサンも、ルークも、アナキンも、オビ=ワンも、そしてフォースユーザーの頂点に立つシーヴやヨーダでさえも、その艦隊の接近に全く気付くことができなかった。
否、気付けるはずがなかった。
常識ではあり得ない速度で戦場へ現れたその艦隊の旗艦、エグゼクター級『キメラ』の内部には、フォースの感知を完全に遮断する辺境の生物──『イサラミリ』が密かに乗せられていたのだから。
帝国で唯一、ジェダイの復活と連邦がフォースを戦術に組み込んでくる可能性を見抜き、フォースという盤面外のイレギュラーを純粋な知略のみで排除してのけた存在。
大提督スローン。
ハイパースペースから抜け出ると同時に帝国軍の通信機から流れたその第一声は、彼という人物がいかなる存在であるかを端的に表していた。
『皇帝陛下に進言いたします。勝利をご所望であれば、今すぐ全軍の指揮権を私に一任してください』
帝国最高の作戦家が、この帝国絶望の淵に舞い降りたのである。
「皇太子ダサンの名において、指揮権を移譲する。存分にやれ、スローン大提督」
『御意』
映像越しのペレオンに一度目をやり、彼が即座に頷くのを見たダサンの即決により、全軍の指揮権はスローンへと委ねられた。
皇太子とは誰か? などという無駄な質問をスローンがするわけがない。彼が求めて得たのは盤面を動かす権限のみ。
その瞬間、崩壊寸前だった帝国艦隊の動きが劇的に変わった。
スローンは戦場に到着した僅か数秒で、連邦軍の消耗とその陣形が持つ「流体的で美しいがゆえの癖(スローン談)」を完全に解析していた。
無防備だった帝国艦隊の死角を、スローン率いる第十一艦隊が完璧なタイミングでカバーし、連邦軍の集中砲火を分散させる。さらに、後退ばかりだったペレオンの防衛陣形に微細な修正を指示し、圧倒的だったはずのアクバー艦隊の包囲網の一部に、予測の半歩先を突く意図的なボトルネックを引き起こさせた。
それは、まるで彫刻家が石を削るような、あるいは芸術家がキャンバスに絵筆を振るうような、息を呑むほどに美しい用兵術だった。
「この動き、スローンだな。彼が来たのか! 新手とともにスローンが来たか!」
並の指揮官ならば、突如現れた天才と援軍によりやりたい放題に蹂躙され、戦場は一方的な虐殺へと変わっていただろう。だが、連邦軍旗艦ホーム・ワンの艦橋にいたアクバー提督は違った。
「左翼の部隊を後退させろ! 突出した陣形を平押しに戻せ! 敵の意図的なボトルネックに誘い込まれるな、包囲網を解いて再展開しろ! 航空戦力はこちらが上回っている! 即ち速さはこちらが上だ! 焦るな!」
アクバーの素早く的確な指示が、次々と全軍の回線に飛ぶ。
スローンが仕掛けた芸術的な罠の数々を、アクバーは長年の実戦で培われた経験と、モン・カラマリ特有の三次元的な空間把握能力によって間一髪で見抜き、自軍を致命的な崩壊から救い出していく。
十数分間──体感時間にして永遠にも等しい濃密な戦術の応酬。銀河最高の「芸術的知将」と「歴戦の将帥」による、息を呑むような采配のぶつかり合いが虚空で繰り広げられた。
「こちらは連戦で消耗が激しい……ここまでだな」
だが、どれほどアクバーが巧みに食い下がろうと、彼我の消耗という物理的な差はいかんともしがたかった。
戦術マップを見つめるアクバーの大きな双眸が、無念に歪む。
スローンの第十一艦隊は完全に無傷であり、彼らの展開した完璧な防衛陣は、標的である超巨大戦艦エグゼクターを分厚く、そして美しく覆い隠していた。
コルサント奇襲から続く乱戦で、シールドも弾薬も将兵の体力も底を突きかけている連邦軍の現状では、あの鉄壁を突破してパルパティーンの首に届く可能性は、もはや万に一つも存在しない。
ここで意地を張れば、連邦を支える主力艦隊そのものが壊滅する。皇帝の首も取れずに。
──将の価値が決断力で決まるというなら、歴戦の将帥アクバーは将の将だった。
「全軍、撤退せよ! 本宙域から直ちにハイパースペースへ離脱する!」
アクバーは血を吐くような思いで、苦渋の決断を下した。
この絶対の好機を逃せば、再び皇帝の首に届く日がいつになるかは分からない。だが、勝てない戦いで艦隊をすり潰すわけにはいかない。
『て、提督!? お待ちください、あと少しなのです!』
『ここで退けば、散っていった同志たちの無念はどうなるんですか!?』
『撃ち続けて! 私たちの家族を奪った皇帝はすぐそこにいるのよ!!』
『三年だ! あの悪魔が再び姿を現してからの三年間で、俺たちの故郷がどれだけ焼かれたと思ってる!?』
『かつての最高議長だった頃の面影なんて微塵もなかった! 私たちの希望を嘲笑い、踏みにじったあの暴君だけは絶対に許せないっ!』
アクバーの命令に対し、通信回路には各艦各機からの反駁と悲痛な叫びが溢れ返った。十四年間の沈黙を破り、三年前に再び姿を現した皇帝は、かつての『偉大なる最高議長』の幻影にすがる者たちの希望を無惨に打ち砕き、さらなる苛烈な圧政を敷いた。
最後に残された希望すらも奪われた彼らの皇帝への怒りと恐怖は暗黒面を強め、熱狂となって理性を焼き尽くそうとしていた瞬間──
『アクバー提督の判断に従え。全軍、直ちに兵を退け』
喧騒を切り裂くように、全艦隊の通信回路に低い合成音の、フォースの暖かな力を帯びた声が響き渡った。
圧政された者たちを全員特区に迎え入れ善政で応えた、連邦の総大将たるアナキン・スカイウォーカーである。
『私はアクバー提督の指揮能力をこの命を預けるほどに信頼している。提督が退けと言うなら、ここが引き時なのだ。……行け。ここは私とルークが引き受ける。我々が殿を務める』
「総大将自らが殿など! 危険すぎます!」
『安心しろ私もルークも死なん。ふふっ、なに、まだまだ飛び足りないのだよ』
総大将の口から出た不敵な笑い声に、緊迫しきっていた通信回路の空気がフッと緩んだ。
『あなたは無茶を言う時、いつもそうやって笑うんだから。……提督、僕らもいます。どうか先に行ってください』
ルーク・スカイウォーカーの涼やかな自信に満ちた軽口が続く。さらには、彼の機体にピタリと追従する僚機からも、呆れたような、しかし戦意に満ちた声が次々と割り込んできた。
『男二人に任せておいたら、無茶苦茶して自分から死地に突っ込みかねないわ。殿の援護は私がやる。……ルーク、遅れないでよ?』
Xウイングを駆るマラ・ジェイドが、柔らかくどこか楽しげに言い放つ。
『ローグ・リーダーより各機へ。聞いたな? 彼等にだけいい格好をさせるわけにはいかないぞ』
『全くです、ウェッジ隊長。俺、まだプロトン魚雷が余っててどうしようかと思ってたんですよ』
『ウェッジ、ウェス、本気か!? ああ、俺はきっと今日死ぬんだ……いや、総大将と一緒なら案外いけるか?』
『無駄口を叩くな、ホビー。隊列を崩すなよ。連邦軍の鮮やかな引き際ってやつを、帝国軍に教えてやろうぜ』
ウェッジ・アンティリーズ、ウェス・ジャンソン、ホビー・クリヴィアン、タイコ・セルチュー。
彼らを含めたローグ中隊の面々が、死地にあってなお軽快なジョークを飛ばし合いながら、二機のスカイウォーカーの両翼を固めた。
最強のジェダイたちと、銀河最高の腕利きたちの集うその陣容。
死地に残るというのに、まるでちょっとした訓練飛行にでも出かけるかのような彼らの態度を見て──熱狂と復讐に駆られていた連邦将兵たちは、思わず吹き出して笑った。
『ったく、仕方ねぇな! 次の酒保は総大将の奢りですからね!』『やっぱ、あんたは英雄だよ、スカイウォーカー将軍! ……あ、ベイダー卿だっけか、ガハハハッ』『ルーク! マラ! ちゃんと帰ってきなさいよ!』『ウェッジ、ジャンソン! あんまりジェダイの足引っ張るなよ!』
通信回路には、悲壮感の欠片もない、心からの信頼に満ちた軽口が次々と飛び交った。
皇帝の首という妄執に囚われていた彼らの瞳に、かつてのクローン戦争で、銀河中の兵士を惹きつけた恐れ知らずの英雄とそれに続く英雄たちの背中が映る。
一瞬にして連邦軍の熱狂は冷め、軍隊としての統率を取り戻した。
「……各艦、直ちに反転! 跳躍座標を入力しろ! 殿の部隊の武運を祈る!」
一度敬礼したアクバーの号令のもと、連邦軍は一斉に撤退行動へと移る。
だが、スローンがそう容易く獲物を逃がすはずもなかった。TIEディフェンダーの精鋭群という追撃部隊が、連邦艦隊を食い破ろうと無慈悲に襲いかかってきた。
帝国軍の最高傑作、強力な偏向シールドと火力を誇る三枚翼の鷹たちが、逃げ惑う巨獣の背に喰らいつこうと殺到する。
だが、その鋭い牙が連邦艦隊に届くことはなかった。
『さあ、若い連中に負けてられんな』
総大将アナキンの黒塗りのXウイングが、圧倒的な推力で敵陣のど真ん中へ単機で突っ込んだ。
レーザーの雨を、機体をコマのように回転させながら紙一重で躱し、すれ違いざまにプロトン魚雷を正確無比に叩き込む。かつてクローン戦争で銀河を震撼させた『恐れ知らずの英雄』の神業は、ダース・ベイダーとしての洗練を経て、もはや芸術の域に達していた。
『とう──ごほん、ベイダー卿に負けてられないな。行くよ、マラ! ローグ中隊!』
『言われなくても!』
ルークとマラの二機が、アナキンの作り出した乱気流のような戦場に滑り込む。二人は互いの思考をフォースで先読みし合っているかのように、完全に同調した螺旋機動を描き、死角から迫るTIEディフェンダーを次々と火ダルマに変えていく。
『ヒューッ! 最高にイカれた大将たちだ! 野郎ども、置いてかれるなよ!』
『隊長こそ! ジェダイばかりにいい格好はさせませんよ!』
ウェッジ率いるローグ中隊が、その異常な空戦軌道にピタリと追従する。フォースを持たない彼らだが、その技量は間違いなく銀河最高峰だ。ジェダイたちが乱した敵の陣形を的確に突き、こぼれ落ちた敵機を容赦なく撃ち落とす。
たった十数機の戦闘機が織りなす、物理法則を嘲笑うかのような防衛網。
スローンが張ったトラクター・ビームの網も、予測射撃の火線も、フォースの奔流と超絶的な操縦技術の前に全く当たらない。
追撃部隊は、規格外の殿を前に、ただ徒らに機数を減らすことしかできなかった。
その時間をアクバーたちは完璧に使い切った。
「提督、全艦跳躍座標への計算完了しました!」
「よし……全艦、ハイパースペースへ跳躍せよ!」
アクバーの力強い声と共に、連邦軍の空母や戦艦や巡洋艦が、次々と星を引くような白い閃光となって虚空へ消えていく。
一隻、また一隻と、連邦の主力艦隊は完全にこの宙域からの離脱を果たした。
『全艦全機の離脱を確認した。……よし、我々もずらかるぞ。各機、跳躍準備』
アナキンの声に、ルークたちが応じる。
最後まで群がってきていたTIEディフェンダーの編隊に向け、全機が一斉にブラスターを乱射。敵が回避行動を取って怯んだその一瞬の隙を突き、黒いXウイングを先頭にした十数機の編隊は、機首を翻してハイパースペースへと跳躍した。
後に残されたのは、煌めく星々の残滓と、激戦の終わりを告げる静寂だけ。
彼らは、たった十数機で帝国最強の追撃を完璧に押さえ込み、全軍撤退成功という奇跡を成し遂げてみせたのだ。
(……ジェダイという要素を加味してなお、これほどの撤退戦は見事という他ない)
スローンはキメラの艦橋で、去り行くベイダーたちの機影と、無事に撤退していく連邦艦隊を赤い双眸で見送った。あの規格外のイレギュラーを相手に、これ以上の深追いは再編を急ぐ帝国にとっても無益である。
「殿下。敵艦隊の完全な離脱を確認しました」
そう判断したスローンは速やかに皇太子へと通信を繋いだ。その手元には、副官から提示されたばかりのデータパッドが握られている。
そこには、ダサンが発布したばかりの新たな政策──『エイリアン差別の撤廃』や、超兵器偏重を是正する『帝国軍事ドクトリンの根本的見直し』の概要が記されていた。
非人類(チス族)であり、実用性を無視した恐怖政治が齎すデカブツ(デス・スター)に異を唱え続けてきた彼にとって、それは待ち望んでいた理想の国家像に他ならない。スローンはデータパッドへ目を落とし、微かに口角を上げた。
「……先ほど発布された新たな政策、拝見いたしました。偏見や迷信を排し、帝国の真の力を引き出そうとするその合理性──お見事です」
『スローン大提督、まずは良くやってくれた』
「はっ……改めて、爾後の指示をお願いいたします。──我が皇帝陛下」
狂気とオカルトで、かつての偉大な最高議長の面影を失ったシーヴ・パルパティーンか、理知的で盤面を正しく見ることができるダサン・パルパティーンか。
ターキンやアミダと同じく、現在コルサント周辺で最強の軍事力を握る帝国最高の作戦家スローンもまた、この僅かな数秒のうちに瞬時かつ極めて論理的に次代へと忠誠を移したのである。
そして、その決断とほぼ時を同じくして──戦闘の裏で水面下に進められていた停戦交渉は、緒戦の決着を受けて合意に達し、マス・アミダ宰相とモン・モスマ議長の名において、一週間の停戦協定が正式に発表された。
銀河の星々を焦がした狂乱の戦いは、こうして両軍に痛切な傷跡を残したまま、一時的な静寂へと向かおうとしていた。
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後世の歴史家は、この戦いをこう総括する。
この日、開戦初日にして、アウター・リム連邦は、帝国が絶対の自信を持っていた「デス・スター」を物理的に粉砕し、難攻不落の首都コルサントへの奇襲に成功し、元老院を含んだその心臓たる設備群を業火に包んだ。
ホロネットを通じて大々的に宣伝されたその大戦果は、虐げられていた銀河中の反帝国勢力を大いに勇気づけ、各地の反帝国勢力が連邦へ合流する契機となった。
一見して連邦の勝利に見えるこの戦い。
だが、本質的な作戦目標において、連邦は「敗北」を喫していた。
連邦の作戦目標は、アナキン・スカイウォーカー代表がコルサント奇襲時に咆哮したように皇帝シーヴ・パルパティーンの殺害にあった。
皇帝を討ち、権力争いで自壊する帝国を各個撃破するという連邦の早期終戦戦略は、この日、完全に潰えたのである。
副次目標であった「皇帝の逃げ場(コルサント政府設備)を潰す」ことが成功したのに対し、あまりにも皮肉な結果となった。
一部の軍事評論家は「コルサント破壊に向けた戦力を、すべてパルパティーン暗殺に向ければ良かった」と批判するが、それは一万機を超えるスターファイターによって宮殿周辺の空間が埋め尽くされていた現実を無視した暴論に過ぎない。
連邦の奇襲作戦は、戦術的に見事であった。コルサント奇襲から五百年を経た今日に至るまで、あの絶望的な状況で、シーヴ・パルパティーンが生き延びられた理由はただ一つしかなかったと、歴史家たちの見解は一致している。
ダサン・パルパティーンという、類稀なる個がそこにいた。
それだけが、連邦の作戦失敗の理由であった。
──そして、その緒戦で生まれた犠牲は、あまりにも甚大であった。
帝国中央銀行や元老院の崩壊による政治的・経済的被害はもちろん、撃墜されたエグゼクター級がコルサントへ墜落したことによる無差別被害は凄惨を極めた。このコルサント奇襲作戦における双方の死者は、民間人を含めて79億7823万5531人という天文学的な数字を記録した。
コルサント以外の幾つもの戦場を合わせれば、初日の犠牲者だけで102億8212万6621人という悲劇的な数にのぼる。
コルサント以外の戦場で、両軍の末端部隊が引き起こした非道──帝国軍のエイリアン差別主義者たちによる民間人への無差別攻撃。あるいは、復讐心に駆られた連邦軍による帝国人の虐殺。
実行した者たちは後に両政府によって全員処分されたとはいえ、戦火の裏では血で血を洗う惨劇が繰り広げられていた。
それらはすべて、皇帝シーヴ・パルパティーンが『ダークサイド(暗黒面)』と呼ばれる不可思議な事象を求めるために敷いてきた十七年に及ぶ苛烈な圧政に対する鬱屈した怨嗟が、戦火を引き金として一気に爆発した結果であった。
ジオノージアン1000億人虐殺をはじめ、種族ごと殲滅された例も多数あり、いまだ正確な数が判明していないシーヴ・パルパティーン圧政下の帝国における犠牲者数は、数千億を下らず、兆を超えるという試算さえある。
ゆえに、「あれほどの圧政を敷いた側と虐げられた側が激突したにもかかわらず、戦時条約なき初日の犠牲が102億8212万6621人で済んだのは、むしろ互いの理性であった」と慄く歴史学者は枚挙にいとまがない。
102億8212万6621人。この緒戦で刻まれた数字は、この戦争の凄惨さを象徴する序章に過ぎなかった。
だが、連邦にとって最も恐るべき事態は、この甚大な被害そのものではなかった。
緒戦で甚大な損害を被った銀河帝国。しかし彼らは、ダサンという「責任を負い、合理的な判断を下せる」指導者を得たことで、狂気の支配から極めて合理的かつ強靭な組織へと生まれ変わってしまったのである。
その後、一週間の停戦協定は延長され、締結された戦時条約により、民間人への無差別攻撃や捕虜の虐殺は厳格に禁じられ、初日に起きた無常な死者の数は劇的に減少した。だが、それは決して戦争が穏やかになったことを意味しない。むしろ逆であった。
非道で不合理な恐怖政治や、無駄な超兵器開発に浪費されていた帝国の莫大なリソースが、すべて最適化されたのだ。
スローンの知略、ペレオンらの戦術、ターキンの戦略、マス・アミダの政治。それらが重傷及びコルサント戦の責任を理由として退位したシーヴ(※帝国重臣による押込み説アリ)の後を継ぎ戴冠した二代目銀河皇帝ダサンの名のもとに結集し、一つの強大な国家となったのである。
そして、その矛先は、停戦期間中に急拡大した勢力圏の統治基盤を整え終えた連邦へと向けられた。
かくて、民間への被害が減った代わりに、前線における正規軍同士の戦火は、過去のいかなる戦争よりも高度で苛烈なものとなった。
連邦と帝国。銀河を真っ二つに分けた苛烈極まる戦争──『銀河大戦』は、この日、幕を開けたのである。
これにて一部終了です。読んでいただきありがとうございます。