ナブーの湖水地方。
かつて若き日のアナキンとパドメが密かに愛を誓い合った、美しくも静謐な場所。
数十年という時を経て、銀河を巻き込んでいる恐ろしい戦火もどこかへ消え去ったかのような穏やかな陽光の下で、身内とごく親しい友人だけのささやかな結婚式の準備は進められていた。
「アウッ、アウー」
「こら、その花は食べるものじゃない。……すまない、スカイウォーカー殿。少し目を離すとすぐにこれだ」
「気にするな。元気そうで何よりだ」
控室となっている美しいテラスで、コホー、コホーという規則的な呼吸音を響かせながら、透明なマスクを着けたアナキン・スカイウォーカーは穏やかな声をかけた。
彼の前には、銀色のベスカー・アーマーに身を包んだマンダロリアン──ディン・ジャリンと、その腕に抱かれた緑色の小さな子供、グローグーの姿があった。
かつてマンダロア戦で英雄と呼ばれるほどの偉大な戦果を挙げながらも高官に成ろうとせず、今も連邦内を駆け巡る腕利きかつ悪党から仕事を請け負わない良心に溢れた傭兵兼賞金稼ぎ(※アナキン視点)。
そんな若者も、ルークからの個人的な招待状を受け取り、こうして養子と共にナブーまで駆けつけてくれたのだ。
「それにしても……トリプル結婚式とは。流石の俺も、こんなに賑やかな結婚式は初めてだ」
「……私だって初めてだよ」
どこか呆れたように肩をすくめるディンに、アナキンは深い溜息と共に同意した。
ルークとマラ。ハンとレイア。そしてちゃっかり便乗してきたキャシアンとジン。
数奇な運命に導かれた若者たちの晴れ姿を見られるのは父親としてこの上ない喜びだが、式の準備のドタバタぶりは、戦争の最前線すら上回るほどの目まぐるしさだった。
「アウ……」
ふと、グローグーがアナキンの義手をじっと見つめた。
「どうした? 手がどうかしたのか?」
良く知る知人にアナキンはそう尋ねたものの、自分から手を差し出すことはしなかった。
オーダー66。記憶障害と言われた記憶で、その時自分が何をしたのかを知っているからだ。今よりも幼いグローグーを襲ったのは、自分なのだから。
だから、まだ赤子に近いこの子に、自分から触れていいとは思えなかった。
だが。グローグーはディンの腕の中から身を乗り出すと、小さな身体をするりと移動させ、アナキンへと手を伸ばした。
「……」
アナキンは一瞬、戸惑い、恐る恐る義手を差し出す。するとグローグーは、嬉々として小さな手でその指先を掴んだ。
「……怖くないのか?」
呆然とそう尋ねるアナキンに、グローグーは不思議そうに首を傾げる。
「私の記憶が正しければ……オーダー66の時、君はジェダイ・テンプルにいたんだぞ。なのに……」
「アウ……?」
グローグーは、何を言ってるんだとより一層不思議そうに首を傾げた。アナキンの指を握ったまま、じっと彼を見つめる瞳に、恐怖はなかった。ただ再会の喜びがあった。
それも当然だろう。
グローグーが、オーダー66の日に感じたものを忘れているわけではない。
クローン兵たちの殺意と逃げ惑うジェダイたちの恐怖──そして、その中に現れた、あまりにも強力なダークサイドの使い手。
顔も姿も見ていないダークサイドの使い手をグローグーは今も恐れている。そんな相手が今ここに居たら養父ディンと共に逃げただろう。
それほどまでに、フォースを通して感じた、恐ろしいほど濃密な闇は恐ろしかった。
それだけが、彼の記憶に残っていた。
──だからこそ。
「きゃぅーッ」
今目の前にいる懐かしい穏やかで優しいフォースの持ち主相手には、再会の喜びしかなかった。
自分も含めた小さい子達に何時も優しかったヒーロー、マスター・スカイウォーカーとの再会をグローグーは純粋かつ自然と喜んだ。
「グローグー」
見知った幼子の名を呼ぶアナキンに、グローグーは義手を握る小さな手に少しだけ力を込める。
その瞬間、アナキンの中に思いが伝わってきた。
オーダー66以降の覚えている限りの寂しさと、養父に出会えた幸福と、再会を喜ぶ感情。
それだけだった。
それ以外になかった。
「…………」
アナキンは息を呑んだ。そして、荒れ狂う感情を抑えるためにしばらく何も言えなかった。
やがて、その口元が僅かに緩む。
「……久しぶりだな、グローグー」
「くー」
相変わらず優しいマスター・スカイウォーカーに頭を撫でられ、グローグーは満足そうに鳴いた。
「……そうか」
全てを理解したアナキンは、グローグーを見つめた。
フォースにより伝わったように、オーダー66の記憶を、グローグーは覚えている。
忘れてなどいない。
なのに、自分を恐れていない。
いや。
恐れる理由などないのだ──
「そうなんだな」
──自分に襲われてなどいないのだから。
「私は……」
未だ感情を抑えきれないアナキンの声が、僅かに震えた。
「私は、本当に記憶に障害を負っているのだな。なのに、オビ=ワンとR2を疑おう、と。兄と親友を疑うなど、という愚かしい、なんて愚かな」
「くぅ?」
あの時も今も赤子のグローグーに再会し、遂に記憶障害を心の底から認めた。
反発していた医師の治療に前向きになると、自らの愚かさを噛み締めながら。
「……ふふ」
アナキンは、思わず小さく笑った。
今まで、どれだけの人間にそう言われても信じ切ることができなかった。
R2が記録を示しても。オビ=ワンが証言しても。ヨーダが語っても。家族がどれほど自分を信じてくれても。フォースの中でパドメが訴えても。
今まで、どこかで「皆が自分を救うために嘘をついているのではないか」と疑っていた。
――そう今までは
オーダー66の頃から今も赤子なグローグーと再会してアナキンは己こそが間違っていたのだと分かった。
赤子のグローグーにそんな嘘は付けないからだ。
ただ、マスター・スカイウォーカーとの再会を喜んでいる──幼いグローグーは知らないし記憶障害である自分の記憶にもないが、R2が残してくれた記録には残っていて、オビ=ワンが言ったように──パドメの護衛としてムスタファーに向かったアナキン・スカイウォーカーとの再会を。
万感の思いを込めて、アナキンは、義手を握る小さな手を見つめた。
「……そうだったんだな」
コホー、コホーという、生命維持装置の音が静かな湖畔に響く。
長い年月、胸の奥を締め付け続けていた何かがほんの少しだけ軽くなった。
「ありがとう、グローグー」
「うー」
グローグーは、もう一度だけ小さく鳴き。
二人の再会を静かに見つめていたディンが同情に呟く。
「……記憶障害か、大変なんだな」
「そうだな。だが、ようやく自分でも受け入れられた。君の息子のお陰だ」
遂に記憶障害を受け入れたアナキンは穏やかに頷いた。
それだけで、不思議なほど胸が軽くなった。大切な人たちをもう誰も疑う必要がないのだから。
ディンたちが他の参列者──ヨーダやアソーカやキャシアンたち──に挨拶をするために席を外した直後。
テラスの入り口で、長身で細長い耳を持つ見慣れた人物が、もじもじと身を縮こまらせているのにアナキンは気づいた。
「ジャー・ジャー? どうしたんだ、そんな所で立っていないで、こっちへ来るといい」
「ア、アニー……」
かつてナブーの危機を共に救い、旧共和国時代には元老院議員としても活動していたグンガン族の友人、ジャー・ジャー・ビンクス。
年老いて少し肌のしわが濃くなった彼は、おずおずとアナキンの前に進み出た。
「ミーサ、こんなに素晴らしい席にアナキンに呼んでもらえて、本当に、本当に嬉しいんでっす。ルークもレイアも、立派になって……パドメが見たら、きっと大喜びしたはずでっす」
「ああ。君が来てくれて、私や子供たちもとても嬉しいよ。きっと、パドメも喜んでいる」
ジャー・ジャーは、くしゃくしゃに顔を歪めて泣きそうに笑った。
だが、その笑みはすぐに消え、彼は痛みに耐えるように深く頭を垂れた。
「でも……ミーサ、本当はここに居る資格なんてないんでっす」
「どういうことだ?」
「ミーサが……ミーサが、あの時、パルパティーンに『非常時特権』を与える動議を出してしまったから……っっ!」
その言葉に、アナキンの生命維持装置の音が、一瞬だけ止まった。
ジャー・ジャーの全身が、後悔と罪悪感で小刻みに震えている。
「あの特権のせいで、パルパティーンは皇帝になってしまった。そのせいでジェダイは滅びて、共和国は滅んで、みんな圧政にくるしんだ! …………なにより、パドメは死んでしまって……アニー、アニーもこんな、こんな大怪我をしてしまったっ!! ミーサのせいでこんなことにっ!!!」
透明なマスク越しに。様々な手段を駆使して隠しても分かる重傷を負ったアナキンから目を逸らして、ポロポロと大粒の涙をこぼしながらジャー・ジャーは床に崩れ落ちて謝罪した。
「ミーサのせいでっす……ミーサがバカだったから……大事な友達を、銀河のみんなを、みんな不幸にしてしまった! ごめんなさい、アニー……本当に、ごめんなさいっ!!」
何十年もの間。彼はずっと、一人でこの重すぎる罪悪感を抱えて生きてきたのだろう。
自分が愛する故郷を含めた銀河と大切な友人たちを、自らの愚かな提案によって地獄へ突き落としてしまったのだという、拭いようのない自責の念。
それを知ったアナキンは、ゆっくりと膝を付いた。
黒い装甲に包まれた巨体が動く音に、ジャー・ジャーがビクッと肩を震わせる。怒られる、あるいは斬り捨てられる。そう覚悟したように目を瞑った彼に──
アナキンは、義手の分厚い手で、そっとその肩を抱いた。
「ア、アニー……?」
「謝る必要はないんだ、ジャー・ジャー」
人工音声のフィルターを通してもはっきりと分かるほど、アナキンの声は優しく、そして確かな暖かさを持っていた。
「君は、平和を願ってあの提案をした。誰もが混乱し、共和国が引き裂かれようとしていたあの時、君は善意と純粋な心で銀河を救おうとしたんだ。……それを悪用したパルパティーンが悪いのであって、決して君が悪いわけではない」
「でも……ッ、ミーサが、あんなことを言わなければ……!」
「パルパティーンは、ジェダイ評議会すら完全に欺いていた男だ。ヨーダも、ウィンドゥも、オビ=ワンも、そして私自身も、彼の邪悪な本性に気づけなかった。みんなが騙されていたんだよジャー・ジャー」
アナキンは静かに首を振った。
彼自身の、かつての恐ろしい過ち。パルパティーンの甘言に乗り、ジェダイを裏切り、結果的にパドメを失う決定打を放ってしまった自分自身の弱さ……それは記憶障害だとしても、十数年もの間を自分がシディアスの命令により赤いライトセーバーを振るい圧政に関与した事は変わらない。
誰よりも自分を責め続けてきたアナキンだからこそ、ジャー・ジャーの抱える痛みが痛いほどに理解できた。
「君は騙されただけだ。私たち全員と同じように。……だから、自分を責めるのはもうやめてくれ、ジャー・ジャー。君はずっと、私とパドメの、私たちの夫婦の大切な友人だ」
「アニー……ぁ、あぁああっ!」
許しの言葉を受けたジャー・ジャーは、ついに堪えきれずに子供のように声を上げて泣き崩れた。
アナキンは何も言わず、コホー、コホーという静かな呼吸音を響かせながら、ただ不器用な友人の肩を優しく叩き続けた。
ナブーの穏やかな風が、二人の間を吹き抜けていく。
かつての悲劇の傷跡を癒やすように。そして、これから始まる子供たちの新しい未来を祝福するように。
「お義父さーん! ちょっと、こっちの機材の配線見てくれないか!? ランドの奴が持ち込んだスモークマシンが爆発しそうなんだ!」
「……まったく、あの若者たちは式場でも騒ぎを起こす気か」
遠くから響いてきたハン・ソロの情けない悲鳴に、しんみりとした空気は一瞬で吹き飛んだ。
アナキンは肩をすくめると、涙を拭うジャー・ジャーに手を差し伸べた。
「さあ、行こう。どうやら、新郎からの救難信号らしい」
「はいっ。うん、アニー!」
ジャー・ジャーは力強く頷き、その手を取って立ち上がった。
しばらくして、ジャー・ジャーが涙を拭った頃。
アナキンは、ふと遠くの湖へ視線を向けた。
「……ジャー・ジャー」
「なんでっすか?」
「これは、秘密の話だ」
「秘密?」
「ああ。誰にも言わないでくれ」
ジャー・ジャーが神妙な顔で頷く。
アナキンは、しばらく言葉を選ぶように沈黙してから、ぽつりと呟いた。
「……もし、クワイ=ガンが生きていたら」
「……」
「パルパティーンを止められたんじゃないかと、私は今でも思うことがある」
ジャー・ジャーは驚いたように目を見開いた。
「クワイ=ガン・ジン」
「ああ」
アナキンは静かに湖を見つめる。
「彼なら、パルパティーンの本性に気づいたかもしれない。いや……もしかしたら、私自身が彼の弟子になっていれば、あの男に騙されることもなかったのかもしれない」
「アニー」
「もちろん、ただの『もしも』だ。クワイ=ガンが生きていたからといって、本当に歴史が変わったかなんて誰にも分からない」
アナキンは苦笑した。
「でも……私は時々、そう考えるんだ」
ジャー・ジャーは少しだけ考えてから、静かに頷いた。
「……きっとでっす」
「え?」
「きっと、クワイ=ガンならパルパティーンを止めてくれたでっす」
その言葉に、アナキンは目を丸くした。
「……どうして、そう思う?」
「だって、クワイ=ガンは……アニーのお父さんみたいな人だったでっす」
ジャー・ジャーは、少し照れくさそうに笑った。
「だから、きっとアニーを一人にはしなかったでっす。パルパティーンも、アニーに近づいてこなかったでっす」
「…………」
「だから、きっと大丈夫だったでっす」
アナキンは答えなかった。
ただ、透明なマスクの奥で、ゆっくりと目を閉じた。
「……そうだな」
そして、小さく笑った。
「きっと、そうだったんだろうな」
◇◇◇とある世界線にて◇◇◇
「つまり──こうだな。君たちはフォースの導きに従い、任務中に見かけたジャビーム星人の奴隷を解放した、と」
「その通りです」
「ふむ……で、その為に共和国に登録されていたツェルカ社の子会社である合法的企業──の実態は違法企業だったわけだが。
そのCEOにライトセーバーを突きつけて拘束しただけでなく、当該企業に登録されていた万を超える従業員──ああ、君らの言う奴隷か──の体内に埋め込まれた爆弾の起爆データをメインコンピューターをハッキングして破壊し、数百万人もの奴隷たちを解放。
その挙句に当該企業がまだ登録していなかった──不法所持だったと今はなった──超大型輸送船などをハイジャックし、奴隷たちと逃走。
その後、当該企業に雇われた傭兵部隊、謎の武装組織と戦い、さらに逃走。
そして、奴隷の為に先立つものを得んと、偽名を使いパダワンが非合法賭けレースに参加し勝利。マスター・クワイ=ガンはパダワン・スカイウォーカーの勝利に、ジェダイ個人に携行が許される限界ギリギリの任務活動費──つまりは公費を、全額賭けて大勝。
賭金をせしめようとした時に、支払いを拒み君らを殺そうとしたレース運営元のマフィアと戦闘になり、マフィアを居合わせたマンダロリアンと共に殲滅。
その資金を含めた財産を略奪して、君らが言うところの奴隷による運輸企業設立の運転資金とした。公費も全額注ぎ込んだ上で、だ。
そして、その企業の後見人として、マスター・クワイ=ガン・ジンの名を登録。
挙げ句、マフィア──いや、海賊と断定された連中から略取した武装船舶をマンダロリアン戦闘派に譲り、護衛を主とする半公営の企業を設立させて護衛契約を締結。こちらも後見人としてクワイ=ガン・ジンの名を登録した。
その最初の仕事として、共同して、今まで無かったアウター・リムからコルサントへの危険航路を切り開き、大量の物資を売り捌いて莫大な利益を上げながら、発注元や依頼主、及び各省庁並びに航路関係星系からの感謝を得た──と。
その過程で幾つもの戦闘をしながら、な。
我々ジェダイ評議会に、成功パーティへの招待状が来たよ。何人もの元老院議員や幾つもの民間企業や各省庁からね。君らが捕らえたCEOの証言から長年の犯罪ネットワークが摘発されたこともあって、ここまで感謝されたのは初めてだよ」
そこまで言うと、肺活量の限界に挑んでいたメイス・ウィンドゥは初めて一息入れた。
「任務終了後に民間企業へ介入したことを始めとして、企業経営者の武力拘束、企業情報への不正侵入、従業員、いや、君らの言う奴隷の無断連行、企業所有船舶の接収と無断運用、公費による賭博、非合法組織からの資産の接収、接収物の第三者への譲渡、ジェダイによる民間企業の後見、さらには民間企業との共同事業、非合法組織に占拠された惑星解放などなど──百を超える共和国法を君らは無視して事後になってから誤魔化したというのに……ああ、君らの言うところの拡大解釈をしたというのに。
それらは合法となった。少なくとも、共和国はそう扱うことにしたらしい。法務省を含め、誰一人として君らを告発しないからね。むしろ感謝状を送ってくる──いつも届く『世俗を知って欲しい』『政治を考えて欲しい』『ジェダイはもう少し柔軟になって欲しい』との抗議文ではなく、感謝状を、だ。最高議長府を通じて動いてすらいないというのにね。
…………実に興味深い。
この歳でこんなに新鮮な驚きを得られるとは思わなかったよ──マスター・クワイ=ガン、ナイト・ケノービ、パダワン・スカイウォーカー。人生は驚きで満ちている」
メイス・ウィンドゥの声は穏やかだった。優しいと言っていいほどに。
オビ=ワンとアナキンという戦闘員Aたちだけでなく、その場にいるジェダイ評議会の面々が、ヨーダとあと一人を除いて、メイス・ウィンドゥから目をそらすほどに穏やかで優しかった。
「その上──その間、我々ジェダイ評議会には『当該企業と複数の元老院議員による闇取引発覚、至急調査を』とだけ報告していた。間違いないな」
「ええ、その通りです。極めて重要な問題でしたから、確定した情報でなくとも真っ先に報告いたしました。我々が突き出したあのCEOと、複数の議員との間にあった闇取引の件はどうなりましたか? 極めて政治的な問題でしたので、解決には評議会の力が必要だったのです」
「既に逮捕されているよ。七人もの元老院議員が逮捕されたことで政界は荒れている。議長近辺は潔白だったが、与党の議員も含まれていた上にまだまだ増えそうだからね。──そちらの方面でも協力を要請されているよ。『ジェダイ・オーダーの柔軟性あるところをもっと見せて欲しい』と。最近の公文書は変わったな」
「ふむ、それは重畳。自浄能力がない民主国家など悪夢ですからな」
「…………………………それはその通りだ。それはそうと、企業の後見人として君の名前を登録した件だが」
「はい」
「ジェダイ・マスターが民間企業の後見人になることについて、何か思うところはなかったのか? ジェダイ・オーダーの中立を侵す行為ではないかとは思わなかったのか?」
「必要でしたので」
「必要なら何をしてもいいと思っているのか?」
「フォースの導きに従った結果です」
「その言葉を便利な免罪符にするな、マスター・クワイ=ガン。今、驚くほどに──そうジェダイ総員の数を超えるほどの後見人依頼が、企業や自治体や組織から来ているのだぞ……象牙の塔から出てくれと遠回しに言いながらな」
「素晴らしいことではないでしょうか。我々はもっと今のフォースの導きに従い働くべきです。その為には、今を生きる人々と更なる交流は必須でしょう」
そして、目を逸らさないもう一人ことクワイ=ガン・ジンもまた穏やかだった──(この機会主義者が! この機にジェダイを自分が主張する通りに動かざるを得ないようにしやがって!! 共和国の為になるから賛同せざるを得ないじゃねぇか!!!)そんな目のメイス・ウィンドゥから一切目を逸らさずに。
十三歳のアナキンは、(こうすれば評議会も活用してみんなを助けられるんだ! 流石はマスター!)と感動と尊敬の眼差しでマスターを見上げ着々と学んでいた。
その横で独り立ちして数年経つオビ=ワンは、(大事になりすぎたからって、なし崩し的に)と呆れの目を自らのマスターと弟弟子に向けていた──自分が元カノである公爵の為にも、彼女との個人的な伝手も行使して、件の戦闘派マンダロリアンたちを半官軍事会社にする事を含めた政治交渉をしたことなど、完全に棚に上げて。
かのように──クワイ=ガン・ジンは「マスター奴隷です! 助けないと!」と即断したアナキンを育て上げながら、彼らしくある事で、『ジェダイと共和国政府との実務的な繋がりを断ち、その窓口を最高議長府へ一本化して世間から孤立させ、戦争で軍人化させ、最後に共和国そのものと一緒に信用を失わせる』シディアスの戦略を妨害していた。
細かい理由は活動報告に書きましたが、次話、エピローグにて完結予定です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。最後までよろしくお願いします。