ちょっとルークが家出した話   作:サリエリキキ

8 / 8
 感想・ここすき・評価づけ、皆さんありがとうございます。

 ルーカス監督の発言や公式設定などを調べた結果、本作ではフォースやジェダイ、シスを以下のように解釈しています。

【フォースって何?】
 フォースとは、生命が創り出す宇宙の自然なエネルギーの繋がりであり、生命と調和を支えるものである。本来は攻撃や支配のための力ではない。ダークサイドとは、恐怖や怒り、憎しみ、執着などの感情によってフォースに生じる歪みや澱みであり、その自然なバランスを崩すものである。一方で、それらの感情は短期間で爆発的な力を引き出せるため、ダークサイドは戦いや破壊、支配において非常に強力な力となる。ライトサイドとは、フォース本来の自然な状態を指す便宜上の呼び方であり、ダークサイドと対立する別個の力ではない。

【ジェダイってなに?】
 リビング・フォース(いま、この瞬間に存在する生命の意志)に従って人々を守る守護者。ヒーロー。
 本来の教えでは、「愛(思いやり・慈悲・情愛)」は不可欠であり、禁じられているのは「執着(所有欲や失うことへの恐れ)」である。ダークサイドに勝てるのは愛だけだからこそ、本来は恋愛や結婚は禁止されておらず、それが執着に変わることが問題だった。
 しかし、共和国末期のジェダイ・オーダーは教条主義と硬直化が進み、リビング・フォースの導きよりも組織の規律を優先するようになっていた。「執着」を恐れるあまり「愛」と混同し、恋愛や家族を持つことを原則として禁じる。つまり実質的に「愛」を禁じるという、本来の教えからかけ離れた官僚教条主義的組織へと変質してしまった。ヒーローではなくなった。当然、市民から嫌われ憎まれた。
 その中で、クワイ=ガン・ジンだけは違った。リビング・フォースの意思を何よりも重んじたがゆえに、本来のジェダイの在り方を保持していた。
 リビング・フォースに従い、アナキンやジャージャーのような善良で困っている弱い立場の人々を規律を無視して見返りなく助け、他のジェダイから「変わり者」と呼ばれた彼こそが、本来の理念を体現した真のジェダイだった。ヒーローだった。
 なのに、エピソード1で散った(鬼! 悪魔! ルーカス御大!)

【シスってなに?】
 恐怖・怒り・憎しみ・執着・支配欲といった負の感情で生じるダークサイドを利用してライトサイドを含めた(※と彼らは考えている)フォースそのものを支配・私物化しようとする思想を持つ存在。
 攻撃性と欲求を追求し、権力・不死・復讐などの私利私欲を最優先とする。
 その結果としてダークサイドを増幅させ、フォースの均衡を乱す強大な過激派。


(以下、私の叫び)

 クワイ=ガン・ジン重要人物すぎぃ! 
 そらクワイ=ガン・ジンが居なくなってから、シスに好き放題されるわけだよ! ドゥーク堕ちるよ! 
 その生き様をある程度受け継いだアナキンとオビ=ワンが、官僚教条な頭の固いジェダイとは区別されて市民から「ヒーロー」として親しまれるわけだよ……
 ナンバー2のメイス・ウィンドゥですら、「俺の愛する共和国のトップがシスだと!? 殺してやるぞシディアス!」「あの、逮捕では?」「意味がない、殺す!」ってアナキンがドン引きするくらい共和国への愛に突き動かれる人物だった。愛を前提に人々を守る組織だったのに、愛と執着を混同し、愛そのものまで隠し忌避すようになってしまったら、そりゃ滅びるよ。ジェダイ。


ルークとベン

 数時間後。

 難民船団とファルコン号、そして護衛の戦闘機部隊が降り立ったのは、アウター・リムの辺境に位置する、水豊かなベイダー卿の領地惑星だった。

 もはやそれどころではなくなったターキン艦隊の追撃を完全に振り切った船団では、無事に街に受け入れられたこともあり、安堵と活気が入り混じった空気が流れていた。

 

 その駐機場の片隅で、不思議なほど穏やかな空気を放つ二人の姿があった。

 

「──あの時のスピンは、計器や思考に頼ったものではない。フォースの流れを感じ取り、ただ身を委ねた結果なのだろう?」

「ええ、その通りです。ただ……こう、頭の中に『とりあえず回れ!』って声が聞こえました。だから、教わった通りに従って操縦桿を引いたんです」

「その通りだ。良く学んでいるな、ルーク。……君の直感と凄まじいフォースは、君の父親にそっくりだ」

「父さんに? ベン、僕の父さんを知ってるの!?」

 

 ルークは身を乗り出した。

 

「マスター(アソーカ)は、『昔の上司ですっごく無茶苦茶なパイロットだった』『とにかく砂が嫌いだった』としか教えてくれなくて……」

 

 老人は優しく微笑み、周囲の喧騒から彼を隔絶するように、少しだけ声を潜めた。

 

「彼はただのパイロットではない。伝説的なパイロットだったのだ……ルーク、私の本当の名はオビ=ワン・ケノービ。かつて、旧共和国と銀河の平和を守る『ジェダイの騎士』だった男だ」

「ジェダイ……!? じゃあ、ベンは、父さんは!」

「ああ。そして君の父親アナキンもまた、最高のジェダイの騎士であり……私の最も親しい、兄弟のような友だったのだよ」

 

 タトゥイーンの砂漠から家出してきた少年ルークは、近所の隠居老人(と今まで思っていた男)の衝撃の告白に、目を丸くして輝かせた。

 まさかこんな宇宙の果てで、自分のルーツと、伝説のお伽話だと思っていたジェダイ・マスターに出会うとは。

 

「君はジェダイの……いや、かつての我々が忘れてしまった、フォースのバランスそのものだ」

 

 オビ=ワンは、ルークの真っ直ぐで濁りのない瞳を見つめながら、内心で深い感動に打ち震えていた。

 

(ルークは、ジェダイを憎んでいない!)

 

 それが、オビ=ワンにとって何よりの衝撃であり、救いであった。

 アソーカの下で──つまりはシスの暗黒卿であるダース・ベイダーの庇護下で育ちながら、ルークの心には『ジェダイは悪である』という洗脳が一切植え付けられていないのだ。シスに傾倒してもいない。

 彼が教わったのは、ただ純粋にフォースの流れを感じ取ることだけだった。

 だから今回のように、「困っている人を助けたい」という己の良心に従って動くことが出来たのだ。

 

(……ああ、アナキン。お前は……)

 

 オビ=ワンは、目頭が熱くなるのを必死に堪えた。

 かつてのジェダイ・オーダーは、規則と伝統で若者たちを縛り付けた。愛や執着を禁じ、政治と大義のために個人の感情を殺すことを強要し、結果として一人の類まれなる優しさを持った青年を追い詰め、暗黒面へ突き落としてしまった。

 それが、ジェダイの最大の過ちであったと、タトゥイーンの砂漠で幾度も悔い改めてきた。

 だが、どうだ。

 シスの仮面を被ったアナキンは、自らの息子に『シス』としての邪悪な教義も、『ジェダイ』としての窮屈な教条も、何一つ押し付けなかったのだ。

 過去のしがらみから完全に切り離し、ただ、伸び伸びとフォースの恩恵を受け入れ、他者を思いやる真っ直ぐな少年に育てている。

 クワイ=ガン・ジンの教え通りに。

 

(お前は、我々旧ジェダイの過ちを乗り越えたのだな……)

 

 なんという遠大で、深い親の愛だろうか。

 オビ=ワンの胸は張り裂けんばかりだった。そして──

 

(クワイ=ガン……私は、愚かだった)

 

 マスターの教えこそが正しかったのに、もっと評議会に合わせよう、賢く立ち回ろうなどと言っていた自分は、なんと狭い世界に生きていたことか。

 リビング・フォースに従い、アナキンや、あのナブーで出会った不器用なグンガン人のように、善良で困っている弱い立場の人々を、規律など無視して見返りなく助けた男。

 他のジェダイたちから「変わり者」と眉をひそめられた彼こそが本来のジェダイの理念を誰よりも純粋に体現していたのだ。

 

(アナキン……お前が最初に会ったジェダイこそが、唯一の本物のジェダイだったのだな……)

 

 幼いアナキンが心から慕い、憧れた彼が命を落とした瞬間。

 アナキンの転落は既に決まっていたのかもしれない。父親のような無償の愛と導きを与えてくれる存在を失い、愛を禁じる冷たい規則の檻に、一人の怯える少年を閉じ込めたあの時点で。

 今、クワイ=ガンの教えそのままの──いや、それ以上に何のしがらみもなく、自由に、真っ直ぐに育った若者を見るオビ=ワンの胸は、痛いほどに震えていた。

 

「ベン? どうしたの、泣いてるのかい?」

 

 ルークが不思議そうに首を傾げる。

 

「……いや。昔の友の、あまりにも深い愛情と……師の教えに……少し当てられてしまっただけだよ」

 

 オビ=ワンは優しく微笑み、ルークの肩にそっと手を置いた。

 

「ルーク。君のマスターも、君の父親も……君がこうして、自分の意志で誰かを助けるために空を飛んだことを、心から誇りに思っているはずだ。君は決して間違っていない」

「本当!? ベン! ベイダー卿もそう思ってくれる!?」

「ああ、勿論だ」

 

 「ベイダー卿みたいな人が父なら良いのに」と物語る眼差しで、シスの暗黒卿を父同然に慕い瞳を輝かせる少年。

 かつてのジェダイ・マスターは、そんな彼にただ底抜けに優しく笑った。

 

 

 

 

 そのあまりにも平和すぎる語らいを、少し離れたファルコン号のタラップから、ハン・ソロが何とも言えない顔で眺めていた。

 

「……おいおい嘘だろ。あの胡散臭い爺さん、ただのジェダイじゃなくマスターだと? じゃあなんだ、あの無茶苦茶な飛び方をする坊主はジェダイの卵ってことか?」

『ウゴォ……(世の中には、深く関わっちゃいけないこともあるさ)』

 

 チューバッカが同情するようにハンの肩を叩く。

 

「しかし、なんだあのフワフワした空間は。あいつら、さっきまで帝国艦隊のど真ん中で死にかけてたって自覚あんのかよ。

 いや、これからどうすんだ。ベイダーの領地のド真ん中にターキンが追いかけた難民を受け入れるとか、争いの火種しかねぇぞ」

 

 ハンが深い深いため息をつき、ふと視線を横に向けると、そこでもまた奇妙な光景が広がっていた。

 

『ピィーッ! ガガピッ! (ちょっとそこの整備士! そのインバーターの繋ぎ方は甘いよ! 貸しな、僕が完璧にバイパスしてあげるから!)』

「お、おい! なんだこのアストロメク・ドロイド!? 勝手にプロトタイプのシステムに入り込んで……うわっ、めちゃくちゃ作業早いな!?」

 

 ファルコン号から降りたR2-D2が、まるで自分の専用機を見つけたかのように、ごく自然な動作でテストカラーのXウイングの整備スロットに収まり、インコム社の技術者たちをアームでどかしながら嬉々として修理とカスタマイズを始めていたのだ。

 

「ちょっ、お前何やって……待て、そのパワー配分、ジェネレーターが焼き切れるぞ!?」

『ピロロロロ! (平気平気! ここのリミッターを外して補助シールドの出力をエンジンに回せば、反応速度がコンマ3秒縮まるんだよ! アナキンの時はもっと無茶やってたんだから!)』

「ああっ、私たちの最新鋭機に勝手に改造を……って、すごいわコレ!? 理論上は完全に安定してる! ねぇ、このドロイドの通りにバイパス繋いでみて!」

 

 かつてアナキンの戦闘機を弄り回していた頃の、水を得た魚のような手付き。

 無茶苦茶な魔改造でありながら、機体のポテンシャルを極限まで引き出すR2の神業に、インコム社のメカオタク──もとい優秀な技術者たちの顔つきが、戸惑いから驚愕へ、そして熱狂へと変わっていく。

 

「信じられん、こんな常識外れのチューニング、どんなパイロットなら乗りこなせるってんだ……」

「いるじゃない! さっき、帝国艦隊の間を信じられない機動で飛び回ってた非常識な坊やが!」

 

 技術者の一人がルークの方を指さすと、周囲のスタッフたちも一斉に納得の声を上げた。

 

「違いない! あの無茶苦茶な飛び方に対応できるアストロメクなんて、この凄腕の不良ドロイドくらいしかいないぞ!」

「よし! ルーク坊やの相棒は、この子で決まりね! すぐに、このチューニングに合わせて他のシステムも再調整するわよ!」

『ピィィーッ! ガピッ! (任せなさい! ついでにスラスターの応答速度も弄っちゃおうぜ!)』

 

 すっかり意気投合し、キャッキャと騒ぎながらプロトタイプXウイングの周りで盛り上がる技術者たちとR2-D2。

 

「…………」

 

 ジェダイ。頭オカシイメカ狂い。そして、最新鋭機を勝手に魔改造するアストロメク・ドロイド。

 

 あまりにも常識外れな連中の集まりに、ハンはそっと目を逸らし、すべてを見なかった事にしたかった。

 ファルコン号のタラップで「俺は何も見ていない」とばかりに天を仰ぎたかった。

 だが、嫌でも耳と目に入ってくる現実があった。

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