忙しくて間が空いてしまいました。
申し訳ないです。
駄文ですが、4話をどうぞ。
「あら、クシナじゃない」
突然、母が少女らしい声を上げた。
今クシナって言った?
その言葉に反応し、私は母が見ている方に顔を向けた。
赤い綺麗な長い髪が揺れる。
「あ、ミコトっ」
クシナだ……。
母の姿を見て、赤い髪の妊婦は嬉しそうな声を上げた。
クシナは重い身体を庇うように小さな歩幅で近寄ってくると母の腕に抱かれているサスケを覗き込んだ。
「アレ?末っ子も女の子だったっけ?」
「ううん……男の子、女の子はイナホだけよ」
母に軽く背中を押され顔を覗かせるとクシナは分かりやすく目を輝かせ、お腹を庇うようにしながら私に視線を合わせるように屈みこんだ。
「は、初めまして、イナホですっ」
勢いよく挨拶をする。その様子にクシナは「可愛いぃ」と微笑んだ。
初手は好印象かな?
あとは仮面の男について話すタイミングだ、遅すぎても早すぎてもダメだ。
「イナホちゃんって何歳だっけ?」
「先月で四歳になりましたっ」
満面の笑みで答える。
印象値は落としちゃダメ、ゼッタイ。
クシナの様子を盗み見ると何故か驚いた顔をしていた。
え?な、何かしたかな……失敗した?
「ほう、随分と賢い子じゃ」
「……やっぱりそうですよね」
母たちはクシナと一緒にいた三代目の妻ビワコさんを加えて三人で子供の発達段階について盛り上がり始めてしまった。
その話に耳を傾けて自分の失敗を悟る。
しまったぁ、四歳ですって言うべきだったのに。
どこの世界に「先月で四歳になりました」なんて自己紹介する四歳児がいるのか、丁寧にやって好印象を狙ったのが仇になってしまった。
兄さま基準で幼児を演じちゃ賢すぎてしまうんだ。
やはり流石だ、兄さま。そして私はアホだ、しかし今更幼児(仮)をやっても意味がない。賢い子で行くしかない。
「あら、上の子もそうなのね」
「流石はうちはじゃえ」
クシナが感心したように目を見開くと思い出したように母に抱かれているサスケに目をやる。
「そういえば、この子の名前は何にしたの?」
母はくすっと笑うとサスケに優しい顔を向けた。
「サスケよ」
「三代目の父上と同じかえ」
「強い立派な忍になるようにと」
ビワコは義父が褒められたようで嬉しかったのだろう、微笑んでサスケを覗き込む。
「名前は先に決めといた方がいいわよ」
「もう決めてあるの」
クシナは顔を綻ばせて優しく自分の腹を撫でた。
「名前はナルト、サスケくんとは同期になるから仲良くなるといいわね、イナホちゃんもナルトと仲良くしてね」
クシナが撫でている膨らんだ腹とクシナの顔を交互に見る。意を決してクシナに聞いてみる。
「ねぇクシナさん、お腹撫でてみていい?」
ここから自然に仮面の男の話に持って行くんだ……自然に、自然にだぞ。
自然体を心掛けるが鼓動が忙しなく、心臓が口から出そうだ。
「ええ、いいわよ」
「わぁ、ありがとう」
クシナは少し怪訝そうな顔をしたがすぐに笑顔に戻った。
頑張れ、私。負けるな、私。
「今、蹴った」
「元気いっぱいね、ナルトは」
ここにナルトが……主人公がいるんだ。
伝わってきた振動に感慨深さを感じた。
私、頑張るよ。あなたみたいに絶対に諦めないから。
「クシナさん、ナルトは今日生まれるんだね」
「え」
唐突に放たれた断言に、クシナとビワコが驚く。
「ナルトが生まれたら仮面の男が現れます」
クシナの目を決して逸らさないように、力強く見つめる。
私の発言に二人が息を飲む音が聞こえた。クシナは単純に驚いている様子だが、ビワコは不審なモノを見るかのように鋭い視線を向けてきた。それでも、ここで臆するわけにはいかない。
「だから」
大事なのは仮面の男の正体じゃない。この人が、この人達が自力で正体に気づかないと意味がない。
正直それで止まってくれるとは思ってはいない、そこからこの人達がどう判断するかだ。
「気づいてあげてください。その人がいったい誰なのかを、あなたも、四代目様もよく知っているの人なのだから」
結局、他力本願か。
そんな自分の不甲斐なさを感じて落ち込む。
私の言葉と、その直後に落ち込み始める私の様子に困惑した表情を見せるクシナと完全に不審人物を見る目のビワコが、二人でひそひそと話し始める。
斜め後ろにいる母を見るとクシナと会う前までの会話を思い出したようで思いつめた顔で私を見ていた。
クシナのお腹を撫でていた手を退けて、一歩下がる。
「四代目様にも伝えてください、じゃないと取り返しのつかないことになります」
私は努めて真剣な表情をする。
ビワコは険しい表情を浮かべ、クシナは驚愕に目を見開いた。
「行くえ、クシナ」
「あ……はい」
ビワコはクシナを引っ張り急かすように私たちから離れて行った。
なんか、ただの怪しい幼女になった気がする……。
また失敗したかな?
「ダメだったかなぁ」
私は分かりやすく肩を落とした。しかし、こんなところで立ち止まっている場合じゃない。私は気を取り直そうと自分の両頬を叩いた。
もう一手、何かないかな。
「イナホ、聞いてるの?」
「え?何?」
両頬を叩いたままの手を大きな手が包み込んだ。
母様……?
下がっていた視線を上にあげると真剣な表情をした母がいた。
動揺からか顔が引き攣るのを感じた。
「イナホ」
それは温かい声だった。
「大丈夫よ、母さんは何があってもあなたの味方よ」
少し見上げたところにある母の顔はどこまでも優しかった。
やっぱり、こんな娘で申し訳ないな。
罪悪感を感じて顔を顰めそうになるが母の手がそれをさせてはくれなかった。その様子に気づいているだろうに、それでも母は優しく微笑んでいた。
「うん、ありがとう、母様」
私は曖昧な笑みを浮かべたのだった。
読んでくださりありがとうございました。