強欲の旅人は神の恩恵を受けない   作:ルクエリシオン

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第37話 エルソス遺跡

アンタレスの子供たちが、砂丘を覆うように押し寄せた。

 

数百。

 

いや、それ以上。

 

紫色の半透明な身体を脈打たせながら、空中を滑るように迫ってくる。

 

下から垂れた細い触手は、風に揺れているように見えた。

 

だが、違う。

 

すべてがバンへ向かって伸びている。

 

「日記じゃ、一匹ずつは弱いって話だったけどな」

 

バンは左手で聖棍クレシューズを振るった。

 

節が鳴る。

 

しなった棍が砂漠の空気を裂き、先頭の小型個体へ叩き込まれた。

 

紫色の身体が破裂する。

 

飛び散った液体が砂へ落ち、じゅっと音を立てた。

 

クレシューズの節は、そのまま軌道を変える。

 

二匹。

 

三匹。

 

四匹。

 

迫ってきた小型個体を連続して打ち抜き、砂の上へ叩き落とした。

 

一匹ごとの動きは遅い。

 

力も弱い。

 

バンの一撃へ耐えられるほど頑丈でもない。

 

しかし。

 

「減ってる気がしねぇな」

 

前の個体を潰しても、その隙間へ後ろの群れが流れ込んでくる。

 

左右から回り込むもの。

 

砂のすぐ上を漂い、足首へ触手を伸ばすもの。

 

バンの頭上へ集まり、真上から降りかかろうとするもの。

 

攻撃に技術はない。

 

獲物の周囲を埋め尽くし、逃げ場を消す。

 

あとは群れ全体で取りつき、少しずつ力を吸い上げる。

 

単純だが、数が多ければ厄介だった。

 

一本の触手が、バンの赤いコートへ触れる。

 

布越しに冷たい感覚が走った。

 

触れられた場所から、身体の熱がわずかに引かれる。

 

「本当に吸いやがる」

 

バンはクレシューズを引き戻した。

 

節が触手を絡め取り、そのまま引きちぎる。

 

小型個体が甲高い振動を発した。

 

耳障りな鳴き声というより、身体全体を震わせているような音だった。

 

奪われた力は、ほんのわずか。

 

バンにとっては無視できる程度だ。

 

だが、普通の人間なら話は違う。

 

一匹が少し。

 

十匹が少しずつ。

 

百匹が、獲物が倒れるまで吸い続ける。

 

隊商の荷物や小動物が、皮だけを残して干からびていた理由が分かった。

 

「面倒くせぇ食い方しやがる」

 

バンは左足を軸に身体を回した。

 

クレシューズが大きな円を描く。

 

周囲へ迫っていた小型個体がまとめて弾かれ、紫色の液体を撒き散らしながら砂へ落ちた。

 

右腕はまだ布で吊られている。

 

本来の速度と精度には及ばない。

 

それでも、この程度の敵を退けるには十分だった。

 

だが、群れの奥に浮かぶ三体の大型個体は動かなかった。

 

人間よりも大きな紫色の身体。

 

表面を覆う黒い殻。

 

殻の隙間から突き出す、紫黒い結晶。

 

ぼろぼろの日記には、大型個体が群れを導くと書かれていた。

 

「こいつらが頭か」

 

一体の大型個体が、身体を大きく膨らませた。

 

黒い殻の隙間から、紫色の光が漏れる。

 

次の瞬間。

 

垂れ下がっていた太い触手が、一斉に伸びた。

 

一本がバンの頭上を薙ぐ。

 

もう一本が、足元の砂を深く抉る。

 

バンは身体を沈め、頭上を通過する触手をかわした。

 

そのまま足元へ伸びてきた一本を踏みつける。

 

ぬるりとした表面。

 

だが、内部には筋肉か太い繊維のようなものが通っている。

 

「見た目より硬ぇな」

 

バンはクレシューズを振り下ろした。

 

棍が触手へ食い込み、内部を潰す。

 

紫色の液体が噴き出した。

 

大型個体が身体を大きく震わせる。

 

それに反応するように、周囲の小型個体が一斉に方向を変えた。

 

ばらばらに押し寄せていた群れが、三つに分かれる。

 

それぞれが大型個体の周囲へ集まり、渦を巻くように動き始めた。

 

正面。

 

右。

 

左。

 

三方向からバンを包囲する。

 

「日記は当たりみてぇだな」

 

大型個体が小型の群れを動かしている。

 

単純に同じ場所へ集まっているわけではない。

 

進路を塞ぐ群れ。

 

背後へ回る群れ。

 

砂の上に残る紫黒い液体へ、バンを追い込もうとする群れ。

 

先ほどまでより、はっきりと動きに意図があった。

 

バンは一歩下がる。

 

靴底が紫色の染みへ触れた。

 

じゅっ、と音がする。

 

「そこへ追い込むつもりか?」

 

大型個体の結晶が再び光った。

 

答える声はない。

 

だが、偶然ではなかった。

 

こいつらは弱い。

 

それでも、ただの獣ではない。

 

正確には、こいつら自身が考えているというより、別の何かから命令を受け取っている。

 

バンの指先へ、無数の細い流れが引っかかった。

 

小型個体から大型個体へ。

 

大型個体から、さらに遠くへ。

 

そのすべてが、東の同じ場所へ続いている。

 

エルソス遺跡。

 

日記に描かれていた巨大な蠍。

 

「やっぱ全部、同じもんに繋がってやがるな」

 

個別の生き物でありながら、同時に一体の巨大な魔獣の手足でもある。

 

外へ伸びた指。

 

獲物から力を奪い、本体へ送り返すための器官。

 

そう考えれば、子供と呼ばれていた理由も分かる。

 

「お前らを全部潰しても、親が残ってりゃ終わらねぇってことか」

 

正面の群れが一斉に襲いかかった。

 

バンはクレシューズを横薙ぎに振るう。

 

十数匹の小型個体がまとめて弾け飛ぶ。

 

その隙間を抜け、砂丘の斜面を駆け上がった。

 

右側の大型個体が触手を突き出す。

 

バンは身体をひねってかわし、その触手へクレシューズを巻きつけた。

 

節が絡む。

 

「少し借りるぞ」

 

左腕を引く。

 

大型個体の巨体がわずかに傾いた。

 

同時に、触手の中を流れる力の端へ《強奪》を引っかける。

 

「強奪《スナッチ》」

 

全部は必要ない。

 

浮遊を支えている力。

 

触手を動かしている筋力。

 

群れへ命令を流すための、奇妙な生命の流れ。

 

必要な部分だけを浅く盗る。

 

大型個体の身体が大きく沈んだ。

 

宙に浮いていた巨体が砂へ落ちる。

 

その周囲を飛んでいた小型個体も、一瞬だけ動きを乱した。

 

「やっぱ繋がってんな」

 

バンはクレシューズを引き抜いた。

 

奪った力が、左腕と両脚へ流れ込む。

 

量そのものは大したことがない。

 

だが、感触が妙だった。

 

冷たい。

 

湿っているわけでもないのに、皮膚の内側を何かが這うような不快さがある。

 

普通の生物から身体能力を奪った時とは違う。

 

力の中に、子供自身のものではない何かが混じっていた。

 

さらに奥。

 

もっと大きく、暗く、重いもの。

 

バンはすぐに《強奪》を止めた。

 

「気持ち悪ぃ力だな」

 

奪ったものを身体の中へ留めすぎないよう、必要な分だけ馴染ませる。

 

煉獄を越えた肉体なら、この程度でどうにかなることはない。

 

だが、無制限に吸い上げていい力ではなさそうだった。

 

砂へ落ちた大型個体が、太い触手を地面へ突き刺す。

 

巨体を起こそうとしている。

 

バンはその背へ飛び乗った。

 

クレシューズを短く持ち替える。

 

右腕は使えない。

 

左腕だけで、黒い殻から生えた結晶の根元へ棍を叩き込んだ。

 

一度。

 

二度。

 

三度。

 

硬い音が砂丘へ響く。

 

黒い殻に亀裂が走った。

 

「硬ぇだけなら、どうにでもなる」

 

四度目。

 

結晶の根元へ正確に打ち込む。

 

紫黒い結晶が砕けた。

 

大型個体の身体が大きく痙攣する。

 

膨らんでいた半透明の身体から力が抜け、急激に萎んでいった。

 

周囲の小型個体が、甲高い振動を発する。

 

統率を失ったように動きが乱れ、互いにぶつかりながら散り始める。

 

「そこが弱点か?」

 

結晶を失った大型個体は、砂の上で動かなくなった。

 

ただし、これがすべての大型個体に共通する弱点なのかは分からない。

 

結晶が命令を受け取る器官だったのか。

 

生命を保つ核だったのか。

 

あるいは、遺跡から力を受け取るためのものだったのか。

 

日記にはそこまで書かれていなかった。

 

残る二体の大型個体が距離を取る。

 

小型の群れも、バンへ飛びかかるのを止めた。

 

恐れた様子はない。

 

退くつもりもない。

 

何かを待っている。

 

「今度は何だ?」

 

二体の大型個体が、同時に身体を脈打たせた。

 

表面の結晶から、細い紫色の光が伸びる。

 

光は砂へ落ち、そのまま地面の下へ染み込んでいった。

 

次の瞬間。

 

砂丘が震えた。

 

地面のあちこちから、紫色の塊が浮き上がってくる。

 

最初は小さな袋のようだった。

 

それが空気を吸い込むように膨らみ、触手を伸ばしながら宙へ浮かぶ。

 

新たな小型個体。

 

一匹。

 

二匹。

 

十匹。

 

砂の下から、次々に生まれてくる。

 

「数に限りがないってのも本当かよ」

 

日記の文字を思い出す。

 

小さきものは弱い。

 

だが、数に限りがない。

 

大型個体が直接生み出しているのか。

 

それとも遺跡から送られた力が、砂を器にして形を作っているのか。

 

分からない。

 

だが、ここですべて倒そうとするのが無駄なのは分かった。

 

バンは東へ目を向ける。

 

砂丘の先。

 

遠くに、崩れた岩山のような影が見えていた。

 

人の手で積み上げられた巨大な石造建築。

 

あれがエルソス遺跡だろう。

 

子供たちへ繋がる力の流れも、そこから伸びている。

 

「元を確かめる方が早ぇな」

 

バンはクレシューズを肩へ乗せた。

 

新たに生まれた小型個体が、進路を塞ぐように広がっていく。

 

二体の大型個体も、左右へ分かれて回り込む。

 

バンを逃がさないためなのか。

 

それとも遺跡へ誘導するためなのか。

 

どちらとも取れる動きだった。

 

「悪いな」

 

バンは膝を曲げる。

 

「お前らと遊ぶの、ちょっと飽きた」

 

先ほど大型個体から奪った力を、両脚へ集める。

 

砂を強く蹴った。

 

地面が爆ぜる。

 

赤い影が、群れの頭上へ飛び上がった。

 

小型個体が一斉に触手を伸ばす。

 

だが、届かない。

 

バンはクレシューズを近くの岩へ巻きつける。

 

節を引き、一気に身体を引き寄せた。

 

空中で軌道を変える。

 

群れの包囲を越え、砂丘の向こう側へ着地する。

 

背後で大型個体が激しい振動を上げた。

 

紫色の群れが、一斉に追跡を始める。

 

「案内ご苦労さん」

 

バンは東へ走り出した。

 

アンタレスの子供たちが後を追う。

 

だが、速度が違う。

 

負傷しているとはいえ、バンの脚力へ追いつけるほど速くはない。

 

赤いコートが砂漠を横切る。

 

その後ろを、紫色の濁流が追いかける。

 

バンは時折背後を確認した。

 

子供たちは、一定以上には遅れない。

 

速さで追っているのではなかった。

 

進行方向の砂から、新たな個体が浮かび上がっている。

 

前から現れ、横から現れ、遺跡へ近づくほど数が増えていく。

 

「どっちが案内されてんのか分からねぇな」

 

敵はバンを止めたいのか。

 

それとも、遺跡の中へ連れていきたいのか。

 

まだ判断できなかった。

 

陽が傾き始めた頃。

 

エルソス遺跡の全貌が見えてきた。

 

砂に埋もれた巨大な石造建築。

 

崩れた柱。

 

半分以上を砂丘に呑み込まれた壁。

 

いくつもの建物が重なり、中央には神殿のような高い構造物が残っている。

 

かつては小さな遺跡ではなく、都市か大規模な聖域だったのかもしれない。

 

その正面には、巨大な門があった。

 

だが、扉は失われている。

 

入口の周囲には、黒い根のようなものが絡みついていた。

 

植物には見えない。

 

岩の隙間から伸び、壁を這い、遺跡の奥へ続いている。

 

表面には紫色の脈が浮かび、一定の間隔で明滅していた。

 

まるで、遺跡そのものが呼吸しているようだった。

 

「日記の絵と同じだな」

 

バンは足を止めた。

 

赤いコートの内側から、ぼろぼろの日記を取り出す。

 

片手で頁を開く。

 

巨大な蠍。

 

その身体から伸びる黒い根。

 

周囲を漂う無数の紫色の子供。

 

絵の中の根は、遺跡の入口へ絡みついているものとよく似ていた。

 

追ってきた子供たちも、遺跡の手前で止まった。

 

小型個体は入口の周囲へ広がる。

 

大型個体は少し離れた場所に浮かび、バンの様子を窺っていた。

 

先ほどまでのように襲ってこない。

 

バンが遺跡へ入るのを待っているようにも見える。

 

「中へ誘ってんのか?」

 

答えはない。

 

入口の奥から、冷たい風が吹いてきた。

 

砂漠の熱とは無縁の空気。

 

湿ってはいない。

 

だが、長い間、陽の光が届いていない場所の冷たさがあった。

 

その奥には、砂と石の匂いに混じって、紫色の液体と同じ不快な気配が漂っている。

 

バンは日記を閉じた。

 

そして。

 

――ドクン。

 

地面の奥から、重い音が響いた。

 

バンの足元がわずかに揺れる。

 

風でもない。

 

地震でもない。

 

巨大な何かが、遺跡の地下で脈打っている。

 

心音。

 

一度だけで、空気まで震わせるほど重い鼓動だった。

 

バンは日記の表紙を軽く叩く。

 

「本当にいるみてぇだな」

 

巨大な蠍。

 

アンタレス。

 

古い日記の内容が正しいなら、この遺跡の地下に封じられている。

 

バンは入口へ一歩踏み込んだ。

 

その瞬間。

 

壁面に刻まれていた古い文字が、弱々しく光った。

 

銀色。

 

月明かりに似た淡い光。

 

遺跡を覆う黒い根が、その光を隠そうとするように蠢く。

 

だが、銀色の光は消えなかった。

 

バンは足を止め、壁を見上げる。

 

そこには大きな壁画が残っていた。

 

月。

 

星。

 

光をまとった複数の人影。

 

中央に描かれた巨大な蠍。

 

何本もの光の鎖が、蠍のハサミや尾、胴体へ巻きついている。

 

その周囲を覆う黒い根。

 

古本屋で見つけた日記の絵は、この壁画を写したものだった。

 

「これを見た奴が、あの日記を書いたのか」

 

古代文字は読めない。

 

誰が封じたのか。

 

いつの時代なのか。

 

なぜアンタレスが現れたのか。

 

そこまでは分からない。

 

それでも、絵の意味は読み取れた。

 

複数の者たちが、光の力を使って巨大な蠍を封じた。

 

そして今、その封印は黒い根に侵されている。

 

バンは壁画へ左手を近づけた。

 

銀色の光が、わずかに強くなる。

 

触れてはいない。

 

それでも、壁の奥へ残っていた何かが、バンの存在へ反応した。

 

かすかな気配。

 

生きているとは言えない。

 

だが、完全に消えてもいない。

 

長い時間をかけて弱りながら、今もここへ残っているもの。

 

『……来るな……』

 

声が響いた。

 

耳から聞こえたものではない。

 

頭の奥へ直接届く、掠れた声。

 

男か女かも分からない。

 

ただ、ひどく疲れ、今にも消えそうな声だった。

 

バンは目を細める。

 

「今のは、お前か?」

 

返事はない。

 

銀色の文字が一度だけ明滅する。

 

その直後。

 

地下から二度目の鼓動が響いた。

 

――ドクン。

 

先ほどよりも大きい。

 

天井から砂と小石が落ちる。

 

壁へ絡みついていた黒い根が、一斉に蠢いた。

 

銀色の文字を覆い隠そうとするように、太い根が壁画へ伸びていく。

 

バンはクレシューズを振るった。

 

根の先端を打ち払い、壁画から引き離す。

 

黒い根の切断面から、紫色の液体が滴った。

 

「日記に書いてなかったことが多すぎんだろ」

 

遺跡の奥。

 

暗闇の中で、紫黒い光が灯った。

 

最初は、小さな結晶の光に見えた。

 

だが、違う。

 

巨大な眼だった。

 

離れた場所からでも分かるほど大きな眼球が、闇の奥で開いている。

 

紫黒い外縁。

 

縦に細い瞳孔。

 

冷たい視線が、真っ直ぐバンへ向けられた。

 

遺跡の外にいたアンタレスの子供たちが、一斉に激しい振動を上げる。

 

主へ獲物が到着したことを知らせているようだった。

 

バンは懐の日記へ軽く触れた。

 

「こいつらの親で間違いなさそうだな」

 

巨大な眼が、ゆっくりと閉じる。

 

直後。

 

遺跡のさらに奥から、石と金属が擦れ合うような音が響いた。

 

鎖。

 

何本もの鎖が引かれ、軋み、少しずつ千切れようとしている。

 

それに合わせ、地面の黒い根が脈打つ。

 

紫色の光が、遺跡の奥へ流れていった。

 

外にいる子供たちが奪った力。

 

今も、地下にいる本体へ送られている。

 

アンタレスは完全に目覚めてはいない。

 

だが、眠ったままでも周囲の生命を吸い、自分を縛る封印を弱らせている。

 

バンは暗闇を見据えた。

 

先ほどの声が、もう一度響く。

 

『……戻れ……』

 

引き返せ。

 

近づくな。

 

封印が残っているうちに逃げろ。

 

そう訴えている。

 

だが、バンは動かなかった。

 

外には、増え続けるアンタレスの子供がいる。

 

ここで戻れば、あの群れはいずれ砂漠全体へ広がる。

 

隊商を襲い。

 

集落を枯らし。

 

やがて、ザルドとアルフィアがいるリオードへも届く。

 

「悪いな」

 

バンは誰に向けるでもなく言った。

 

「来るなって言われると、入りたくなる性分なんだよ」

 

右腕は使えない。

 

傷も残っている。

 

日記に書かれていることも、壁画から読み取れることも、まだ断片だけだ。

 

それでも、目の前に気に入らないものがある。

 

なら、引き返す理由にはならない。

 

バンは聖棍クレシューズを左肩へ乗せた。

 

「それに、放っといたら飯も酒もまずくなりそうだ」

 

赤い旅人は、一人でエルソス遺跡の暗闇へ足を進めた。




今回は、アンタレスの子供との最初の戦闘と、エルソス遺跡への到着を描きました。

バンは入手した古い日記の情報と、実際に目の前で起きていることを照らし合わせながら、アンタレスや子供たちの性質を確かめています。
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