今日も此方を襲撃してきたゼウスとヘラのファミリアを返り討ちにしていると、この世界の神ゼウスが話しかけてきたが、どうやらゼウスはアルゴノゥトの時代から此方を天界から見ていたようで、ゼウスの兄であるハデスの名を名乗るこの身が何者であるかが気になっていたらしい。
以前神ロキに語ったように、この身は異世界の神ハデスであることを神ゼウスに教えておくと「別世界のハデスの方が若々しいんじゃなぁ」と言っていたが、やはりこの世界の神ハデスも天界には存在しているようだ。
この世界の神ハデスの外見が少し気になり、どんな外見をしているのか聞いてはみたが「ひげ生やした黒髪のイケオジって感じじゃな」と語った神ゼウス。
名が同じでも外見的には全く似ていないこの世界の神ハデスと、異世界の神ハデスであるこの身。
この世界の神々が持つ神力アルカナムを、この身は持ち合わせておらぬが、剛力とバイデントに槍術があれば、大抵の相手には敗北することもない。
この身が宿す特殊な神血であるプルートイーコールによってバイデントの強化が可能であることが、唯一の特殊能力だと言えるこの身は、この世界の神々とは完全に別種の存在だ。
人と神が争うラグナロクが起こっている訳でもないこの世界では、地上に降りてきた神々は神力を封じて常人程度の身体能力で生活しており、武神でもなければ神の恩恵を授かった眷族には勝てないこの世界の神々。
異世界からの来訪者であるこの身は、この世界の神々が地上に降りると決める遥か前から地上に存在していたが、特に地上に降りてきた神々から文句を言われることはなかった。
その点についても神ゼウスに聞いてみると「天界では暇な神々が多くてのう、フィオナ騎士団や英雄達と共に戦い、単眼の怪物を討伐したお主に注目しておった神々は多かったんじゃ」と語り出す。
「神の炎の加護を授かった大英雄エピメテウスを数百年鍛えて、陸の王者ベヒーモスにリベンジさせて打ち倒させたことに大興奮しておった神々は多かったし、風の大精霊アリアと契約した大英雄アルバートや大英雄エピメテウスと共に、神の力が通じん黒竜と全くアルカナムを使うことなく真正面から戦い、見事に黒竜を倒したお主の勇姿は、天界では大多数の神々が見ておったようじゃからな。わしも含めてファンになっとる神々は少なくはないようじゃのう」
長々とそう語った神ゼウスは、他の神々と同じく、これまでの此方の戦いを天界から見ていたようだ。
「お主はただのハデスと名乗っておるようじゃが、神々の間では黒竜殺しのハデスじゃと有名になっとるぞ」
付け足すように言った神ゼウスの言葉で、地上に降りてきた神々からの勧誘が激しかったことに納得した此方は、それはそれとして神ゼウスに「ゼウスとヘラのファミリアは、リヴァイアサンを討伐するつもりはあるのか?」とも聞いておく。
「リヴァイアサンと戦うには海でも戦える頑丈な足場が必要になるようじゃからな、複数のファミリアで協力して足場の作成に励んでおるところじゃよ」
「神時代前は、使える素材が限られていたのでな。今ではダンジョン産の頑丈な金属が多数存在しているが、頑丈な足場となるとアダマンタイトやヴァルマーズを使用した足場となるか」
「基本的にはそうなるじゃろうな。壊れると問題がありそうな部位はオリハルコンで補強するかもしれんのう」
「ふむ、そうか。足場が完成し、ゼウスとヘラのファミリアがリヴァイアサンに挑む時は、同行しよう」
神ゼウスにそう告げて、その場を後にすると、足場が完成するまで待つことにしたが、その間も此方を襲撃してきたゼウスとヘラのファミリアを軽く揉んでやり、動けなくなるまで相手してやった。
そんな日々を過ごしていた数ヵ月、複数のファミリアが協力して完成させた頑丈な足場は、まるで1つの都市であるかのように巨大であり、大量のダンジョン産金属が使用されたことで、強度にも優れていたのは間違いない。
海上に浮かぶ頑丈な足場は船の如く動き、素早く海上を移動して、リヴァイアサンが住まう海域へと進んでいく。
到着した海域で、リヴァイアサンと対面したゼウスとヘラのファミリアに、ポセイドン・ファミリアとこの身に、こっそりと密航していたディムナは、リヴァイアサンとの戦闘を開始。
巨大な海竜といった外見をしたリヴァイアサンへと、螺旋回転する嵐を纏うようなバイデントの刺突を連続で叩き込み、リヴァイアサンの身体の一部を抉り飛ばして、少しずつ削いでいった。
頑丈なリヴァイアサンの身体を少しずつ抉っていきながら、海上に浮かぶ足場へと着地すると、再び足場を蹴って跳躍し、構えた槍を突き出して放つ槍撃。
撃ち放たれた弾丸のように空中を真っ直ぐ突き進みながら、リヴァイアサンへと深々と突き刺さったバイデントを抉り抜き、悶え苦しむリヴァイアサンへと容赦なく剛槍を打ち込んだ。
此方の剛力による連突により削れていくリヴァイアサンの巨体。
ゼウスとヘラにポセイドンのファミリアがリヴァイアサンへと追撃を打ち込み、リヴァイアサンが暴れまわろうと、冷静に行動するゼウスとヘラのファミリアは「ハデスより弱い相手に負けてられるか!」と意地を見せており、ディムナも「俺もハデス様みたいになるんだ!」とリヴァイアサンへ果敢に槍を叩き込んでいたな。
此方が使っている足場を破壊しようと考えたリヴァイアサンが、足場へと向かって突撃してきたところで、巨大な海竜であるリヴァイアサンの突撃を、右から左に薙ぎ払うように動かしたバイデントにより弾き返し、吹き飛んでひっくり返ったリヴァイアサンの巨体へ突き刺したバイデントの穂先。
そして穂先の刃をリヴァイアサンの胴体に刺したまま、ひっくり返った状態のリヴァイアサンの身体の上を頭部まで目掛けて走り、突き刺したままの穂先で線を描くようにリヴァイアサンを切断していきながら走り抜けて、胴体から頭部まで真っ二つにしたリヴァイアサンの身体。
胴体から頭部まで切断して進んでいた最中で魔石まで破壊していたらしく、灰と化すリヴァイアサンは、一部のドロップアイテムだけを残す。
全員で協力して、残らず回収したリヴァイアサンのドロップアイテムの一部は、ダンジョンと海を繋ぐ水中の大穴を塞ぐ為に使われるらしい。
此方の取り分として渡された海竜の牙2本の内1本はディムナに譲っておくと、それでディムナ専用の槍が作られることになったそうだ。
リヴァイアサンも討伐し、やり残した仕事を終えた気分になった此方は、しばらくオラリオを離れることに決めた。
さて、手土産でも持って久しぶりにエピメテウスに会いに行くとしよう。
古代から残っていた強大な怪物であったリヴァイアサンを討伐した祝いとして、上等な酒を用意するのも悪くはない。
もう1人の密航者であるレオンが何も出来ないままに、リヴァイアサンとの戦いは終わりました