他人に歯磨きしてもらわないとレベル99になれない勇者です【完結】   作:きのこ大三元

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第19.5話「魔王様、勇者の歯を磨く」

「なぜ余が。魔王たる余が、勇者の歯など磨かねばならんのだ……!」

 

 魔王の間に、地の底から響くような低い声が広がった。ついさっきまでなら身構えていたと思うけれど、本人が右顎を押さえながら言っているせいで、どうにも締まらない。

 

「大声は控えてください」

「……分かっている」

 

 僧侶に注意され、魔王が素直に声を落とした。

 

 決着はもうついている。俺たちは魔王を倒し、魔王もこれ以上戦う意思は見せていない。そして戦闘中に発動していた勇者の加護も、とっくに時間切れを迎えていた。

 

 現在、レベル5。

 

 剣を持つくらいなら問題ないが、この状態でもう一度魔王と戦えと言われれば普通に無理である。

 

 そんな俺は今、魔王の間に持ち込まれた椅子へ座らされている。その正面では、先ほどまで世界の命運を懸けて戦っていたドラゴン娘の魔王が、人間用の歯ブラシをものすごく嫌そうな顔で睨んでいた。

 

 状況がおかしい。

 

「では、始める前に確認します」

 

 僧侶が俺たちの間へ入った。

 

「勇者様本人の同意が必要です」

「はい」

「魔王様も、嫌であれば断って構いません」

 

 魔王がこちらを見る。俺も魔王を見る。

 

「断ってよいのか」

「もちろんです」

「なら断る」

「そうですか。では今回は中止ですね」

「待て」

 

 早かった。

 

 僧侶が止める間もなく話を終わらせようとすると、今度は魔王の方から引き止めた。全員の視線が集まり、魔王はしばらく黙る。鱗に覆われた尻尾の先だけが、石床をゆっくり二度叩いた。

 

「……余が磨いた場合、本当に加護が発動するか確認できるのだな」

「たぶんね」

 

 魔法使いがすぐ食いついた。

 

「今まで敵対していた相手が担当した例なんてないもの。条件の切り分けとしてはかなり重要よ」

「実験扱いしないでください」

「重要な確認でしょ」

 

 完全に研究者の顔だった。

 

「つまり」

 

 魔王の視線が俺へ戻る。

 

「余が勇者へ力を与える可能性があると」

「本人同士が納得して行うのであれば、そうなります」

 

 僧侶が答える。

 

 魔王は俺を見る。

 

 俺も見る。

 

「……やります?」

「なぜ貴様がその言い方なのだ」

「俺もこの状況をどう扱えばいいのか分からないので」

 

 魔王は深く息を吐いた。

 

「よい。敵味方に関係なく加護が発動するというなら、確認しておく価値はある。今後の交渉にも関わるからな」

 

 ちゃんと理屈は通っている。

 

 たぶん本人も、そういうことにして自分を納得させている。

 

「ただし」

 

 魔王が歯ブラシを指さした。

 

「余は人間用の道具など知らんぞ」

「そこはこちらで確認します。まず手を洗ってください」

「もう始まるのか」

「衛生面は大事です」

 

 世界を支配しようとしていた魔王が、僧侶に手洗いを指示されている。

 

 ものすごい光景だった。

 

 魔王が渋々洗い場へ向かうと、戦士が俺の隣へ立った。

 

「勇者」

「何ですか」

「魔王の力加減を見る」

「俺で?」

「お前以外に誰がいる」

 

 正論だけど怖い。

 

「強かったら止めてくださいね」

「当然だ」

 

 少し安心した。

 

 反対側では魔法使いが杖を構え、すでに観察する気満々になっている。

 

「私は魔力反応を見る」

「なんか警戒してません?」

「当然でしょ。さっきまで敵だったのよ」

「もう決着はつきましたよ」

「それでも、変なことしたら止める」

「変なことって何ですか」

「知らない」

 

 本人も分かっていなかった。

 

 ただ警戒しているだけらしい。

 

 やがて魔王が戻ってきた。濡れた手を布で拭きながら、まだ納得していない顔をしている。

 

「なぜ余がここまで」

「衛生管理です」

 

 僧侶は強い。

 

「では、こちらを持ってください」

 

 差し出されたのは、予備の人間用歯ブラシだった。魔王は柄を二本の指でつまみ上げ、表と裏を確認するように眺めてから、毛先へ軽く触れる。

 

「小さいな」

「人間用なので」

「牙獣将が長柄を欲しがる理由も分かる」

 

 そう言いながら、今度は親指で毛先を少し押した。

 

「柔らかい」

「歯茎を傷めないためです」

「これで汚れが落ちるのか?」

「強く押しつける必要はありません。毛先をきちんと当てて、小さく動かした方が効率的です」

 

 僧侶の説明を聞き、魔王が少し考える。

 

「牙でも同じか?」

「基本は同じだと思います。ただし、牙の形や魔族の歯茎については種族差がありますから、一概には言えません」

「なるほど」

 

 普通に勉強し始めた。

 

「魔王様、興味ありますよね」

「ない」

「さっきから質問多いですけど」

「軍務だ」

「便利ですね、その言葉」

「黙れ」

 

 怒られた。

 

 僧侶が俺の前へ小さな台を置き、その上にコップと水差し、布を並べる。

 

「勇者様、もう少し深く座ってください」

「はい」

 

 姿勢を直す。

 

 魔王が正面へ立った。

 

 角。

 

 大きな翼。

 

 鱗の走る尻尾。

 

 魔王軍を統べ、四天王を従え、ついさっきまで俺たちと本気で戦っていた存在。

 

 その右手には歯ブラシが一本。

 

 やっぱり何かがおかしい。

 

「……口を開けろ」

「言い方が怖い」

「では何と言えばよい」

「普通に『お願いします』とか」

「なぜ余が頼む側なのだ」

「俺が磨かれる側だからでは?」

 

 魔王の眉間へ皺が寄った。

 

「勇者様」

 

 僧侶が横から割って入る。

 

「あまり刺激しないでください」

「俺が悪いんですか」

 

 たぶん少し悪かった。

 

 魔王は歯磨き粉の蓋を開け、そのまま毛先へ乗せる。

 

「多すぎる」

 

 魔法使いが即座に言った。

 

「これくらいではないのか」

「多い。勇者の口が泡だらけになるでしょ」

「余に指図するな」

「失敗されたら困るのはこっちなの」

 

 二人の視線がぶつかった。

 

 早くも嫌な空気である。

 

「少し減らしましょう」

 

 僧侶が間へ入り、歯磨き粉を適量へ整えた。

 

 さすがだった。

 

「では、お願いします」

 

 俺は口を開ける。

 

 魔王が歯ブラシを持ったまま止まった。心底嫌そうに俺の口と歯ブラシを交互に見る。

 

「……なぜ余が」

「まだ言います?」

「言わせろ」

 

 諦めてはいなかった。

 

 それでも魔王は一歩近づき、俺の顔を少し覗き込む。

 

「動くな」

「はい」

 

 歯ブラシの毛先が、前歯の表面へ触れた。

 

 思わず肩に力が入る。

 

 魔王の力は嫌というほど知っている。爪の一撃で石床を砕き、剣を受け止め、翼の一振りだけで人間を吹き飛ばせる相手だ。その手に握られているものが今は歯ブラシだとしても、体の方は簡単には納得してくれない。

 

「力が入っているぞ」

「そりゃ入りますよ」

「抜け」

「魔王様が言います?」

「口を動かすな」

 

 注意された。

 

 ところが。

 

 痛くない。

 

 むしろ、驚くほど軽かった。

 

 魔王は毛先を歯へ押しつけるのではなく、前歯の表面に触れさせる程度の圧で細かく動かしていた。一本ずつ形を確かめるように角度を変え、そのまま犬歯へ移る。歯の丸みに沿って柄がわずかに傾き、次は歯茎との境目へ毛先だけを滑り込ませた。

 

 強い手なのに、動きが細かい。

 

 思ったより上手い――どころではない。

 

 かなり上手い。

 

「魔王様」

「喋るな」

「上手いですね」

 

 ブラシが止まった。

 

 魔王の赤い目が細くなる。

 

「馬鹿にしているのか」

「本当に言ってます」

「なぜ余が褒められねばならん」

「上手いからでは?」

「黙れ」

 

 褒められて不機嫌になった。

 

 難しい。

 

 横で見ていた魔法使いも、少し意外そうな顔をする。

 

「……確かに上手い」

「何だ」

「力加減。毛先が潰れてないし、歯茎にもほとんど余計な圧がかかってない」

 

 戦士も腕を組んだまま頷いた。

 

「無駄な動きも少ないな」

 

 魔王の尻尾が、一度だけ床を叩く。

 

「当然だ」

 

 ちょっと嬉しそうだった。

 

「魔王様、ご経験が?」

 

 僧侶が尋ねる。

 

「他人を磨いたことなどない」

 

 魔王は答えながら、俺の頬側へ歯ブラシを回した。口角に柄をぶつけないよう少し斜めへ入れ、奥歯の外側へ毛先を当てる。

 

「だが、竜種の牙は人間の歯より大きい。根元も深く、力任せに擦れば歯肉を傷める」

 

 ブラシの角度が変わった。

 

 奥歯の表面を横からなぞり、そのまま歯と歯茎の境目へ毛先を寄せる。大きく動かさず、一か所ずつ位置をずらすような手つきだった。

 

「牙を清める時は、先端ばかり見ても意味がない。汚れが残りやすいのは根元だ。硬い鱗と違い、歯肉は簡単に傷つくからな」

 

 普通に詳しい。

 

「ドラゴン娘だからですか」

「その呼び方をやめろ」

「ドラゴンでは?」

「竜種ではある」

「娘では?」

「勇者」

 

 低かった。

 

「はい」

 

 大人しくした。

 

 魔王は指先で俺へ少し大きく口を開けるよう示し、今度は歯ブラシを奥歯の内側へ入れた。柄を立てたり寝かせたりしながら、舌に触れないぎりぎりの位置を通していく。

 

 自分で磨く時でも届きにくいところだ。

 

 なのに、手つきに迷いがない。

 

 歯そのものへ力をかけるのではなく、歯列の形に合わせて毛先の向きを少しずつ変え、届かない場所へだけ入れてくる。俺が舌を動かしそうになると、その前にブラシが一度離れ、落ち着いたところでまた戻ってきた。

 

 魔法使いが杖を俺の口元へ向ける。

 

「磨き残し、かなり減ってる」

「本当ですか」

「今喋らないで」

 

 魔王と魔法使いから同時に注意された。

 

「はい」

 

 二人とも細かい。

 

「人間は歯列が小さいな」

 

 魔王が呟く。

 

「竜種より曲線も緩い。だが、奥は狭い」

 

 歯ブラシの柄が少し寝る。毛先だけが、一番奥の歯の内側へ入り込んだ。

 

「この辺りは、大きな牙の裏を磨くより面倒だ」

 

 そう言いながら、ちゃんと届いている。

 

 僧侶が感心したように頷いた。

 

「ご自身の牙を手入れしてきた経験が、そのまま活きていますね」

 

 その瞬間。

 

 魔王の手が止まった。

 

「……何だ」

「いえ」

「何か言いたそうだな」

「魔王様も、昔からきちんと牙を磨いていたのですね」

 

 沈黙。

 

「当然だ」

 

 一拍置いて。

 

「昔はな」

 

 今度は、俺たち全員が止まった。

 

 右牙。

 

 腫れた顎。

 

 戦闘中にも何度か見せていた痛み。

 

 そこまで来れば、さすがに話は繋がる。

 

「最近は?」

 

 俺が聞く。

 

「勇者は黙って口を開けていろ」

 

 答えなかった。

 

 たぶん、理由はいくらでもあったのだと思う。

 

 戦争。軍の管理。四天王への指示。各地の戦況。魔王としての立場。

 

 どれだけ牙の手入れに詳しくても、自分自身のことを後回しにする理由なら簡単に積み上がる。

 

 僧侶も、それ以上は追及しなかった。

 

 ただ静かに、魔王の手元を見ている。

 

 魔王は再び歯ブラシを動かし、前歯の裏側へ毛先を通した。最初はあれだけ不満を並べていたのに、いざ始めてからの仕事は妙に丁寧だった。歯列を一通り確認し、磨いた場所へ重ねて無駄に擦ることもない。

 

「……これでよいか」

 

 やがて魔王が歯ブラシを離した。

 

 魔法使いがすぐ杖を向ける。

 

「待って。右奥に少しだけ残ってる」

「どこだ」

 

 魔王が即座に聞いた。

 

「この辺」

 

 杖の先から出た淡い光が、頬越しに位置を示す。

 

「なるほど」

 

 魔王は迷わずブラシを戻した。さっきより柄を少し寝かせ、奥歯の一角へ毛先を入れる。

 

「そこ」

「分かっている」

「強くしないで」

「分かっていると言っている」

「二人とも怖いんですけど」

「黙ってて」

「黙っていろ」

 

 息ぴったりだった。

 

 俺だけつらい。

 

 数秒後、魔王が今度こそ歯ブラシを離した。

 

「終わりだ」

「ありがとうございます」

「礼を言うな」

「なんでですか」

「屈辱が増す」

 

 複雑だった。

 

 僧侶からコップを受け取り、口をすすぐ。水と一緒に歯磨き粉の泡を吐き出すと、舌で触れた歯の表面が妙に滑らかだった。少なくとも磨き方そのものについては、文句のつけようがない。

 

 魔王は腕を組み、少し離れたところからこちらを見ている。魔法使いは杖を向けたまま。戦士も、まだ完全には警戒を解いていなかった。

 

 誰も喋らない。

 

 一瞬だけ。

 

 本当に何も起こらないのではないかと思った。

 

「……失敗?」

 

 魔法使いが呟く。

 

 次の瞬間。

 

 胸の奥で、光が弾けた。

 

「っ――」

 

 熱が心臓から一気に全身へ走った。さっきまで少し重かった腕から余計な感覚が消え、指先まで力が通る。視界が澄み、音が遠くまで拾えるようになり、空になっていたはずの体内へ魔力が一気に満ちていった。

 

 知っている感覚だ。

 

 レベル99。

 

「発動した!」

 

 魔法使いが杖を見て声を上げる。

 

「本当に?」

 

 俺も拳を握る。

 

 間違いない。

 

「レベル99です」

 

 魔王の目が、わずかに見開かれた。

 

「……余でも発動するのか」

「みたいですね」

 

 戦士が俺の肩へ手を置き、軽く押して状態を確かめる。

 

「先ほどと同じだ」

「魔力反応も問題なし」

 

 魔法使いも杖の光を確認する。

 

「むしろ安定してる」

「むしろ?」

 

 魔王がすぐ反応した。

 

「初回なのに」

「……当然だ」

 

 また少し嬉しそうだった。

 

「魔王様、上手かったですからね」

「だから褒めるな」

 

 怒られた。

 

 僧侶が俺と魔王を交互に見てから、静かに口を開く。

 

「これで、加護の条件について一つ分かりましたね」

「条件?」

「敵か味方かは、直接関係していないのだと思います」

 

 僧侶は、今度は俺へ視線を向ける。

 

「勇者様が受け入れていること。そして、磨く側も自分の意思で行っていること。少なくとも今回、その二つが成立した状態で加護は発動しました」

 

 魔法使いも頷いた。

 

「一回だけだから断定はできないけど、今までの結果とも矛盾しないわね」

 

 魔王が自分の右手を見る。

 

「余は、先ほどまで貴様の敵だった」

「はい」

「それでも余の手で、貴様は強くなる」

「みたいです」

 

 不思議な話だった。

 

 敵だった相手に歯を磨いてもらって、その結果またレベル99になる。

 

 勇者の加護としては、かなりどうかと思う。

 

 でも。

 

 悪くない気もした。

 

「敵味方より、本人たちの意思ですか」

「おそらくは」

 

 僧侶が微笑む。

 

 魔王はしばらく黙っていた。

 

 やがて、まだ手に持っていた人間用の歯ブラシへ目を落とす。

 

「……人間式の手入れにも、利用価値はある」

 

 認めた。

 

「魔王様が認めましたね」

「調子に乗るな」

「でも認めましたよね」

「利用価値があると言っただけだ」

 

 魔法使いが、にやりと笑う。

 

「じゃあ、魔王軍でも人間式歯磨きを採用する?」

「しない」

 

 即答だった。

 

「え?」

「そのまま使う気はない」

 

 魔王は歯ブラシを目の高さまで持ち上げた。

 

「人間用は小さすぎる。魔族には牙の長い種もいれば、口腔そのものが大きい獣人型もいる。炎を吐く種族なら、毛材や柄に耐熱性も必要だ」

 

 止まらなくなった。

 

「長い牙には根元まで届く形状が必要になる。大型種なら柄の長さだけでなく強度も要る。歯肉の硬さも種族ごとに違う以上、毛先の柔らかさまで同じにする理由はない」

 

 完全に詳しい。

 

 補佐官と牙獣将が聞いたら、たぶんものすごく喜ぶ。

 

「つまり」

 

 僧侶が確認する。

 

「魔族用に改良するのですね」

「そうだ」

 

 魔王は当然のように頷いた。

 

「補佐官へ命じる。牙獣将が出していた試作案も再検討させろ。兵種と種族ごとに道具を分け、使用法も整理する」

「かなり本格的ですね」

「軍全体へ導入するなら当然だ」

 

 戦士が眉を上げる。

 

「軍全体へ導入するのか」

 

 魔王が止まった。

 

 ほんの少しだけ。

 

「……必要な範囲でだ」

「今、全体って言いましたよね」

 

 俺が言う。

 

「黙れ」

 

 ばれていた。

 

 魔法使いが笑う。

 

「人間の歯磨き、気に入ってるじゃない」

「違う!」

 

 魔王が声を上げた。

 

 そして。

 

「っ……」

 

 すぐ右顎を押さえる。

 

「大声は控えてください」

 

 僧侶にまた怒られた。

 

「……分かっている」

 

 魔王は不機嫌そうに歯ブラシを睨んだ。

 

 それから少し考え、低い声で言う。

 

「これは」

「何ですか?」

「これは、人間の歯磨きではない」

 

 俺たち全員が魔王を見る。

 

 魔王は歯ブラシを掲げたまま、妙に堂々と言い切った。

 

「魔王軍式だ」

 

 沈黙。

 

「名前変えただけでは?」

「黙れ」

 

 怒られた。

 

 けれど、魔王の尻尾はさっきより少しだけ機嫌よく揺れていた。

 

 こうして。

 

 人間と魔族の戦争が正式に終わるより、ほんの少しだけ先に。

 

 人間式を参考にしながら、人間式ではないと言い張る新しい口腔ケア――魔王軍式歯磨きが誕生した。

 

 これが後世の歴史書にどう記されるのかは。

 

 考えないことにした。




次回予告
 
補佐官
「魔王様、こちらが和平交渉の議題一覧です」
 
魔王
「多いな」
 
王女
「長く続いた戦争ですから」
 
研究者
「その前に、魔王による勇者の歯磨きデータを――」
 
魔王
「なぜ知っている」
 
牙獣将
「我も見たかったぞ!」
 
魔王
「なぜ広まっている!」
 
勇者
「たぶん補佐官さんです」
 
補佐官
「記録は必要ですので」
 
魔王
「消せ!」
 
次回、第20話
「人間と魔族、歯磨きから和平を始める」
 
世界を救う最後の仕事は、歯磨きではなく話し合い。
 
たぶん。
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