すずめの戸締まり 〜幼なじみと閉じ師 の旅~ 作:陽HARU
宮崎県の静かな港町、門波。朝の陽射しが海面を優しく照らし、潮風が漁港の匂いを運んでくる。
岩戸すずめは17歳。叔母の環さんと二人で暮らす高校2年生だ。毎朝、寝坊しがちな彼女を待っているのは、幼なじみの**蓮**だった。
「すずめー、遅いぞ。また夢見てたんだろ?」
家の前で自転車を止めた蓮は、黒髪を少し長めに流した爽やかな青年。同じクラスで、幼稚園の頃からずっと一緒にいる。環さんからも「すずめのこと、よろしくね」と頼まれ続け、すずめの危なっかしいところを自然とフォローする存在になっていた。
すずめは慌てて飛び出してきた。
「ごめん、蓮! またあの草原の夢……母さんを探してるみたいで、目が覚めたら少し泣いてて……」
蓮は優しく彼女の頭を撫でた。
「大丈夫だよ。俺がいるし、環さんもいる。お前が心配になるようなことは、ちゃんと止めるから。一緒に学校行こうぜ」
二人は並んで歩き始めた。休み時間は隣の席で他愛もない話を笑い合い、放課後は一緒に帰る——それが二人の日常だった。周囲からは「もう付き合ってるみたい」と言われるが、蓮はまだ「幼なじみ」の枠を超えきれずにいた。でも、心の中ではすずめをただの幼なじみだと思えなくなっていた。
登校途中の坂道で、すずめが足を止めた。
道の先に、長身で長い黒髪の青年が立っていた。整った顔立ちに、どこか浮世離れした雰囲気。青年は「この辺りに廃墟はないか? 扉を探してるんだ」と独り言のように呟いていた。
すずめは好奇心を抑えきれず、「山の方に古い温泉街の廃墟がありますよ」と答えてしまった。
蓮は「すずめ、危ないぞ」と声をかけつつ、彼の背中を追いかける彼女の後を追った。
山の中の廃れたリゾート地。そこに、ぽつんと古びた白い扉が立っていた。
すずめは何かに引き寄せられるように手を伸ばす。蓮が「待て!」と駆け寄った瞬間、扉の向こうから不思議な風が吹いた。
扉の向こうは、すべての時間が溶け合ったような広大な草原の世界。
突然、白い猫のような石が現れ、瞬時に白い猫(ダイジン)に姿を変えて逃げ出した。
それから怖くなって二人で学校へ戻った
「なにこれ怖い?!」
「すずめ戻ろう 廃墟だし危ない」
遅刻したのは怒られたけど授業を受け、お昼の休憩時間
突如地震のアラームがなった
みんなが「地震?」と騒いでる中
蓮とすずめは外を見て赤くでかいミミズを見た
周りのみんなは見えてないようだったが二人には見えた
突如すずめが走り出した
「止めないと!」
蓮もそれに続く
「すずめ危ないから 俺もついていく!」
廃墟についたその直後、青年——**宗像草太**——が必死に扉を閉めようとしていた。
「君たち家に帰れ! ここは危ない!」
しかし、ミミズの気配が迫り、草太は鉄骨からすずめを庇って怪我を負う。すずめと蓮も咄嗟に手を貸し、3人はなんとか戸締まりに成功した。過去の賑わっていた温泉街の人々の声が、風のように聞こえてきた。
家に草太を連れ帰り、介抱するすずめ。
蓮も一緒にいて、状況を静かに見守っていた。
草太は低く落ち着いた声で言った。「俺は閉じ師だ。日本各地の後ろ戸を閉めて、ミミズによる大地震を防ぐのが使命……家業だ」
ダイジンが窓に来てすすめのところに行く
すずめがダイジンに餌をあげ、「うちの子になる?」と声をかけると、猫は人間の言葉で答えた。
「うん。すずめ、優しい、好き。お前は、邪魔」
次の瞬間、ダイジンは草太をすずめの幼い頃の思い出の椅子——三本足の小さな椅子——に変えてしまった。
「草太さん!?」
椅子になった草太の声が、かすかに響く。「……すずめ、俺を連れて行け。ダイジンを追わないと……」
すずめは椅子を抱え、ダイジンを追いかけた。蓮は環さんに簡単な連絡を入れ、「すずめを放っておけない」と一緒にフェリーに飛び乗った。
フェリーの甲板で、海風に吹かれながら。
すずめは草太の椅子を膝に抱き、蓮は隣で彼女の肩を支えた。
草太の声が静かに響く。「蓮、君はすずめの幼なじみか……申し訳ない。巻き込んでしまった」
蓮は少し複雑な表情で答えた。「俺は蓮。すずめの幼なじみで……今は大事な存在だ。放っておけないよ。草太さん、一緒にダイジンを追いかけよう」
こうして、すずめ、椅子になった草太、そして人間のままの蓮の、奇妙な三人旅が始まった。
フェリーで愛媛・八幡浜港に着いた三人は、ダイジンを追って移動を続けた。
みかん畑の道で、原付から落ちたみかんをすずめと蓮がキャッチした縁で、同い年の快活な少女・海部千果と出会う。
千果は草太の椅子を見て笑った。「その椅子、なんか大事そう。彼氏みたいだね?」
すずめは顔を赤らめ、「大事な椅子……と、幼なじみの蓮」と誤魔化した。蓮は内心少し安心しつつ、草太の椅子を運ぶ役目を自然に手伝った。
民宿「あまべ」で一夜を過ごす夜。
すずめは草太の椅子を膝に乗せ、蓮は向かいに座って三人で話した。
草太の声は低く真剣だった。「俺は大学で教師を目指している。でも、閉じ師の使命が優先だ。後ろ戸を開けるとミミズが来て、大きな地震が起きる……それを防ぐのが俺の役目」
すずめは椅子を優しく撫でた。「草太さん、綺麗で……使命感が強くて、憧れる。でも、蓮はいつもそばにいてくれて、温かくて……」
蓮はすずめの横顔を見て、静かに言った。「俺はお前の戸締まり係だよ。草太さんの使命も大事。一緒に頑張ろう」
後ろ戸のある廃校で、再びミミズが現れた。
すずめは草太の声に導かれ、蓮の支えを受けながら初めて自分で戸締まりに挑んだ。過去の子供たちの笑い声が聞こえる中、汗だくで扉を閉める。
締め終わった後、すずめは二人を抱きしめるようにして息を吐いた。
「ありがとう、蓮……草太さん。二人ともいてくれて、心強かった」
千果に別れを告げ、三人はさらに北へ向かう。蓮はすずめの疲れた肩を抱き、草太の椅子を大切に運びながら、心の中で思った。
この旅で、すずめを守り、草太の使命を支え、そして自分の想いをちゃんと伝えたい——。