すずめの戸締まり 〜幼なじみと閉じ師 の旅~   作:陽HARU

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東北への道と、母のような痛み

 

 

東京を後にした一行は、芹澤朋也のオープンカーで東北へ向かった。

車内は少し窮屈だった。運転席の芹澤、助手席の環さん、後部座席にすずめと蓮、そして草太の椅子を膝に抱いた状態。突如現れたダイジン(とサダイジン)が時折車内を動き回る姿は、まるで奇妙な家族旅行のようだった。

 

高速道路を北上するにつれ、景色が次第に変わっていく。すずめは窓の外を眺めながら、時々草太の椅子を優しく撫でていた。蓮はすずめの隣で、彼女の疲れた肩にそっと手を置く。

「すずめ、ちょっと休めよ。東京からここまで、ほとんど寝てないだろ?」

 

すずめは小さく首を振った。

「ううん……草太さんをこのままにしておけない。常世に行って、絶対に連れ戻す」

 

環さんは助手席から振り返り、厳しい口調で言った。

「すずめ、何を考えてるの? 高校生が勝手にこんな旅に出て、危ない目に遭って……私をどれだけ心配させたと思ってるの? あなたはまだ子供よ。家に帰りなさい」

 

車内の空気が一瞬で張りつめた。

すずめは唇を噛み、声を震わせながら反論した。

「環ちゃんこそ……ずっと私のために我慢して……私、環ちゃんの人生を奪ってるみたいで、ずっと辛かった。母さんがいなくなってから、環ちゃんが私の『母さん』みたいに頑張ってるの、わかってるよ。でも、私ももう子供じゃない。草太さんを助けたい。この旅で、いろんな人の日常を見て……自分の過去とも向き合いたい」

 

環さんの目が潤んだ。

「すずめ……私はあなたを本当の娘みたいに思ってるわ。でも、あなたが危険なことに首を突っ込むのを見てるのは、怖いの。母さんが亡くなった時のように、また大切な人を失うんじゃないかって……」

 

蓮は二人の間にそっと割って入った。

「環さん、すずめは本当に頑張ってるんです。俺もずっとそばにいて、見てきました。草太さんの使命も、すずめの想いも……俺はすずめを支えたい。環さんを心配させるつもりはなかったけど……今は、一緒に草太さんを迎えに行きたいんです」

 

芹澤がハンドルを握りながら、軽く笑って空気を和らげた。

「みんな、熱いね。俺も草太の友達として、協力するよ。道の駅で少し休憩しよう」

 

道の駅大谷海岸で車を止めた時、環さんとすずめの衝突は頂点に達した。

環さんはすずめを強く抱きしめながら、涙をこぼした。

「すずめ、あなたが私を『重い』と思ってるの、知ってるわ。でも、私はあなたを失いたくないの……」

 

すずめも環さんの背中に顔を埋め、声を詰まらせた。

「環ちゃん、ごめん……私、環ちゃんの時間を奪ってるみたいで、ずっと罪悪感があった。でも、環ちゃんがいてくれたから、今の私がある。ありがとう……大好きだよ」

 

二人は長い間抱き合い、ようやく和解した。蓮は少し離れたところでその様子を見守り、心の中で安堵した。草太の椅子は静かに、二人の会話を聞いていた。

 

実家の跡地に着いた頃、すずめは土を掘り返し、幼い頃に埋めた缶を見つけた。

中から出てきた日記。3月11日のページから先は真っ黒に塗りつぶされ、最後のページには夢で見た光景と、古い扉の絵が描かれていた。

 

すずめは震える手で日記を握りしめた。

「ここが……常世への扉の場所……」

 

ダイジンとサダイジンが導く中、草木に覆われた錆びた扉が現れた。

すずめは深呼吸をし、蓮の手を強く握った。

「行こう、蓮。草太さんを迎えに」

 

常世の扉が、ゆっくりと開いた。

 

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