すずめの戸締まり 〜幼なじみと閉じ師 の旅~ 作:陽HARU
旅から帰って数ヶ月が経った寒いある朝
宮崎の港町は、いつものように穏やかな陽射しに包まれていた。
すずめは看護師を目指して勉強を続け、蓮も勉強を頑張り県一の大学を目指しすずめとともに勉強をしていた。
蓮とは毎日一緒に登校する普通の日常を取り戻していた。環さんも、二人の関係を温かく見守っている。
その日、蓮は日直で早めに家を出てすずめは一人でいつもの登校路を自転車で走っていた。
そのいつものの登校路の坂道を下りながら途中で自転車を止めた。
道の先に、一人の長身の青年が立っていた。
長い黒髪を風になびかせ、静かな目でこちらを見ている。
草太だった。
すずめは自転車から降り、ゆっくりと近づいた。
胸が熱くなり、目が自然に潤む。
草太は穏やかな笑みを浮かべ、静かに言った。
「すずめさん……ただいま」
すずめは自転車を支えたまま、涙をこらえきれずに微笑んだ。
「草太さん……おかえり。無事で、よかった」
二人は坂道の途中で、しばらく言葉を交わさずに立っていた。
旅の記憶——椅子になった草太、命がけの戸締まり、常世での再会——が、二人の中で鮮やかに蘇る。
草太は優しく言った。
「教師の道を進むことにしたよ。君のおかげで、生きて戻ってこれた。ありがとう、すずめさん」
すずめは頷き、目を細めた。
「私も、看護師を目指してる。旅で学んだこと、忘れないよ。草太さんに出会えて……本当に、よかった」
その時、坂道の上から自転車を漕ぐ音が聞こえてきた。
蓮だった。すずめが遅いことに気づき、迎えに来たらしい。
蓮は草太の姿を見て、少し驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな笑顔になった。
「草太さん……おかえりなさい。すずめを、守ってくれてありがとう」
草太は蓮に軽く頭を下げた。
「蓮、君こそ。すずめさんの幼なじみとして、ずっと支えていたんだろう俺は旅を終えて、普通の生活に戻るよ。二人とも、幸せになってくれ」
三人は短い会話を交わし、草太は静かに先に坂道を下っていった。
すずめは蓮の横に並び、自転車を押しながら呟いた。
「草太さん、ちゃんと教師になるんだね……よかった」
蓮はすずめの肩を軽く抱き寄せた。
「そうみたいだね。俺たちは、これから俺たちの日常を大切にしよう。すずめ、俺と一緒に」
すずめは頷き、蓮の手を握り返した。
「うん、おかえり、これからもよろしく、蓮」
港町の朝風が、二人の髪を優しく揺らした。
旅は終わり、新しい日常が始まる。
二人の戸締まりは、これからも紡いでいく