うたをつぐもの―うたわれるもの・After―   作:根無草野良

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~第三幕・19~ 帰路・余興

 

 夜、食事を終えた『ティティカルオゥル』の一同は、カリンに誘われ、一つの輪を作っていた。

 囲んでいるのは、小さな椀と二つの賽(さい)。

 軽やかな響きが鳴る度に、一喜一憂の声が湧く。

 丁半を競うだけの単純な勝負だが、始めはお遊び半分だった雰囲気も、金品を賭けるに至り、妙な真剣さを孕んでいった。

 他ならぬ某(それがし)こそが一番に、だ。

 エヴェンクルガにあるまじき浅ましさだとはわかっていたが、負け続けでは誇りが許さなかった。

「半だっ」

「ではわたしは丁で」

「双方文句はないね?

 いざ……

 はい、五一の丁だ」

「う……」

「おー、またカリリンの勝ちだー」

「トラの負け。

 十九回連続」

「ぐむ……」

 やいのやいのと騒ぐ周囲の声を聞きながら、脱いだ袴を投げ捨てる。

 これで身は褌(ふんどし)一丁となった。

 恥晒しもよいところだが、ここまできて後には退けない。

 妙に盛り上がる観客の中、アルルゥの目だけはいつも通り平坦だった。

「トラ、もうあきらめる。

 トゥラミュラなんだから」

「うるさい!

 人を禍日神(ヌグィソムカミ)よばわりするなっ」

「うーん、

 でも、ホントに憑いてるからなぁ……」

「ティティカ姉さま、

 イカサマでもしてますの?」

「いや、ヒラだよ。

 やるならもう少し割り振るさ」

「はあ。

 本当に勝負運がないんですのね」

「ええい、最後の勝負だ!」

 勢いに押されるがまま最後に残った品を、己の半身とも呼べる愛刀を賭けていた。

 軽い驚きを見せながら、それでもカリンは余裕の笑みを崩さない。

「本当にいいんですの?

 武士(もののふ)の魂でしょう?」

「トラ、やめといたほうがいい」

「そうだよトラちゃん。

 勝てっこないんだから」

「なんなら褌(ふんどし)賭けてもいいけどね」

「ええい、武士(もののふ)に二言はないっ。

 丁だ!」

「では、わたしは半で」

 無責任な煽りの中、最後の勝負が始まった。

 振り壷がわりの小さな椀に放りこまれた二つの賽が、地に触れ軽やかな音を立てる。

 

 瞬間、漲(みなぎ)る緊張感。

 

「それじゃあ、いいかい?

 せーのっ……」

 戦場で敵を見るようなまなざしに見守られ、持ち上げられた椀の中身は――

「「「っ!」」」

 ……まあ、皆の予想通りであった。

 

 この後、刀を取り戻すために課せられた屈辱的な労務は……思い出したくもない。

 もう二度と賭け事に手は出さぬ。絶対にだ。

 

「そういう方ほどのめりこむのですけどね」

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