うたをつぐもの―うたわれるもの・After― 作:根無草野良
「ふぅ。このところ忙しいな」
某(それがし)たちは今日もまた、街の巡回行に追われていた。
事件は日々数を増している。
近頃では個人の喧嘩ではなく、少人数の小競り合いに質を変えていた。
制する手際もよくなろうというものだ。
始めは皆で対応していた事件にも、今では個々別々で応じるようになっていた。
それでも手はまるで足りていないのだが。
「まったく、チマチマチマチマと面倒な。
事を起こすなら問答無用で叩き潰せるような
悪事を働けばよいものを」
「メチャクチャ言うね、テルテルも。
そうさせないためにやってるんじゃない」
「でも、気持ちはわかりますわね。
たまには全力で剣を振るいたいものですわ」
「流民の方々との騒動が増えてますよね、やっぱり。
僕たちが対応しているものも、
止めなければどれぐらいの騒ぎになるか
わかりませんよ」
「ホントウに。
いよいよ周辺諸国の戦乱も
終盤に入っているのでしょう、
ハイ」
ニコルコの言葉も推測ではなく、商人の情報網に裏づけされたものなのだろう。
真偽は、確かめるまでもない。
街へと流れこむ流民の数が事件の数に比例して増えているのは、対応している某(それがし)たちが一番よくわかっているのだから。
ベナウィ殿も、新たな居住区や法令を定め対処を進めてはいるが、流入してくる数が減らないことには、なかなか成果も上がらないようだ。
自然と深い息が漏れる。
「はあ……?
なんの騒ぎだ、今度は」
だが、悠長に溜息を吐いている暇もなかった。
振り向けば、膨らんだ人垣がまたぞろ騒ぎだしていたからだ。
「またか……
ん?
あれは、さっきトウカ姉が向かったところじゃなかったか?」
「うむ。
説得に失敗したようだな」
「ということは、お得意の交渉中かぁ」
「交渉というんですか、あれを?
良し悪し関係なく
叩きのめしてるだけじゃありませんか」
「放っておいてもいいんじゃありません?
トウカさんも色々とたまっているんでしょうし」
「人死にもでていないようですしね、ハイ」
「そんなわけにいくか。
はぁ、トウカ姉!」
呑気(のんき)に構える一同を置いて、疲れた体に鞭を打つ。
某(それがし)はトウカ姉の剣撃に巻き込まれぬよう気をつけながら、騒ぐ人垣へ向かっていった。