うたをつぐもの―うたわれるもの・After―   作:根無草野良

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~第三幕・55~ トゥスクルの動乱・経過

 

「ふぅ。このところ忙しいな」

 某(それがし)たちは今日もまた、街の巡回行に追われていた。

 事件は日々数を増している。

 近頃では個人の喧嘩ではなく、少人数の小競り合いに質を変えていた。

 制する手際もよくなろうというものだ。

 始めは皆で対応していた事件にも、今では個々別々で応じるようになっていた。

 それでも手はまるで足りていないのだが。

「まったく、チマチマチマチマと面倒な。

 事を起こすなら問答無用で叩き潰せるような

 悪事を働けばよいものを」

「メチャクチャ言うね、テルテルも。

 そうさせないためにやってるんじゃない」

「でも、気持ちはわかりますわね。

 たまには全力で剣を振るいたいものですわ」

「流民の方々との騒動が増えてますよね、やっぱり。

 僕たちが対応しているものも、

 止めなければどれぐらいの騒ぎになるか

 わかりませんよ」

「ホントウに。

 いよいよ周辺諸国の戦乱も

 終盤に入っているのでしょう、

 ハイ」

 ニコルコの言葉も推測ではなく、商人の情報網に裏づけされたものなのだろう。

 真偽は、確かめるまでもない。

 街へと流れこむ流民の数が事件の数に比例して増えているのは、対応している某(それがし)たちが一番よくわかっているのだから。

 ベナウィ殿も、新たな居住区や法令を定め対処を進めてはいるが、流入してくる数が減らないことには、なかなか成果も上がらないようだ。

 自然と深い息が漏れる。

「はあ……?

 なんの騒ぎだ、今度は」

 だが、悠長に溜息を吐いている暇もなかった。

 振り向けば、膨らんだ人垣がまたぞろ騒ぎだしていたからだ。

「またか……

 ん?

 あれは、さっきトウカ姉が向かったところじゃなかったか?」

「うむ。

 説得に失敗したようだな」

「ということは、お得意の交渉中かぁ」

「交渉というんですか、あれを?

 良し悪し関係なく

 叩きのめしてるだけじゃありませんか」

「放っておいてもいいんじゃありません?

 トウカさんも色々とたまっているんでしょうし」

「人死にもでていないようですしね、ハイ」

「そんなわけにいくか。

 はぁ、トウカ姉!」

 呑気(のんき)に構える一同を置いて、疲れた体に鞭を打つ。

 某(それがし)はトウカ姉の剣撃に巻き込まれぬよう気をつけながら、騒ぐ人垣へ向かっていった。

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