うたをつぐもの―うたわれるもの・After― 作:根無草野良
『キュイイイイイイイ!』
天井と共に落とした巨鳥の向こう、瘴気渦巻く法陣の端に、歓声を上げるアルルゥを見た。
その動きを封じているラクシャインと、呪言を唱え続けるハクビ。
そして、その背後に控えるリュウガ兄の姿も。
見つけるまで延々と壁を崩す羽目になるのかと思っていたが、見当は間違っていなかったようだ。
となれば、後はアルルゥを取り返すだけ。
だが、周囲に群れなす黒装束たちも、そうそう黙ってはいまい。
行動は、迅速かつ大胆に。
『ティティカルオゥル』の精神は、すでに某(それがし)の骨髄にまで染みこんでいる。
「いつまでも鳥の相手などしていられん。
一気にカタをつけるぞ」
「応!」
リネリォ殿の声を受け、剣を一度鞘に納めた。
瓦礫の山から身を起こそうとしている巨大な大鷲に備え、構える。
『キュイイイイイイイ!』
咆哮と共に迫り来る、鉄の重さを宿した羽ばたき。
だが、もはや某(それがし)の行く手を遮る手段とはなり得ない。
「ツアア!」
抜き放つ居合いの技は、今や意のままに風の壁を斬り裂くことができる。
斬撃の威力はそれだけに留まらず、法術により生み出された炎と岩の協撃と共に、巨鳥の首を殴り払った。
『キュイイイイイイイ!?』
響く、憎悪と苦痛の咆哮。
あまりに強い感情は、周囲の『怨(オン)』にも負けぬほど。
それが消え去るより速く、某(それがし)の拓いた道を駆け抜けたテルテォが、双刃の旋撃を巨鳥に向けた。
「ぬおお!」
『ギィィィィア!!』
鋼鉄の肌と羽を裂き、胴に刻まれる十字の傷。
吹き上がった血が落ちるより早く、さらに一撃。
いや、二撃が続く。
「これで――」
「お終い、ですわっ」
巨鳥の首を、リネリォ殿の槍刃が上から、炎を纏った剛剣が下から襲った。
それはさながら、龍の頭を落とす断頭台(ギロチン)。
上下から加えられた加減のない渾身、『ティティカルオゥル』最重高の協撃に、いかな森の主(ムティカパ)とて耐えられるはずもない。
『キェ――』
巨鳥は断末魔すら残すことなく、その首を弾くように飛ばしていた。
天井の落下からことが終わるまで、要した時間は脈二つ。
なにが起きたのかを理解できた者が、果たして何人いただろう。
ただ、その中で一人だけは、確かに意味を解していた。
それは、いつの間にか止んでいた呪の響きからも明らか。
「ジャカウっ!?」
驚愕の悲鳴は初めて聞く、ハクビの感情的な声だった。
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