うたをつぐもの―うたわれるもの・After―   作:根無草野良

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~第二幕・3~ カミュ襲来・買物

 

 殺伐とした街並みも、華があるだけで途端に見違えたものとなる。

 妙齢の女性でもまた同様らしい。

「見て見てアルちゃん、

 この髪留め、かわいいよ。ほら」

「んむー?」

「あは、似合う似合う。

 ガチャタラもつけてみる?」

『キュ』

「ムックルも、つける」

「あー、いいね、うんうん。

 ムックルもかわいいよ」

『ヴォウ?』

 往来を賑々(にぎにぎ)しく進んでいく二人と二匹。

 ムックルやガチャタラにも臆さぬ様は、確かに古くからの付き合いを思わせた。

 一行が通るその時だけ、くすんだ通りも色を取り戻す。

 対応する店の者たちも、自然と頬をゆるめていた。

 カミュ様の振りまく明るさがそうさせるのだろう。

 柔らかいアルルゥの笑みも。

「あれ、おいしそう」

「ホントだ。んー、いい匂い」

「カミュちー、一緒にたべる」

「うんっ、行こ!」

 二人か交わす言葉と表情からは、強いつながりが見て取れた。

 時を重ねて培(つちか)った、時を隔てても変わらぬ絆だ。

 振る舞いの一つをとってみても、心からの安らぎが知れる。

 そんなアルルゥの様子に、某(それがし)は密かに安堵を覚えていた。

 少しだけの痛みと、疲れも。

 折れそうになる膝を曲げ、一歩を苦労して進める。

「タ、タイガ様。

 ぼく、もう動けません」

「が、がんばってください。

 某(それがし)も、もうこれ以上は

 担げませんので……」

 後ろから聞こえてきたムティ殿の声に振り返るが、見えたのは背に負った大量の荷物だけ。

 朝から街を歩き回ってきた二人に付き従った成果だ。

 およそガラクタにしか見えない品々は、嵩(かさ)と重さだけは酒樽にも負けぬほどで、某(それがし)とムティ殿を押し潰さんと力を加え続けている。

「姫さま、嬉しいのはわかりますが、

 少しは控えてください」

「そ、そうだぞ。アルルゥもだ。

 だいたい、こんなに買っても

 どうせ持ち運べないだろ」

「わかってないなぁ。

 こういうのは買うのが楽しいんだよ。ねっ」

「ん。カミュちーといっしょ、たのしい」

「アルちゃん……。

 うんっ、カミュもアルちゃんと

 一緒だから楽しいんだよっ」

「むふー」

 抱きあう二人の姿を見ると、それ以上強くも言えなくなってしまう。

 なぜか棘のある周囲の目に、口まで重くさせられた。

「つぎ、あれおもしろそう」

「ほらほら。ムティ、トラちゃん、

 置いてっちゃうよー」

 駆けていく二人と二匹の後姿に、ようやく横に並びきたムティ殿と目を合わせ、大きな溜息を交わす。

 なぜか覚える強烈な親近感。

「……行きましょうか」

「……はい」

 互いの苦労を思いながら、重すぎる一歩を踏み出した。

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