うたをつぐもの―うたわれるもの・After―   作:根無草野良

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~第二幕・11~ カミュ襲来・従者

 

「ぐふぅ……」

 戻ってきた大部屋で盛大に倒れこむ。

 今日もまたアルルゥに振り回された。

 カミュが一行に加わって以来、悪戯の度合いが冗談ではすまなくなりつつある。

 明日こそは厳しく言ってやろうと思うのだが、そう思って対峙するたび、新たな罠にかかっているのはどういうわけか。

 なにかよい方法はないかと考えていると、同室の一人が帰ってきた。

「だふぅ……」

 オンカミヤリューの少年僧が。

 ムティ殿は疲れ果てた息を吐きながら、某(それがし)の対面につっぷした。

「ムティ殿も、お疲れのようですね……」

「ああ、タイガ様……

 いえ、ちょっと、大事なものまですり減らした程度ですから……」

 答える声には生気がない。

 よく見れば、口からなにかが抜け出しかけているようにも見えた。

 もちろん錯覚に過ぎないのだが。

「カミュのお守りとは、大変な仕事を仰せつかったものですね」

「はぁ、まったく……

 でも、しかたありません。

 お爺様の代からのお勤めですので」

「それはすごい。

 代々オンカミヤリューの姫君に仕える身とは」

「それは、ええ、

 家の務めには誇りをもっております。

 賢大僧正(オルヤンクル)は美しく聡明で、この世でもっともお優しいお方。

 お仕えできるのは至上の喜びです……

 けれど、ですね……

 はぁ。なぜ姫さまはあのように育ってしまわれたのか……

 ぼくの従い方が間違っていたのでしょうか」

「いや、あれは生来のものでしょう。

 どうもはしゃいでいる子供のようにしか見えませんから……

 アルルゥのせいだよなぁ、どう見たって」

「タイガ殿も大変ですね。

 アルルゥ様のような方をお守りするのは」

「わかっていただけますか……

 本当にもう、考えているのは食い物のことか人をおちょくることだけ。

 ムックルなんてのが懐いているだけにタチが悪い。

 いないと思って強く出れば、ガチャタラをけしかけられるし……」

「わかりますわかります。

 なぜあの手の方々は悪知恵ばかり働くのでしょうね。

 姫さまも、悪戯に使う法術ばかり上手くなって。

 最近では妙に政治的な手腕まで発揮されているような……」

「まったく、女は恐ろしいというか、

 女というより子供は、ですか」

「本当に。姫さまがぼくより年上だとはとても思えませんよ」

「はは、確かに。

 アルルゥなんて見た目からして子供そのもので――」

「ふぅぅん」

「ふーん」

「「ぬぉわ!?」」

 あまりの和やかさと疲労感から、部屋に入りこんでいた第三、第四の人物にまったく気づかなかった。

 硬直したムティ殿と共に、恐る恐る後ろを見やる。

 双眸を輝かせた禍日神(ヌグィソムカミ)。

 もとい、アルルゥとカミュがそこにいた。

「ひ、ひめ、さま……?」

「ア、ルルゥ……

 ええと、いつから、そこに……」

「えっとねぇ、

 カミュのお守りは大変ですね、のあたりかな♪」

 ……ほとんど全部じゃないか。

 妙に上機嫌な笑顔のまま、二人してにじり寄ってくる。

「ま、待て、落ち着け二人とも。

 違うんだ、これはその、大いなる誤解というやつで……」

「タイガ様……

 わるあがきは止めましょう」

「ム、ムティ殿?

 なにをそんな清々しい諦めの表情を浮かべているのですか?」

「ムティは素直だなー。

 トラちゃんも潔く覚悟を決めないと。

 武士(もののふ)なんでしょー?」

「か、覚悟って、なんのっ?」

「なんのって、ねー、アルちゃん?」

「ん。今なら一〇〇〇〇倍のところが、

 九九九九倍ですむ」

「ほとんど変わらないじゃないかっ。

 や、やめろ、なにをす……

 のあーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

 ……その夜、なにがあったのかは……

 まぁ、墓まで持っていこうと思う……

 

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