うたをつぐもの―うたわれるもの・After― 作:根無草野良
「はぁぁぁぁ」
オンカミヤムカイへと向かう道中。
歩みを進める後ろの人物、沈痛な面持ちを引きずったカミュの口から、盛大な溜息が聞こえてきた。
「どうしたんだ?
まだ、ユズカ殿のことが――」
「ううん、そうじゃなくてね。
う~ん……ねえ、
やっぱりカミュも行かなきゃダメかなぁ?」
「当たり前ですっ」
困惑混じりの言葉に対し、元気な声が応えた。
どこから現れたのか、ムティ殿は妙に嬉しそうだ。
「まったく、
なにを言いだすんですか、ここまで来て。
姫さまだってお分かりでしょう?
賢大僧正(オルヤンクル)が
どれほど心配なさっておられるか」
「う~、それが怖いんだよ~」
「んむー?
ウルトおねーちゃん、やさしい」
慄(おのの)くカミュの様に、アルルゥは小さく首を傾げている。
というかこやつ、賢大僧正(オルヤンクル)まで見知った仲なのか。
まぁ、その妹君と親友なのだ。
おかしくはないのだが、二人の日頃を見ている限り、カミュが怯える理由は、なんとなく分からなくもない。
「アルちゃんは、お姉様の本当の怖さを
知らないからそんなこと言えるんだよ。
問答無用で人を癒すあの笑顔で、
相手が逆らえないのをいい事に、
無理難題を吹っかけてくるんだから~。
他の人たちは幸せそうな顔して潰れちゃうけど、
カミュには効かないんだから」
……なるほど。確かに姉上だ。
カミュの日頃の行いに、多大な影響を与えたに違いない。
「さあ、姫さま、
先を急ぎましょう。早く早く」
「え~~~、や~~~だ~~~!」
考えている間に騒動の元は行ってしまった。
意気揚々と先を行く、少年僧に手を引かれて。
「……ムティ殿、生き生きしてるなぁ」
「ん、たのしそう」
まさか日頃の仕返しではなかろうが。
鼻歌混じりで進むムティ殿は、いつになく機嫌のよい足取りを見せていた。