評価・感想いただけると泣いて喜びます。
2、3日ごとに投稿できるよう頑張ります。
~side
結局こいつは何者なのだろうか。
電柱から出てきた際は赤ちゃんだったのに数日ですくすくと育った女の子。
「うまっ、うまっ!」
深夜にも関わらずオムライスをおいしそうにかっ食らう謎に包まれた女の子を見ながらぼんやりと考える。
「あなた、一体どこから来たの?」
「んっ」
少女は当然と言わんばかりに空を指さす。
示しているものは満月…だろうか、なるほど。
少し前までは赤ん坊だったのにここに来るまでの記憶があるらしい、どこまでも不思議な存在だ。
「で?宇宙人が一体何しに来たわけ?侵略?」
「うーん何かあんまよく覚えてないんだけど~、とにかく毎日超つまんなくて~、楽しいところに逃げた~いって思った気がする」
軽い説明によくわからない目的。
呆れた…そんな理由で逃げ出したとは、そのあとの再スタートは大変なのに覚悟はあるのだろうか?
そんなことを伝えようとした彩葉に対し少女が続けて言った。
「
「あと?」
「なんかね~、会いたい人が、会わなきゃいけない人がいる。そんな気がするんだ」
今までの軽い雰囲気とは打って変わって真面目な雰囲気でそう話す謎の少女。
推定月から来た少女、会わなきゃいけない人がいる、と。これはそういうことだろうか。
「ふ~ん…あのさ、ちなみになんだけどこれに心当たりはある?」
再生していたヤチヨの動画を打ち切ってタブレットに【竹取物語】の絵本を示して見せた。
「なにこれ?」
「竹取物語。月からやってきた姫が竹の中から出てきて、
雑な説明で締めくくると、少女は訳が分からないとばかりに首を傾げる。
「けっこん?たけー?」
「まぁ、あんたが出てきたのは竹じゃなくて電柱だったけどね。」
我ながら
「あんたもしかして…かぐや姫なの?」
「おいしそう…」
聞けよ話を。あんたの話をしてるんだぞ、私の話より先に飽きるんじゃないよ。
オムライスを平らげた少女は竹取物語を表示したタブレットではなく、私の手元にあるタコライスを見つめている。
まだ食う気なのかこいつ。
「うう~」
力ずくでは無理だと判断したのか素早く泣き落とし。
あきらめてタコライスの皿を突き出すと、少女はあっさりと泣き真似をやめてむしゃむしゃと食べ始める。
「いただきまーす!で、なんだっけ?」
「だからぁ!」
「あぁ、そっかそっか。つまり
「八十年後の未来でも見えちゃってるのかなぁ、違うよ!?」
「ぬはは~」
今度は笑ってごまかしにきたか。さっきからよからぬ手法ばかり覚えおってからに。
「で、お話はどうなるの?」
「ん?」
「
聞いてたのか。飽きていたように見えていたけど、情報を取り入れることに関しては食欲と同じように貪欲らしい。
「
「あぁ、うん。えっと…お迎えが来て、
「おー!すごいじゃん!…で続きは?」
「ない。終わり。めでたしめでたし。」
何度見ても
「えー!月に帰って終わり?なにそれ超バッドエンド!かぐや姫絶対不幸じゃん!しかも何かいい話風に終わってるのが余計許せないよ!
なにがそんなに癪に障るのか、やたらと畳みかけてくる少女。いわれてみれば姫にとってはそれが本意だったのかはわからない。でも―
「これは、そういうお話なの」
付き合いきれなくなったので空になったお皿を引き上げて流しへ運ぶ。
少し気になる言葉もあったが、話はこれでおしまい。そんな意思を示したつもりだったけど、
「バッドエンド、やぁーだぁー!ハッピーなのがいーいー!」
そんなことを言われても知らんがな。
「バッドエンドや~だ~♪ハッピーなのがい~い~♪」
なぜか歌いだす少女。しょうがないなぁもう。
私は流しの縁に背を預けて振り返る。
「どうしようもないじゃん。暴れたって歌ったって、決まってることが変わるわけじゃないし。」
そして、駄々をこねる少女を見下ろして言い切った。
「受け入れて覚悟するしか、ない」
「それは違うよ」
放った言葉に対して少女はきっぱりと私に言った。
「なに?急に」
「大事なのは受け入れる覚悟じゃないの、運命が決まってるとしても、どうしようもないことだとしても、最後まで抵抗し続ける覚悟。それが、本当に必要なものだって、私はあの人にそう教わった」
少女は私の顔をじっと見つめながら、流暢に言葉を紡ぐ。
それが大事な、自身の宝物だ、と。そう告げるように。
というかこいつ、こんなすらすらと喋れるんだ。
あっけにとられている私が黙り込み固まったように動きを止めていると、少女は決然と言い放った。
「よし、決めた。自分でハッピーエンドにする!」
まるで魔法少女化のようにびしっとポーズを決めてみせる少女。
「そんでハッピーエンドまで彩葉も連れてく!いっしょに!」
当然のように巻き込まれた。なぜだろう、この少女なら本当に私をハッピーエンドまで連れて行ってくれるのかもしれない…。
そう考えている私の脳内にいつかの母の声がリフレインする。
―都合の良い話は毒や。一番食ってかからなあかん。
「ハッピーエンドいらない、フツーのエンドで結構です。」
私のエンディングはもう決まっている。あとはそこまで積み重ねていくだけなんだから。
この話を続けさせるのはまずい。私の考え方がこの少女の影響を少なからず受けてしまいそうだ。
「というか、あんたの会いたい人って竹取物語の
「え?うーん、たぶんちがう、と思う」
「たぶんってあんた、自分の会いたい人がどんな人か覚えてないの?」
竹取物語的に言えば会いたいのは
「どんな人か、さっきも言ったけどあんまり覚えてないんだよね~。いた気がするってだけで」
「それなら会えたとしても気づけないんじゃないの?」
「だいじょーぶだいじょーぶ!たぶん会えたらビビっときてわかる気がするから!」
「適当かよ…」
シャッッ!
ん?何かが今窓を横切ったような…気のせいかな?
まぁここは2階だし、カラスだろう。さっきも結構飛んでたし。
~side???~
『どうだった?あの子はあなたの追い求めるかぐや姫だったかな~?』
「…いや、どうやら違うようだ」
『ありゃ、やっぱり?まぁ私と会ったときにそんな話になってないからそうだとは思ってたけど。成長後の見た目を見ても違うんならやっぱり別のかぐや姫みたいだね~』
「あぁ、そうだな」
深夜の住宅街、そこにある電柱の先に立つ謎の男がつぶやく。
傍から見ればひとり言をつぶやきながら電柱に立つ不審者だ。
事実少女たちの暮らす家の窓を高速で横切り、その少女たちの見た目を確認していたのだから、完全に不審者なのだが。
「それで、もう帰ってもいいか?」
『うん、私の知る因果通りにちゃーんと進んでいるみたいだし、もう大丈夫!』
「そうか」
『うんうん!ここ数日付き合ってもらっちゃってありがとね、さすが私の相棒!』
かぶっていたフードが風で外れる。
露わになった男の見た目は緑色の髪に切れ長の目で、非常に整ったものだった。
『これからもよろしくね、
「今は黒鬼の帝アキラがいるんだから、その呼び方はやめてくれ」
『天帝のほうがよかった?』
「そっちじゃなくて、名前にしてくれ」
その男の手には、現代日本に似つかわしくない、骨のような見た目をした蛇腹剣【天帝の覇剣】が握られていた。
『は~い、ベ・レ・ト♪』
「…FUSHI、なんで最近のヤチヨはテンションが迷子なんだ?」
『たぶん自分の知ってる通りの展開で進んでいるからだろ、気にしたら負けだぞベレト』
「…そうか。」
天帝の覇剣:いわゆる蛇腹剣。剣を伸ばすことで遠くの敵・複数の敵に攻撃できる。ベレトにしか使用できない、オリ主にチート特典として与えられた武器。
元々は天帝の剣だったけどとある出来事が起きた際に天帝の覇剣になってさらに強力になったよ。でもこの世界では強くなった意味はなかったちょっと残念な武器。