センセイモドキは先生を辞めたい   作:ブルアカやったことない民

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トリニティトショカンシミは一番不憫で一番策士

「最近さぁ、表紙買いってあんまりすることなくなったんだよね」

 

「あー……昔はよく言いましたよね。私は今でも表紙買いしちゃうことありますけど」

 

 外では雨が降っていて、エアコンが湿気と室温を適正に保ってくれている。ソファに二人、シミコと一緒に積んでいた作品の消化をしている。テレビとか小説とか、色々。

 

 俺とシミコはドミノのように、いやギリ十字になって本を読んでいる。T字かもしれない。俺がソファに座って、シミコがソファに寝転がるようにだ。いや、うん。待って。最初は普通だったんだよ。普通に二人で本を読んでたんだよ。それがだんだんとおざなりになってきたというか『あ、この人全然拒否らねぇな』って互いに理解してきたというか。

 

 それがどんどん進んでいって今や俺はシミコの頭に本を乗せて読んでいるし、シミコは俺の膝に顎を乗せて本を読んでいる。距離感がね。付きあってから2、3年経って倦怠期乗り越えた後はもうゴールするかだらだらと別れるだけのカップルみたいな感じなのよ。付きあってないよ?ホントダヨ?

 

 ボーっとシミコを乗せながら本を読んでいる。これは最近発売されたラノベだ。追ってはいなかったが知っているイラストレーターがイラストを担当しているので買ってみた次第だ。

 

 さて、俺の本の好みを話しておくと俺は結構悪食だ。なんでも読むし何でも見る。それこそ、ド定番のドラマやアニメだってみるし、ひと昔ふた昔前のものだって見たりする。女子校が共学になってある男子生徒がなんやかんやで生徒会に入るヤツとかね。下ネタ満載で女子に話させていいの?ってなった最高に面白い奴。定期的に見直したくなるんだよね。いや、面白いもそうなんだけど立場がさぁ……近いじゃん?

 

 小説だって色々だ。有名な文学……こっち来る前に一番新しく読んだちゃんとした小説は田山花袋の『布団』かも。学校の教科書で読んで全部読んでみたくなってね。ほら、教科書って一部を抜粋する感じで載ってるから。あれもあれで嫌な最期というか、ぬるいカフェラテを飲み干すような後味の悪さがある。

 

 という文系を気取るには十分なほどに拗らせてるタイプの人間なので失礼な話だがシミコとの会話は弾みに弾んだ。ウイも弾むには弾むんだが、如何せんジャンルが固定されてるので悪食タイプと相性がね……。その点、シミコも悪食タイプで大量に読んで、それをおススメするので俺と好相性だったりする。

 

 そんな俺でも()の移り変わりはあるもので……。最近はとんとラノベを読まなくなってしまった。というより色々なジャンルに手を伸ばす事が無くなったというべきか。最近はVRMMOモノとかホラーを舞台にしたモノとかを中心に読んでいる。ちょっとはみ出しても悪役令嬢系だ。アレはなんか……定期的に摂取したくなる感じがする。感覚的にラーメンに近い。1か月食べてないと『そういえば食べてないなぁ』と思い出すほどのレベル。

 

「なんかさぁ、ラノベが大きいかな?成熟して来たというか、開拓されてきたからジャンルとしてわかりやすくなっちゃって、開拓って方面が失われたような気がするんだよ」

 

──他の小説もそうというか。純文学もミステリーも、それこそ恋愛小説にも言えるけどどれだけ奇を衒った言葉を選べるかどうかに落ち着いてるんじゃないかなと思うんだよ

 

「なんとなくわかりますよ~。出尽くした感と言いますか、今までは多少尖っていたとしても、新しい領域として生まれて来たから新鮮味があったんですけど、今では二枚目三枚目……デジャヴのような空気が蔓延してるなと」

 

──どちらかと言えば読者側が慣れてきたのかもしれませんねぇ

 

 それね~~。俺は深く首肯してページを捲った。

 

「表紙買いもそうなんだけどさぁ。もう開拓されちゃったから表紙で見ても目新しさがないというか。ピンと来るものがあんまりないんだよ。というより、ピンと来る敷居が上がったって言った方が良いのかな?シミコが言ったみたいにさ~。慣れだよね。俺達は慣れてきちゃったんだよ。昨今の本の味に」

 

「でも目立つものはあると思うんですよね~。今の味覚に慣れてきたからこそ、その中で異彩を放つ作品が際立つのでは?今読んでるのだって言葉選びが光ってますよ~?『揉めないためだけに喋るのやめてください』とか」

 

「あぁ~~。知ってる。面白い?あぁいや、違うな。味ある?」

 

「とても。噛み応えある感じです。」

 

 俺達の間では面白いかどうかを聞くと火花が散る程の論争になる時がある。

 やれ面白い面白くないというのは個々人によるもので面白いって言ってたから読んでみた見てみたけどあんまだったと言ってバチバチにやり合う時がそこそこあった。結果は?俺が大概負けるよ。シミコフィジカルエグイんだもん。それでも俺も譲れないものがあると言い張ってやり合った結果、面白いかどうかではなく味があるかどうかを聞くようになった。

 

 本の味、個人的にどんな味と感じたのか。辛いのか。甘いのか。酸っぱいのか。歯ごたえ……つまりは読みごたえはあるのか。今回は味の評価はないものの読みごたえはある。……つまり、読んでるシミコもこの本の味がどんなものかいまだに決めかねているらしい。

 

 俺は読んでいたラノベを置いて、その本を探した。シミコは人にお勧めする時プレゼントすることがあるので二冊以上持っていることが多い。幸いにも二冊目は合ったようで手が届く範囲でシミコを落とさないように探し、拾って読み始めた。読み始めて数秒、早くも引き込まれた。

 

「良いね。コレ。ホントに言葉選びが良い。」

 

 シミコの脇に手を添えてぐぃーっと縦に90度。髪がくしゃくしゃにならないように撫でつけながら頭を胸に乗せて、シミコの本の上に俺の読んでるところで面白かったところを見せる。

 

「はじめのさぁ、掴みが良いよね。名前教えるとこ。インパクト凄い。名前の例えでサ〇ゼ出すんだ。」

 

「その後の某有名サスペンスアニメの劇場版の名前出すんですから記憶に残りますよね~」

 

 これは確かに言葉選びが面白い。台詞がメインなのはちょっと読みにくいが……元々劇でやるものだそうだ。なら納得である。二人して読み進めながらあーでもない、こーでもない、いやここそこの点が良い味出してる。いや、こっちの方だろうとダベっているといつの間にやら人が来た。

 

「な、何してるんですか!?」

 

「えっ?読書」

 

「あ、ウイ委員長。何か御用で……?」

 

「い、いえ……いや二人ともつ、つつ、付き合っているのですか!?」

 

 えーっ?二人して首を傾げる。まー、付き合って4、5年経ってますか?みたいな関係性だけど普通に付き合ってないというか付きあったら俺死ぬよ?爆散しちゃうよ?死ぬほどもめることは確定してるんだもん。というか、これも致し方ない理由があってのことだ。俺はウイに事情を説明した。

 

「いやさ、前ウイと一緒に図書館の片付け依頼をすっぽかしてシミコに助けてもらったじゃん?」

 

「うっ……」

 

「うん。それのお礼というか何して欲しい?って聞いたら一緒に本読みましょうよ~って言われてイマココ。距離が近いのはまぁ……お礼だから基本的に俺に拒否権ないかな~って」

 

「普通に先生が嫌がったら止めますよ?」

 

「あ、そうなの?まぁ嫌じゃないしいいや」

 

「じゃあ続きを……」

 

 そう言って二人でまた読み進めようとする。今いい所なんだよ、良い所で止められるのが嫌なのウイならわかるだろ?

 

「ま、待ってください!ふ、二人はそんなに仲よかった……んですか?」

 

「えー?どうだろ」

 

「えー?どうでしょう」

 

 やっぱり二人して首を傾げる。特段特別なナニカがあったというわけでもない。普通に駄弁って駄弁って、コイツが寝食を疎かにするのでご飯に連れてってやって、たまにアニメやら他の媒体のものを誘ったりして、鑑賞会して、で、今。

 

「そ、そんな……わ、私もまだ……」

 

「いやだってウイは外に出たがらないじゃん。誘い甲斐がないというか……行かないなら良いかなって」

 

「私は別に出不精でもないので……。寝食は二の次にしますけれど」

 

「体壊すからやめなさい」

 

 とチョップをかまし、あいてと見た目だけ痛がるシミコが調子つかないように俺は続けた。

 

「いや、ほら。シミコって結構苦労性じゃん?」

 

「それに頷きたくないですけど……そうですね」

 

「だから同じ苦労人としてほっとけないというか、可哀そうだなって気持ちが強くて……気にかけるのもそれが強いっていうか」

 

「えっ、私憐れみで関わられていたんですか?先生ルートに入ったワケではなく?」

 

「うん。不憫だなぁって思って」

 

「そんな……」

 

 あ、ごめん。シミコ的にそっちだったの?うん。ごめん。いや、シミコならわかるじゃん。俺の立場的に誰か一人と親密になるリスクが。フラグが。もう一人とフラグ立てると死亡フラグが他で乱立するんだよ。

 

「わかりますよ……わかりますけど……勘違いのままでいさせてほしかった。恋愛小説で最後にくっつく人をネタバレされたような気持ちですよ」

 

「それは犯罪だわ。ごめん。理解して。俺が誰か一人になると想像して」

 

「脳破壊されそうです……」

 

「それでテラー化しちゃう子いっぱいだから。キヴォトスの安寧は俺の双肩に懸かってるから」

 

「と、兎に角……!お二人は付きあっていないということで、い、良いんですよね?」

 

「え、うん」

 

「はい……」

 

 あぁ、シミコがヘナヘナシミコに。可愛そうに。大丈夫大丈夫。シミコが俺に関するありとあらゆる面倒事を片付けてくれたら付き合えるからねぇ~。

 

「それって無理ってことでしょう?」

 

「いやいや、待ってよ。俺だって彼女欲しいよ。頑張ってよ。シミコ頑張れ。ほら、まずは目の前のウイを片付けるんだ。ファーストコンバット。ゆくゆくはヒナとかツルギンとかなぎ倒せたら勝ちだから」

 

「無理じゃないですかぁ……」

 

「せ、先生?」

 

「ほら、ウイもウイも。俺を勝ち取るにはまず目の前の生徒に勝たなきゃ。……あ、もしかして俺いらなかった?いらないならいらないで気が楽になるからいいんだけど」

 

「い、いや、いります!要りますから……」

 

「あら、そう。じゃあほら、二人とも腕出して。腕相撲するよ。腕相撲」

 

 そうして、シミコ対ウイのどちらが俺を獲得するかの腕相撲選手権が開催された。ウイは結構頑張ったものの、本気のシミコで数秒でなぎ倒された。ユーウィン。シミコの手を掲げ、勝利宣言。勝者のシミコは特典として今度、俺の仕事を手伝ってもらうことにした。溜まってんだよね。シャーレで俺が決裁しないといけない書類が。ほら、俺と関われるぞ。泣いて喜べ。そういうとシミコは泣いて喜んでいたが、別の涙と思わないでもない。チクショウって言ってたし。キャラ崩壊してるよ。




学名:センセイモドキ(先生)
補遺26
読書に限らず悪食タイプ。何でも見るし、何でも読むし、何でも触れる
補遺27
自分に対する好意は自覚しているつもり。故に恋心を利用するカスとなりつつある

学名:トリニティトショカンシミ(円堂シミコ)
補遺1
トリニティ内で不憫という属性を利用して一番懐まで潜り込んだ
補遺2
潜り込んだせいで身内認定され体よく色々な仕事を押し付けられるようになった
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