センセイモドキは先生を辞めたい 作:ブルアカやったことない民
「キャーッ!」
「わ、私は……!」
テンテンテーン!とBGMが鳴りそうな中、俺は婦女子のような悲鳴を上げた。
違うんですと言わんばかりに慌てるサクラコだが状況が状況だ。聖堂内には慌てるサクラコと倒れているハナコ、それを発見したのは俺こと先生の三人だけ。そして、サクラコの手には由緒正しいであろう聖杯のようなものが握られている。凶器だよね。十中八九。
聖杯を握るサクラコ、倒れるハナコ、それを発見した俺。もう役満だ。これで違ったら何が違うというのか。俺は恐る恐るサクラコ……いや犯人に問うた。
「や、やったんか……?」
「い、いえ!私はただハナコさんにお話があって……」
「やったんか!聞かん坊で我儘で天才を気取るくせに中身が女の子で等身大の自分との乖離や矛盾にもにょもとしているハナコに腹を立てて、やったんか!」
「そ、そんな事は……!」
えらいこっちゃぁ。俺は慌てて駆け出し人を呼ぼうとする。がしかし、キヴォトス人である為に圧倒的パワーを兼ね備えたサクラコは俺の肩をミシリとつかんで離さない。右肩が今にも沈み込みそうだ。まさか……
「お、俺もか……?俺も、やるんか……?」
「ち、違いますから。先生、先生にはご理解していただきたく」
「く、口封じか!?」
「違いますぅ!」
殺される……キヴォトス人のパワーで殺されるぅ……と恐れ慄くなどしていると、さて……そろそろかな?と後ろを見やればサクラコの背後から人影。お、よさげベイベー。
目線で合図、うん。いける?行けそう。OK。じゃあ行くぞー。さーん、にー、いーち…
「わぁ♡」
「ドッキぃぃいいいい!!!」
「ふえっ!?」
「俺の肩がぁッ!!」
ビックリしたのであろうサクラコが俺の肩に置いていた手に思いっきり力を込め、俺の肩は比喩でもなんでもなくサクラコの指の形に陥没したことで俺は絶叫した。クソ痛かった。ちゃんと大怪我だった。
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保健室、俺は包帯で右の肩と腕をぐるぐる巻きにされながらネタ晴らしをした。大層悲惨なことになっていたが、全治1か月らしい。1か月で済んでよかったとも思った。
「ドッキリ、大成功~~」
「大怪我してますけどね♡」
「せ、先生お怪我が……」
「良いの良いの。俺が……てか俺等が悪いし」
グルグルと肩を回そうとするがクソいてぇのであっちゃぁ今日の仕事は無理そうだな。普通に骨折しちゃってんだよね。うん。キヴォトス人のパワー舐めてた。舐めてたっていうか俺が弱すぎかもしれない。嘘……俺って、弱すぎ……?
「そうですよサクラコさん。先生の事は気にしなくて良いんですから♡」
「いやお前はもっと俺を気にしろよ。労われよ。発案者は俺だけど計画したのはお前じゃん」
「ウフフ♡」
笑ってごまかせたら話し合いいらねぇからな?
そう、俺とハナコは無差別のドッキリを敢行していた。聖堂にハナコが倒れる形でスタンバっていて俺が第一発見者だ。発案者は俺、計画したのはハナコだ。ドッキリ仕掛けようぜ!と声を掛けたら乗ったのがハナコだった。まぁハナコならな。それでターゲットになったのがサクラコ。んでその結果、俺は肩を粉砕されたワケだが……
「その何かお詫びを……」
「良いの良いの。ほらサクラコこっちゃ来いこっちゃ来い」
スススッと控えめながらに近づいてくるサクラコの手を握ってやる。
「じゃあお詫び代わりに俺の手伝いしてくれん?ちょっと今日片づける仕事がさ、出来なくなっちゃったからさ」
逃がさないぜぇ……身代わりゲットだァ……!それはそれとして一か月間片腕が使えないのでそれも合わせて頼む。ちょっと腕代わりになってくれん?1か月くらい。OK?大丈夫そう?あ、大丈夫。じゃあよろしく。
「私は問題ないのですが……今日は聖堂のお仕事もなく、あの聖杯を片付けたらそのまま祈りを捧げようかと思っていましたので。それに私がケガさせてしまった以上、お世話するのは道理なので……」
「先生?」
そういってハナコにぐぃっと引っ張られる。なんだよ。耳でコソコソ。エッチィ気持ちになるからやめてくれん?あ、嫌?そう……じゃあ俺もエッティ気持ちにさせるね。俺は目についたハナコの髪を触った。サラサラしてるね。トリートメント何使ってるん?最近困ってんだよね。良いのがなくて……
「後程、私が使っているものを買いに行きましょうね♡……そうではなく、先生?もしや仕事をしたくないから生贄を探していたわけではないですよね?それと私もお世話に参加しますね♡」
「ハハッ、そんなまーさかー……6割ね。6割嘘だから。あとお前はエロイことしそうだからいいよ」
「4割ホントですよね♡あと先生が先にセクハラしてきたんですから許されますよね?」
「4割は四捨五入したらゼロだろうがッ!あとお前がエロいのが悪い!」
だってぇ!俺だって仕事したくないんだもん!なんでこっち来てまでシャーレの仕事しなきゃならないんだよ~。その為に俺は肩を犠牲にしたんだぞ!なぁ!俺は覚悟を見せたがお前は?トリコ(?)
それにさぁ~!お前が傍にいると俺の性欲がビックバンしちゃうんだよ~。もうね。見えるの。未来が。俺の息子がえっちぃハナコと無自覚サクラコによって爆発四散される未来が。サクラコだけだったら耐えられたが二人は無理だよ。ハナコはもう存在がエロいしサクラコはあんな覚悟礼装着てるんだからヤバいよ。
ウフフと笑うハナコに俺は虚勢を張ったが、やはりハナコは強かった。まぁ友人が不純な動機で仕事をさせられそうになってるのは嫌なんだろうし、1か月という割と長い間サクラコに迷惑をかけるのが嫌なんだろう。いや、お前が計画して実行したんだからお前も共犯者だろ。何俺に全部擦り付けてんだ。
「だって、先生なら全部許してくれますよね?」
「許すけどさぁ……。じゃあハナコも純粋に助けてくれよ~。今の俺は別に先生でもないし助けてくれるだろ~。俺だってさぁ、普通なんだよ~。男子高校生だからさぁ、やっぱりその距離感って言うか、女子って存在を意識しちゃうんだよ~。こっちも我慢してるんだからそっちも我慢するのがセオリーじゃん。フツー」
──ハナコが普通の女の子扱いを求めるなら、俺も普通の男子高校生として扱ってくれよ~~
俺は泣き言を漏らしているとハナコが数秒、固まった。何々?
「っ……先生?」
「はいはい、なんでしょう」
──先生を今からブチ犯しても犯罪にはなりませんよね?
そんなことを言うハナコはとても怖く、俺はサクラコに引っ付くなどした。こわ~~。情緒がヤバい女の子って怖いねぇ……。
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俺とサクラコ、それと謎についてきたハナコの三人でシャーレの仕事を処理している。まぁそこまで重い書類でもないので雑談交じりだ。
「サクラコはさぁ~。どう思ってるの?未だに仲良くしたい感じ?」
「え、えぇ。と、というか、皆さんに距離を置かれているのが未だにわからないのですが……!」
「えー、だってサクラコ怪しいじゃん。怪しさの権化、The scariestじゃん。」
「私怪しさ最上級なんですか!?」
うん、頷くと心底絶望したように項垂れる。かわいそかわうそ……でもその怪しさを出せるのはサクラコだけだと思うぞ。一種の才能だ。才能。
「こんな才能望んでないのですが……」
「才能って基本的に望まない人に来る習性あるから。そこのハナコみたいに」
「先生?」
ほーらみろサクラコ。才能に振り回されて苦しんでる奴がもう一人いるぞ~。仲間だ。仲良くしな。きっとわかってやれるしわかってくれるからな。俺は横に居たサクラコをぐぃっとハナコの方に寄せた。
「先生は私達をどうおもっているのですか?」
「そ、そうです。先生。私達の対応がおざなりと言いますか、なんと言いましょう……」
「え、対応?」
うーん。そう言われるとなんかそうだよな。サクラコとハナコにはなんか雑というか、対応が結構距離近い感じにしてる時はある。でもなんか意識してるわけではないし、かといって特別どうこうしようという気もない……強いて言うなら
「サクラコは『純粋に可哀そうだけど行動が行動だしな……』でハナコが『コイツはいつ自分を許すんだろうな』って気持ち。なんかどっちも可哀そうってか、同情できる気持ちはあるんだけど、それはそれとして自業自得だなみたいな……」
「せ、先生?それは……」
「うふふ♡先生は海と山どちらがいいですか?」
「どっちかって言うと海。山は虫居そうでヤダ」
でもな~どちらかというとサクラコよりだな~。だってハナコは自業自得の面が強いけど、サクラコの場合普通に天然だもん。ハナコが天然だとか言われても鼻で笑う自信あるわ。
「私は別に天然と言えるほどのものではなく、確かに俗世に疎いことは認めますが……」
「ほら聞いたハナコ?俗世ですって。俗世。俺等の住んでる世は俗世ですってよ」
「まぁ。サクラコさんはそう思ってらっしゃったんですね……私、悲しいです」
「そ、そういうワケではなく……!」
よよよと二人してウソ泣きしながらサクラコをからかうなどする。楽しいんだよね。サクラコをからかうの。天然故というか、揶揄える隙を見せてくれるからさ。突っつきたくなるんだよね。隙。
「でも仕事的にさぁ~そこら辺直した方が良くない?うっかりするとさ。やばいじゃん。祭具とか」
「そういった物については他のシスターがありがたいことに手伝ってくださいまして……」
「一人で何も出来ない赤ちゃんじゃん。赤ちゃんの近い所に物を置いちゃいけない的な……」
「私……赤ちゃん……?」
宇宙猫みたいで呆然とするサクラコ可愛い。撮っとこ。俺はスマホでカシャリと撮ってその顔をモモトークでシスターフッドにバラまくなどしていると再起動したサクラコが食って掛かるように近づいた。ウォ近……あ、良い匂いする。
「私はそこまでミスをするワケではな」
「でも最近の流行に疎かったりするのでどちらかと言えばお婆ちゃんですよね♡」
「お婆ちゃん……?」
絶望し再度宇宙猫を晒すサクラコを今度はハナコが撮った。すぐさまモモトークが鳴る。うん、可愛い。俺とハナコは頷きあった。奇妙なつながりがあった。サクラコをからかい、可愛がるという奇妙な縁が……。
「先生は……!私のことどう思っているのですか!!」
「言動が空回りするドジっ子」
「ドジっ子……いえ、私はドジっ子ではありません……!そんな、ヒナタのようには……」
「あ、またコイツ失言した。ヒナタの事ドジっ子って思ってたのかな~?」
「ヒナタさんが可愛そうです♡」
「そういうワケではなく……!」
定期的に失言するんだよな、サクラコ。それが面白いのもあるんだけど。俺は失言するサクラコを撫でまわした。恥ずかしそうにするサクラコ可愛いねぇ。奥でヤバい眼光してるハナコは見なかったことにする。
「でもサクラコさんは確かに言葉選びで失敗することがありますね♡」
「ハナコさんまで……」
机の上で両手を口に当て押さえるように深刻な顔するサクラコは控えめに言ってクソ面白いのだがたまにシャレにならん失言したりするので一応釘を打っとく必要がある。マジでね?ウイ誘拐擬き事件とかシャレにならないよ?ホント。
「わ、私は一体どうすれば……」
「もう個性だから諦めた方が良いんじゃねぇかな」
「それもサクラコさんですよ♡」
「諦められた……」
絶望するサクラコの背中をポンポンと叩く。大丈夫大丈夫、利き手側を折られた俺もこうして書類仕事頑張ってんだからどうにかなるよ。俺はおざなりに慰めるとサクラコは絞り出すように言った。
「それは先生方がドッキリするからじゃないですか……」
「それはそう。メンゴメンゴ」
俺とハナコはおざなりに謝罪した。さっせーん。
学名:センセイモドキ(先生)
補遺28
一か月の間、サクラコとハナコにお世話をしてもらった。理性はギリギリだった
補遺29
生徒に対する距離感は他の生徒のせいでボロボロになっている為軽率に頭を撫でるしハグしても嫌がらない。先生就任前半期では(体裁として)嫌がって生徒に多大なダメージを与えるなどした
学名:トリニティクロマクモドキ(歌住サクラコ)
補遺1
自身が老人扱いされていることにショックを受ける
補遺2
最近の流行を追う為に調べているがイマイチわからない
追加補遺
学名:トリニティウラワフラワー(浦和ハナコ)
補遺4
センセイモドキに対する感情は最早単一の情では説明できない程に複雑になっている