センセイモドキは先生を辞めたい 作:ブルアカやったことない民
外を眺めていたら部屋に居たナッツーが来た。俺の飯を食い散らかして満足したらしい。野生の動物か何かかよ。
「ひーまー」
「暇なら帰れよスイーツ移民」
「私は先住民を淘汰するタイプの移民じゃないし、今の時代にその言い方は“多様性”だよ」
「それは“強い言葉”だ。もう昨今の多様性は鬼の金棒並みにトゲトゲしてるからね。もはやそれ単体で暴力が成立するくらいだから」
「今のコンプラは何処へ向かうのか……」
「刀狩りならぬ言葉狩りが始まるんだろうさ……」
俺達は昨今の言論統制を慮った。ホント、何処に行くんだろう。人類は。
俺はベランダでくつろいでいた。そう、この寮、ベランダが存在する。と言っても、一階、それも角部屋のベランダだから周りに人はいないし、風情のふの字もない。俺がベランダで黄昏ていると、スイーツ移民が横から割り込んできたのだ。俺のコーヒータイムを邪魔するとはふてぇ奴だな。ジト目で見るとナッツーは口を開いた。
「ねぇ、先生、月が」
「綺麗と言ったところで俺は額面通りに受け取るけどお前は?」
「先手を取られた……」
残念だったな、こと言語に関しては俺はお前の一手ニ手先を行く……。
スススと離れる俺に一歩二歩と距離を詰め、頭を押し付けてくる。なに、なんだよ。
「うーん、先生は手ごわい。ガードが堅い。」
「そりゃあね。君んとこのスイーツ部が結構ヤバいし。カズサはガチの相談の時は頼りになるけど、それ以外はさぁ。アイリはつい最近ダメになった。アイツ平気で俺のパンツ奪いやがったからな。もう良心はヨシミしかいない。お前等はもうヨシミのおまけだ」
「先生のパンツはスイーツ部の管理の元、保存、使用されているよ。あとヨシミはもう誰も勝てない。怪物、もう人類愛を祈るしかない」
「ヨシミの扱いがもうゴジラのソレと同じなんだよな。あと返せよ。使用すんなよ。使用用途は聞かないけど」
「聞く?」
「聞かねぇよ!」
俺はさらに離れようとしてベランダの隅にぶつかった。追い詰められた俺にナッツーはじりじりと近づき、遂には俺の腕の中に侵入する。なに?首絞めればいいの?
「うん、先生になら愛の痕、残していいよ」
「やめろよ俺をDV彼氏に仕立ててくるの。俺彼女には優しくするから」
「じゃあ優しくされた私は彼女……」
「揚げ足取りって言葉知ってる?」
はぁ、諦めたのでもうこのままにしておく。コイツ放置するとつけあがるくせに構うとガンガン突っ込んでくるんだよな。押してダメで引いてもダメならどうすればいいんだよ。待機?
ナッツーを腕の中に収めながら缶コーヒーを啜る。今日は無糖、ブラックだ。多分ヤニがあったら吸ってると思うシチュエーション。夜にベランダでコーヒーとくればあとはタバコよ。でもニコチンがなぁ~。それなら多分このままコーヒー狂いになって良い気がする。
ナッツーは俺の腕をわしりとつかみ、ぶら下がるように体重をかけてくるのでバランスを取るようにベランダにもたれかかった。重い。そういうとチョップを食らったが君達は俺の強度を知らないからそんな事が出来る。肩外れるぞ。ナッツーは腕を抱え直し言った。
「先生は生徒に甘い、あまあま、彼女として看過できないよ」
「彼女じゃねぇーよ。彼女面すんな」
「でも甘いのはホント。もっとちゃんとしないといつか食われる。キャスパリーグが筆頭」
「その名前で呼んでやるなよ。本人嫌がってんじゃん……まぁね。言わんとすることはわかる」
触れちゃいますか……最近の俺の女性事情に。俺は虚無の目をした。
トリニティに来て、体重の大半をフトモモが占めてそうな女が持ってくる仕事以外は充実した学生生活を送ってると言っても良い。勉強はちと大変だがそれにしたって仕事よりも自分の実になってる感覚があるし、協力してくれる子も多い。トリカスという問題もあるが、生徒になった以上私刑が出来るようになったのでこれも良い。やはり立場と言うのは人を腐らせるのだ。何でもできる学生ってサイコー!俺はつい先日、火刑に処したトリカスに想いを馳せた。ミカを魔女と言ったので魔女になってもらった次第である。
そんな俺の生活に淀んだ雲がやってきた。女性事情である。
俺は唯一の人間的学生だ。ヒューマンね。よって顔も性格も人間も一般的……自分の容姿を評価する時どう言い繕っても自慢とかになる風潮やめない?マジで。困るんだよ。評価に。だからハッキリ言うと自分の容姿は普通だと思っている。目もある、鼻もある、口もあって、眉毛もある。普通だ。誰がなんと言おうと普通である。自分の容姿をイケメンって吹聴できるほど自覚も度胸もないからな。
そんな俺に好意が集まるのはそりゃあ唯一だからだという認識もある。誰だって選ぶ対象が一人しか居ないなら選ぶか選ばないかの二択で選ぶ奴が多くなるのは当たり前。それで己惚れるほどではない。
じゃあ好意を自覚していないのかと言われたら違う。そこはね。そんじゃそこらの難聴系男子とは違うんですよ。好意には気づいている。それは事実だ。いやだって露骨に好き好きアピールしてくる子いるじゃん。トリニティだとナギナギが意外に露骨だ。アイツむっつりスケベの癖にミカとつるんでるせいでここぞという時に攻められるからな。油断できないんだよ。ミカ?アイツはもう好意通り越してるだろ。アレで好きじゃなかったら何?痴女?ハナコじゃん。
あぁ、ハナコ?ハナコは……ごめん。アイツの行きつく先が何処なのかもうわからなくなってる。俺にはどうしたいのか全くわからない。エデン条約後は結構嫌われててわかりやすかった。嫌われてたというか、俺がアイツの本心を知っても態度変えないどころか弄り倒したからね。なんか、コイツ……!って目で見られてた。特別扱いされてぇならその面倒クセェ試し行動いますぐやめろ。俺は常々そう言ってるし。その時も言ってやった。それからしばらくしてなんか、ホントになんやかんやあって今になってる。アイツは俺を恨んでるのか好んでるのかわからない。両方かもしれない。
それ以外にもだ。ヤバい子だっている。純粋な子もいる。じゃあだれを選ぶの?って言うと答えを出せないワケ。何故って?そりゃあ……
「俺の立場がさぁ、キツイんだよ。ナッツー、どうすればいい?どこを見ても地雷原なんだ。地雷原のど真ん中で、かつ、今立ってる場所も地雷の上なんだよ。足を動かそうとしたら爆発する現状で俺は何が出来るんだ?」
「天地神明に祈るしかない」
「神頼みかぁ……」
俺はどうやらもう祈るくらいしか出来ないらしい。
「先生はもう手遅れ。誰と一緒になっても他の子が足を引っ張って地獄に引きずり込んでくる。地獄に自分から飛び込んで、他の子達が飛び込んでくるのを受け止めるしか手立てがない。」
「いやだよ俺だって天国行きたいよ。」
「じゃあもう重婚するしかない。幸い先生は超法規的措置が使える。重婚すればいい」
「ソレをそういう意味で使うのは憚られるんだが……それしかもうないのか?」
「ない。諦めて受け入れて私を一番目にすればいい」
「しれっと最初になるなよ。てかそれだと誰が一番目になるかで揉めるじゃん」
はぁと溜息。ナッツーの頭に顎を乗せて黄昏る。
「なんかさぁ、付き合うっていう方向に頭が向かないんだよ。後遺症だよね。先生っていう仕事の後遺症。あの子はここそこが危ないからセービングして、この子は気を遣い過ぎて背負い過ぎるからフォローしてあげて……なんてしてたら彼女って気持ちにならん」
「悲しい、先生は先生PTSDになってしまったのか……おーよしよし」
よしよしと顎乗せ状態から頭を撫でられる。ありがとう。ホントそれ。マジでPTSDなんだよな。過るんだよ。
「補習部とかで採点してたり、業務の一環で評定を下したりするんだけど、それが頭の中で爆速通り魔してくるんだよ。良い雰囲気になっても『あ、そう言えばこの子社会の点数上がったのかな』とか『そう言えば素行不良でこの子の評価付けに悩んだんだよな』とか」
「もう生徒と先生の関係が染みついちゃったんだね」
「そうなの。俺だって君達とシラフで話したいよ。誰が俺をこんな目にしたんだって言うとモロ君達なんだよ。俺は生徒の評価する側の感情なんぞ知りとうなかったわ……」
マジでね。人を評価するってこんな辛いんだ。しかも学生で未来ある若者じゃん?いや、俺も未来ある若者なんだけど。その今後を左右するものだからさぁ……胃が痛いんだよ。マジで。
「ナッツーだってそうだよ。もっとさぁ社交性を身に付けようよ。いや、今の人間関係で完結するのも良いんだけどさ」
「えー、面倒……人間関係とモザイクは少ければ少ないほどイイと相場が決まってる」
「狭い世界で完結しちゃうと人間の鮮度が落ちるし、その例えはスリーアウトチェンジもの」
「でも先生的にはモザイク少ない方が嬉しくないかい?」
「ナニがとは言わないけどそれには心底同意する」
「昨今のコンプラでモザイクも黒塗りも厚めになってしまったからね。悲しいことだよ」
「ホンット!!!!それ!!!!!」
「過去一の同意」
俺は夜闇に叫んだ。渾身の熱意が詰まっていた。
「昨今のエロを禁止する風潮なんだよ!!禁止が緩かった時代の奴等が好き勝手言って、若い世代のエロを奪っていくんだ!!許せねぇ!エロ独禁法に抵触しろよ!!古き良き時代を味合わせろよ!!昔はよかったとか言うなら残せよ未来!良い物を残せ!悪いものを残すな!」
深夜に叫ぶ俺は不審者以外の何者でもなかったが、それでも心が叫びたがってるんだ。俺は名作を引用した。
そんな俺をナッツーはなんだか可哀そうなものを見るような物珍しいものを見るような目をしていた。
「先生ってホントいつも言ってる男子高校生なんだね」
「そうだよ。男子高校生なんてこんなもんだから。頭の中ピンクだから。頭の中ピンクでもその後が真っ赤な未来しかないなら我慢するしかない男子高校生だよ。俺にピンクをくれよ。真っ赤にならないピンクをくれ」
「物理的ないーみー?」
「それもある」
血が出るほど搾り取られるのはちょっと……俺は主にそういったことをしてきそうな女のツラを思い浮かべた。うーん、物の見事に暖色系。いや、寒色でも駄目だ。てか色付きがダメだ。白髪が安定なのか……?とか思ったけどノアがいた。じゃあダメだ。全員ダメだ。救いようがない。
「じゃあ先生、諸々の立場を取っ払って彼女にするなら誰?」
「えぇー?」
俺は周囲を入念に調べた。誰か人がいたら終わりだ。それに盗聴器や隠しカメラの類もスーパーアロナちゃんのEMPで潰してある。簡易的な機械でも壊す事が出来て対象を区別してスマホやらを壊さないように出来るスーパーEMPだ。強い。
俺は口を開こうとして、止まった。なんか、おかしい?俺の直感が囁いた。
こんなデカイ声で言ってるのに周りが反応を示さないおかしさに感づいたからだ。俺の部屋は角部屋で人もそこまで来ない。来ないというか来ようとしない限り来れないのだ。普段はそこそこ人気がある。それは正実の奴らがパトロールを理由に覗きに来たり、何故か夜の寮敷地内を徘徊している変態露出狂しかりだ。そんな人間が一切の反応を示さないという違和感が俺の頭に警鐘を鳴らした。
「………」
俺は顎でナッツーを固定しながら視線を下にスライドする。そーっと顔の下を覗くと俺の腕をつかんでいた下にモゾモゾと手がポケットに伸びていた。なるほどね?
俺はゆっくりと頬杖ついていた手を自然に降ろす。自然に、自然に。俺はバレないようにナッツーの近くで言う体で身体を近づけた。ちょいちょいと顔を下げるようにジェスチャーもする。
「今ッ!」
「あぅっ」
俺は掴まれた腕を抜き取って思いっきりナッツーの頭を押し込んで怯ませるとポケットに伸びていた手を抜き取り、案の定握られていたスマホを奪い取った。見やれば通話画面、宛名は……
「やぁ、聞こえてるかい?スイーツ部諸君。聞こえてるんだろう?なぁ?」
『……ヤバい、バレた。』
『どうすんのよ…!バレちゃってるじゃない!』
『あと少しだったのに……』
ほーぅ、微かに遠くで聞こえてくる声、カズサとヨシミとアイリだなぁ。いや待て、まだ聞こえる。俺はよーく耳を澄ませた。
『せ、先生!エッチなのは……!』
『先生は奥手なのがいけない』
『やっぱりやめておいた方が……』
『ウフフ、手遅れですよ♡』
補習部の奴らもいるなぁ?だがコイツ等だけとは限らないか。
「おい、ミカ、今そこにいる面子を吐かないとお前のモモトーク着拒にするぞ」
『先生もしもし!?えっとナギちゃんとあと正実の子はハスミちゃんとイチカちゃんが居る!補習授業部の皆も!他はいない!』
『ミカさん!?』
『わ、私は買ってきたお菓子の御裾分けのついでに……』
『ちょ、売るのは卑怯じゃないっすか!!』
やはり居やがったか……!てか結構大勢だな!何してんだよお前ら!!
「ナギナギィ、マジでお前あとで拷問だからな。ハスミ、お前間食はマジでやめろ。今度ダイエットさせる。強制でだ。毎日サラダチキンを覚悟しろよ。イチカ、お前は信じてたのに……」
『ちょっ、なんで私だけ刺してくるんすか?!』
「うるせぇ、一番効くのを言ってるんだよ。コハルー!お前は……まぁいいや。アズサお前強制勉強会な。ヒフミ、止められなかったお前の責任、取ってくれるよな?なぁ?で、ハナコ、お前は正直もうどうでもいいの領域だ。今のお前の方が結構わかりやすくて前より好きだぞ。でもこれ止めなかった責任として今からお前の事嫌いになるな」
『ウフフ、私も先生が大好きですよ♡あと先生が私を嫌いになっても私は好きのままですから♡』
「キッショ、でも心で傷ついてんの見え見えだぞ。次、ヨシミぃ!お前もうちょい頑張ってくれよぉ!頼むからさぁ!オイキャスパリーグ!出て来いよキャスパリーグ!過去は消えないぞキャスパリーグ!アイリはお前ほんっと普通の顔して策士なのやめろ。心臓に悪い」
『ご、ごめん……止めるために居たんだけどハナコさんに押さえられて……今度豪華な奴作りに行くから。あとキャスパリーグ呼びはやめて、カズサ蹲っちゃったから』
「ハナコがよ……!で、誰が首謀者?言った奴は許す」
『『『『『『『『『『『ナツ』ちゃんです』よ』!』さんです!また拷問は!』さんっす』さんよ!』さんですからどうかダイエットは!』ちゃんです♡』だからね!』ですよ!』
「誰かわかんないから全員許さないことにするね」
『そんな……』
シンクロした。俺はそっと通話を切って、汗だらだらのナッツーをガシリとつかむ。良いよ?逃げても。俺は非力だし、すぐ逃げ出せる。ただお前が逃げ出した後、どうなるか、そしてお前に対して今後どのような態度を取るか想像できないお前じゃないだろう?
「なぁ?」
「か弱い女の子だよ……?」
きゃるんとした顔で見上げてくるナッツーに俺は笑顔でこう答えた。
「“多様性”」
「鬼の金棒を振り回す気だ……」
残念ながらか弱い女の子でも容赦しないことが求められるのが昨今の多様性だ。男女平等、素晴らしいね!俺はベランダにしがみつこうとするナッツーを部屋に引きずり込んだ。
後日、笑い死にした状態で口から知るものが嗅げば一発でわかるであろうなまこソーダの液体を垂れ流しながら廊下に死んでいた()という。
学名:センセイモドキ(先生)
補遺44
後程、セイアは未来を見て、図書委員会、救護騎士団はこうなる事が分かっていたので参加しなかった事、自警団は俺が本当に傷つきそうだからやめたという事を聞き、好感度が爆上がりした。セイアは教えてくれよと思ったが、教えたらワートリサイドエフェクト的未来改変でもっとひどいことになると教えられたのでこの度、セイアを優勝とすることにした
補遺45
ちゃんと裏切られたと思ったので容赦しなかった
学名:トリニティスイーツロマンチスト(柚鳥ナツ)
補遺1
計画の首謀者でくすぐりに弱く、劇物を飲んで一週間は味覚が死んだ
補遺2
センセイモドキの好きな人が気になった故の行動であり、他の生徒を巻き込んだのは責任の分散の為。だが先生という立場故の悲しさを聞いて優しくしようと思った。それはそれとしてお仕置きされた
追加補遺
通話に参加していたトリニティ原生生物一同
補遺1
それぞれがそれぞれにキツイお仕置きをされた。内容はこぼれ話にて
次のセンセイモドキが訪問する学園について
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連邦生徒会
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アビドス
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ゲヘナ
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ミレニアム
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アリウス
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百鬼夜行
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山海経
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レッドウィンター
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ヴァルキューレ(連邦矯正局含む)
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SRT
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ハイランダー
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ワイルドハント