センセイモドキは先生を辞めたい 作:ブルアカやったことない民
キンコンカンコン
なんだかひっさしぶりに聞いた気がするなぁとか思いながら席を立つ。
先生というものが存在しない学校って罷り通るの?良いの?大丈夫なの?とか思っていたが、これが意外にうまい具合に成り立っている。
トリニティの学校だけかと思ったがそんなことないキヴォトス全体で共通らしく、授業は全部通信教育的な動画だし、学校の委員会やテストの成績チェックも全部それ用の委員会でやっているらしいと聞いてそれは本当にいいのか……?などなった。
だって生徒がテストの成績付けるってワケでしょ?不正とか大丈夫なの?とか思ってナギナギに聞いて見ると正式なテストだと公的機関から送られてくるテストを解いて送り返す感じらしい。学校で行うテストは委員会がテストAとテストBとテストCを作ってそれをシャッフルさせるらしい。それぞれが作ったテストは本人に回らないようにしつつ、それを解いて成績を付ける時も外部の人にお願いしたり、名前を伏せてつけるとのこと。
大変そう。手伝う?と聞いたら、エネルギーをチャージさせてくださいと言って抱き着かれた。あんまりそういうことをしないナギナギがするんだからホントにヤバいんだと思う。背中を撫でると泣いていた。本当に休んだ方が良いと思う。『今度一緒に紅茶飲もうね。俺珈琲派だけど』と添えたら泣いていた。多分別の涙な気がしないでもない。
そんなことを思っていると“いつもの”が始まった。
ぬたぬたっと今日の当番らしい正実の子が近寄ってきて、スッと腕を掲げて背中を向ける。俺はその脇に手を添えて抱え上げるとそのまま肩にジョイントする。ジョキン
よろけそうになる体をそっとサブ当番の子二人が支えて完成だ。騎馬戦かな?騎馬戦だな。
この騎馬戦状態、いつから始まったのか全くもってわからない。
いや、最初から少しおかしな気がしなくもなかったが、なんかいつの間にやら始まってた。たしかしたかし、ちょっとしたお願いのお礼に何が欲しい?とか聞いたら肩車だった気がする。もしかしたらそれかもしれん。
今日の子は太ももがモチモチしてる。おぉう、せくしぃ。健康的な女子の太ももはガンにも効くし認知症にも効く。ほら、頭を挟まれた刺激で……。ムニムニと挟まれる柔らかさに想いを馳せながら本日は放課後ショッピングだ。付き添いもとい騎馬戦の騎馬部隊も同じく正実の子である。グループごとに当番回ってるらしい。
さて、ちゃんと振り返るとだ。なんでこんなことになったか、それは俺のお財布事情と悲しき社会人事情に理由がある。
俺は先生の時全くといって良い程金を使ってこなかった。というか使う機会なかったしほぼ食費に費やされていた。マジで使い道がなくてただひたすら、通帳の数字が増えていくのを眺めているだけだった。こんな悲しい高校生居る?アダルトチルドレンでももっと子供らしいぞ。
お金は溜まる一方だし、かといってそれは超過労働の代償だったのでたまの休日さえお出かけしたりするよりも寝たい、切実に寝ていたいという気持ちが強くて……。それに休日にもドカドカと乱入してくる距離感バカのデカパイチッパイ共のせいで休むに休めない時もある。辛い、休日にも先生やらされるってこういう事なんだ……。
そんな俺も先生を辞めると途端に人生楽しみたくなる。
ラク~~~~生徒の前だからって気を張らなくていいし寧ろ俺が生徒だからハッチャケることができるの最高っ!リンリン達が死んでる気がしないでもないが、人員を増やさない上層部が悪い。つまりリンリン達が悪い……とはいうものの今度差し入れを買っていかないと普通に拉致されそうなんだよね。うん、差し入れ買おう……。
リンリンもそうなんだけど意外にアオイも爆発すると怖いんだよね。というかお金を握っている部署の人を怒らせてはいけない。マジで、マジでね。一回、アオイを怒らせたことがあったのだが事務用品が経費で落ちなくなって泣いて謝った記憶がある。怖い、あれほどペンのインクを凝視した日はないと思う。
まぁそれはおいといて、今は学生。それも青春を謳歌しまくりエンジョイ中なのだ。ショッピングには行きたいしゲーセンに入り浸りたい。買い食いだってしたいし服を買いに行く服がない今の状況を改善したい。そんなわけでほぼ毎日といって良い程お出かけしているワケだが……
最初はスイーツを奢ることによる道案内だけだったハズだ。
どこに何があるのか~とかそういう類の。ちょうどティーパーティーとか他の皆が忙しそうでなんとなく話しかけづらかったし、教室でこれから仲良くなっていくワケだしここはいっちょ好感度稼ぎと行きますか……と息巻いてクラスメイトのモブっ子を誘った。青春っぽいなとかウキウキしていなかったのかと聞かれたら堂々とウキウキしていたと答えるだろう。だってしたいだろ。異性と放課後にお出かけ。
そしたらあれよあれよといううちに人数が膨れ上がり、いつの間にか俺の肩にジョイントされた最初の道案内のモブっ子の指示の赴くままに買い食いや服を買いに行き、そして流れるように次のジョイント当番が決まって明日へスケジューリングされた。
ビビったよね。さしもの俺もビビった。
ホントいつの間にかそうなってたし、全然口出ししてないのに勝手に俺がOKしたことになってるし、本当によくわからないけどまぁクソ暇だったので適当に事後承諾して今に至るというワケ。
最初は肩車単体だったのだが、俺はまぁ先生時代に『右足に銃弾を受けてしまってな(意訳)』されたので少々足が不自由だ。未来を無理に改変すると痛い目に遭うという教訓で得た痛みなんだが、そのせいでちょっとサオリもといアリウスがシャレにならん事になってる……が今は割愛する。とりあえず、歩くことは問題なく出来るようになったが走る事がもうできないタイプのヒューマンになってしまった。なんなら早歩きでさえギチギチと痛んだりするので歩くペース遅いんだよね。それに+αで人一人を上に乗せている状況……
まぁ転ぶよね。そりゃあ転ぶ。
幸いにも周りに結構なトリニティのモブっ子が居たので地面にビターンとなるわけではなかったが、それからというものの肩車はおろか要介護者みたいな扱いをされたのでそれはちょっとやめてほしいと声をかけ、紆余曲折の末『肩車はする。それはそれとして支えてほしい』というところで落ち着いた。男としてね?やっぱり女の子を肩車して耐えきれなくて転ぶとかダメでしょ……
ちなみにだが……最初の方はこの子達も名前呼びしてたがなんか名前で呼ぶと他からのやっかみが激しくなるしあだなでいいですよと言われたのでモブっ子というあだなを付けている。それでいいの君達?と聞いてもそれでいいんだから良いらしい。なら俺からはとやかく言えんよ。まぁラクだなって思ったのはナイショだ。
さて、そんないつも通りの謎奇習が始まった。
今日の子は翼を広げ風を掴んで遊んでいる。ぴこぴこと動く羽はそれなりに電柱にぶつけているのだが痛くはないらしい。それより汚れがついていないかの方が気になるとのこと。割とガッシガシ当ててるのに痛くないんだ……。
「君達さぁ、毎回肩車してるけど何?好きなの?高い所」
「私は好きです。飛びたくはあるんですがハスミ先輩のような大きな翼は持っていないので。」
そう言ってぴこぴこと動かす羽は……まぁハスミやらと比べると小さくはある。
というかハスミがデカすぎる気がしないでもない。あのデカさなら飛べそうなんだけど如何せん本体が重いんだよな。スイーツドカ食い気絶部のせいで飛べなくなってる節はある。痩せろ。
そう、ハスミもなぁ、ダイエットするべきだと思うんだよ。マジで本人がどうこう言うレベルをもう超えてる節がある。心配するレベルだよ?ドカ食いでトリップしてる時の顔。望月さんじゃん。望月さんレベルはダメだよ。血糖値大丈夫?人間ドック行く?
「でもスイーツ与えないと死んじゃうと思います」
わかる。与えすぎてもダメなんだけど与えなさ過ぎてもダメなんだよ。やはりアイツは悪いデカパイなのだ。此処まで俺達を困らせている……主に食生活で。あと甘いものをドカ食いして夕食とか抜いてダイエットとか言い張るのホントにやめろ。生活リズム崩すな。どうせ夜食にスイーツドカ食いしてんだろ。朝を抜くなよ朝を。
てか話戻すけどさぁ、高い所好きなら普通にそういうアクティビティとか行くの?バンジーとか。スカイダイビングとか。
「私は行きますね。けどみんながみんな高い所好きというわけではなく……これはナイショ話なのですが」
といってこしょこしょひっそり話によるとだ。
翼があるタイプの生徒でも一部の子は本能で大切なものを温めようとする性質があるらしい。鳥的サムシングなの?天使じゃなく?そして、それは母性本能だとかそういったものに分類され、フェチレベルまで昇華する人がいるにはいるとのこと。肩車もそれが目的な人も居る……と。
マジか、君達の肩車ってアレ温めてたの?俺生まれちゃうの?胎内回帰……は違うけど母性によるものだったらしい。てかあっためるってことは俺の頭蓋はパカンと割れて生まれちゃうタイプの卵なの?そういえばと思い出すとなんだか妙に翼やらで覆い隠そうとする子がいたりした記憶……アレ保温だったんだ。クソ暑いし視界の邪魔過ぎるから都度都度どかしてたけど……保温かぁ。
肩車している太ももを優しくぺちぺち叩きながら、今俺温められてんだな、レンチンされてんだなと思いつつ、いやレンチンはされてないがそれでも、これが母のぬくもり的なサムシングかぁと想いを馳せるなどしていると面白がったモブっ子共は種族的な問題についてぐちぐちと言い出した。ちょっと面白過ぎるが面白がるもんでもないだろと後々反省する。それはそれとして面白かった。
「羽の手入れも大変ですし、かといって手入れをしないと身だしなみが整っていないと思われるので大変です。あとあと、油汚れはものすごく掃除しにくいです。水は弾きますし、油分を張っておかないとウィルス入ってきちゃうので」
「へぇ~……」
「ストレスで禿げる時あるもんね」
「ねっ。たまに自分で毟っちゃうよね。ストレスで」
「ねっ」
やめてよぉ、夢を見させてくれよぉ。ちょっと予想よりもはるか上のちゃんとしたリアルを見せつけられてひんひん鳴く俺は、ちょっとした事故で着ぐるみが取れてしまって中の人がおっさんであることを知ってしまった幼子のような気持ちだった。もっとさぁ……エッチな話とかないのぉ?俺男子高校生だし、エッチな話聞きたいよ~。猥談させてくれよ~~。
今思うと女の子に対して言う事でもないんだが、周りに人間の男は居ないので女子の猥談に混ざるしかないのだ。割とエグ目の話もするよね。女子の方が。男子がうんこうんこ~とか言ってる時、『彼氏の〇〇〇が〇〇でマジでムリ』『うわ~でもウチの〇〇〇、〇〇なんだよね~すぐ終わって詰まんない』とか言ってたりするのだ。伏字に何が入るかはご想像にお任せする。
「コハルちゃんチャージングシステムなんです?」
「コハルちゃんチャージングシステムなの……」
何を言っているかわからないが、多分コハルがエッチなのはダメとか言いながらエッチな話を聞きたがるのことをさしていると思われる。何?エネルギーチャージとして扱われてるの?10秒inチャージなの?必須栄養素なの?
「エッチなのはダメですって言うのがチャージ満タンの合図です。頬を赤らめてる最中はまだチャージ中なのでちゃんと待ってあげないといけないんです」
「ハイオクなの?レギュラーなの?」
ガソリン的サムシングなの?
唐突に過っていったあまりにもあんまりなコハルの扱い方にちょっと冷静にコハルの情操教育を考えていると汲み取ったモブっ子がもじもじと打ち明ける。
「私達って人ではあるんですがたまに鳥によっちゃう……引っ張られることがあるんです。大半は幼少期にお母さんから直されるんですけど、でもやっぱり残っちゃう子も居て」
天使じゃないの?と聞いてみたが正直よくわかんないらしい。天使と悪魔だけなら釣り合い取れるが、セイアみたくケモミミがいたりすると天使的種族なのか鳥的種族なのかわからないとのこと。とりあえず……
「ほんほん」
「ペリット……元々消化できないものを口から吐き出していたころの名残でですね……」
「流れ変わったな」
ちょっとその先聞きたくないな~~でも止まらねぇんだろうなぁ~。むぎゅっと強めに挟まれた太ももから溢れるこの黙って聞け感。まぁ聞くよね。太ももに言われたら。キリッとした顔で拝聴の姿勢、太もも様には逆らえません。
そして正実モブっ子は身体を限界まで丸め、耳の近くでぽしょぽしょと囁いた。
「嘔吐フェチ……になる子もいます」
「……どっち?吐く方?吐くのを見る方?」
「………どっちも、居ます」
「そっかぁ……」
なるほど、ね。うん。
思ったより業の深いというか、いやまぁそういう種族ならそういう事もあるんだろうという新たな固定観念が生まれたと言いますか。それならセイアとかのケモミミの子とかゲヘナの角生え族は一体どんな業を背負っているのか気になりもしたが、多分これ、一介の人間が立ち入っちゃいけない感じの話な気がする。
スゥ──と目から光が消えて……く前に一応確認する。一応ね?
「君は嘔吐フェチじゃないよね?」
「私は…………………ないです」
ほっ、よかったよかった。その長めの間には絶対触れないからな。一先ず頭の上からペリットを吐かれる危険はなかったようだ。じゃあ少し安心だなと思っていたら騎馬戦の騎馬をしていた子がくいくいっと服を引っ張る。なぁに?
「私、嘔吐フェチです」
「思わぬ伏兵がここに」
ちょっと恥ずかしがりながらも嬉しそうにカミングアウトした伏兵を前に冷や汗垂らしながら聞く。
「吐く方?見る方?」
……無言でにっこりするのやめてくれません?それめちゃくちゃ不安においバカやめろ!口を開くな!発射準備にしか見えねぇ!
その後、ことあるごとに口の中を見せつけてくるようになるのだが、それはそれでエッチな気がしなくもない。
学名:センセイモドキ(先生)
補遺7
話が広まった結果、先生に口の中を見せるのが流行った。性癖がひん曲がった
補遺8
羽用のブラシを買った
学名:トリニティモブクロメカクレ(正義実現委員会のモブ・有翼)
補遺1
様々な性癖を持つ子がいる
補遺2
帰ってから性癖開示に死ぬほど恥ずかしくなるが後悔はしていない