センセイモドキは先生を辞めたい 作:ブルアカやったことない民
前話、ハスミの視点において、センセイモドキとハスミの視点が入り混じるような構成になっていたので括弧付けと罫線にて明確に区別し、修正したことをお知らせします。今後とも読みにくい、キャラクターの認識について齟齬があるなどありましたらご指摘いただけると幸いです。
今話はシリアスに寄った構成になっていますが今後もたまに挟まりますのでご容赦いただけると幸いです。
カフェのテラス席で2人スイーツパーティーをしている。
「っぱ人が並ぶだけあるわ。マジで此処のスイーツ美味い」
「よかった。前もみんなで此処に来た時美味しかったから。先生も連れて行きたいなーって」
パクついてるのは季節限定のモモのケーキにブルーベリーのタルト、王道のイチゴショートケーキやちょっと変化球のリンゴのモンブランパイ。全身があまったるくなるほどの甘味の暴力に内なる乙女が暴走寸前だ。静まりたまえよバーサーカー乙女……人はだれしも心の中に異性としての自分を持つというが、俺の
「あざすあざす。男子一人でこういう店って入りにくいから助かるわ」
「感謝がおざなり……まぁ喜んでもらえたなら誘った甲斐があった」
「ホントに感謝してるから。感謝の神、アザスだから」
「ごめん、まったく伝わらないかも」
そんな……俺の誠心誠意の感謝の気持ちが伝わらないなんて……もっと国語の勉強した方が良いぞ。何なら教えてやろうか?俺、国語で成績5以外取ったことないから。読書感想文で教師に絶賛され、コンクールに出るタイプの文系マンだから。すごいぜ?小学生の課題図書で400字の用紙、50枚……計2万字ほどの読書感想文をたたき出したからな。
今日はカズサとスイーツデートだ。
前々から気になっていたお店があったのだが、そこは……というか大体のお店がそうなのだが女性客でいっぱいで男一人だと入りづらく……かといって目の前でお出しされるスイーツに内なるバーサーカーが収まるはずもなく……。折衷案として放課後スイーツ部に持ち込んだところ、カズサが同行してくれることになった。もちろん、俺のおごりだ。
チラチラとこちらを見てくる通りすがりの生徒たちに手を振ったり挨拶しながら、スイーツをパクつく。うむ、内なる乙女も捧げものによって落ち着いてらっしゃる。定期的に供物を捧げないと天罰を下すタイプのバーサーカーなので捧げものは怠ってはならないのだ。……やっぱり荒神じゃん。
内なるバーサーカー乙女は内なる荒神乙女となり、それはそれでどっかのアニメのキャラクターにでも居そうだななどと思っているとカズサがジト目でこちらを見て来た。なんでござんしょ?
「先生、私と一緒でよく他の子に目を掛けられるね」
「えぇ?普通に知り合い見かけたら会釈したりするじゃん。その延長じゃん。何も悪くないじゃん。アゼルバイジャン」
「アゼルバイジャン?」
「おっと危ない」
危ない危ない。こっちに持ち込み厳禁のインターネットミームを取り込むところだった。流出、ダメゼッタイ。お口チャックを決め込むとカズサは仕切り直してこう言い直した。
「先生がせっかく頼んで来たから乗ってあげたのに他の子に目移りするなら私帰ろっかな」
「ごめんなさい、許してください、男一人で取り残されると心細さで死にかけます。大体ウォンバットなんです。人と一緒に居ないと鬱になっちゃう野生を失ったウォンバットなんです」
どっかで聞いたコロナのせいで来園する人が減り、そのせいで鬱になったウォンバットというトンデモニュースが記憶にあったのでそれを言ってみる。言ってみてから気づいたけど通じるのか……?
「あぁ、ネットニュースでみた……それで?そんな人肌寂しいウォンバットなら他の子のところに行けば?」
「拗ねないでよぉ。ごめんってぇ、気を遣ってるんだよ。色々と」
通じた。通じたけど拗ねられた。拗ねてるカズサの顔も可愛い。でもモリモリと減っていくケーキの山を見ると、うん、はい。ちょっとお財布の中身確認しときましょか。
「じゃあ、そっちのケーキ一口ちょうだい」
「さらに食べるんか!?」
「………何?」
「あ、ハイ。すみません、献上します」
スーッとモモのケーキをフォークでとりわけ、捧げものをするかのように差し出す。荒神は2人居た……!ジョジョね。いやスイーツで落ち着いてくれるならもう願ったり叶ったりなんだけど。
差し出されたケーキをなんかちょっとためらいながらパクついたカズサ……反応は
「ん~~、おいしい」
セーフッ!圧倒的セーフッ!危なかったぁ~。爆弾処理ゲームしてるとき並の緊張感があったぜ。んだらばと自分のケーキを処理する時間に移るとカズサがジィ──とこちらを見つめていた。なんかついてる?クリームついてる?
「………いや、普通に食べるんだなって」
「何が?」
「何も」
なんかマズったらしい。若干不機嫌そうな顔を見せるから先ほどのやり取りを思い出して………あー、はいはい。なるほどね。
「ごめんごめん、間接キスだったわ。配慮足りんかったね」
「今さら言われても……てか普通言うのもアレでしょ。気にしてる私が変みたいじゃん」
「そげなこと言われてもさぁ。君達距離感近いし、というかあれなんだよ。聞いて(マツコデラックス並感)」
俺は最近抱えている悩みをぶっちゃけた。
「やっぱりさぁ、生徒になったワケで、色々おでかけしたり、遊んだり、授業してるときもそうなんだけど。周りのロールモデル?っていうのかな。が、女子しかいないんだよ。だから、自分以外を参考にしようとしても、参考元が君達だからどうしても君達に寄るっていうかぁ~」
「あぁ……そういうこと」
そう、多分そのそういうこと。フツーにあーんとかしてるの見るからさ。なんか当たり前なんかなって。それにさぁ……
「ティーパーティーとか……なんていうの?上流階級の子?は生活レベルが違い過ぎて違うなってのはわかるんだよ。でもそこまでじゃない子って言うのは失礼だけど、結構普通の子とつるんでてもさ。男子と女子の違いみたいなのが如実に出るんだよね」
それで話ついていけなくて気を遣われるってのもさぁ。なんか違うじゃん?嫌じゃん。だからそっちに適応しようとして色々頑張ってさぁ。今じゃ普通にメイクの話が通じるようになっちゃったのよ。
いやね?最初はブルベイエベってなんだろな~みたいなところから始まったんだよ。それに身だしなみって男子女子関係なく必要だし。今の時代、男も顔に気を遣うって良いよねって感じだし。それで調べて調べて調べていって、最終的にどうなったと思う?
「……どうなったの?」
「最近、香水買ってキャッキャしてる」
「そっちなんだ……」
いや、いい匂いがするってイイじゃん。やっぱりね?男子高校生と臭いって切っても切り離せないの。なまじ運動がロクに出来ないから代謝?も落ちてきてさぁ。やっぱり脇の臭いとか気になるお年頃なのよ。マジでやばいよ、男子高校生の汗臭さ。もはや暴力の域。スメルハラスメント。
でもこっちに男子高校生の味方エ〇トフォーないからさぁ。エイ〇フォーあればそれでよかったんだけどなくてぇ……かといって他の消臭剤も女性向けだったりするじゃん?まぁ正直、そこらへんは諦めてるからさ、女性向けの奴でいいけども。せめて自分の好きな匂いで居たいじゃん。
まぁちょっと話ズレたから戻すけど。やっぱり男子と女子の距離感ってのは未だに測りかねてるところがあるのよ。だから先生も顔合わせたら挨拶して、なるべく身だしなみや匂いに気を付けて生活してるワケ。測りかねてるからといって邪険に扱うのは違うしさ。やっぱり、良い人で居たいじゃん?
「あー……そっか。そういう弊害があったんだ。ごめん、我儘言って」
「いいよいいよ。てかカズサのそういうとこ好きよ」
「なっ」
「聞いて(part2)」
といって勘違いされる前にテーブルから右足を出し、ぺしぺしと叩く。それだけでもまぁまぁ痛いのだが一生付き合うものだし、男の子は我慢だ。カズサも視線を落とし、足を見てあぁと納得とほんの少しの心配の顔を浮かべる。そう、ソレ。
「やっぱしさぁ。みんなに気を遣われるってのもシンドイっちゃシンドイのよ。申し訳ないって言うか……みんな床に置かないレベルの対応したりするじゃん。やめてって言うのは簡単だし、実際言ったこともあるけど……どこか遠慮みたいなものを感じるワケ」
「まぁ……それは仕方ないでしょ」
「わかるよ。わかってる。でも今の状況ってさ。みんな幸せになれないんだよね。それが嫌」
確かに、みんな傷つかずにハッピーエンドで終われたらよかったよ。でも俺が怪我しちゃってさ、そこに傷がついちゃったみたいな。大団円で終わらせない後味の悪さみたいなのがあって居心地がホントに悪い。いや、俺が悪いんだけど。責任が俺にあるから嫌っていうか……
「俺も自責の念っていうか、ごめんねぇって感じだし、みんなもみんな、しこりみたいなのが残ってる。その状況を変えたいから俺は生徒になったって面もあるのよ」
みんなの距離感が近いのもさ。やっぱり不安というかまた起こるんじゃないかみたいな怖さがあると思うんだよね。
そんなことを言うと今まで真剣に聞いていたカズサが一転してジト目になった。なんだよ。
「ソレ、本気で言ってる?」
「割と本気。てか本音で話せる相手ってあんまりいないし。数少ないカズサもそうだし」
逆に言うとトリニティに本音を話すと駄目な奴がいっぱいいるってことなんだよね。すごくない?救護のとことかメンタルヘルスに行こうとしたら監禁されそうなんだもん。ティーパーティーもヤバイし、正実はツルギンに迷惑掛けたくない気持ちがつよい。補習部はハナコ(意訳)じゃん?図書委員は〜…ってかウイか。ウイはまぁ言えるかな。なんか、割と図太い陰キャだから。コイツならまぁ…って気にさせる。
シスフとかは~~アリっちゃアリだけど共感し過ぎなんだよな。いい子が多すぎる。その点、カズサとかはいい感じに割り切ってくれるから話しやすいよ。
「宇沢は?」
「バクオンパ?バクオンパはね〜。なんか系統は違うぼっちとして気にかけてやりたいって気持ち強くて……見てるとね。悲しくなっちゃうの。心の中のどこか繊細で純情な感情がチクチクするの」
あ、今気づいた。気付いたからには……言うか。
「数少ない“カズ”サってね」
「帰るよ?」
「ごめんなさい」
はい、ごめん。言わずにはいられなかったんです。ハイ。
ため息をつくカズサが痛むと言わんばかりに頭を押さえてから吐き出すように言った。
「でもそんなにちゃんと考えてたならもっとやりようがあったと思うんだけど」
「いや、普通にバカみたいな労働量でパンクしてたのはそうだったから長期休暇目的でもある」
「先生……」
いやだってそうじゃん。馬鹿じゃん。あの労働量。死んじゃうよ?俺死んじゃっていいの?いや、死なないけどさ。俺はほら、うつ病になるタイプじゃないから。仕事いっぱい任されて耐えきれなくて自殺を選んじゃう人じゃないから。高跳びするタイプだから。
「まぁ、だからね。気を遣われないよう逆にこっちからいっぱい絡んでるところなんだよ。一番心配な子が居るとこだし」
「だ……あー。あの子達」
「多分その子達。
「なら直接行けばよかったじゃん。態々トリニティ来る?」
「いや、マジで聞いて(part3)。俺もそう思ってさ、試しに行って来たんだよ」
そしたらさ。やばかった。怖かった。宗教出来てた。なんかそういう新興宗教かな?って思うくらい持ち上げられてさ、畏れと恐怖と憧れ?みたいな目線で見られてホントに怖かった。あとなんか貢がれた。怖かった。目の前に積み上げられる財貨に慄いたのはたぶんアレが初めてだと思う。
やっぱりさぁ、負い目があるんだよ。あのハスコラみたいなババアのせいとはいえ……ねぇ。ちょっとホントに収拾つかなくなってきたからスバル……アリウスの風紀委員の子に『今はまだ少し……』って言われちゃってね。それでも心配だからこっち来たのよ。まぁトリニティの子も心配っちゃ心配だけど。
「なんか……先生って先生辞めたい辞めたいって言うくせに先生だよね」
「……まぁ言わんとすることはわかるよ」
スイーツをパクつきすぎたせいで若干冷めたコーヒーを飲む。ミルクもシュガーもないブラックで、苦みが甘みを流し込んですっきり。真っ黒な珈琲の水面に微かに映った顔は疲れ切った顔をしていた。うん。まぁ……
「正直、正直なところさ。ここだけの話ね?義務感がつよいよ。それに結構、荷が重いね。あんまり言うのも、ダメなんだろうけど」
「無理して」
「ないって言うと嘘になるよそりゃあ。それよりもさ、なんか。このままだとみんなの事嫌いになりそうで
なんていうんだろう。緊張の糸みたいなものが切れてしまったというかようやく切れたというか……。このままいくと互いの為にならないって思ったというか……いやもっとストレートに言っても良いか。
これ以上先生として関わると『仕事』としてしかみんなを見れなくなる。
俺もさぁ、経験あるのよ。
こっち来る前の高校で、先生が事務的にしか対応しなくて、でも負担を掛けてるのはこっちじゃん?機械的に出された課題を解いて、提出して、なんかもう先生と生徒の線引がしっかり引かれてさ。部活の後輩んとこの担任がめちゃくちゃフレンドリーで、所謂アタリの先生って言われてたから余計に担任と話すのが辛い……みたいな。
あるべき姿というか昨今のコンプラ的にその対応が無難なんだろうけど、楽しくワイワイやってる姿を見て羨ましくないなんて口が裂けても言えなかった。
俺も楽しくやりたかったよ。青春したかった。だから、まぁ先生やるってなってさ。真っ先に思い浮かんだ担任を反面教師にしてなるべく良い先生に近づけたけど、体験して分かった。
担任みたいになりたくないけどさ。でも"コレ"、長く続けると、ダメだね。なんというか、
「……疲れた?」
「だから休んでる。こうやってね」
グイッと飲み干した珈琲、投げやり気味にカップをソーサーに置くとカランとした音を立てた。お店のものにやつあたりしてもしょうがないけど……ね。
今になって気づく。担任は割り切ってたんだ。生徒を。それってマジでスゲェことだって気づいたんだよ。俺?割り切れないからこうなってるわけで……
偏に向いていなかったのか。いや、なんか、割り切れたら割り切れたでダメなんだろうけど。でも業務量がクソ程多くて、パンクした時、渡りに船だと思ったよ。肩の荷が下りた感じがした。息抜きは重要だね。ホント。
空を見上げると綺麗な晴天。両手を頭の後ろに回して椅子をななめにグラグラする。たまにしたくなるよね。普通に危ないけど。自嘲気味に、だけど笑い飛ばすように笑えない冗談を言う。カズサぁ、ごめん。言わせてくれ~~。
「いつまで先生すればいいんだろうねぇ~」
「……無理、しないで、って、私が言うのもか」
「いいよいいよ。てかごめん。こんなこと言ってる時点でカズサに甘えてる節あるし。カズサはいい感じに割り切ってくれるじゃん。マジでそこは感謝してるよ。ホントに」
「ん~~、まぁね。頼ってもらえるのは、その、嬉しいし」
「そーんな頼りがいのあるカズサにはこのブルーベリーのタルトを進呈しよう。マジでうまい。ほら、食べてみ。あ、間接キスね」
「事前に言えば良いってわけじゃないと思うんだけど……ん、おいしい」
「でしょ~?」
スイーツをパクつく。カズサが憐れみのあーんをしてくれる。うむ、美味しい。しんどい時は甘いものだ。いつもそうやって乗り切ってきたし、珈琲もある。店員さんに珈琲のお代わりを頼んで、頬杖ついてカズサから差し出されたチョコとオレンジのタルトをパクついていると言いにくそうに、だけど真剣な顔で切り出した。
「ホントにやめる?」
「先生をってこと?やめないよ。今のやめたいってのもただ限界が来たからってだけ。てか生徒会長の代理で来てるのに途中でやめられないっしょ。今はホントの本当にお休みをもらってるだけ、です!」
それに、頑張りたいから休むんだよ。頑張って続けたいな~とは思ってる。モチベはね。まだあるよ。まだ。
「頑張り過ぎだと、思うけど」
「男の子なんです~。カッコつけたいんです〜。女の子の前で見栄を張らずにどこで見栄張るのさ。まぁいっぱい愚痴は吐くけど。先生見習いなんで。レベル1なんで。本職すげぇ〜〜、マジすげぇ~。マジでやらないとわからない苦労があるって理解したもん。今じゃ、あの担任でさえ尊敬の念絶えないよ。無難にこなせるってスゲェ。俺めっちゃ生徒に深入りしてるもん」
「ホント、無理しないでよ」
「しないしない。俺は高跳びするタイプ……!いざとなったら逃げるよ。情けなくね。あと、さっき言ったけど距離感測りかねてるならこっちからぶつかりに行けの精神でやってるよ。最近のセクハラ言動ね。あれよ、あれ。ダイナミック鞘当て。自分から刀をぶつけに行ってコミュニケーションをとる初手無礼スタイルね」
そう、お侍様が刀を当てないように脇に避けようとしたらホームラン的なノリで刀をフルスイングすればいいとね!お侍様のすることじゃない……!
先生は上手くやれないけど、生徒……同い年のノリなら上手くやれる。強みを活かしていけ〜〜。学校に一人はいる下ネタバンバン言うクソガキね。場の雰囲気を良くも悪くも低俗な感じにする。遠慮せずに当たれるじゃん。さすがにコンプラ違反で指導室へ叩き込まれた友人……!お前のムーヴ、参考になってるぞ……!
「それは、うん。いや、今の話聞いて怒るに怒れないでしょ」
「あ、わかる?正直俺も狙って言ってる。まぁほら、俺男だし。思春期真っ盛りの男子高校生だから、役得だよなって思いながらやってる。てか今の俺なら不純異性交遊じゃなくて合法異性交遊だよね?ならよくね?年近いし、先生と生徒だからアウトなだけでさ。今関係ないじゃんね」
健全な男子高校生だぞこちとら。我慢は毒なんだぞ。これはふざけでもなんでもなくガチで。いや、ほんとにそう。授業中、不意に息子がスタンダップした時はマジで焦ったからね。怖いよ。しかもみんな女子だし。気にしちゃうよ。全方位女子でスタンダップした息子を隠さなきゃいけない高難易度ミッション始まったときの俺の気持ちね。教室の子達そこそここっちに視線向けてくるし。唯一の男だからですね、ハイ。嬉し恥ずかしだけど。
くどくどとそんな愚痴を吐き出しながらカズサのチョコオレンジタルトを強奪してすべて平らげるとキレ気味のカズサがいきなりブッ込んできた。だって美味しかったんだもん……。
「先生好きな人いるの?」
マジ?それ聞いちゃう?
「えー?気になる?気になっちゃう?いや~、でも俺、みんなの先生だからな~~。誰か一人とってなるとみんなが悲しんじゃうからな~~」
「御託は良いから」
「あ、そう?えー……好きな人かぁ」
真剣に考える。推しは居るには居た。こっち来る前、ブルアカをやってた頃。リアルで会って内なる乙女が荒ぶるなどしていたが、じゃあ推し=好きな人ってのは違う気がしなくもない。確かに一緒に居たいとは思ってるが……
「居る……かも」
「かも?」
ズィっと近づくカズサにうぉっ急に加湿器、湿度が急上昇する中俺は慌てて言い募った。そんなんじゃないから。マジ。マジで。
「いやね、その子のことはちょっと知ってて気になってたのよ。良いな~って思ってたんだけどさ。リアルで会ってなんかもう恐れ多いっていうか……えっ逆にちょっとこっちからごめんなさいって言いたくなるというか」
俺が近づいて汚れてしまうんじゃないかなって
「あ、ごめん。いや好意の対象って感じじゃなくて、その、推しっていうか、アイドルのファンみたいな?」
わたわたとしながらそんなことを言うとカズサは「はぁ~~~」と長い、それは長い溜息を吐くなどしてモリモリとスイーツをお代わりし始めた。お財布に大打撃だった。
学名:センセイモドキ(先生)
補遺11
等身大の男子高校生。小市民的メンタル。心配性ではあるがそれ以上にあまり責任を負いたくないタイプ
補遺12
セクハラはコミュニケーションと、(あまり敬わなくていい)気やすさ演出と、(セクハラの責任として)頼りやすくする為と、男子高校生の性欲発散の一石四鳥スタイル。だいたい1:1:1:10
学名:トリニティカズサネコ(杏山カズサ)
補遺1
頼られるのは嬉しいがなんとなくそんな目で見られていないんじゃないかと不安になっている
補遺2
良くも悪くも年相応な姿を見せられ、ごはんならぬスイーツを何杯も平らげた