センセイモドキは先生を辞めたい 作:ブルアカやったことない民
「第一回、紅茶にも珈琲にも合うお茶菓子は何? お茶菓子開拓の部屋~~」
「わ、わぁ~~」
パチパチパチパチ
とぅーるる、るるるるーるると歌うは某部屋のBGMだ。
みなさまこんにちは。虚しく響く一人の拍手の元開催されましたお茶菓子開拓会。今日のゲストはトリニティの苦労人こと、ナギナギ……桐藤ナギサでございます~~。ティーパーティーというトリニティの代表委員会に所属し、押しも押されぬ生徒会長の一人なんでございます。
耳に挟んだ噂では昨日で25連勤、約1か月もの間仕事に忙殺されており、現在4徹明けだそうです。
そんな激務以上のデスマーチを続けられたんでしょうか。あたくし、どーにも触れたくないんですけども、今回は
「ど、どうも……その先生、方々にお声がけとは……?」
「はい。今回のお茶菓子開拓は元々予定していた昼休憩のちょっとした遊び……だったんですが!」
なんと!今回!
「ナギナギの気合の入れようが違い過ぎる!!!!」
「そ、それは……」
ビックリしたよね。ホント。だってさぁ。男子高校生の最近の昼休みにケーキをドカ食いする遊びみたいなノリだったのにさ。ナギナギ、激務の間を縫って、そのお茶菓子を作るんだよ。てか昨日もケーキを作って徹夜したんだよね?
「……その、先生に、喜んで欲しくて」
可愛いかよ。でも、それで無理するのは違うじゃん。休み遊ぶために計画したのに結果的に休めてないんじゃ本末転倒だよ。ね?
「……はい」
わかればよろしい。だがナギナギ、貴女は恵まれています!
貴女の現状に理解を示す稀有な友人が貴女の為に方々に働きかけてくださいました!ティーパーティーの派閥や正実、シスターフッドが手を取り合い、今日、今日だけは……!ナギナギの仕事をすべて代わってくださいました……!主にミカが犠牲になった。
「ナギナギ。今日はおやすみ。それもナギナギに連絡しないように取り計らった完全フリーの日でございます!」
「……嘘、でしょう?」
ナギナギは呆然と、しかしまるで夢でも見るようにこちらを見ていた。そんなに驚く事?と思ったけど4徹してましたね。情緒ガッタガタでしたわ。しかも地獄のデスマーチを終わらせたところでしたね。そして、そのままの顔で、頬に伝う一滴の涙……
「あれ、私……」
「ナギナギ!?……良いんだ、今日は休んでいいんだ」
「やす………み…………?」
俺はギュッとナギナギを抱きしめ、頭を撫でた。
お労しい……お労しいよ。ナギナギはどうやら休日という概念を忘却しかけていたらしい。というのも、休日だとしても呼び出されたり、休日中に平日処理できなかった仕事をこなしていた為、休日(休んでいない)状態だった。それヒナもやってたりするけどトップ層で流行ってるの?休日で自分の仕事を処理する流行りがあるの?悲しすぎない?
「わた、私はこの後も……や、休んだら仕事が溜まって」
「溜まらない。今日だけは仕事が溜まらないんだ……」
「はっはっ……う、嘘。私を騙そうと、また私を。ヒ、ヒフミさん、私は……」
あのトラウマ程に……!?
過呼吸で疑いかかるナギナギ、労働とはこうも人を変えてしまうらしい。俺もこうなるのか……?いや、俺はこうなる前に逃げたからセーフだ。じゃあ逃がしてやらないとナギナギ死んじゃうじゃん。過労で死んじゃう。
とりあえず頭を撫でる事小一時間、逆に小一時間も掛かってしまったのだが、ようやく落ち着いたナギナギは、それでも存在しない幻獣をこの目で見たようなキラキラとした様子でちょっと頭が幸せのように麗らかに世のすべてが幸福であらんことを祈った。
「
「変なルビ振ってない……?まぁいいや。なんで今回ナギナギはハッチャけて良い日です。ハジケリスト解禁日です」
ということで、俺はナギナギが作ったスイーツと事情を考慮し可哀そうに思った生徒達がたくさん作ってくれたスイーツが所せましと並ぶ専用のお部屋を用意しました。スイーツをドカ食いして爆睡できるように部屋の隅にはピンクゴリラが搬入したデカイ横になれるタイプのソファがある。教室にデンとソファがあるのはなんかもういかがわしいお店じゃない?
さて、そんなドカ食いドカ遊びできる部屋で、今日の主旨を改めて説明します!
「俺はね?思ったんです。確かにナギナギは紅茶派の人間で、俺は珈琲派の人間。そこを変えることは出来ないワケ」
「うっ……」
「これはもう不変。だけどトリニティとゲヘナが条約を結んだように、我々もまた分かり合えると思うんだよ」
そのためにこちら、珈琲にも紅茶にも必要不可欠なものがございます。そう、お茶菓子。甘い物、しょっぱい物、色々とございますがここは一つ、珈琲にも紅茶にも合うお茶菓子を見つけて交流を深めようではないか……と。
そんなわけでミカとセイアに声掛けをしてナギナギが作ったロールケーキ以外にも、各種スイーツやお菓子、様々な付け合わせのものと大量の紅茶と珈琲!
「ナギナギ。今日の食事は全て紅茶とお茶菓子になることを覚悟してね。俺も珈琲とお茶菓子になることを覚悟するから」
「わかりました。一先ず何からいきましょうか?」
キリっと表情を変えていそいそと紅茶を注ぐナギナギ嫌いじゃないし寧ろ好きだよ。もうナギナギは今、この瞬間人生が楽しくて仕方ないのだろう。俺もいそいそと珈琲をドリップするなどしつつ、最初のお茶菓子を選ぶ。
「だが、ナギナギ。俺が普通のお茶菓子開拓をすると思っていないかい?」
「……違うんですか?」
あぁ、違う。今日はスペシャル……楽しい一日にするためにちょっとした勝負を整えました。
「今から、俺とナギナギで三つのお茶菓子を選びます。それぞれで珈琲、紅茶との良さや相性を語り合い、それに対して反論を行います。反論に言い返す事が出来なかったら負け。三本勝負で二本先取……勝った者は負けた者の言うことをなんでも一つ聞く!」
「なんでも!?」
おっとぉ……スケベが出たな。むっつりナギナギめ。
「残念だが、エッチなお願いはナシ……と、言いたいところです、が!」
そう、それだとナギナギの理性が爆発してもう取り返しのつかないことをしてしまうかもしれない。拉致監禁とかね。やりそう。ナギナギは割とヤンチャだ。気が乗ったらやると思う。だっておっぱいアイマスクの時もあの後『私もしますか?』とか言ってきたし。やりたかったの?
そんなナギナギは『ダメダメ!エッチなのはダメ!死刑!』とコハる(動詞)(性的なものを拒む意)よりもハナコる(動詞)(適度に性欲を発散する意)方が良いだろう。なので、こちら。
バッと取り出した紙、二枚。そこにはセイアとミカの署名。書類の見出しは『軽度接触に関する契約書』だ。
「セイアとミカにはちょっとしたお触り程度であればオッケーということを示す書類を貰っております」
「……ほぅ?」
目の色が変わる。そして、書類を奪い去るように手に取って、“穴”が開くほどガン見し始め、契約の“穴”を探してしてるんだが、残念だけどセイアが作った契約書だ。多分瑕疵はない。多分ね。
「この、軽度接触の範囲については」
「書いてある通りだけど説明をしようか。俺に触る場所は上半身のみに限定し、触る部位も手だけに限定される。また、俺から触る場合もナギナギの頭と手だけだ。これ以上はなく、それ以外のお願いであってもトリニティの会則や規範に則った行動が求められる。これを判断するのは俺だが、今日はハレの日だ。うっかりすることもあるだろう」
「なるほど……いくつか問いたいことはありますが、それで“判断”を鈍らせてはいけません。ので、納得しましょう。ですが、この勝負、絶対に負けられません」
気づいたか……。そうだ、この勝負。俺が負けたとしても“判断”を下すのは俺だ。つまり、ナギナギのミッションは俺を気持ちよく負かせないといけない。俺が納得し、しょうがないと思わせられる敗北。それをすぐに理解したナギナギは真剣に茶菓子を吟味し始めた。
「俺はこれ。王道のバタークッキー」
「なるほど、では私はチョコのバームクーヘンを」
オッ、良いチョイス。
「それでは第一戦、バタークッキー対チョコのバームクーヘン」
では、チュートリアルも兼ねて先攻。バタークッキー。実食。
といっても論争は堅苦しいものではなく、雑談に近いものだ。だって今回の目的はおやすみだもん。ガチガチの討論は疲れるだろ。
「やっぱりさぁ、チョコクッキーとかジャムクッキーとか色々あるけどさぁ。王道のプレーンクッキーっていうの?バタークッキーが結局一番みたいなとこあるよね。」
このクッキーのパサつきを珈琲で流し込むと良い感じになる。これがね。最高なんすわ。
「ですがいつもそれでしたら飽きが来ませんでしょうか?やはり少しの冒険心は必要なのでは?」
オッ、なるほどね。だからあえてのチョコ味バームクーヘンと。やるな……
「だがそれは帰るべき場所があるからだよナギナギ。お家があるから冒険できる。門限があるから門限破ってのお出かけはちょっと背徳的なんだ。守破離って言うでしょ?伝統を守る、伝統を壊す、伝統から離れつつもその味を踏襲する。それらはすべて基準となる伝統があるからなんだよ。つまりバタークッキーは伝統……!評価の基準!」
それに、あくまでメインは紅茶や珈琲。くどい味は逆に飲み物の味からスイーツにメインが移ってしまう。だからこそ、素朴な味が一番という説を押したい。
俺の意見にナギナギは少し衝撃を食らったようだ。頭をのけぞらせつつ、不敵な笑みを浮かべる。理解したな、やり方を。この数ラリーで……!そうでなくては……!好敵手はそうでなくては……!
確かに一応珈琲派と紅茶派、両者分かり合えるようにとこの会を開いたが、かといって手を取り合えるのかと聞かれると否定するだろう。何処までいっても平行線、珈琲派と紅茶派が分かり合える?そんな夢物語は捨ておいてしまえ。
そう、これはナギナギの慰め会という体を成した珈琲派と紅茶派の争いなのだ。紅茶派代表のナギナギは俺の永遠のライバル……!この勝負、勝たせてもらう……!
「一理ありますね。ですが」
──まだまだ、ですね。
ナギナギとて真意をわかっているのだろう。そんなこと言いながら選手交代する。後攻、チョコ味バームクーヘン。実食。
「確かに素朴な甘さで紅茶の味などはより一層引き出されるでしょう。しかし、私達のような愛飲者にとって紅茶や珈琲の微細な味わいは、たとえ強めの甘さの後であろうと判別できる味覚をお持ちでしょう。それならば、より甘いものを食べたとしても本質からズレることはない。ならばいっそ、濃い味のものを食べた方が、紅茶や珈琲で口直しした時の食後感はいっそう良いものになるのではないでしょうか」
ほぅ、なるほどね。うーんやるねェ?俺は幽白の戸愚呂弟みたいに感心した。
言わんとすること、理屈、そして繊細な味覚を持っていないのかというパンチライン、思わずあとずさりしながら、しかし半歩だけの後退でもって耐える。残念だが……そのパンチは“甘い”よ。
ナギナギも自分の言い分が少し弱い事を感じたのだろう。俺はすかさず攻めた。見せたね、隙の糸。
「濃い味は主張が強すぎる。あくまでメインは飲み物だ。それを口直しとして扱うのは……どうなんだい?引き立て合うならまだしも、濃い味を洗い流そうという魂胆がある。それは果たして、引き立て合っているのかな?」
……第一戦、勝ったのは俺です!たっぷり!
反論できず一理あると思ってしまったのだろう。何か言葉をついて延命しようとしたが言葉にならない言葉が出るばかり。負けだよ。ナギサ。認めな。くっと悔しそうな顔をしたナギサをほくそ笑み、第二戦へ移る。
第二戦、俺が選ぶのはあえてのチョコケーキ……!第一戦の喧嘩売り!挑発!ありえないチョイスだ!しかもカカオ多めの苦味マシマシ!
目を見開くナギナギ、とち狂ったのかとこちらを見る視線にこちらがニヤリと笑ってやる。珈琲の苦みにカカオ多めチョコケーキの苦み、こうしたお茶菓子は大抵甘さがベースとなる。それは糖分補給の側面があるからだ。それに紅茶や珈琲も苦みというのが強い。紅茶では砂糖やミルクで薄めるのが普通だが、俺は生憎とブラック派だ。その違いを突く……!紅茶と珈琲、その共通点から争うのではなく、こちらの強みを前面に押し出すスタイル……!
対するナギナギが選ぶのは……ブッシュドノエル!?ブッシュドノエルだと!?
ガタっと立ち上がり思わずナギナギの顔を凝視してからそれが失敗である事に気づいた。これじゃあやる前から負けを認めるようなものじゃないか……!だがブッシュドノエルだぞ!?規格外の大きさと甘さの暴力じゃないか!いくらなんでも紅茶が負けて……!
そんな様子の俺に、ナギナギは勝ち誇ったように言った。
「これは私が昨日の夜に作った紅茶を練り込んだ紅茶クリームを使用したブッシュドノエルです。そして、それに合う紅茶も、こちらに。」
「それは反則……!くっ」
反則……ではない!確かにそうだ。お茶会はあくまで茶、飲み物がメイン。そういったのは俺だ。それなら飲むものに合わせてお菓子を作るのは当たり前の話……!だが、紅茶と紅茶だぞ!それは……
「先生、これは“ブレンド”ですよ」
「……あぁ!!!」
俺は慟哭した。椅子から滑り落ち、膝をつく。気づけなかった自分を恥じた。珈琲にもあるじゃないか……!ブレンド!二種類の珈琲を混ぜ合わせ、より複雑で味わい深いものにするやり方が……!それは別に飲み物と飲み物でやる必要はない、そういう事か……!
既に負けを認めてみるようなものだが、こちらとしても意地がある。俺は立ち上がり、ナギナギの挑発を受け取る。ブッシュドノエル、実食。そしてグイっとアメリカンをイッキ。
「紅茶クリームの仄かな苦みと味わい、そしてそれを流し込むは酸味と苦み、香りが特徴のアメリカンコーヒーをチョイス……!茶菓子として認めよう。茶菓子としてね!」
「負け惜しみでしょうか?この味は紅茶だから合うのですよ」
言うじゃん。だけどね。俺もただでは転ばないよ。
第二戦後攻、カカオ多めチョコケーキ。実食……の前に俺は片手を上げてストップする。ナギナギぃ、なにも事前に用意していたのはナギナギだけじゃない。ナギナギの紅茶……それも原理主義派なら到底許容できないだろう……やり方で、俺はこの勝負、逆転させてもらうよ。
俺はズァっと秘策を取り出した。アイスコーヒーだった。
「それは……!いえ、それは珈琲派として許されるものでしょうか?アイスなどと……“逃げ”ですよッ」
「甘いね、そんなんじゃ甘いよナギナギ。甘すぎる。そのブッシュドノエルみたいに。確かに、邪道かもしれない。風味が死んでしまうかもしれない。でもこのアイスコーヒーはタダのアイスコーヒーじゃない」
──そう、水出し。水出し珈琲だよ。
ダッチコーヒーとも呼ばれるソレ。挽いた珈琲豆を水に入れ、冷蔵庫で半日ほど冷やすことで出来るもの。ただそれだけだとつまらない。ので、俺は少し工夫することにした。
俺はアイスコーヒーをそーっと持ち上げ片手で見せつけ胸を張った。ちょうど、フリーレンの服だけ溶かす薬を見せる時のように。でもあんまり激しくしちゃうと強みが壊れるのでそっとね。そっと。
「このアイスコーヒーはね。とても調整に苦労した飲み物なんだ。水出しはどうしてもバランスを間違えると水っぽくなったり苦みが強くなったりする。ちょうどいいバランスってのが難しいんだ。でもそれを逆に利用した」
──このアイスコーヒーには豆一種類しか使っていない。だけど、挽いたものは三つほど用意して作った。まず、2時間、細挽きの粉を使用。次に2から3時間、中挽きの粉を使用。そして、最後、2時間、中粗挽きの粉を使用。
こうすることで味が三段階にわたって変化する。最初は水出しで細引きのものを使ったから苦みが強く、カカオ多めのケーキでも甘さを感じる事が出来る。次に、中挽きの味がケーキの味変に変わっていく。そして最後、中粗びきのもので逆にケーキの苦みが引き立つ。
確かにお茶会、飲み物がメインだろう。だがお茶会に参加する人が楽しめるようにする創意工夫がより良いお茶会ライフを送ることができる。コントラスト。苦みの三段活用。相乗効果……!
「くっ……」
ナギナギは思わず片膝をついた。中々のダメージ……だが勝負を決めるほどではなかったようだ。やはりアイスは認められないか。……まぁ良い。まだ後一戦ある。
二戦目の勝ちを譲った俺は、最後、第三戦へと移る。ナギナギは最後にアレをチョイスするだろう。ならば、俺も選ぶしかあるまい。マイフェイバリットスイーツを……!
第三戦……!俺が選ぶはモンブラン!そう、好きな物をチョイス!対するナギナギ、ロールケーキをチョイス!やはり好きな物……!
「第三戦は少し毛色を変える。今までは一緒に食べていたが、ナギナギのロールケーキを俺が。俺のモンブランをナギナギが食べる。そして、自分の一番お気に入りの珈琲/紅茶を相手に飲んでもらい合う合わないを判断する」
そう、交換だ。自ら最高だと考えるもので相手に美味しいと思わせた方が勝ち。
無言でこちらを見つめるナギナギ、スッと渡されるロールケーキと紅茶。見た目は普通のなんでもないいつものロールケーキ。ナギナギもまた俺が渡した最高級洋菓子店のモンブランと珈琲を見つめる。朝から6時間も並んで手に入れた最高のものだ。
では、両者、互いに実食。
こ、これは……!
クリームの甘さとスポンジのふわふわ具合、そしてしっとりとした味わい……!まさか
「出来立て……!そうか昨日の夜に……!」
「えぇ。それにロールケーキは作ってすぐに食べるよりも、数時間寝かせて上げると水分が馴染み、まろやかになります。紅茶をメインに据えた時、出来たてですと新鮮なスポンジが紅茶を吸って味が混じり、そしてロールケーキの味もまた紅茶に混じってしまう。あえて、寝かせる。今日の為に拵えた今が一番おいしくなるように合わせました」
そんな……
「それにこのモンブラン。先生には申し訳ないのですが食べ慣れたものなのですよ」
なんだと……はっ!?クソっ!忘れていた……!
「ナギナギは金持ち……!それも生粋のお嬢様だから、超高級店でもなじみがある。合う合わないで言えば合うのだろうが、それはいつもの味だから……。いつも食べ慣れているものに最高は感じない、か。」
ナギナギは頷いた。そこまで考えて……いや、多分このお茶会が楽しみ過ぎてめちゃくちゃ凝った奴作って自慢しようとしたんだろうけど、それがまさかこんなコンボになるとは思わないじゃん。
これは、俺の敗北だ。知ってる味を提供したのは負けだからな。
「負けたよ。俺の負けだ。ナギナギ、良いよ。なんでも一つ。一つだ」
ナギナギは静かに、それは静かに両手を上げた。緩く拳を掴んで手を組むように上げる。淑女らしからぬガッツポーズ。だがそれは見方を変えればまるで天に祈りを捧げるようであった。そんな嬉しい?まぁ嬉しいならいいや。やった甲斐ある。
で、エッチィナギナギはどんなお願いするのかな~と待っていると、おずおずとナギナギは口を開いた。
「その、お、おっぱいアイマスクを。私にも……」
「えぇ……?」
おーん……頼むんだ。まぁむっつりっちゃあむっつりだし。そんなもんか。顔を真っ赤にして控えめに頷くナギナギに、とりあえずと残っているスイーツや茶菓子を置く。まずはこのてんこ盛りを消費しよう。ナギナギはジャッジを待っている。あぁまだ言っていなかったね。
「ん~……よござんしょう!目が塞がっちゃったらね。判断できないから。あ、でも他の場所触ったらダメだよ?……さてナギナギ!このテーブルの上にあるモン全部食べて血糖値スパイクで眠くなったらするよ!」
「……はい!」
それはそれは快活な声が教室に響いた。俺はナギナギと大量のケーキやスイーツを食べながら心の隅で静かに、確かにこう思った。
そんなに羨ましかったの?
学名:センセイモドキ(先生)
補遺15
そんなに羨ましかったの?
補遺16
ソファでアイマスクしようとしたが結果的に添い寝になった
学名:トリニティイススワリ(桐藤ナギサ)
補遺3
むっつり
補遺4
休日という概念がまだ浸透していない