交流会二日目。
登校中に多数の視線を感じる。こうなることはわかりきっていた。
「すごく警戒されてんじゃん」
俺の横を歩く恵が心配そうに見つめてくる。
「警戒されたところで大した問題じゃない」
「……まぁ清隆ならそうだろうけどさ」
「既にある程度のプライベートポイントは稼げている。この先勝利できなくても構わない」
「そっかー勝利数は櫛田さんの三倍だし、倍率も一番高いからもう最終日分のポイント並みに稼いでるって訳ね」
櫛田や平田が稼げる最終ポイントは俺の初日のポイントより若干下回るだろう。
二人は、Bクラスは射程圏内だがAクラスには届かない。最大1.4倍しか稼げず、戦い自体も文月生の取り合いがおき易々と出来なくなる。
「じゃあさ、私と一緒に行動できるの?」
既に試験にそこまで本気じゃないと感じた恵が目に期待を込める。
「それは出来ない。まだポイントを稼げるからな。恵も自分が勝てる相手を探すべきだ」
「そうよね。でも、Dクラスまでなら戦えると思うけど見つけられるかな」
「下位クラスは高育生が率先して倒そうとするからな、相手も報酬の為に逃げ隠れに徹するか」
「聞いた話じゃトイレに立てこもってる生徒もいるって」
「……一応有効な手だな。ドアの先で召喚獣を出されたら、覗くなりドアを開けるなりしないと戦いそのものが成立しない」
支給されたタブレットは半径5メートル範囲の文月生の所属クラスを自動で表示する。対戦申請は出来るが受理されたとして視認できないと試験勝負はままならない。
「トイレまで隠れるんだから学校で隠れんぼしてるみたいなものでしょ。広すぎて見つける自信ない」
「なら授業の始まりと同時に目当てのクラスに行くのが賢明だろう。捻りは無いが確実性は高い。かなりの高育生はこの方法をとると思うが」
「それしかないかなー。……それで清隆は私にやってて欲しい事とかないの?」
「恵に頼むことは今のところないな」
本気で取り組むなら頼み事はあるが、言ったように今回はこれ以上の成果はどうでもいい。
「おはようございます」
歩いていたら目の前にいた坂柳が振り返り挨拶をしてきた。足の悪い坂柳は歩くスピードが少し遅い。追いつくのは自然だ。
そんな坂柳の周りにAクラス生が数人付き添っている。
「おはよう」
「みんなおはよう」
俺たちが挨拶を返すと、坂柳は微かに微笑む。
「昨日はいい所がなかったので、今日は綾小路くんのように活躍してみせますよ」
そういって坂柳はAクラスの数人と歩き出す。
玄関近くだったので、配属クラスの違う俺達が追いつくことはなかった。
場面転換。
Fクラス教室昼休み。
「俺達はどっかで作戦会議をしてくる」
弁当を食べ終わった坂本が、背を伸ばすしながらそう言った。
「私達がこの教室を使ってもいいということかしら」
「そんなとこだ。流石に作戦会議は別々にやるべきだからな」
「そうね。賛成よ」
「んじゃいくぞ」
坂本についていくメンバーを確認し、教室に留まるFクラス生を見渡す。
「参加権をまだ所持してる生徒も連れて行って貰えないかしら」
「目ざといな」
タブレットで参加権の有無を確認していた堀北の指摘に坂本は頭を掻く。
「スパイを残そうなんて酷いわね」
「あいつらは作戦会議に組み込んでない生徒だからな本人の意思で教室に残ってるだけだ」
「そう、でも信用は出来ないわ。やっぱり私達も移動しましょう」
「俺がいうことじゃないが、そんな漏れて困る作戦を立てる必要なくないか。どうせ俺達は擦り潰される」
「そうだとしても油断1つで痛い目にあうことだってあるわ」
「まぁな」
坂本が堀北を数秒見据え、クラスメイトを引き連れどこかに移動していった。
「それでどこにいくんだよ」
池からの質問に数秒考え堀北は応える。
「中庭にしましょう」
堀北の提案により、俺達Dクラスは中庭に集まった。池が須藤達を連れてきたので八人全員いる。
「昼休みが終わり次第、池君・本堂君・軽井沢さんはEクラスに走って適当な相手に勝負を挑んで」
今朝恵に伝えた内容そのままの指示を堀北は出す。
「いやまぁそれが正解なのはわかるけど、せめて勝てる相手わかんねぇの?」
堀北の指示に池が不満そうな態度をとる。
「貴方と本堂君が負けたのは間違えてDクラスに挑んだからでしょ。Eクラスなら誰でも勝負自体は成り立つはずよ。ただこの生徒だけはやめときなさいEクラスの代表だから」
堀北はタブレットを操作し、一人の生徒の顔を表示させる。昨日案内で吉井に教えられたクラス代表の一人だ。
「実際に軽井沢さんは二勝出来てるわ。貴方達が気にすべきは対戦申請が誰かに先を越されることだけ」
「軽井沢が勝てるなら勝てるか」
「なにその言い方、私池君よりは点数いいけど」
「あ、いや言葉の綾だってなぁ本堂!」
「僕に振らないでよ」
池の失言に恵が噛みつく。当然の反応だ。
「ともかく三人はEクラスと対戦して」
「お、おう! Eクラスな!」
池は堀北の再度の指示に誤魔化すように返事をしお茶を濁す。
「鈴音、俺はFクラスか?」
「須藤君はDクラスでいいわ」
「……Fクラスに負けたぞ」
「あれは吉井君が異常だと既に確認できてる。彼は観察処分者で日頃から召喚獣を操ってるそうよ」
「観察処分者?」
聞きなれない単語に須藤が首を傾げる。
「えっとね、聞いた話じゃ教師の雑用を召喚獣を使って手伝う義務がある人らしいよ」
「観察処分者の召喚獣は物体に触れられて力もあるんだって」
堀北の説明を櫛田と平田が補足する。
「そういった理由で吉井君は召喚獣の扱いだけは学年でもトップ負けても仕方ないわ」
「そうだったのか。勝てるんなら俺はDクラスに挑むぜ!」
須藤が拳を合わせやる気を入れる。四人に指示を伝えた堀北は櫛田達に顔を向ける。
「それで僕たちはどうしようか」
「好きに勝てそうな相手を選んで貰っていいのだけど、綾小路君と一緒に行動はしないで」
「どうしてだい?」
「彼が文月Aクラスに狙われているからよ」
堀北は昨日の霧島の言動を話す。
「なるほど。クラスメイトの敵討ちか。霧島さんだけじゃなく何人かのAクラスが綾小路君を倒しにやってくる可能性があるんだね」
「ええ。高得点の綾小路くんに確実に勝つならそういった策を用意してるはずよ」
「なら綾小路くんの護衛をしたいところだけど、僕じゃ対Aクラスの戦力にはならないね」
「私も昨日Bクラスに勝てたけど、Aクラスは無理かな」
堀北からの説明を聞き、俺の現状をしった平田が手をうとうとするも純粋な点数が足りない。元より個人戦なのだから手を貸す必要もないのだが。
「そういった訳で、綾小路君は一人で行動してくれないかしら。おそらく相手は拒否ペナルティーを押し付けて最終的に勝つ作戦をとるでしょうけど、貴方の点数なら2,3個ついたところで文月Bクラス以下は狩れる。点数に応じて好きに動いて」
「わかった」
場面転換。
屋上にFクラスの生徒が集まっていた。
「それで雄二作戦は?」
「お前らは明日まで生き残れ以上」
「……それで雄二作戦は?」
「お前らは明日まで生き残れ以上」
「一字一句同じ言葉で無策を晒したよ!」
坂本の策とは言い難い指令に吉井が吠える。
「心外だな。とにかくお前達が参加権を失くすのだけは回避して欲しいんだ」
「昨日より人数自体減っておるのじゃ、生き残るのも至難であろう」
「ウチら一番危ないクラスだしね」
「そこはあまり心配しなくていい。昨日よりかは狙われないはずだ」
「なんで狙われないんですか?」
「アイツらは上のクラスを狙ってる節がある。おそらく報酬のグレードが俺達のクラス順に反映されているんだ。初日は試験召喚戦が初めてだったから、慣れるため学力が低い下位クラスを標的にしたんだろう」
坂本は幾つかの根拠を添えて自身の考えを話す。
数学高得点者の綾小路がAクラスだけと戦っていたこと。高育側の高得点者は文月下位クラスと一、二戦したら上のクラスに矛先を変えていたこと。
「なるほどのう。つまり報酬の低い下位クラスは優先度が下がるわけじゃな」
「そうだ。だが、下位クラスとしか戦えない高育生もいる。あくまで昨日よりかはマシって話だ」
「でも、明日まで生き残ってどうするのさ? 生存報酬を狙うの?」
「明日までってのは今日負けるなって話だ、今日のFクラスの作戦は以上。不安なら生き残る方法を各自話し合ってくれ。俺は用事があるからここで席を外す」
坂本が急ぐように屋上から出ていき、取り残されたFクラスの生徒は各々がどう生き残るか知恵を出し合った。
場面転換。
Fクラス教室。
昼休みが終わり、今日の特別戦が始まる。
「それじゃ清隆いってくるね!」
恵が自分のポイントの為、池達とEクラスに向かっていく。そんな恵を見送りとりあえず立ち上がろうとしたら声をかけられる。
「待って頂戴」
声の主は木下だ。見た目だけなら大抵の人は違いに気づかないだろう。ただ、声音を偽っていない。
目の前に人物は秀吉でなく姉の優子の様だ。
「双子ならではの作戦か」
「ええ。不本意だけどね。代表と久保君が来たら話しを聞いてくれないかしら?」
「そこまであからさまな罠に飛び込む気はないんだが」
俺は、堀北をチラ見する。
まだ教室に残っていた堀北もこの堂々とした態度に戸惑っているようだ。
「Aクラスのプライドに賭けて卑怯なことはしないわ」
「……わかった数分待つ」
他者が見れば誠実な訴えに絆されたように見える事だろう。
ただ、興味があった。この発言をした木下姉がどのような策を行うのか。
数分もかからずに霧島と久保がFクラスにやってきた。
霧島は学年主席。久保も昼休みに行われた情報共有で学年次席なのは聞いている。
「それで話とは?」
「その前にお互い別々のドアに移動しましょう。会話は面倒だけどその状態じゃないと公平じゃないわ」
最初に足止めしたのを半径5メートル以上離れることで帳消しにするのか。確かにこの距離ならいつでも逃げることは出来る。
「綾小路君。私、代表、久保君の誰かと戦って」
「代表か久保君を選んで貴方が勝ったなら私は無抵抗に負ける。私を選んで勝ったなら代表と久保君は貴方に対戦申請をしない。」
霧島・久保に勝てば勝利数が1つプラスされる。木下に勝てば拒否ペナルティーを回避できる。
俺が二人と対戦をしたくない前提で俺に得がある提案をしてきた。
「提案を蹴って逃げてもいいのか?」
「……してほしくはないけど、いいわよ。距離をとったのはその選択を残しとく為でもあるのだから。一分後に追いかけて三人で対戦申請はするけど」
「どの選択も自由というわけか。確かに正々堂々な提案だな」
「当然でしょ。この学園の見本となるべきAクラスなのだから。貴方が正当な手段でAクラスを蹂躙したのは責める事じゃない。でもやられた私達にも意地はある。勝負してくれないかしら」
……さて、どうするか。おそらく参加権を保持してる文月Aクラスは全員、数学の補充テストを受けて点数を上げている。2,30点程度は高くなってると想定していいだろう。
その中でも目の前にいる三人は、俺と勝負が成立する点数を取っているはずだ。
「勝負をするのも三人に追われるのは勘弁願いたい。3つの拒否ペナルティーを受け入れる」
「……本当にそれでいいの?」
「Bクラス以下となら戦えるだろうからな。挑戦権を失う可能性がある勝負は避けたい」
「そう。仕方ないわね」
そういって木下達は、対戦申請を拒否された後Fクラスを出て行った。
「あなたなら勝てた筈よね?」
「さぁな、仮に互角の点数なら負けると思うぞ」
成り行きを見守っていた堀北が、ジト目を向けてくる。俺が拒否ペナルティーを食らうことは考えてたが、あの提案なら勝負で切り抜けられると思ったのだろう。
「もう過ぎた事だし、これはあくまで個人戦だもの。問い詰めはしないわ」
「そうしてくれ」
「それで三割減もしたあなたはどう動くの?」
「Aクラス以外を探して対戦申請をする。Aクラス生から対戦申請が来たら後数回は拒否をするのも視野に入れている」
「改めてとんでもない点数をとったものよね」
すでに文月生のクラスごとの最低ラインは高育側もある程度予測がついている。
【Fクラス約50点 Eクラス約70点 Dクラス約90点 Cクラス役150点 Bクラス役170点 Aクラス200点】。
仮に俺が後2回拒否ペナルティーを受けてもAクラスの下の方なら勝てなくはないだろう。
「私も対戦者を探しにいってくるわ」
堀北が先に教室を出る、俺も反対方向に歩き出した。
「あら、綾小路くん奇遇ですね」
目的地だったBクラスに着くと坂柳が椅子に座りタブレットを弄っていた。
「先着一名だったりしないか?」
「いえ、既に何名も来た後です。なのでもうBクラス生はいませんよ」
そう言われ、一応教室を見渡すも坂柳以外誰も居ない。
「出遅れたようだな」
「そうですね。今日一番被害が多いクラスはここでしょう」
「初日にそうしなかったのは何故だ?」
坂柳は誰が訪れたかは言っていないがある程度の検討はつく。文月Aクラスに配属された高育Aクラス生徒だろう。
文月Bクラスは昨日被害が少なかった。教室にそれなりの数残って自分以外の誰かが標的になる可能性がある籠城を選んでもおかしくない。
そこを坂柳の何かしらの策で一網打尽にしたというのが考えられるシナリオだ。それを初日にしなかった理由まではわからない。
「遊びのようなものに本気で挑む理由がありますか? 私はプライベートポイントも充実していますし」
「なら今日はどうして出張っているんだ」
「今朝言ったでしょう、綾小路くんの活躍に負けないと。綾小路くんがあんなパフォーマンスをしてくれたんです。こちらもそれなりの物をお見せしなくては」
「なるほどな。それで今は休憩中と」
「はい。体力をそれなりに消耗してしまったので。そういう綾小路くんは何故ここにいるのでしょう?」
「拒否ペナルティーを受けて文月Aクラス以外との対戦しか出来なくなった」
俺の返答に僅かに目を細める坂柳。
「昨日の詳細は伝わっています。連日活躍しても怪しまれないと思いますが、私が気にすることでもないですね」
「そうだな」
「綾小路くんはこれからどうしますか? 私と一緒に行動すれば数人狩れますよ」
杖を突き立ち上がった坂柳が上目遣いで同行するか尋ねてくる。
「俺は一人でいい」
「残念、振られてしまいました。では私はこれで」
「あぁ、慣れない学校だ。足元には気をつけろよ」
「……ふふ、ありがとうございます。そんな台詞をいただいては猶更エスコートをされたかったですね」
坂柳は機嫌良さそうにBクラスの教室を出ていく。
その後俺は、あてもなく文月生を探し続け、遭遇した数人と対戦し勝利を積み重ねた。
場面転換。
「戦死者は補習!」
文月学園に来て一番聞き慣れた言葉を背に、堀北は椅子に座る。
本日四戦目。つつがない勝利を飾ったと同時にもうすぐ終了時間なことに気づく。
(昨日より積極的に挑んでるけど四人としか戦えなかった)
堀北は二日時点で計九勝を挙げた。
だが、昨日は五人と戦えたが今日は四人。
最初に綾小路の様子見で時間を使い、開幕教室にいる文月生徒を捕まえられず、ひたすら探索に費やして何とか対戦に漕ぎつけた。
最も文月学園の参加者は減る一方なのだから仕方ない事である。
「あ、堀北さん」
堀北が休憩していたら目の前に一之瀬が現れる。
「一之瀬さん、今日も情報交換するつもり?」
「たまたま通っただけだし、時間もないからしなくていいかな」
一之瀬は壁の時計を見つめそう答える。
「わかったわ、でも1つだけ教えてくれないかしら?」
「全然いいけど何が聞きたいの?」
「あなたの今日の勝利数。純粋にきになるの」
堀北は自分が今回の特別戦で一位に立つことは出来ないと判断しているが、傍にいる一之瀬は昨日時点で二位だった人物だ。
一位候補の坂柳が初戦で敗退し、一日目は池達同様のゼロ勝。今日巻き返したとしても一日の差は大きい。
昨日時点の一位だった綾小路は拒否ペナルティーで昨日ほどの蹂躙劇は出来なくなっている。勝利数は減るだろう。
なので一之瀬の今日の勝利数次第では一位に浮上してもおかしくない。
六限が終わればタブレットに情報が更新され、上位3人と自分の順位がわかるとはいえ、聞いておくのも悪くない。
「八勝だよ」
「……よくそんなに戦えたわね」
堀北から綾小路に言った様な言葉が漏れる。一之瀬がどうやってそんなに戦えたのかわからない為に。
「……何故か皆、近くに隠れてたから」
一之瀬自身もなぜ自分の近くに文月生が多数いたのかはわかっていない。本人の預かり知らぬ事ではあるが、ただ単に一之瀬が人気だっただけだ。
なるべく近くで様子を観察し、話の切っ掛けなりを探ったストーカー予備軍が多くいた。そんなしょうもない真相だ。
「何か、作戦でもあったのかしら?」
「私もそれを考えたけど、少なくとも今日は何事もなく終わって安心したよ」
「……ねぇ堀北さん。私からも1つ質問いいかな?」
「構わないわ」
「……ううん。やっぱりいいや。それじゃあね」
一之瀬は口から出そうだった言葉を飲み込む。綾小路と軽井沢が付き合ってクラスメイトからはどう見えてるかといった内容を。
自分のどうしようもない未練を、ただ燻ぶらせることしか出来ない現状を変える勇気を一之瀬は持ち合わせていなかった。
質問をせず、急いで教室に戻った一之瀬を見送り、堀北もFクラスの教室に戻る。
「あ、堀北さんおかえりー」
綾小路が戻るのを待ってた軽井沢が堀北を見つける。
「ただいま。綾小路くん以外皆いるのね。結果は?」
「今日も二勝! そのあと負けてずっと補習室」
「一勝できたけど、この特別戦俺らに不利すぎるだろ! 綾小路とかだけウハウハなの納得いかないつーの」
「同じく一勝で池と一緒に2回戦目で負けてまた補習室送り。面子も似たり寄ったりで12人いたよ」
「そう。池君じゃないけど生徒間でかなりのポイント差が生まれるでしょうね」
高育側に有利な特別戦だといっても、誰しもが勝利できる訳ではない。二日時点で五勝にも達してない高育生は多い。
「それで堀北さんは何勝?」
「四勝よ」
「くそーいいよなぁ。点数高いと稼ぎ放題だもんな」
「まぁ勝利数少なくても貰えるだけ助かるよ」
残りは最終日だけ。池や本堂はこれ以上の勝利を半ば諦めていたが、思わぬ形でチャンスが巡ってくる事になる。
場面転換。
放課後Aクラス教室にてA~Fの代表が揃っていた。
「集まってもらって悪いな」
最初に声を発したのは坂本。この集会の発起人だ。
「皆察してると思うが、俺達文月学園は完敗寸前だ」
坂本の言葉に幾人かが曇る。
「元々相手に有利な特別戦、そんな言い訳は出来るだろう。だが、単純な話このまま負けていいのか?」
「はっ何を言うかと思えばこれは個人戦だ。それに学校間で明確な勝ち負けが設定されたものじゃない、負けの定義を勝手に決めるな」
坂本の主張に根元が反論する。
「参加権の最終所持人数が半数以下は明確な負けだろ」
「仮にお前が言うように所持数人数で勝ち負けを決めるなら、このルールなら五分の一生き残りは十分な勝ちだ」
根元の言は一理ある。不利な特別戦で半数生き残る方が難題だろう。
「五分の一か、お前は今何人生き残ってるか把握してるか?」
「100人程度だ。二日で140人狩られたが、80、60と数は減ってる。十分勝てる数字だ」
「甘いな。一人ぬくぬく安全地帯にいるから仕方ないかも知れないが」
「なっ!」
得意げに文月生の現状を語っていた根元は、自身の行動が筒抜けであることを匂わせられ硬直する。
「うちの主力であるA、Bは半数以上参加権を失っている。Aは一人の爪痕が大きいがBは策で絡めとられた。そのことは代表なら知ってるよな」
「……耳にはしてる」
「そんな策をたてられる相手が最終日何もしないと思ってるのか? んな訳ないよな。断言するぞ、下手したら三十人も生き残れない」
坂本の強い言葉に、周囲でやり取りを見てた代表達も否定できない。
「でもさ雄二、だからってどうするのさ?」
そんな中、吉井が疑問を口に出す。
「今回使ってるのはあくまで召喚システムだけだ。文月学園にはあるだろ、もう1つの目玉が」
「まさか、召喚戦争をしかけるっていうの!」
文月学園には召喚システムを用いたクラス間戦争というものがある。
詳細は省くが、それを坂本は行おうとしていた。
「個人戦から集団戦に変えるわけね、でもそんなの認められるの?」
話の席にいる木下優子が腕を組みながら前に出る。
「既にババァには許可を取っている。高育側が飲めば個人戦から試験召喚戦争に切り替えて構わないそうだ」
「それを相手が飲むとでも?」
「そこは明日の交渉次第だ。一限目をその時間に充てることになってる」
「高育側はその交渉次第だとして、私達他クラスの許可も必要でしょそれ」
木下は決定事項のように話す坂本の口調に流されず、当然の指摘を行う。
「だから最初にいったろ、負けて終わるのかってな?」
「……あんたの策に乗るのは癪だけど、それなら私達も綾小路くんと戦えそうね。代表どうする?」
「雄二の策に乗る」
「だって、Aクラスは賛成よ」
「助かる。他の奴らもいいか?」
「おい、肝心の報酬はどうなるんだ。報酬がなければそんな面倒な……」
「ここにお前の未掲載の写真が……」
「やってやろうじゃないか! Bクラスがコケにされたまま引き下がれないからな!」
お互いの台詞を途中で遮ぎった結果、Bクラスも賛成する。
A、B両クラスが賛成に回ったことで他のクラスも次々に賛成を宣言する。
「試験召喚戦争はいいけどこれって連盟を組むって事でしょ。負けそうだからってそんなに戦力出すの情けないんだけど」
「安心しろ確かに連盟だが人数は相手と同数に収める。自分のクラスに配属されてる高育生と同数を提供してくれればいい」
諸々の確認が終わり坂本はその場にいる全員を見渡しながら
「それじゃ反撃といこうじゃないか」
そう宣言した。
二日目、学園個人召喚特別戦への参加権を失った文月生は総勢140名。(Aクラス20 Bクラス32 Cクラス18 Dクラス23 Eクラス25 Fクラス22)
二日目終了時点。
個人成績 一位綾小路 勝利数15(Aクラス12 Cクラス2 Dクラス1)
一ノ瀬 勝利数15(Aクラス3 Bクラス4 Cクラス4 Eクラス1 Fクラス3 )
三位葛城 勝利数11(Aクラス3 Cクラス7 Dクラス1)