侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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壁|w・)カクヨムに投稿していたものをこちらにもぺたぺたしに来ました。



プロローグ

 

 それは、本当に突然だった。

 

「私の姿が見えているか?」

 

 世界中に響いたそんな声。その瞬間に、まるで時が止まったかのように誰もが動けなくなった。いや、動けなくなった、というのは少し違うだろうか。人どころか、物も動物も何も動いていなかったのだから。

 そして、全ての人間の目の前に、一人の少女が立った。

 真っ黒なローブの少女だ。風に揺れる髪は透き通るような空色で、神秘的な雰囲気を醸し出している。その少女だけが、誰もが動けなくなった世界で自由に動いていた。

 

「初めまして、地球人類。私はニュクス。異星の魔女である」

 

 こつ、こつ、と足音を響かせ、少女は目の前に歩いてくる。誰の、ではなく、全員の目の前に、だ。

 

「私は諸君らの言うところの侵略者である。私は諸君らの王である。故に恐怖せよ。私は上位存在である」

 

 言っている意味はよく分からないものもあるものの、明らかに人とは違うと分かる。普通の人間が、このような現象を引き起こせるはずがないのだから。

 それに。彼女が侵略者と名乗った瞬間、あまりにも恐ろしい殺気、のようなものが全員を襲った。誰もが恐怖で身をすくませる。逆らってはいけないと、本能で理解した。

 

「侵略者は語弊があるか。すでに終わっているのだから」

 

 それを聞いた誰もが内心で首を傾げた。終わっている、ということはどういうことかと。

 

「私はこの星の支配権を得た。この星の全てが私の意のままとなる。人類諸君には関わり合いのない場で終わった話だ。新たな支配者が私だと理解すればそれでいい」

 

 意味が分からなくなってきた。誰が、どこで、何をしていたのか。何も分からない。

 

「手始めに……。魔法など興味はないか? そう。魔法だ。人類にとっては想像上のものだが、私はそれを与えることができる。ああ、我ながら良い考えだ。諸君らに魔法を与えよう。その魔法でどのようなことを諸君らがするのか、是非とも見せてほしい」

 

 そこまで言われて、皆が理解し始めてきた。この少女は、この地球で、人類で遊ぶつもりなのだと。気まぐれに魔法を与えて、混乱する人類を見て楽しむ。ただそれだけ。なんと悪辣なことだろうか。

 

「ふ、ふざけないで!」

 

 そんな声が、どこからか聞こえてきた。

 

「ほう」

 

 少女が驚いたように目を瞠る。その声は、若い女性の声だった。未だ幼さを感じる声だ。その声に、侵略者の少女はわずかに目を細めた。

 

「私に意見があるのか。構わない。言ってみるといい」

「私たちで遊ぶつもりなの!?」

「否。私は諸君らを不幸にするつもりはない。私は支配者ではあるが、圧政を強いるつもりはない。人類諸君は普段通りに過ごしてもらって構わない。ただ、日々の生活に魔法というスパイスが加わるだけだ」

「それがだめだって言ってるの! 危ないでしょ!」

 

 それを聞いた少女は、わずかに首を傾げた。

 

「危ない、とは?」

「え……。えと……。な、何ができるの!」

「ああ、そうか。それを教えていなかった。いろいろとできるぞ。学べば転移もできるようになるだろうし、巨大な雷を発生させて、諸君らが使う電気エネルギーをまかなうことも……」

「どう考えてもだめだよねそれ!?」

 

 その、必死の叫び声に。少女が、びくりと肩を震わせた。

 

「え……。だ、だめなの?」

 

 おや?

 

「だめだよ! 例えば、転移! これ私でも分かるよ! 物流とかもめちゃくちゃになるし、電車とかバスとか、そういうのにもいっぱい影響が出る! たくさんの人がお仕事がなくなって、お金を稼げなくなる!」

「そうなると、どうなるの?」

「え、と……。が、餓死とか!」

「餓死……!? そ、それは大変だね……! 転移はなしにするね! ごめんね!」

 

 あれ? この子、チョロいぞ?

 

「あ、あと! 大きな魔法とか! それで犯罪とかあったら、みんなが困るから! 大きなことが起きるのは、だめだから!」

「犯罪……! そっか、人間さんはそんなことしちゃうんだね……。ごめんね、痛いのは嫌だよね。じゃあ、魔法の規模は小さくするね!」

 

 チョロい。

 

「よし。じゃあ、これでよし……。うん。控えめにしたから安心してね!」

「あ、はい……」

 

 なんだこれ。

 

「あ……。こほん。失礼した。改めて、人類諸君に魔法の種を植え付けた。その種をどう扱うかは、諸君らの自由だ。私を楽しませてほしい。あと犯罪はしないように。みんな仲良く」

 

 では、よき魔法ライフを。そう言って、少女がその場から姿を消して。

 唐突に、時間が動き始めた。

 そうして皆が気づく。魔力というものを、なんとなく感じ取れるようになっていることに。

 これが、魔法。転移とかそういうのは残念ながらできそうにないが。けれど、誰もが理解した。人間は一つ、進化したのだと。

 

 この日から、魔法が全人類に与えられた。世界の人々が熱狂し、どのように扱うか、研究を始める。ある人はエネルギー事情の解決を計り、ある人は犯罪への利用を考え……。

 そうして人々は気づいた。大したことはできない、と。例えば、雷の魔法は少しがんばればテレビの電気をまかなえるかもしれない、という程度だった。

 そうして世界はまた回り始める。新たな魔法という力を迎え入れて、いつも通りに、けれど少しだけ変化を受け入れて。

 だが。侵略者が本格的に動き始めるのは、これからなのだ。

 

 

「くしゅん……。人間さん、楽しんでくれてるかなあ……。他にも何か追加しようかなあ」

 

 

 これからなのだ!

 

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