侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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初めてのお風呂と魔法の伝授

 

 晩ご飯を食べ終わったらお風呂の時間。当然お風呂も初めてみたいで、お風呂場を見て驚いていた。拷問部屋がある、とかとんでもない呟きが聞こえてきたけど、何を想像したんだこの子は。

 

「ほら。服を脱ぎなさい」

「え……。服を?」

「服を脱ぐの」

「それはちょっと、お姉ちゃんといえでも……」

「脱げ」

「はい」

 

 やり取りが面倒になるからとりあえずは従ってほしい。わりとあっさり言うことを聞いてくれたけど。

 ニュクスは服を脱いで、私が指定したカゴに入れてくれる。ついでに洗濯も……。いや、待って。もしかして……。

 

「ねえ、ニュクス。もしかして服って洗わなくても大丈夫?」

「うん。魔法で綺麗にしてるから」

「…………。それ、私たちの服にしてもらうことも……」

「できるよ?」

 

 やった! 水道代とか節約できる! 神様仏様ニュクス様!

 

「それじゃあ、後でまとめてお願いします」

「わかった」

 

 何か対価とか求められたらどうしようとちょっと思ったけど、わりとあっさり引き受けてくれた。ニュクスにとっては片手間でできるようなことなのかも。魔法ってすごい。

 服を脱いだらお風呂場へ。ニュクスはなんだか警戒していたけど、浴槽のお湯があまり熱くないことに気付いて首を傾げていた。熱湯と思ってたのかな。

 

「これに入るんだよ」

「なんのために……?」

「体を綺麗にするために」

「魔法でできるよ?」

「綺麗にするのに魔法なんて使うなバカ!」

「ええ!? 服では頼んできたのに!?」

 

 それとこれとは話が別なんだよ! 日本人ならみんな理解してくれると思ってる! それはともかく!

 

「はいここ座って」

「う、うん……」

「では頭をながしまーす」

「え……。わぷ……」

 

 私がニュクスの髪を洗ってあげよう。長くてちょっと大変だけど、思っていたよりもさらさらで楽しい。それにしても、本当に長いなあ。

 

「ニュクス、髪長いね。腰まで……いやもうちょっとある?」

「切った方がいい?」

「それを切るなんてとんでもない」

「あ、うん……」

 

 髪を切るなんてすぐにできるんだよ。髪を伸ばすのは時間がかかるんだよ。切るなとは言わないけど、切る時はしっかり考えてやってほしい。

 そう力説したら、すごく呆れたような目をされてしまった。

 

「ごしごしと……。かゆいところはありませんかー?」

「んぅ……。気持ちいい……」

「あはは。かわいいなあ」

 

 髪をしっかり洗ってあげて、頭からお湯を流す。これでよし。

 

「体は自分で洗ってね」

「うん……。お姉ちゃんも洗ってあげる」

「え……。じゃあ、お願い」

 

 ちょっと戸惑ってしまったけど、こうして言ってくれてるんだからお願いしよう。

 ニュクスと交代で座って、髪を洗ってもらう。私も髪はちょっと伸ばしてるから、初めてだと洗いにくいかも。

 

「地球の人はみんな髪が黒いの?」

「ほとんどはそうかな。年を取ったら白くなるけど。ところで、洗いづらくない?」

「大丈夫。かゆいところはない? って言えばいいの?」

「あは。大丈夫だよ」

 

 うん。悪くないと思う。私の髪はいわゆるセミロングぐらいの長さはあるけど、それでもニュクスの長さよりはまだ洗いやすかった、かな?

 洗い終わったら、今度こそお風呂だ。ニュクスと一緒に湯船に浸かる。あまり広くないけど、二人ならぎりぎり入れる広さはある。ニュクスは小さいしね。

 

「わあ……。ぬくぬくしてる……」

「でしょう? 気持ちいいでしょ?」

「気持ちいいー……」

「ニュクスがとろけてる……」

 

 ふにゃふにゃなニュクスもとてもかわいいです。なんか溶けちゃいそうな顔になってるけど。本当に溶けたりしないよね? 仮にも異星人だから不安になるよ。

 

「あまり長く浸かるとのぼせちゃうからね。ほどほどで出るよ」

「えー……。ここに住みたい……」

「バカなこと言ってないで、出るよ。お風呂上がりのコーヒー牛乳もあるから」

「うう……。美味しそうな響き……」

 

 ニュクスを引っ張り出して、体を拭いて……。拭こうとして。さすがにそれは面倒だと思ったのか、魔法であっさり乾かしてしまった。とても便利。時間がかかりそうな長い髪も簡単にさらさらになった。すごい。

 

「その魔法なら覚えたくなるね」

「いいよ。あとで使えるようにしてあげる」

「おー。ありがとう」

 

 これは本当に嬉しい! 明日から本当に楽になるよ。

 パジャマは、私が小さい時に使っていたもの。着ぐるみパジャマです。わんこタイプ。そういうものだと思っているのか、ニュクスは疑うことなく着てくれた。とても、かわいい!

 それじゃあ、お風呂上がりのお楽しみ。コーヒー牛乳だ。ちなみに面倒なので普通に紙パックのコーヒー牛乳だよ。有名メーカーのみんな大好きユキコという商品だ。

 コップにたっぷり入れてニュクスに渡してあげる。ニュクスは茶色い水に戸惑っていたけど、私が飲んでいるのを見ると少し飲んでくれた。

 

「わあ……。甘い……」

 

 その後はあっという間だ。こくこくと一気に飲んで、ぷは、と。そしてコップを突き出してきた。

 

「お代わり!」

「あと一杯だけね。明日からはお風呂上がりは一杯だけだから」

「う……。それも、飲み過ぎると嫌いになっちゃうの?」

「そんなところ」

「分かった……」

 

 味が濃いものは残念ながら飽きやすい。だから念のため、ね。

 二杯目はしっかりと味わって、ゆっくり飲んでる。大事そうにコップを両手で持っているのもとてもかわいいと思います。

 

「んふふ……」

「お姉ちゃん? 顔が気持ち悪いよ?」

「顔が気持ち悪い!?」

 

 そんなやばい顔してたかな。してたんだろうな。気をつけよう。

 お風呂の後は、歯磨きだけど……。何のためにするのかを説明すると、これもまた魔法でやってくれた。ぴかぴか綺麗な歯になりました。最高だよニュクス。

 

「じゃあ、魔法を教えてあげる」

 

 リビングに戻って、椅子に座って。ニュクスがそう言った。向かい側の両親が興味深そうにこちらを見てくる。そんな二人の目の前で、ニュクスは私の頭に手を置いた。

 なんだろう。とても。とっても。嫌な予感がする。

 

「あの……。ニュクスさん? ニュクス様? 何をしようと……」

「大丈夫。ただちょっと……痛いだけだから」

「え……。うぎゃあ!?」

 

 い、痛い! ちょっとじゃない! 釘バットを全力で頭に振るわれた、そんな痛さだ! いや釘バットなんてそもそも見たこともないから想像でしかないんだけど! でもそれぐらい痛い!

 痛みに耐えること五秒。正直体感は一分以上あったけど、その痛みはあっさりと引いてしまった。

 そして、気付いた。魔法の知識が増えていることに。そして、私の魔力がちょっと増えていることに。

 

「それで服を綺麗にする魔法、体を乾かす魔法、歯を綺麗にする魔法が使えるよ」

「おお……。ありがとう……。死ぬかと思ったけど……」

「二人も、覚える?」

 

 ニュクスの問いかけた先は、もちろん両親。両親は揃って頬を引きつらせていて、ゆっくりと首を横に振った。賢明な判断だよ……。

 でも、この魔法はとても便利だ。ありがたく使わせてもらおう。

 リビングでのんびりとテレビを見て、その後は寝る時間。寝る場所は、私の部屋だ。

 

「ここが私の部屋です」

「わあ……」

 

 ちょっと物は少ないけど、ね。勉強机にベッド、それに棚がいくつか。ベッドにはお気に入りのぬいぐるみを置いてある。わんこのかわいいぬいぐるみだ。

 ニュクスもそれに反応して、ぬいぐるみを手に取っていた。もふもふと握ったり、抱きしめたり……。お風呂に入っている時よりも顔がふにゃふにゃだ。

 今日最初に見かけた時もわんことにゃんこに負けていたし、この子、かわいいものに弱いのかも? 弱いというのはちょっと違うかもしれないけど。

 

「すごくかわいい……」

「はいはいおまかわおまかわ」

「おまかわ?」

「こっちの話です」

 

 それよりも。お布団だよ!

 

「ぬいぐるみ抱いたままでいいから、お布団入ろうね」

「う、うん……」

 

 ニュクスがちょっと不安そうにしながらベッドに入っていく。もちろん私も。ベッドは一つしかないからね! 仕方ないね!

 

「わあ……。あったかくて、ぬくぬくしてる……」

「そうでしょうそうでしょう」

 

 お布団は人類最大の発明だと思います! いや、間違いなく言い過ぎではあるんだけど、私はそれぐらい好きってやつです。

 隣で横になってるニュクスを見る。あの威圧感たっぷりの侵略者と同一人物とは思えないぐらいに、今のニュクスはなんだかとっても無防備だ。

 

「えい」

「わ!?」

 

 とりあえず抱きしめてみた。着ぐるみパジャマもあって、ふわふわだ。

 

「え? え? お姉ちゃん?」

「ふふふ……。役得だ……」

「何が……?」

「気にしなくていいよ」

 

 完全に理解されると嫌われちゃいそうなので黙ってます。

 ニュクスは不思議そうにしながらも、なんと私に密着してきた。どうしよう。すごく嬉しい。私の妹が! とてもかわいい!

 

「えへへ……」

 

 なんだか恥ずかしそうに微笑んで……。かわいい!

 

「お姉ちゃん」

「なに?」

「呼んでみただけ」

「ええ……?」

 

 なんだろう。ニュクスってこんな子だったかな?

 ニュクスの顔を見てみる。なんだかとっても幸せそうな笑顔だ。私はまだニュクスのことは分からないけど……。こうして一緒に生活するのは悪くないだろうなって思えた。

 この子が何のために地球に来たのか、それはまだ分からない。遊びのため、なんて本気で信じることはできないから。でも、せめて、私ぐらいは仲良くしてあげよう。お姉ちゃん、だからね。

 

「おやすみ、ニュクス」

 

 そう言って、頭を撫でてあげる。ニュクスは驚いたように目を瞠って、すぐにふんにゃりと微笑んだ。

 

「おやすみ、お姉ちゃん」

 

 明日からはまた大変だろうけど……。うん。頑張ってみよう。

 




ここまでが第一話となります。
次話からはダンジョン作り開始です。そして配信の準備もこそこそと。
よければ今後もお付き合いくだされば嬉しいです。

面白い、続きが読みたいと感じていただけたのなら、
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