侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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 ニュクスの転移魔法で、昨日いただいちゃった山に移動。文ちゃんはその魔法に面食らっていて、ぽかんと口を半開きにしていた。とりあえずスマホで撮ってしまった私は悪くないと思う。

 

「いや悪いです。消してください」

「嫌です」

「なんで!?」

 

 珍しい顔だからね。消すつもりはないのだ。

 山はぐるっと柵で囲われていて、立ち入り禁止の看板が一定間隔で置かれてる。その柵の内側は雑草で生い茂っていて、大きな木もたくさんあった。これ、ちゃんと管理されてたのかな? もしかしたら、扱いに困っていた山を体よく押しつけられただけでは?

 そう思ったのは文ちゃんも同じだったみたいで、うわあ、と山の様子を見て頬を引きつらせていた。

 

「なんだかすごいことになってますね……。誰にもらったんですか?」

「近藤さん」

「え」

 

 うん。すごい顔してるね。近藤さんの私に対する接し方は文ちゃんも知ってるからね。そういう反応になると思う。

 

「よくもらえましたね……」

「もらったというか、ちゃんとお金……対価は払っているし……。ただ、うん……。ちょっと、無理矢理だったというか……」

「詳しく」

 

 私も説明はそこまで上手な方じゃないからなあ……。そんなことを考えながら、昨日の近藤さんの家での様子を話してあげると、文ちゃんはお腹を抱えて笑い出した。

 

「あっははは! なん、なんですかそれ! わたしも呼んでくださいよー!」

「いやあ……。まさかニュクスがあんなことするなんて……」

 

 魔法を与えたりダンジョンを作ると宣言したりといろいろやってきたニュクスだけど、あんなにそのままの脅しをするとは思ってなかったからね。脅しというか、私が止めなかったら間違いなく殺してただろうし。

 

「その辺り、どう?」

 

 さっきから私たちを放置してあっちこっち歩き回ってるニュクスに聞いてみる。ニュクスは立ち止まって、首を傾げて言った。

 

「許可があれば今すぐにでも殺しに行くけど」

「うわあ……」

 

 さすがの文ちゃんも笑顔を引っ込めてのどん引きだった。

 ニュクスはわりと良い子だと思うけど、この辺りは多分容赦がない。そうそう怒ることはない……と思いたいけど、逆鱗に触れたら終わり、かも?

 

「わたし、ちょっと怖くなってきちゃいました……」

「あはは。大丈夫大丈夫。…………。多分、ね」

 

 自信を持って言えないのは、正直ちょっと申し訳ないと思うけど……。きっと、大丈夫だ。

 

「でも、正直ざまあみろとは思いますよ。わたしもあいつ、大嫌いですから」

「ん……。そっか」

「はい」

 

 まあ……。私もいい感情なんてないから、気持ちは分かるけど。わりと憎く思ってるし。でも、さすがに目の前で死んでほしいとは思えなかったよ。

 ふと、気付けば。ニュクスが文ちゃんの前に立っていた。文ちゃんも目を丸くして固まってる。

 

「文」

「は、はい」

「あなたは話が分かる……」

「…………」

 

 何故か無言の握手。なんだこれ。

 

「うん……。えっと。とりあえず……。どうするの?」

 

 変なことになる前に、話を元に戻していこう。ダンジョンだよダンジョン。何か調べてるみたいだったけど、どうするのかな。

 

「とりあえず……。入口を作る」

「うん」

「この山の中に広い洞窟を作って……。快適な場所にしようかなって。とっても居心地が良くなるように」

「え?」

「え?」

 

 ニュクスと顔を見合わせて、首を傾げる。何か、変なこと言ってない?

 いや、だって……。

 

「ダンジョン、ですよね?」

 

 文ちゃんがニュクスにそう聞くと、ニュクスはやっぱり意味が分からないとばかりに頷いて言った。

 

「ダンジョンだよ。だから快適にするの」

「かい、てき……?」

 

 なんで快適な要素がいるの……?

 

「え、だって……。宿泊場所とか、作るでしょ? これからダンジョンに挑む人のために、準備できる場所とか……」

「ああ、うん……。ダンジョンの中でするものなんだ……」

「だって、外に作ったら怒られそうだし……」

「あー……」

 

 一応、私たちへの配慮の結果らしい。そうだね、小さな町みたいなのを作ったら、いろいろとうるさくなってしまいそうだ。ニュクスなら黙らせられるだろうけど、そこまでしたいとも思ってないみたいだし、避けれるなら避けたいんだと思う。

 

「分かった。がんばってね」

「うん」

 

 頷いて、ニュクスがまた離れていった。どこからか大きな杖を取り出して、何か考えて……瞑想? してる。これから入口を作るのかも。

 

「それじゃあ……。やりますか」

「やりましょう!」

 

 文ちゃんはうきうきとした様子で、背負っていたリュックから色々と取り出し始めた。ちょっと大きめのノートパソコンに、カメラを搭載したドローン。それにスマホを何台か。さらに、コードレスのイヤホン。

 

「コメントがあったら耳に流れます。聞き取れる程度の量に調節するので、先輩は答えられるものだけ答えてください」

「わかった。えっと……。最初の説明とかは……」

「お任せします!」

「ええ!?」

 

 いや待って? 最初の流れの段取りとか、ぱぱっと指示してくれるかなと思ったんだけど……。え、もしかして行き当たりばったりですか?

 

「いいですか、先輩」

「は、はい」

「あの子は、フリーダムです。自由です」

 

 文ちゃんが指し示すのは、ニュクス。うん、まあ……。自由だね。

 

「どうせこれからずっと行き当たりばったりです。いちいち考えても仕方ないので、好きにしてください」

「いやでも、何か間違って炎上とか……」

「先輩が今更炎上しても変わらないです!」

「時々めちゃくちゃ容赦ないね!?」

 

 言ってることは事実だけど! 今更炎上したところで、もう燃えかすしか残ってないけど! でも決してノーダメージってわけじゃないんだよ! やっぱり結構精神的に辛いのに!

 

「チャンネル名は何にします?」

「え? あー……。侵略者チャンネル?」

「そのまますぎます!」

「じゃ、じゃあ……。侵略者のやりたい放題生配信!」

「もういいですそれで!」

「諦められた!?」

 

 毒が! 毒が多い! 私のかわいい後輩はどこ!?

 

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