文ちゃんがドローンを飛ばして、パソコンを操作して。そうしてから、一分後ぐらい。
『いち』
『また侵略者関係の配信かよ』
『今度はどんな考察かな?』
『そんなことよりも、わりと美少女だぞ! 喜べお前ら!』
そんな合成音声が耳に流れてきた。動画でよく聞く声だね。思わず笑いそうになるけど……。緊張でそれどころじゃない。変な汗かいてるよ……!
「えっと……。初めまして。彩花です」
「本名名乗ってどうするんですか!?」
「うええ!?」
『草』
『一言目からやらかしてて草』
『女の子が出していい声じゃないw』
だ、だって、名前とか考えてなかったし、つい……! つい!
いや、もうやってしまったことは忘れよう。未来を見るべきだよ!
「えっと……。どうしよう? 何したらいい?」
『俺らに聞かれましても』
『何の配信かもわからんし』
『どこかの山? 森? アウトドアでもしながら侵略者について語るとか?』
『ニュクスたんprpr』
『変態はどこにでもわいてくるな』
「ああ、そうそう。うん。分かりやすくいこう」
一歩横に移動して、奥のニュクスが見えるようにする。ニュクスは今も杖を構えてむにゃむにゃしてる。本当に何してるんだろう。
ドローンはそんなニュクスを後ろから、そしてすいっと移動して前からも映した。
「侵略者のニュクスです」
『ちょ』
『え』
『まってこれガチ?』
『コスプレとか……』
「本物ですよー」
コスプレか。そう思われるとは思わなかった。いや、そもそも本物が出てくるとか思わないってことかな?
不意にニュクスが杖の先を地面に叩きつけた。突然の轟音の後に地面が隆起してくる。そうしてできあがったのは、大きな崖と洞穴。
うん。洞窟を作るとは聞いていたけど、地形を変えるとは聞いてなかったかな!
『うそやん』
『はははいやいやそんなまさか合成映像ですよこれは』
『生配信なんだよなあ』
『つまり?』
『祭りだあああ!』
うるっさ! もうちょっと耳に流すコメントを選んでほしい! 振り返ったら、文ちゃんはにやにやと笑っていた。ほっぺた引っ張るぞ。
ちなみにドローンは地面の隆起を避けて、私の側に避難してきていた。危険察知能力が高いね。
振り返ったニュクスがドローンに気付いて、あ、と小さな声を上げる。ドローンを指差してきたので頷いてあげると、きりっとした威圧感のある顔になった。
「こんにちは、人類諸君。私はニュクス。侵略者である」
『こんにちはー』
『侵略者様!』
『ニュクスたんかわいい!』
「かわ……。かわ!?」
あ、ニュクスがちょっと顔を赤くしてる。そんな様子もかわい……、いやちょっと待って。
「え、あの、ニュクス」
「こ、こほん。どうした、協力者」
「コメント、聞こえてるの?」
「聞こえている。魔法であなたに聞こえる声を私にも転送している」
「マジすか」
「マジだ」
『魔法すげえ』
『ニュクスたんすげえ』
『ていうか、侵略者様わりとのりが軽い?』
『マジだって返事してくれるんだw』
あ、ニュクスの頬がちょっと引きつった。私はこの調子で、ニュクスの仮面を引きはがしたいな。
「協力者。私は何をすればいい?」
「うん。普通にダンジョン作りをすればいいよ。私に説明してくれたのをそのままやってもいいし」
「承った」
「難しい言葉知ってるなあ」
ニュクスがじろりと睨んでくる。すみませんね。でも私はニュクスの仮面を引きはがしたいので続けます。
小さくため息をついて、ニュクスが前を向く。隆起して崖になった場所には、ぽっかりと大きな洞窟ができていた。大きなトラックが余裕で通れる大きさの入口だ。すごい。
「ここがダンジョン入口だ」
「おー」
『すごーい!』
『侵略者様が自らダンジョンを説明してくれると聞いて』
『盛り上がってきました!』
みんな、思ったよりも楽しそうだ。ニュクスも小さく笑ってる。
「では中に行こう」
ニュクスがそう言って中に入ろうとして……。私はちょっと困ってしまった。電波とか、洞窟の中に入っても大丈夫かな?
「その辺どうですか」
振り返って文ちゃんに聞いてみる。文ちゃんは難しい顔になってしまった。
「ある程度なら大丈夫だと思いますけど……。ニュクスさんに相談した方がいいと思います」
「なるほど」
『あれ、他にも人がいる?』
『かわいい声! 見たい!』
さすがに見せないよ。それに、今は電波問題だ。というわけで。
「ニュクスさーん!」
「ん……。どうした、協力者」
「実はかくかくしかじかで、どうにかなりませんか」
「少し待て」
「かくかくしかじかで通じた、だと……?」
『エスパーか何かかな?』
『侵略者です』
『どうせ魔法だよ俺詳しいんだ』
そう、なのかな。思考を読まれてるわけじゃないと思うから……。私と文ちゃんの会話をさりげなく聞いていた、ということかな。そういえば、地面の隆起もタイミング良かったし……。もしかして、狙ってた?