「これでいい」
あっさりと、ニュクスがそんなことを言った。何かしていたようには見えなかったのに。
「これで電波とやらはダンジョンでも使えるはずだ。これから入る者たちも例外はない」
「マジっすか」
「マジっす」
『たまに侵略者様が軽いw』
『ダンジョン電波解禁キターーー!』
『解禁も何もそもそもまだダンジョンに入れないんですがそれは』
『そうだったw』
そもそもまだ入ってすらいないからね!
それじゃあ改めて、入口から洞窟の中へ入っていく。なんだろう、ちょっと楽しみになってきた。文ちゃんもそれは同じみたいで、パソコン画面を見ながらわくわくしてるみたい。
あ、今更だけど、文ちゃんはどうしよう。さすがに放置は……。
「結界を作っておく」
「あ、うん」
私の迷いを察してくれたのか、ニュクスがそう言ってくれた。文ちゃんの周りに、だよね? じゃあ安心、かな?
それじゃあ今度こそ、洞窟の中だ。
二人で洞窟の中に入ってみると……。とんでもなく広大な空間が広がっていた。
「え……。ちょっと、待って……。ええ……」
『人間、マジで驚くと声が出なくなるよね』
『いや、本当に……。明らかに広さがおかしくない?』
『絶対に山の面積より広いだろこれw』
壁も天井も、洞窟らしい材質だね。土とか岩石とか、そういうやつ。
でも広さがおかしい。なにこれ。なんとかドームがすっぽり入りそうな広さがある。どう見ても、元の山より広いよねこれ。
「あの、ニュクスさん? なんだか広さがおかしいなって……」
「当然だ。魔法で空間を歪めている。不便を強いるつもりはない」
「空間を歪めるって簡単にできるものなの?」
「無論」
「おお……」
『つまり……侵略者様がいれば、とっても広い畑が作れる!』
『その発想はなんなんだよw』
どうやって空間を歪めているんだろうね。太陽の光とかも歪んだりするのかな? よく分からない。多分、分かることはないと思う。
「ここがダンジョンってこと? モンスターとか出たりするの?」
「否。ここは準備をする場所だ。ダンジョンの外には町だと決まっている」
「決まってるの?」
「決まってる」
『決まってるのか……』
『いや、まあそういうゲームもあるにはあるけど』
『でもここって外なん?』
そうだよね。ニュクスの言葉に従ったとしても、町を作るなら洞窟の外だと思う。こんなことができるなら、外に作ってもそこまで問題にならない気がするし。どうして中にと思ったら。
「空間を歪めるのは境界線が分かりやすい洞窟内が適している。外にそのまま作るのは、さすがに迷惑だと判断した」
「おお……。ニュクスが優しい」
『気遣いができる侵略者様』
『気遣いする侵略者ってなんやねんw』
『知らんのか。侵略者様はわりと最初から気遣いしてくれてるぞ』
『いやそりゃそうだけど!』
ともかく。ここに町を作りたいってことだよね。えっと……。
「何の、施設があるものなの?」
「任せる」
「丸投げ!?」
『草』
『町があるのは当然って言ったのは侵略者様じゃないですかー!』
『でもこれ、任せるってことは……』
『アヤカちゃんの好きにできるってこと!?』
「うえええ!?」
待ってこれ責任重大じゃない!? 私が全部決めてしまうってこと!? いや、さすがにそれはちょっと……。無理だって!
いや。落ち着け私。何のために配信してるんだよって話だよ。
というわけで。
「はい! せっかくの配信なんでね! みんなの意見を聞きます!」
『え』
『マジで!?』
『つまり、どういうことだってばよ』
『俺たちの理想のダンジョン都市が作れるってことだよ!』
『キタアアアアア!』
『盛り上がってまいりました!』
うんうん。みんなのテンションがとっても高くなってるね。これだよこれ。みんなに考えてもらえばいいんだよ。さすが私、天才だ。
「せっかくならお姉ちゃんに作ってほしかったのに……」
そんな声が小さく聞こえて、私は勢いよく振り返った。まだみんなに見られていることが分かっているのか、表情は引き締まってるけど……。これ、ちょっと拗ねてる。なんとなくだけど、そんな気がする。
「えっと……。せ、せっかくなので! 一個目は私が決めてもいいかな!? ほら、えっと……。せっかくなので!」
『どうした急に』
『大事なことなので二回言いましたってか』
『侵略者様に権利をもらったのはアヤカちゃんなのでいいと思うぞ』
うん。よし。これなら、いいかな?
「ほら、えっと……。さすがに全部決めるのは、私も難しいから……。ね?」
「うん」
大丈夫そう。表情は変わってないけど、少しだけ機嫌が良さそうに見える。かわいい。
さてさて。一個目の施設。んー……。
「確認だけど、ダンジョンの入口は一番奥でいいの?」
「是。最奥に入口を作成する」
「つまり、この洞窟の入口とダンジョンの入口は真っ直ぐ。メインストリートだね」
「…………。そんな感じ」
『侵略者さん?』
『ちっちゃい子には難しかったか』
『難しい要素あった?』
『あんまりバカにすると処されるぞ』
いやさすがにそれぐらいで怒る子じゃないよ。多分めんどくさくなりつつある……? 知らないけど。