帰宅した時間は十六時。さすがにまだ両親は帰ってきてない。ちょうどいいから、おやつの時間にしよう。
「じゃあニュクス。プリン持ってくるから待っててね!」
「プリン! 待ってる!」
「はい」
プリンにわくわくする侵略者様がとってもかわいい。これはみんなにも自慢しないといけないと思います。
というわけで。
「よろしく」
「任せてください」
文ちゃんがスマホで配信を始める。私の耳にはもちろんイヤホン。耳にはみんなの困惑の声が届いてきた。
『また配信始まった?』
『なんぞこれ』
『どっかの家?』
「どうも、アヤカです。これから皆さんには侵略者様への誤解を解いてもらおうと思います」
『え』
『どういうことだってばよ』
まあ、待っていればいいよ。きっとみんなびっくりするから。
ニュクスが不審に思わないようにささっと準備。お皿にプリンを載せて、スプーンもつけて……。
「ニュクス、お待たせ」
「待った! プリン!」
「はいはい。どうぞ、プリンだよ」
「わーい!」
『え』
『まってなにこれ』
『侵略者様……?』
うーん……。みんな戸惑ってるね! 無理もないと思うよ! ただのプリンに喜ぶ女の子だからね!
「ふわあ……。美味しい……」
『とろとろやないか』
『悲報、侵略者様、プライベートは普通の女の子だった』
『どう考えても朗報なんだよなあ』
『普通にかわいい』
そう! ニュクスはかわいいのだ!
「ぷるぷる……美味しい……」
「んふふ……」
「なに? お姉ちゃん」
「あははー」
『お姉ちゃん!?』
『ガチの姉妹……ではないよな?』
『侵略者にお姉ちゃんと呼ばせてる……だと!?』
『実はこの子かなりやばい子なのではw』
いやそんな謎の風評被害いらないから。
さて。このまま内緒にしていくのもありかなと思ったけど……。ばれた時がちょっと怖い。さすがに殺されはしないだろうけど、しばらく口をきいてくれなくなりそう。というわけで。
「ニュクス。ニュクス」
「なあに?」
「配信中だぜぃ」
「…………。え」
「あははー!」
「えええ!?」
おお。絶叫なんて初めて聞いたかもしれない。それだけ驚いたってことだね! なんかごめんね! 反省はしないし後悔もしないけど!
「は、配信!? もしかして、みんな見てるの!?」
「見てます」
「私の威厳は!?」
「吹き飛んだ」
「んな……っ! ……っ!?」
おお、すごい百面相。コメントも大盛り上がりで、耳がうるさい。
ニュクスはしばらくぷるぷるとしていたけど、すぐにプリンを急いで食べ始めた。ある意味緊急事態でも好物は無駄にしないその精神、とても良いと思います。
ところで。
「ぷるぷるニュクスがプリンを食べてる。ぷるぷる」
「殺すよ」
「ごめんなさい」
さすがに調子に乗りましたごめんなさい!
『ガチトーンの殺すよでした』
『ぞわってした!』
『これが……恋心……?』
『落ち着け、吊り橋効果だそれは』
私の妹に恋とか許さないよ?
プリンを食べ終えたニュクスは丁寧に口を拭いてから、ゆっくりと立ち上がった。こほん、と咳払い。そして、きりっと表情を取り繕った。
「こんばんは、人類諸君。私はニュクス。侵略者である」
『ちっすちっす!』
『お姉ちゃんからもらったプリンは美味しかった?』
『プリンに喜ぶ幼女が見れると聞いて!』
『ふにゃふにゃ笑顔最高でした!』
「あああああ!」
ニュクスがその場で頭を抱えてしまった。なんだか、うん。えっと……。
「ごめんね」
「誰のせいだと……!」
「でも笑う。あははー」
「……っ!」
『すげえ根性あるなこの子w』
『自分を片手間に殺せる相手を煽っていくスタイル』
『嫌いじゃないよ、そういうの!』
これぐらいならまだ大丈夫だって分かってるからね! いや、多分なんだけどね。大丈夫だよね?