侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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彩花の登校

「あの……ニュクス……。アンケートとか……」

「彩花が選んで」

「ですよね……」

「うん。どれがいいのか選んでくれたら、配置ぐらいは私が考える」

「おお……!」

 

 それはとても助かる! 全然違うから! 正直私に町作りとか無理なんだよ本当に! どの建物にするかだけ考えればいいのなら、まだましだね!

 

「私はそこまで急がないから、ゆっくり選んでくれていいよ。実際に作るのは明日からでもいいわけだしね」

「明日は学校だからなあ……」

「学校?」

「うん。学校」

「なにするところ? 行かないといけないの?」

「え?」

「え?」

 

 いや待って。もしかしてニュクスは学校を知らない? 文ちゃんも、口をあんぐりと開けて固まってる。ニュクスはニュクスで私たちの反応に怪訝そうにしてる。

 

「待って。私、学校生活がっていう話もちょっとしたよね? どう認識してたの?」

「なんか怒ってるなって……」

「マジでか」

 

 ああ、でもそっか。この子、多分学校そのものに縁がなかったと思う。それなら知らなくても仕方ない、かな? 他の星に学校があるのかも分からないし。いや、学校ぐらいありそうだけどさ。

 

「学校はね、たくさんの子供が集まって、勉強する場所だよ。将来のために勉強する。行く必要があるかだけど……。休みたくはない、かな?」

「先輩……」

 

 いろいろあるけどね。私は、ちょっと……いじめられてるから。だから正直、行きたくないっていう感情もあるけど、ここで休んだら負けかなとも思ってる。だから、今のところは休むつもりはない。

 

「行かないと、いけないの」

 

 ニュクスは……。興味なさそうだった。ふうん、と小さくつぶやいて、ピザトーストを食べ進めてる。機嫌悪くしちゃったかなと思ったけど、ピザトーストを頬張るニュクスは頬がゆるゆるだ。それでいいのか侵略者。

 

「わかった。じゃあ、町はこっちで作っておく。明後日にダンジョン……」

「あ、学校は五日間あります。曜日は分かる? 月曜日から金曜日が学校で、土日が休み」

「…………」

 

 おお……。ニュクスの顔が不思議なことになってる。不満そうだけどピザトーストの味でその感情が中和されててぐちゃぐちゃの不思議な感情、とか。

 

「行かなくてもいい」

「行かないといけません」

「お金なら私があげる」

「わがまま言うとプリンあげないよ」

「人質はずるい……!」

「人質になるんですかこれ……」

 

 はい文ちゃん、余計なことは言わないように。正直私もこれで納得してもらえるとは思ってなかったから予想外だけどね。自分で買いに行けばいいのに、なんて思ってしまう。

 あ、でも日本のお金がないのか。…………。わりとどうとでもなるのでは?

 

「その分土日はしっかり付き合うから。ね?」

「むう……。わかった……」

「はい! ありがとう、ニュクス」

 

 ニュクスの頭を撫でながら喉元をこちょこちょ。ニュクスは抵抗することもなく、ふにゃふにゃの顔だった。うんうん。かわいい。

 

「お姉ちゃんと遊びたがる妹みたい……」

 

 この子は私の妹なので! 妹! なので!

 それじゃあ、次の土日のためにも、今日はしっかりと建物を選んでおこうかな!

 

 

 

 翌日。とりあえず選んだものをニュクスに渡して、私は学校に行くことにした。いやあ、まさか丸一日かかるとは思わなかったね。結局配信もしなかったし。まあ、仕方ないよね。次の土曜日を楽しみにしてもらう、ということで。

 ちなみに私が選んでニュクスが町を作るということは、文ちゃんがSNSで発信してくれてる。だからみんな、次は土曜日だって分かってる、はず。

 ともかく。今日は月曜日、学校だ。

 

「…………」

 

 学校、なんだけど。

 

「お姉ちゃん?」

 

 私が玄関で突っ立っていたら、ニュクスがリビングから顔を出してきた。蜂蜜たっぷりのトーストをもぐもぐと食べてる。不思議と蜂蜜が垂れていないのは、魔法で何かやってるのかな。

 

「ニュクス、どうしたの?」

「私のセリフだけど。もう十分もそこで立ってる」

「あー……」

 

 そっか。十分も経ってたのか。そろそろ行かないと。

 うん。分かってる。行かないといけない。それは、分かってる。分かってるけど……。

 

「…………」

「えっと……。どうしたの?」

「いや……。大丈夫! 行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

 

 手を振るニュクスに振り返して、私は学校へと出発した。

 家を出て、学校への道を歩いていく。歩いて、歩いて、歩いて……。

 立ち止まった。

 

「あー……」

 

 行きたくないなあ……。特に、土日がとても楽しかったから……。学校に、行きたくない。ニュクスとダンジョン作りを一緒にやりたい。きっと楽しいだろうから。

 武器や防具のお店とかのアイデアもあって、なかなか選べなくて結局ニュクスとも一緒に考えて……。本当に、楽しかった。

 ニュクスも一人で作るのは寂しいだろうし、やっぱり私が一緒にいてあげないと……。

 

「いや……。私は、日本の学生、だからね……」

 

 そう。日本の学生。しかもまだ義務教育。ちゃんと、行かないと。

 今日は何があるだろう。先週はノートが捨てられていて、靴が隠されていたけど……。今日は、何がくるかな。そろそろまた水をかけられたりしそう。

 ああ、本当に……。学校、嫌だなあ……。

 ゆっくりと歩いて。歩き続けて。私は、学校の前にたどり着いた。

 

 ここまで来ると、周りも登校の生徒が多くて、立ち止まってる私を不可解そうに見てくる生徒も多い。でもそれが私だと分かると、みんなあからさまに距離を取ってしまう。巻き込まれないように、または私が嫌いだから。

 私は、ゆっくりと深呼吸して、学校に入った。ゆっくりと歩いて、玄関へ。自分でも呼吸が荒くなってるのが分かる。

 ニュクスの前ではがんばってみたけど、やっぱり、怖いな。

 上履きにはきかえ……。うわ。

 

「今日はこっちかあ……」

 

 靴箱に入っていた私の上履きは、泥水か何かでかなり汚れていた。正直、履ける状態じゃない。今日は裸足か、と思ったところで。

 

「そういえば、服を綺麗にする魔法って……靴にも有効かな?」

 

 試してみよう。靴箱に手を突っ込んで、靴に触れる。頭の中で、ニュクスから叩き込まれた魔法陣を思い浮かべて、魔力とかいう謎のエネルギーを使ってみる。

 ちなみにこの謎エネルギー、空気中に普通にあるみたいで、わりと簡単に使うことができた。

 少しだけ靴が光って……。そうして確認してみると、靴はしっかりと綺麗になっていた。新品みたいにぴかぴかだ。これはすごい。

 

「ニュクスに感謝だね。帰る時にチョコプリンを買ってあげよう」

 

 靴を履き替えて、教室へ向かう。

 それにしても……。やっぱり、あるよね。嫌がらせ。リーダーの近藤さんは、ニュクスから脅されているから多分もう関わってないと思う。だから、その周りがまだ続けてるってことだよね。

 嫌だなあ。本当に。ニュクスに頼ると、今度こそ誰か殺しちゃいそうだし……。さすがに人が死ぬのは見たくない。

 

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