「え、と……。冗談で……」
「金、出そうか? とりあえず一トンぐらい」
「まって」
『まって』
『なんかこの侵略者様規格外のこと言い始めましたが』
『最初から規格外だろうがいい加減にしろ!』
うん。うん。とりあえず。
「金一トンとか、値崩れする未来しか見えないから」
「値崩れ。なるほど」
ある程度貴重だからこその値段だからね。貴重じゃないってなったら、どんどん安くなると思う。多分金を買ってる人に恨まれるんじゃないかな。
「でも、お姉ちゃんが欲しいのなら……なんでも作るよ? 金でも、プラチナでも、ダイヤモンドでも。アダマンタイトでも、オリハルコンでも」
「いやだからさすがに……。うん?」
『今さらっととんでもないもの出なかった?』
『アダマンタイト!? オリハルコン!? 実在すんの!?』
ゲームとか小説とかではよく見るけど……。え、異世界にはあるの? 本当にあるの? 本当に!?
「にゅ、ニュクス! ニュクスさん! ニュクス様!」
「え、な、なに……?」
「どん引きしないでください」
明らかにニュクスが三歩ぐらい下がってちょっと泣きそうです。
『侵略者を引かせる自称姉』
『アヤカちゃん最強説』
『これが地球人の可能性』
こんな可能性はいらないよ。
「その……。アダマンタイトとか、オリハルコンとか、見てみたいなって……」
「え? いいけど……。あ、そっか、地球にはないんだっけ」
「です」
それなら、とニュクスが手をどこかに突っ込んで……。なんか空中に穴が空いてない?
「なにそれ」
「亜空間の魔法。いろいろと物をしまえる。とっても便利。お姉ちゃんも覚えてみる?」
「痛いよね?」
「痛いね」
「遠慮します」
前の魔法のことがあるからね。あの痛みを忘れてないよ私は。正直もう二度と嫌だ。本当に、嫌だ。
『ねえねえなんで痛いって知ってるの?』
『さては……お前、何か実用的な魔法を覚えてるな!?』
『羨ましい!』
「黙秘します!」
覚えてるって言ったら絶対に面倒になるやつでしょこれ。いや、多分もうみんな察してるとは思うけど、それでもやっぱり明言はしたくない。何か、言われそうだから。
そんな話をしている間に、ニュクスが亜空間とやらから何か取り出した。黒い石と、青い石。青い石は透き通るような青色で、とっても綺麗。宝石みたいだ。
「それが、アダマンタイトとオリハルコン?」
「うん。黒い方がアダマンタイトで、青い方がオリハルコン」
「おお……」
『すげえええ!』
『アダマンタイトがすっごい重厚感あってかっこいいな』
『オリハルコンが……なんか特別感がある……!』
いや、本当に。アダマンタイトはかっこよくて、オリハルコンはすごく綺麗。
「手で持ってみてもいい……?」
「うん。あげる。私はいくらでも作れるし」
「あ、そう……」
『作れるってあれですか。無から有を作りだす的なあれですか』
『さすが侵略者様。すごい! かっこいい!』
「むふー」
コメントを見てニュクスが得意気になってる。もう侵略者のムーブはしなくていいのかな。それはそれとして、得意気なニュクスもかわいいです。なでなでしておこう。なでなで。
「なにやってるの?」
「なでなで」
「んー……。もっと撫でてもいいよ!」
「わしゃー!」
「わはー!」
『なんだこれ?』
『俺たちは……何を見せられて……』
『仲良し姉妹のてえてえだよ。こういうのが欲しかったんだろ?』
『なんか違う気がする』
よく分からないことは期待しなくていいよ。
ニュクスから受け取った二つの石を見てみる。アダマンタイトは、普通の石って言えばいいのかな? そんな形だね。不思議なほど真っ黒で、見ていて吸い込まれそうな色だ。
オリハルコンは、何故か丸い。玉だ。でも……。本当に透き通ってる。つまんで見てみたら、向こう側が見えてしまうぐらいに。宝石、じゃないんだよねこれ。不思議だ。
「これ、どっちの鉱石の方がすごいの?」
『聞くのか!? 聞いてしまうのか!?』
『最強鉱石論争に終止符が……!?』
え、なに? そこまで特別なことなの? なんか、私まで緊張してくるんだけど。
ちょっとどきどきしながらニュクスの返答を待っていると……。ニュクスは、うーんと首を傾げてしまった。
「人による、かな?」
「人による……?」
「魔力を使わないのなら、アダマンタイト。魔力を使うなら、オリハルコン。アダマンタイトは加工が難しいけど、刃こぼれしない最強の武器を作れる。オリハルコンは、魔力をよく通すから魔法の武器に最適。どっちを使うか、だね」
「へえ……」
『つまり、どういうことだってばよ?』
『一長一短ってことでは?』
『つまり、どっちも最強!』
『結局最強論争は終わらないのか……』
多分ずっと終わらなそうだから諦めた方がいいと思うよ。