お昼ご飯にお母さんが作ってくれていたお弁当を食べて、配信開始。文ちゃんは痛みが取れきっていないのか、ソファでダウンしています。ニュクスがちょっと心配そうなのが印象的だ。
「どうも……。アヤカです……」
『アヤカちゃんだー!』
『侵略者様ー!』
『待ってた!』
『それにしてもテンションが低いw』
『どうしたよ』
「これから何をやるのか怖いんだよ……」
ニュクスはそれはもううきうきとしてる。着ぐるみパジャマを脱いで、いつものローブ姿だ。しっかりと気持ちを切り替えたのか、威風堂々とした立ち姿。かっこかわいい。
「配信、繋がったよ」
ニュクスにそう言うと、ニュクスは頷いて浮かぶドローンに向き直った。
「私はニュクス。侵略者である」
『今日は侵略者モードだ!』
『妹モードは見られますか!?』
『お姉ちゃんって甘える姿が見たいです』
「…………。それは今は忘れてほしい」
おお。苦虫を噛み潰したような表情ってこういうのを言うんだろうね。とっても嫌そうだ。私は気にせず甘やかすけどね!
「それよりも、協力者よ。出発するので、準備をしてほしい」
「はいはい。それで? 本当にどこに行くの?」
「国会議事堂、だったか? そこに」
「え」
こっかいぎじどう。国会議事堂!? いや待って何をするつもり!?
『今ってまさに国会答弁が行われているような……』
『ニュースでもやってるね』
『おいまさか』
「じゃあ、行こう」
ニュクスが私の手を掴んで、そして……。
気付けば、テレビで見るあのとっても広い部屋のど真ん中に立っていました。
うん。いや、本当にやりやがったよこの子……!
「な、なんだ!?」
「君たち! どこから入って……!」
大騒ぎだね! 当たり前だけどね!
『大混乱である』
『テレビ見てきた。テレビでも侵略者様が出てる』
『生侵略者様だー!』
『はたしてそれは喜ぶべきものなのかw』
喜んじゃだめだと思うよ私は。しかもここ、一応は日本の中枢でしょ? 大問題だよ。ニュクスは涼しい顔してるけど。いや、あまり表情変わってないけど、周りの声がちょっとうるさいと思ってそうな顔だ。
「うるさい」
ニュクスがそう短く言うと、この場にいるほとんどの人が口を閉じた。まだ何か小声で言ってる人はいるけど、そこまで気にならないぐらい。
ニュクスはぐるりと周囲を見渡して、そして目当ての人を見つけた。誰を探しているのかはすぐに分かった。まあここまで来たんだからね。用事があるとしたら、やっぱり……。
「ちょうどいいですね……! 是非とも! あなたに聞きたかったことがあります!」
「…………。へえ……」
その声に、ニュクスはまた振り返った。ニュクスの視線の先にいるのは、女性議員。テレビでもよく見る人だ。野党第一党の、それなりに偉い人だったと思う。そこまで詳しく覚えてないけど。
「侵略者! あなたに聞きたいことがあります!」
「構わない。どうぞ」
お、なんだかニュクスがうきうきしてる。何を言われるのか、ちょっと楽しみにしてるね。私も気になる。どんなことを聞きたいんだろう。
「こんなことをして! 無事で済むと思っているのですか!」
「…………。は?」
「全世界が見ています! あなたは世界中を敵に回したのですよ!」
「…………」
おお……。ニュクスの気分の下がりっぷりが半端ない。なんか、一気にテンションが下がったというか、そんな感じ。
「それで?」
「……っ! あ、あなたがどんな態度を取ろうとも! 私たちはもうあなたの素顔を知ってしまった! かわいらしい子供に怯えることなどありません! 私たちは! あなたに屈しない!」
あー……。なんというか……。これ、私のせいになるのかな?
多分、今までならもう少し黙ってくれていたかもしれない。でも私が、ニュクスのかわいいところを見せたいって思って、配信で流してしまった。
それを見たこの人は勘違いしてしまったらしい。ニュクスは、見た目通りの子供だと。
学校でのこととか、ああいうのは配信で流してなかったからね。だから……無理を言っても問題ないと思ってしまったんだと思う。そこまでひどいことにはならないだろう、と。
それをニュクスも察してしまったから、がっかりしたんだと思う。