侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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放置された後輩ちゃん

「これから向かうのは、日本で言うところのさんかく座銀河。太陽系からの距離は三百万光年ぐらいとわりと近いよ」

「へえ、ご近所さん……。まって。一光年って、光の速度で一年だよね?」

「うん」

「…………。近い?」

「近い」

 

『宇宙規模では確かに近い』

『まあ人類だとまずたどり着けない場所だけどな!』

『地球からさんかく座銀河を観測した時に見えるのは、三百万年前の姿だ!』

 

 なにそれ怖い。光の速度で三百万年っておかしいと思う。今からそこに行くの? え、どれぐらいかかるの? さすがのニュクスでも一週間とかでたどり着ける場所じゃないよね?

 

「あの……。どれぐらい、かかりそう……?」

「十秒もあれば着くよ」

「…………」

 

『アヤカちゃんが絶句しちゃった!』

『でえじょうぶだ、みんな頭がバグってる』

『やっぱこの侵略者おかしいよ』

 

 今回ばかりはみんなに同意だよ。私の妹が予想以上に規格外で怖い。

 

「ねえ、ニュクス。行くのはいいけど、私を置いて帰ったりしないでね? 忘れたりしないでね? 本当にお願いね?」

 

『この姉、必死である』

『姉の威厳はどうした!』

 

 そんなものはない! 置いて帰られたら、私はもう二度と家族に会えないってことだよ! 嫌だよ怖すぎるよ正直行きたくない気持ちが強い!

 ニュクスはそんな私に、なんだか優しげな笑顔を見せてくれた。

 

「安心して、お姉ちゃん。お姉ちゃんを置いて帰ったりしないから。約束する。私はお姉ちゃんを、絶対に守って連れて帰ってあげる」

「とぅんく……」

 

『とぅんくを口で言うなw』

『お前実はわりと余裕やろw』

『感動してるところ悪いけど、侵略者が連れて行かなかったら起きない問題だからな?』

 

 それはそうだけど、やっぱり嬉しいものは嬉しいので。

 ニュクスが私の手を握ってくる。ニュクスの手はなんだかぷにぷにしていて、気持ちいい。いやあ、正直これだけでも役得で……。

 気付けば。私は、草原の中で突っ立っていた。

 

「え」

「到着」

 

『え』

『配信が続いている、だと……!?』

『どこだここ!?』

 

 どこ、だろうね……? いつの間にか草原にいるんだけど。ところで私は家にいたので靴がないわけですが……。あ、取り寄せてくれたの? ありがとう。

 

「いやさらっと靴を渡されたけど、ここってどこなのかなあ!?」

「ん? さんかく座銀河の惑星。私が支配する世界の一つ」

「さらっと……!?」

 

『マジで異星にいるの?』

『ていうかなんで配信繋がってんだよ』

『じつは地球だったりしない?』

 

「しない。配信については魔法で繋がるようにしてある。配信に詳しい知り合いがいるから、いろいろと聞いておいた」

 

『何から突っ込めばいいんだこれ』

『侵略者にいろいろ教えられる知り合いってなんだよ』

『昨日なんか聞いておかないとって言ってなかったっけ』

『なあんで昨日の今日で実践してるんですかねえ』

 

 わかんない。私には何も、わかんない……!

 改めて周囲を見回してみたけど、ただただ広い草原だった。膝丈ぐらいの草が視界いっぱいに、どこを向いても広がってる。どこに向かえばいいんだろう。

 ニュクスに次のことを聞こうとしたところで、私のスマホが鳴り始めた。画面を見てみると……。文ちゃんの名前。

 

「…………。ニュクス。電話が繋がってることよりも何よりも」

「なに?」

「これ……」

 

 画面を見せる。文ちゃんの文字。ニュクスが、あ、と小さな声を出した。

 

「わすれてた……」

 

 そんな、声。心なしか着信音が怒りで大きくなったような気がする。気のせいだよね?

 小さく息をのんで、通話状態にして耳に当てる。すると。

 

『先輩……』

 

 明らかに怒りで震えてると分かる声が聞こえてきました。

 

「ニュクスさん。ニュクス様。後輩が怖いです。あ、ちょっとなんで離れるの!?」

「配信で声を拾うとだめだと思うから」

「もっともらしい理由で逃げてるよね!?」

「私は何も知らない!」

 

 ぱっと離れてしまうニュクス。いつの間にか配信の声が聞こえなくなってるのは、ニュクスが何かしているのかも。それよりも、だ。

 

「あの……。文ちゃん?」

 

『ひどくないですか? 普通置いていきます?』

 

「あ、あはは……」

 

 言い訳をさせてもらえば、国会から戻ってきた時に何の反応もないから、きっと帰ってしまったと思ったんだよ。うん。そう。きっとそう。

 そう説明してみたらとても呆れられてしまった。

 

『どこかの魔女に知識を叩き入れられるというとんでもないことをされて死にかけはしましたけど、ちゃんといましたよ』

「うん……。いや、ほんとごめん……」

『まあ、いいですけど。私も起きたのはさっきですし』

 

 そう言って、小さくため息をついて。そして唐突に、真剣な声音になった。

 

『先輩』

「はい」

『ちゃんと帰ってきてくださいよ』

「…………」

 

 ああ、うん。やっぱり、私の後輩はとっても優しくて良い子だ。きっと心配してくれていたんだと思う。本当に申し訳ないよ。

 

「大丈夫。ニュクスだよ?」

『そうですね。先輩大好きなあの子なら、大丈夫だとは思います。でも、気をつけてくださいね』

「了解」

『私も視聴側になります。私のコメントは優先的に拾うようにしておきます』

「わかった」

 

 そうして、通話終了。とりあえずあまり怒ってなくて一安心だ。

 

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