「おー……」
門の先は、いかにもなファンタジーの街並み。石造りの建物が並び、剣や杖を持った戦えそうな人たちも歩いてる。
活気に溢れていて、お店の人らしい客引きの声があちこちから聞こえてくる。美味しそうな香りもするね。
「観光したい」
『わかる』
『わかる』
『むしろやれ』
やりたい。とてもやりたい。ニュクスに視線を向けると……何故かフードを被っていた。目元まで隠すようにフードを目深に被ってる。
「えっと……。どうしたの?」
聞いてみると、ニュクスは小さな声で教えてくれた。
「私の存在は騒ぎになっちゃうから」
「そうなの? 兵士さんには見せたのに、気にするんだね」
「通行証とかが面倒だったから」
「ああ……」
つまり、私か。私のせいか。本当にごめん……あ、いや、ここに連れてきたのはニュクスなんだから、私のせいではない気がした。うん。気にしないでおこう。
『やっぱり侵略者様はこの世界では有名なん?』
『顔や声でばれるレベルで?』
「是」
『それはすごい、けど』
『なにやったんだ侵略者様w』
いや本当にね。みんなに覚えられてしまっているって、かなりのことをやらかしたんじゃないかな。
このコメントはニュクスも聞こえてるはずだけど、知らんぷりして歩き始めてしまった。黒歴史ってやつかな。黒歴史には触れないのが大人の務め。
「あとで黒歴史を掘り返したいな」
『鬼かお前は』
『子供かお前は』
「子供だよ私は」
『そういえばこの子未成年だった……!』
どこからどう見ても未成年でしょうが。
てくてく歩くニュクスの後ろを私も歩く。目的地は変わらず冒険者ギルドらしい。地球への移住者を見つけるって目的のはずだけど、冒険者ギルドで探すのかな?
のんびり歩いて、歩き続けて……。途中で買い食いさせてもらった。串に刺さったお肉。肉汁があふれていて、香辛料がたっぷりとかけられてる。とても、美味しそう。
「他にも食べたいものがあったら言ってね」
「ありがとうございますニュクス様」
「お肉一本で様付けになるの?」
「やめて自分が情けなくなる」
なんだろう。無垢な言葉が胸に刺さります。
刺さっているお肉は、五個。結構大きめのお肉で、どのお肉も肉汁がしたたってる。ぱくりと食べてみると、お肉と香辛料の味が口の中に広がった。
「おお……! 美味しい!」
思っていたよりもかなり美味しい! ニュクスは日本の料理に感動してくれたけど、こっちのお肉も負けてないと思う! じゅわあって! すごい!
『マジで美味そう』
『唐突なメシテロはやめるんだ!』
『先輩! お土産が欲しいです!』
お土産ね。あとで見かけたら複数本買って帰ってあげよう。
食べ歩きしつつ、途中で休憩しながら、一時間ぐらいかけて目的地にたどり着いた。
三階建ての大きな建物。なんとなく酒場も一緒に入ってるイメージがちょっとあるんだけど、ギルドの隣に酒場があるみたいだった。こっちも入ってみたいなあ。
「お姉ちゃん、行くよ」
「はい」
ギルドのドアを開けて、中に入る。その瞬間、たくさんの視線が私たちを貫いた。
「うわ……」
ギルドは、入ってすぐの正面がカウンターになっていて、カウンターの奥が部屋になってるみたい。そのカウンターと部屋の左側に広めのスペースがあった。テーブルや椅子がたくさん置かれてる。待合所とか、そんな場所かな?
そのスペースのさらに左側、窓際に上に続く階段があって、その先も広いスペースが確保されていた。やっぱりテーブルや椅子がある。その奥は、また部屋。三階への階段は見当たらないけど、カウンターの奥の部屋に階段があるのかも。
そして、そんな部屋にたくさんの人がいた。屈強な男の人や、ローブを着たいかにもな魔法使いさん。身軽そうな衣服の弓使い。いかにもな冒険者!
『うおおおおお!』
『ギルドだああああ!』
『すげえ! こてこてのギルドに剣士に魔法使い!』
『夢にまで見たファンタジーがここに!』
コメントは大騒ぎだね。ニュクスも、なんだかどことなく楽しそうだ。私は周りの視線が気になってちょっと緊張してるけど。
「お姉ちゃん、せっかくだから冒険者登録もしてみる?」
「え? いや、でも……」
「戦う必要とかはないから。今後の参考になるかも」
「な、なるほど……」
それじゃあ……。うん。してみようかな!
ニュクスと一緒にカウンターへ向かう。カウンターには女の人、受付さんが二人立っていた。どっちなのかなと思ったら、役割はどちらも同じらしい。
それじゃあ、近い方へ。私が向かった先は、二人いるうちの若く見える方。ただ、本当に若いのかは分からないけど。だって、耳が尖ってる。つまり……。つまり!
『エルフだあああ!』
『エロフだあああ!』
『誰だエロフって叫んだやつw』
エルフだね! 何百年も生きるっていう設定が多いエルフだね! なんだろうすごく感動する!