ともかく。この子はみんなと遊びたい。ただそれだけらしい。規格外の力があるからちょっとスケールがおかしいだけで、本当に気持ちはただそれだけなんだとか。
「じゃあ、次の質問」
「どうぞ!」
「どうしてこの地域に来たの?」
「お姉さんなら物怖じせずに意見くれるかなって。どんな遊びがいいかな?」
お姉さん……お姉さん……。
「その……ニュクス……」
「うん?」
「お姉ちゃんって……呼んでもいいよ?」
きょとん、とニュクスは不思議そうに首を傾げて。
「お姉ちゃん?」
「かわいい!」
「わぷ」
三億歳とか侵略者とかもうどうでもいいや! この子すごくかわいい!
「私の妹にする!」
「私の方が! 年上!」
「私の方が背が高い!」
「うぐう……」
え、それで納得するの? この子、本当に単純すぎない?
「ニュクス。知らない人にお菓子をもらってもついて行っちゃだめだよ?」
「お姉ちゃんは私を何だと思ってるの?」
「お姉ちゃんって呼んでくれてる……好き……」
「聞いて?」
いやあ……。この子、すごくかわいい。私は満足です。
「ところで、お姉ちゃん」
「何かな!」
「せめて名前を教えてほしいなって」
「…………」
言ってなかったっけ? 言ってなかったわ。すごいな私。名乗ってもないのに距離を詰めすぎじゃない?
「空気の読めない愚か者だと笑ってください」
「それはいいから」
「あ、はい。えっと……。望月彩花だよ。よろしくね、ニュクス」
「うん。よろしく、望月彩花」
あれ? なんだろう。これ、なんだか悪い予感がしてきた。お互いに名前を呼び合うって、なんかこう……。嫌な予感がひしひしと。
「じゃあ……。これで契約成立、だね」
にたりと。侵略者が嗤った。思わず背筋が冷たくなった。
これは、騙されたかもしれない。もしかしたら私は、とんでもない存在と関わり合いになったのかも……。
「じゃあお姉ちゃん。ジュースお代わりください」
「ちくしょうかわいいな!」
いくらでも注いであげるよ! パックごと持ってきてあげるよ!
キッチンに向かって冷蔵庫からジュースのパックを取り出して、それを持っていった。さすがに一パック飲み干すとお母さんに怒られる気がするけど……。別にいいよね! かわいい妹のためだもの!
「ほらほら、たんとお飲み」
「うん。ありがとう」
コップに注いであげると、すぐに飲み干した。ぷは、と一息。私の妹はとてもかわいい。
「ほらほら」
「え、あ、うん……」
もう一杯。すぐに飲み干す。いい飲みっぷりだね!
「はい次」
「え、ま、待って……。あ……」
どうしてか頬が引きつっているけど、気にせず注いじゃおうね。いっぱい飲んでね。
「お、おかしい……。契約魔法が変な方に働いちゃった……?」
「どうしたの?」
「なんでもない……」
ニュクスは不思議そうにしていたけど、改めてジュースを飲み干した。それじゃあ、はい。もう一杯。
「待って!? もういいよ!?」
「え? だってジュースお代わりって……」
「限度があるから!」
「でもほら、なんかよく分からない魔法で私の意志は封じられちゃっているからね!」
「そんな効果ないから!」
「あれ、そうなの?」
契約魔法とかそんな言葉が聞こえたから、てっきりそういうものだと思ったんだけど。そう考える私を、ニュクスは胡乱げな眼差しで見つめてきた。
「あのね……。お姉ちゃんにかけた契約魔法は、繋がりを作るだけの魔法だよ。何かを強制したりできないの」
「そうなんだ?」
「うん。お互いの今の状態がちょっぴり分かるとか、そんな感じ」
「つまり、私のさっきの行いは、ニュクスへの愛情によるものだってことだね!」
「うわあ……」
「どん引きしないで」
いや、うん。落ち着け私。確かに今のは気持ち悪かった。ちょっと自重しよう。
「でも、そうしてそんな魔法を私に?」
「だってお姉ちゃん、私のせいで迷惑かけちゃったみたいだから……。これからは何かあっても、私が守ってあげる」
ああ、そういうこと、なんだ。確かに言ってしまったけど、何かしてほしいわけでもなかったんだけどね。
でも……うん。悪い気はしない、かな。
「それじゃあお姉ちゃん。改めて」
「うん」
「何かいい遊び、あるかな?」
そうだね。それが目的だったね。