侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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食べ物の恨みは拷問で(未遂)

「ぶげえ!?」

 

 あ、強盗が床に押しつけられた。なんだろう。重力を強くしたとか、かな……? 強盗はその場で動けなくなってしまってるから。

 そんな強盗の頭をニュクスが踏みつける。ちょっと警戒してしまったけど、いきなり殺すようなことはしないらしい。強盗の悲鳴が漏れているから。

 

「お前、何をした? 私のものを……壊したな?」

「いやまだお金払ってないからお店のものなんだけどね」

「先輩よくこの空気でそんなこと言えますね!?」

 

 あっちには聞こえないように言ってるから許してね。あとはまあ、わりと慣れてきてしまったもので。だてに毎日のようにこの殺気を浴びてないよ。直接向けられたことはないけど。今日とか四回目だし。

 

「不快だ。不愉快だ。だが、殺しはしない。ああ、殺しはしないとも」

 

 とりあえずはまだ冷静、かな……?

 

「死んだ方がましだと思える責め苦を与えよう」

 

 冷静じゃないかもしれない。

 ニュクスが強盗の顔を蹴り上げて、そのまま外へと蹴り飛ばした。自動ドアが轟音を立てて破られて、強盗が外に放り出される。外から悲鳴とかいろいろ聞こえてくるけど、ニュクスはそれを気にせずに外に出た。

 

「お、おい! あれ!」

「服装違うけどニュクスじゃ……」

「なんかブチギレてない!?」

 

 ブチギレ一歩手前だと思う。どうしようねこれ。

 

「せ、先輩! 止めないとまずいですよ! とんでもないことになりますよ!」

「いやでも、強盗だよ? 店員さんを刃物で脅してたんだよ? ニュクスもとりあえず殺すつもりはないみたいだし、それならいいんじゃない?」

「先輩、ニュクスさんに毒されてませんか!? よく考えましょうよ!」

「別によくないっすか? 助かりましたよ俺」

「店員さんは黙っててください!」

 

 うーん……。まあ、文ちゃんが言いたいことは分かる。あと、私も確かにちょっと毒されているなとも思った。殺しはしないけど死んだ方がましだと思える責め苦。冷静に考えるとやばいよね。

 とりあえず外に出る。ニュクスはうつ伏せに倒れる男の頭を掴んで持ち上げて、自分と目を合わさせていた。ちょっと怖い。

 

「安心するといい。何があっても死なない魔法をかけよう。その上で、頭を潰そう。心臓をえぐり出そう。他にも希望があれば言うといい。さあ、どうだ?」

「うん。思っていた以上にやばいこと言ってて笑えない」

 

 何があっても死なない魔法ってなんですか。ぶっ飛びすぎじゃないですか。頭とか心臓とか潰されても生きてるって、それ本当にどういう状態になるの? 普通に怖い。

 ギルドでの手をすぱっとした時よりもはるかに凄惨なことになりそう。さすがに私も慌てて止めに入った。

 

「ニュクス! ストップ! 待って! 本当に待って!」

「ん……。どうしたの、お姉ちゃん。大丈夫、殺さないよ」

「殺さなければ何をしてもいいってわけじゃないんですけどね!?」

 

 遠慮とか! 容赦とか! ないですかそうですよね知ってた!

 

「とりあえず……ほら、動けないようにして、あとは警察に任せよう? プリンアラモードなら、他のお店でも買えるから。ね?」

「…………。分かった。動けないように、両手両足を潰す」

「やめろバカ! 痛いでしょ!」

「あうっ」

 

 ニュクスの頭にチョップ。ニュクスは強盗の頭を離して自分の頭を押さえた。むう、と不満そうに私を見上げてくる。

 

「何をするの。お姉ちゃんは痛くないでしょ」

「痛いよ! あまりにひどいものを見ると、気持ちが痛くなるの! 心臓がきゅっとしちゃうの!」

「そうなの……!? 痛いのは嫌だよね……! じゃあ、うん。やめるね」

「素直か! かわいいやつめ!」

「むぎゅう」

 

 ニュクスのほっぺたを両手で挟んでこねくり回す。おお、やわらかほっぺだ。気持ちいい。

 私がそうしてニュクスのほっぺたを堪能している間に、大急ぎで来た警察さんが強盗の両手に手錠をかけた。こちらを怯えたような目で見ているのが印象的です。

 そんなに怯えなくても大丈夫だよ? ニュクスはほら、かわいいから。ほんとほんと。私嘘つかない。

 

「あの……。申し訳ありません。お話を伺ってもよろしいでしょうか」

「えっと……。事情聴取ってやつですよね?」

「はい」

 

 まあ、当事者だからね。当事者……当事者でいいんだよね? 過剰防衛とかになったりしてない?

 

「そのあたり、どうですか。過剰防衛とか……」

「ああ……。今回は正当防衛の範疇かと。幸い、脅しつけていただけで、実力行使には至っていませんし……。蹴り飛ばしただけで……」

 

 よかった。犯罪者扱いにはならないみたい。それなら、まあ、少しぐらい……。

 

「お姉ちゃん」

「はいはい?」

「プリンアラモードは……?」

「…………」

 

 とりあえず、警察さんとお話しする代わりにプリンアラモードを買いに行ってもらうことになりました。世界広しといえども、警察を使い走りにする一般人は私ぐらいだと思う。本当に、どうしてこうなった。

 

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