侵略者系魔女の侵略ライフ   作:龍翠

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欲しいものは作ればいい!

 小さいお店だけど、ニュクスお気に入りのお店だったりする。というのも、ここはデザートが美味しいお店で……。ニュクスが食べたプリンアラモードもこのお店が作ったものなのだ。

 それを知ってから、二日に一回はニュクスにおねだりされてここに来るようになってしまった。今では侵略者様御用達だよ。侵略者立ち寄り店舗の看板がいるね。

 

「いらっしゃい。今日は何にする?」

 

 テーブル席に座った私たちに、店主のおじいさんが声をかけてくれた。

 

「お金はもらっているから遠慮なく言いなよ」

「ああ、はい。いつもすみません……本当に……」

 

 なおこのお金は税金です。ニュクスお気に入りということで謎の支援金が入ってるそうです。忖度に全力だ。

 私が注文したのは、カレーライス。文ちゃんは海老ドリア、ニュクスはナポリタンにプリンアラモードだ。

 そうして、三人でダンジョンの感想を話しながら少し待つと料理が運ばれてきた。それぞれの料理に、小鉢が二つ。その小鉢に私のカレーライスと文ちゃんの海老ドリアを少しずつ入れてニュクスに渡した。

 

「ありがとー!」

 

 いろんなものを食べたがるニュクスにはこれがちょうどいい。美味しそうに食べてくれるから見ていて私たちも楽しいしね。

 みんなでもぐもぐと食べながら、おしゃべりだ。

 

「喫茶店のカレーっていいよね……。ニュクス。ダンジョンが一段落ついたら、どうするの?」

「ずるるるる……」

「ああ、こらこら。ナポリタンはフォークでくるっとして食べるんだよ。口の周りがべたべたじゃない」

 

 ケチャップとか周囲に飛び散っちゃってるよ。もちろんニュクスなら魔法で簡単に綺麗にできるんだけど、それでも食べてる間の見栄えはやっぱり悪い。

 ハンカチでニュクスの口の周りを拭いてあげる。これぐらいはするんだけど……。どうしてこの子はにこにこ嬉しそうなのかな?

 

『お姉ちゃんに甘える妹の図』

『かわいい』

『一週間で都市を一つ作り上げた侵略者とは思えないな!』

 

「…………。文ちゃん? コメントつけないで?」

「みんなの反応が気になったので」

 

 気になる要素があった?

 もぐもぐとナポリタンを食べながら、ニュクスは言う。

 

「日本は……もぐもぐ……私の支配下に落ちた」

「…………。はい。続けて」

「言いたいことがあったら聞くよ?」

「いや、あながち間違いでもないかなって」

 

『いつ支配したんだよと言いたいけど、実質支配されてるわ』

『内閣府が陥落してるからな』

『最近は野党もめっきり大人しいし』

 

 テレビを見ていても、ヤジとかはいつも通りなのに、ニュクスに関わることが議題に上るとみんなイエスマンになっちゃってるからね。首相がこれこれこうしますって言ったら、分かりましたでそのまま決定だよ。支配下に落ちてるって言っても過言じゃないと思う。

 こほん、とニュクスが咳払い。侵略者ムーブだね? お口の周りのケチャップはもう一度綺麗にした方がいいと思うけど、とりあえず拝聴しましょう。

 

「テレビを見た」

「うん」

「欲しいものができた」

「ふむ」

「島が欲しい」

「ほう。……? はい?」

「なので島を作った」

「まって」

 

 なんか! 私の知らないところで! また何かやってる!

 

「島? 今、島って言った?」

「言った」

「作った……?」

「作った」

「えっと……。どこに?」

「太平洋。過ごしやすそうな温暖な場所を選んだ。なおかつ、私の魔法で気候は安定させている。あとは家を作るだけ」

「な、るほど……?」

 

 うん……。えっと。太平洋。これってもう、日本だけの問題じゃなくなってしまった気がする。そう、つまり、領土とか、そういう問題。

 

「ど、どこの国扱いになるんだろう……」

「国? 私の島だ。領有権を主張するならその国は叩き潰す」

「あ、うん……」

 

 これは本気だ。間違いなく。太平洋のどの位置かは分からないけど、どこかの国が領有権を主張しようものなら……。考えるのはやめておこう。

 正直なところ、殺すとかの脅しを控えるようになってから、表現がちょっと具体的になって、余計に怖くなってしまった気がするんだよね。死んでないならいいよね、というのがニュクスのやり方になってしまった。だから聞くのが怖いです。

 

「あの……。これ、地図です。どの辺りか分かりますか?」

 

 文ちゃんがスマホで地図を開いてくれた。のぞき込んだニュクスは迷いなく一点を指差した。ハワイの近く。近くと言っても、現地から目視で確認できる距離ではないけど。

 これは……。東の国に何か言われたりしないかな? 日本とは絶対に言えない場所だけど。

 

「南国のリゾート。快適なお家。素晴らしい」

「そ、そう、だね……?」

 

 私が何を言っても、もう作ったものは仕方ないわけで。なるようにしかならない、と思った方がいいかもしれない。

 

「ダンジョンが一段落したら、今度は島作りだ。良い島にしよう」

「まあ、うん……。がんばろうね……」

 

『なんか色々諦めてる』

『そこで諦めたら試合終了ですよ』

『むしろ最初から試合終了してる件について』

『それを言っちゃおしめえよ』

 

 なるようにしかならない、と思うからね。どうにでもなれ精神でいこう。

 とりあえず今は、目先のダンジョンということで。解放した後もしばらくは様子見になるだろうし、島のことは一度忘れることにする。深堀りしたら、他にもいろいろやってる、とか言われそうだし。

 忘れそうになるけど、ニュクスは侵略者だ。詳細は分からないけど、地球の管理権を握ってるとか言ってたし……。ニュクスのやりたいことをやらせてあげよう。

 

「決して問題を先送りにしたいわけじゃないです」

 

『うそだぞ』

『忘れたいだけだぞ』

 

 私は何も気にしない! プリンをちっちゃいお口に入れてふにゃっとするニュクスを見て満足する!

 

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