「なにこれ……。弾丸?」
「狙撃された」
「狙撃……」
え。つまり、ニュクスを殺そうとしたってこと? それは……えっと……。バカなの? アホなの? 狙撃程度でどうにかなると、本気で思ったの?
「先輩、ドローンが……」
「え……。あ」
気付けばドローンも撃ち落とされていた。イヤホンからも何も聞こえなくなってる。もしかしてこれ、わりと本気だったりする?
「またきた」
再びニュクスの同じような動き。今度は別の方向から。ニュクスが開いた手の中には、やっぱり弾丸。どうやら本気でニュクスを殺そうとしているらしい。
「えっと……。ニュクス。どうするの?」
「んー……」
しばらく考えて、そして。
「無視で」
「ええ……」
そういうことになった。
ニュクスが言うには、弾丸程度なら簡単に受け止めてしまえるらしい。だから意味はないから無視していいと。私たちが狙われてもちゃんと対処してくれるって。
「これぐらいで怒ったりしないから。むしろ、挑戦してくるなんてすごいと思う。是非頑張ってほしい」
「あ、うん……」
狙われてる側が応援するって、なんだか不思議なことやってるよ……?
その後もニュクスは狙われ続けた。商店街でお買い物をしている時も、唐突に狙撃される。他の人に当たったらどうするつもりなんだろう。
落ち着けたのは自宅に帰ってきてからだった。
「しつこかった……」
リビングのテーブルの上に、ニュクスが受け止めた弾丸をばらばらと落としていく。三十発分ぐらいあるんじゃないかな。多すぎでしょ。
「いやあ……。大人気だね、ニュクス」
「大人気!」
いや、ピースはしなくていいから。
「でもこれ、かなり危ないですよね? どうして急に……」
「面白くなかったんじゃない?」
外国からすれば、あまり面白い状況じゃないと思う。
ダンジョンで手に入る魔石は、とても大きなエネルギーになるらしい。安定して手に入れることができれば、原発とかが必要なくなるほど。
日本はそんな魔石を優先的に取り引きすることができる。外国にどれぐらいの量を流すかは日本に決定権があるのだ。まあ、面白くないよね。
もちろんそれだけが理由じゃないとは思うけど……。でも、この理由は絶対にあると思う。
日本からすれば、侵略者の面倒事の大半を引き受けているんだから文句言うなってやつだろうけど。
「ところで先輩」
「うん」
「わたし、これ、帰って大丈夫です……?」
「あー……」
やばいと思う。狙われる的な意味で。狙撃で殺せないってことは今日で十分理解しただろうから、ニュクスの関係者を狙うようになるんじゃないかな。
「そこのプリンを食べてるニュクスさん。何かないかな!?」
「んむ……」
帰りに買ってきた苺のプリンをもっちゃもっちゃ食べてるニュクスに言うと、ニュクスはごくんと呑み込んで言った。
「わかった。送ってあげる。あと、結界も作ってあげる」
「結界?」
「悪意から守る結界。とりあえず、お姉ちゃんと文、それにそれぞれの両親兄弟祖父母まで。さらに他の人が狙われたらまた考えるということで」
ひょいひょいっと指を振るニュクス。すると次の瞬間には文ちゃんの姿が消えていた。文ちゃんの家に送った、ということらしい。結界も今のでかけたのかな?
「これでどう?」
「さすがニュクス! すごい! えらい!」
「えへへー」
とりあえずニュクスを撫でて褒めまくる! ニュクスは嬉しそうに頬を緩めた。とてもかわいい。
「あとの問題は……いつまで続くか、だね」
「んむ」
そのうち、諦めるかな? 正直こちらから何かするのは難しいし……。一応、首相さんに連絡だけしておこう。あとは国でどうにかしてくれるはず。
その時の私は、かなり楽観的に考えていた。
二日後、深夜。
「ふわあ……。ニュクス、急に起こしてきて、どうしたの? ……いや、なにこれ」
日の出すら遠い深夜。ニュクスに起こされてリビングに来た私が見たものは。
「……っ!」
「……っ!?」
びったんばったん暴れるみの虫たちでした。いや人間だけど。黒づくめの人。特殊部隊とか、そういうやつだったりする? ニュクスが作ったらしい縄で縛られてるけど。
「見て見てお姉ちゃん! 虫さん捕まえた!」
「う、うん……」
「どうしたらいいかな? とりあえず……」
ぐるんと、ニュクスがみの虫たちに顔を向けた。動きが怖い。
「一族全員、金星に落とそうか。もちろん死なないようにしてあげる」
「……っ」
これ、ちょっといらいらしてるかも。
ちなみにどうして金星なのかと言えば、硫酸の雨が降ってるからだって。なにそれ怖い。
「あー……。とりあえず……。警察に連絡するから、引き取ってもらおう。あとは国にお任せで」
「わかった!」
あらいい笑顔。本気じゃなかったのかな?
とりあえず今日の連中は、ニュクスに二日は解けない金縛りの魔法をかけられた上で連行されていきました。自業自得、ということで。