さらに三日後。私たちはニュクスの島に来ていて、ドワーフが作ってくれた家を見ていた。そう、なんともう完成してしまったらしい。わりとすごい豪邸だけど、ニュクスの魔法やドワーフの技術で大急ぎで作られたらしい。
ニュクスの島はビーチにちょっとした丘がある島。丘の上の家からは、ビーチの様子が一望できる。
丘は自然豊かで木々がいっぱい。虫も多くいるらしいけど、私が虫は苦手だと言ったら寄りつかないようにしてくれた。どうやったかは知らない。私の体から虫除けの香りでも出ていたりして。ないと思うけど。…………。ないよね?
そして、家。これは三階建てに地下室があった。
家は異世界の不思議鉱石も利用したとても大きな家。一階にはとても広い部屋の他、シアタールームやゲームセンターみたいな部屋が作られてる。
二階は図書館のようなたくさんの本が収められた部屋とか、大きなソファやテレビが設置された広いリビングとか……。生活空間、かな?
三階はのんびりする部屋らしい。太陽光をたっぷり取り入れることができる温室で、綺麗なお花がたくさん咲いてる。座り心地が良さそうな椅子とか、ハンモックとか……。屋上もちゃんと作られていた。
さらに、地下室。なんと源泉垂れ流しの温泉だ! すごい! ニュクス最高!
ちなみにこの島はニュクスが作った島で、火山とかないみたいなんだけど、温泉のお湯ってどこから……。あ、いや、聞かないでおく。なんか聞いちゃいけない気がした。
「どうかな、お姉ちゃん」
「ちょっと一部怖いところもあるけど……。すごい! 豪邸だね! 最高だ!」
「んふー!」
おお、ドヤ顔だ。どんなもんだと胸を反らしてる。かわいい。
「ガストン、ありがとう」
新築案内に付き合ってくれていたガストンさんにニュクスがお礼を言うと、ガストンさんは少しだけ照れ臭そうに笑っていた。
「いえいえ。ニュクス様の希望を形にしただけでさあ。貴重な鉱石を惜しみなく使えたんで、俺も楽しかったですよ」
貴重な鉱石、ね……。もしかしなくても、アダマンタイトとか使われてるのかな。聞くのが怖いからやめておこう。
そうして、三人で家を出たところで。
「きた」
ふと、ニュクスが顔を上げた。私もそっちを見る。
「飛行機……?」
澄み渡る青空にぽつんと見える黒い粒。もしかして、と私がつぶやくと、ニュクスが頷いて答えた。
「いわゆる戦闘機。島を作ってから毎日のように来てる」
「え」
「最初は偵察だけだったみたいだけど……。最近は攻撃もしてくるようになった」
「うえ!?」
攻撃!? 攻撃って言った!? マジで!?
私が慌てている間に、戦闘機らしきものは真っ直ぐにこちらへ。攻撃ってわりにはミサイルとか何も撃ってこないけど……。ニュクスも不思議そうにしてる。
そして、なるほどと頷いた。
「多分、撃ったところで途中で爆破されるだけだから、突撃しに来たのかも」
「え……。捨て身ってこと?」
「そうなると思う」
捨て身って……。命を捨てて体当たり? いやいや。いやいやいやいや……。バカなんじゃないかな!? そんなことをしても意味なんて……。
「なるほど。考えるものですな」
ガストンさんが納得したように頷きながら言った。
「アヤカ様が人を殺さないようにと言ったのでしょう? つまり奴らは、多少の無茶をしてもニュクス様が乗員を守ると判断したんでしょうや」
「ええ……。そんなバカなこと考える?」
「バカなことをしないと通用しないと考えたんでしょうや」
バカなことをしても通用しないと思う、というのは言わない方がいいのかな?
戦闘機とやらはまっすぐにこっちに突っ込んできて……。はっきりと飛行機の形が分かるまで近づいたどころで、びたっと動きを止めた。いつの間にかニュクスが手を前に出してる。案の定魔法か何かで止めたらしい。
「うわあ……。あんなに急に止めたら、中の人がやばいと思うんだけど……」
「衝撃も一緒に消した」
「なるほど理解した!」
「理解できないということを理解しやしたか」
「ガストンさんは黙って」
「へい」
事実なんだけど、言われるとちょっと悲しくなるやつだから。
ニュクスは戦闘機をゆっくりとビーチに下ろした。私たちも転移で移動。戦闘機に向かう。機種とかは分からないけど、こうして見るとかっこいいよね。
「ほう! ほう! これがこの世界の武器! いやあ、すごいですな! ニュクス様、是非調べたいのですが……」
「是。好きにするといい。これはもう私のものだから」
「ありがとうございやす!」
勝手に自分のものにしちゃったけど……。攻撃されたわけだしね。むしろこれぐらいで許してくれるのだから、ニュクスは寛大だ。仕返しに国を消してやるー、なんて言いかねないと思うから。
戦闘機を調べ始めるガストンさんの横を通って、ニュクスはコックピットらしき場所に向かって……。搭乗部を引っぺがしてしまった。力尽くで。べきべきっと。
「ニュクス様!? 調べたいんですが!?」
「え。あ、ご、ごめん……」
そこは素直に謝るんだね……。
そうしてコックピット部分を砂浜に下ろして、中の人を引っ張り出した。
中の人は……男の人、かな。マスクっぽいものをつけていたけど、ニュクスに外された。金髪の外国人さんだ。日本人ではないね。その人が気を失っていた。
「起きろ」
ニュクスが彼の前で指を鳴らすと、はっとしたように男の人が目を覚ました。
「こ、ここは……!? 俺は、どうして……」
「おはよう」
「…………」
あ、また気を失いそうになってる。ニュクスが何かしたのか、気絶しかけで踏みとどまってるけど。
「あなたを殺すつもりはない。無事に帰そう」
「ほ、本当か……?」
「是。ただし、代価をいただく」
「代価……?」
「あなたの記憶だ」
がしりと、ニュクスが彼の頭を掴んだ。