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「はっはっは! まさか成功するとはな!」
「隊長の作戦があってこそです!」
「ふはははは!」
多くの監視カメラを設置してある作戦室で、初老の男が気分良く笑っていた。そんな隊長と呼ばれた男を、周りの者たちも称賛する。今回の勝利は隊長の作戦があってこそのものだと。
この作戦室に設置してあるモニターにはたくさんの映像が流れていた。
血を流し倒れる侵略者と、それに泣いて縋り付く少女。
侵略者を撃ち殺した後に祝杯を挙げるデイビットとラディーシャ。
作戦成功の報告を聞いて各地で喜ぶ者たち。
それらを、隊長は口角を上げて眺めていた。
侵略者は討ち取られた。人間の勝利だ。日本は最後まで協力しなかったが、それ故に今後難しい立場となるだろう。そんなことは、この場にいる者たちには関係のないことだが。
あとはすべて、国の上層部が考えることだ。
なお。実際には、映像の一つ目と二つ目はニュクスが貼り付けた幻であるのだが、当然それに気づける者はいない。デイビットとラディーシャの二人の顔には汚いものが塗りたくられているのだが、誰も気づけないのだ!
「隊長! 酒の追加とってきます!」
「ああ! 行ってこい!」
今日は祝杯だ。不可能と思われた作戦が成功したのだ。今日ぐらい構わないだろう。そう考えて隊長が頷くと、兵の一人は嬉しそうに部屋を出て行った。
そうして、しばらく騒ぎ続けて。
「あれ? あいつ、戻ってきませんね」
「本当だ。そろそろ酒がなくなるぞ」
「ふむ……。館内のどこかにいるだろ。カメラで探せ」
「了解」
隊長の指示を受けて、さっとモニターを操作し始める隊員。いくら騒いでいても、指示があれば即応できる。自慢の隊員たちだ。
そうして、モニターが切り替えられ。
逃げ惑う兵が映し出された。
「は?」
困惑する彼らの目の前で、兵が追い詰められていく。兵を追いかけているのは、頭から血を流して歩く侵略者と、その足下から伸びる数え切れないほどの触手。
『だ、だれか! だれかたすけてくれ! きこえないのか! だれか!』
そして、兵は触手にからめとられ……。
『たすけ……』
そのまま触手にまとわりつかれ、見えなくなってしまった。
侵略者がゆっくりと顔を向ける。カメラへと。こちらへと。そして、声には出さず、口だけ動かした。
つぎは、おまえらだ、と。
そうしてぶつりと、映像が途切れた。
「…………」
誰も、何も言わない。何も言えない。こんなことになるなんて思っていなかったから。
「た、隊長! どうしますか!?」
長い沈黙を挟んで、隊員の誰かが叫んで、
「お、落ち着け! すぐに装備を整えて……」
隊長が叫んでいる間に、部屋のドアが開いた。
「へ?」
その間抜けな声は誰のものだっただろう。触手が一本、うねりながら入ってきて、そして隊員の一人の足を掴んだ。
「え、ま……」
そしてそのまま勢いよく、部屋の外へと連れ去られてしまった。
後に残されたのは、痛いほどの静寂。誰もが現実を受け入れられず、恐怖で震えていた。
「や、やっぱり手を出したらいけなかったんだ! こんな……」
そう叫んだ兵士が連れ去られる。それを見て、隊長はすぐに小声で叫んだ。
「全員、口を開くな……! 音を頼りに襲っているぞ!」
「……っ!」
皆が口を手で覆う。次の犠牲者にはなりたくないと。一秒でも長く生きていたいと。
そんなことをしても、ただ順番が変わるだけだというのに。
触手が伸びて、一人、また一人と連れ去られていく。中にはナイフで応戦しようとした者もいたが、触手には傷一つつけられず、そのまま暗闇の中へ消えてしまった。
ここにきて、ようやく彼らは理解した。手を出してはいけない者に手を出してしまったのだ、と。
全員が絶望に支配されてしまった時。ゆっくりと、触手ではなく侵略者が部屋に入ってきた。頭から血を流したままの侵略者は、胡乱な目で室内にいる者を見る。そこに意志は感じられず、亡霊にしか見えなかった。もしくは、ゾンビか。
「ば、化け物め!」
隊長が銃を抜き、撃つ。他の者もそれに続くが、彼らの放った銃弾は侵略者の体に当たったかと思えばその体の中に取り込まれてしまった。
侵略者が不思議そうに首を傾げた。
「いつから……私が、人間の体と同じだと、思っていた?」
「ひっ……」
触手が伸びる。隊員の一人を捕まえ、そして、
「あが……」
血も、体液も、全てを吸い尽くして。干からびた死体だけが残された。
「あ、あ……」
誰もが理解した。次は、自分たちだと。
「たすけ……」
「銃を向けたのは、あなたたちだ」
そして、触手はその部屋にいる全てのものを吸い尽くして……。
後に残されたのは健康的な体で泡を吹いてぴくぴく動く変人たちだった。
「んー……。配信でこの人たちが見た幻を見れるはずだけど、どんな感じだったの?」
『B級ホラー』
『笑いすぎてお腹痛いwww』
『最高でしたw』
「ふうん……」
適当に幻を振りまいたニュクスには、彼らが何を見ていたのか実は知らなかったりする。帰ってからアーカイブとやらを見るのが楽しみだ。お姉ちゃんと一緒に、ジュースを飲みながら鑑賞しよう。
なお、彼らの痴態は当然全世界に公開されていることを記しておく。
「じゃあ、次だね」
『まだあるのかw』
『次はどこに?』
「私の作った島を攻撃するつもりらしいからね」
戦闘機とか。とりあえず……全部もらっちゃおう。