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侵略者が作り上げた島。それを標的にし、数多くの空母や戦闘機が集結していた。
この艦隊を任されている男には、すでに侵略者が討たれたという報告が来ていたが……。それでも、あの島は破壊しておこうという判断だ。何を仕掛けているのか分からない。
だが、気になるのは、本部から応答がなくなってしまっているということ。おそらく勝利に浮かれているだけだろう。なぜかとても単純にそう思ってしまった。
思考誘導、なんて言葉は、浮かびもしなかった。
「さて、諸君。総攻撃だ」
その場にいる全員が、緊張した面持ちで頷いた。男が続ける。
「これは、世界の平和を勝ち取るための作戦だ。全責任は私にある。諸君はただ目の前のことに集中したまえ」
民間人が住む島は比較的近い場所にある。間違いなくこの攻撃の影響を受けるだろうが、男はそれを必要な犠牲だと割り切っていた。
前代未聞の地球への侵略者の対処。こちらも手段は選んでいられないのだ。
「やれ!」
男が命じて、その命令を受けた者が動こうとして。
「おい、どうした?」
誰も、何もできなかった。どの船からも何も発射されない。ミサイルも何も。いつの間にか、戦闘機とは連絡すら取れなくなっている。
意味が、分からない。
幼さが残る声が聞こえたのは、そんな時だった。
「いい船だ」
「……っ!?」
男が振り返る。そこにいたのは、テレビや資料で何度も見た顔。侵略者、ニュクス。
「操縦は一人では難しいか……? 魔法でむりやり動かせばいいか」
「な、何を言っている?」
「否、否……。そうだ。もっと簡単な手段がある」
周囲を軽く見回しながらつぶやくニュクスは、ぐるんと男に顔を向けて。
「お前たちを私の奴隷にしてしまえば簡単だ。精神を破壊し、生きた人形にする。それだけでいい」
「ふ、ふざけるな!」
男が銃を抜いてニュクスへと撃つ。だが、その程度が通用するならそもそもすでに殺せている相手だ。それでも、意志のない人形になるなんて受け入れられなかった。
「お前たち! 何をしている!」
男が周囲の者へと叫ぶが、反応がない。どうしたのかと振り返って。
「は……?」
絶句してしまった。
この場にいる全ての乗組員が、口を半開きにして呆けていたから。よだれを垂れ流し、あー、とも、うー、ともつかない声を発している。
まるで、精神が壊されたかのような、そんな有様だった。
「ま、さか……」
男がニュクスを見る。ニュクスは怪訝そうにしながらも頷いた。
「是。船にいる者は全員支配した。あとは、お前だけだ」
「全員、だと……!?」
「そう、全員。私の島を囲んでいる船全てだ」
「…………」
信じられないその言葉に、男は膝を突いた。
相手が常識で測れない存在だということは分かっていた。それでも、人類が総力を挙げれば打ち倒せると、そう信じていたのだ。
だが、実際には戦いにすらなっていない。攻撃すらさせてもらえない。なにせ相手は、こちらをただの一人も殺していないのだから。
「頼みがある……」
「聞こう」
「部下は……見逃してほしい。今回の作戦の全責任は、私にある。だから……」
「…………」
ニュクスは首を傾げ、そして言った。
「あなた一人で船を動かせるか?」
「それは……さすがに、難しいが……」
「ならば答えは否だ。だが、いずれは解放すると約束しよう」
それを聞いて安心できるほど、男は楽観的ではなかった。きっとそれは、数十年後、残りの時間が少なくなってからだろう、と。
男は絶望に支配されながら、ふっと意識を失った。
「船、手に入った」
そんな男や周りの人が頭をぶつけないように気をつけて横にしてから、ニュクスは船を見渡した。
なんだか近代的な船らしい。謎の機械とかいっぱいだ。窓の外からは大海原が見えて、たくさんの船が並んでる。これらは全て、ニュクスのものだ。
「あとで求人を出さないと。船を動かせる人」
『内容と実務があってないんですがそれは』
『船(空母)』
『その船で何をするつもりなんですかねえ』
何をするか。そんなものは決まってる。
「釣り! 釣りとかしたい! お魚をたくさん釣って、解析して……。ダンジョンの海にもお魚を入れたいね!」
『なんて天真爛漫な笑顔なんだ』
『天真爛漫(純粋悪)』
『ま、まだ誰も殺してないから!』
「んー?」
なんだか失礼なことを言われている気がする……。するけど、特に気にすることはないかな、と判断。それよりも船。船だ。お姉ちゃんと釣りに行こう!
新鮮なお魚で刺身を作ったりしてもいいかもしれない。船の上でお魚のバーベキューとか! きっと楽しい!
「そうだ。船がこんなにあるんだから、ダンジョンに取り込んでもいいかも。船を順番に探索するダンジョン。適当な部屋に宝箱を置いて、次のフロアの入口とかを置いて……。うん。これでいこう!」
『ダンジョン拡張決定』
『でも最新鋭の戦艦の探索とか楽しそう』
『ダンジョン観光で行ってみたい!』
もちろんダンジョン観光でも行けるようにするつもりだ。
ニュクスは船を使う遊びにわくわくしながら、次の対処に向かった。