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「応答してくれ! 本部! おい!」
戦闘機に乗るケインは、そう何度も叫んでいた。
つい先ほどまでは逐一状況が報告されていたのに、突然途絶えてしまった。仲間たちからも困惑の声が聞こえてくる。今、応答があるのは共に飛ぶ仲間たちだけだ。
「ケイン! どうする!?」
「隊長はお前だ! お前の判断に従う!」
そんな仲間たちの声。ケインはゆっくりと息を吸って、吐いて……。そしてきっと前を睨み付けた。今更止めることはできない、と。
「攻撃の命令は下ったんだ! やるぞ!」
「了解!」
そして戦闘機の一軍はまっすぐに島へと向かう。
向かう。
向かう……。
「お、おい……。いくらなんでも、遠すぎないか?」
「おかしい……。すでに標的が見えているはずなのに……」
「な、なあ……。計器がおかしくなってないか……?」
真っ直ぐに向かっているはずなのに、侵略者が作ったという例の島が見えてこない。それどころか、よくよく見れば、なぜかあらゆる計器が微動だにしていないような気がする。
そのことに、なぜかケインたちは気づけなかった。微動だにしない、なんてあり得ないはずなのに。
全員が恐怖を覚えたところで、それを見た。見てしまった。
「ようこそ。歓迎する」
巨人が、水平線の向こうから突然現れた。あまりにも大きな巨人。空を覆うほどの人間。いや、侵略者のニュクスだ。まさか、侵略者は巨大化までできたのか。
「一応言っておくけど」
侵略者はどこか呆れたような声で言う。
「私が巨大化したわけではない。あなたたちが、小さくなっている」
「は……?」
「小さくしておもちゃにした」
「…………」
意味が、分からなかった。この侵略者は何を言っているのだろう。
「小さくしたおもちゃにあなたたちが乗っている、という状態だ。その上で言うが……」
巨大な侵略者が、端から端までゆっくりと見渡す。その視界に全ての戦闘機がいるのだろう。その事実に恐怖を覚えてしまう。
「おもちゃに乗る人間は、邪魔だな」
「ひっ……」
誰かの短い悲鳴が聞こえてしまった。
「飛行機は、欲しい。いくつかは実際に乗る用として……。ほとんどは、小さいおもちゃにしておくので十分だ。そして例外なく、あなたたちはいらない」
現在戦闘機に乗っている人間は、侵略者を攻撃しようとする者たちだ。侵略者の考えは妥当なものだと言える。邪魔だと言われた側はたまったものではないが。
「安心するといい。殺しはしない」
その声に何人かが安堵して。
「そのまま出して、故郷に戻してやる」
そしてその内容に、一部が喜ぶ、ケインを含む別の者たちは絶句した。
そのまま。そのままと言った。
侵略者が言うには、今のこの戦闘機は小さくなっているという。そして、その小さくなった戦闘機に乗っている自分たちも、当然小さくなっているはずだ。
その小さい姿のまま、そのまま、放り出される。
それは。それは、死ねと言っているのと大差ないのではないか?
「ま、待ってほしい! せめて! 体を戻してくれ!」
ケインが慌ててそう言う。その言葉で、他の者も言葉の意味を理解したらしく、ケインに同調し始めた。お願いだから元に戻してくれと。
侵略者はどこか面倒くさそうにため息をついて、そして言った。
否、と。
「私はあなたたちを殺さない。だが、怒りを感じていないわけでもない。故に、あとはあなたたちの努力に任せる。精々あがくといい。まさか、人を殺そうとして狙っておいて、無罪放免で許されるとは思っていないだろう?」
そう言って、侵略者は嗤った。
「それでは、さらばだ」
侵略者が指を鳴らす。たったそれだけで、ケインたちの意識は刈り取られてしまった。
ニュクスが作った島の砂浜。そこにたくさんの小さい飛行機が並べられた。
「おもちゃ!」
『無邪気!』
『あのぞわっとした笑顔を浮かべた侵略者様とは思えないw』
『実際のところ、あの人たちはどうしたの?』
「船に乗せておいた。あとは適当にやると思う」
さすがに、本当に小さいまま放置する、なんてことはしない。だってそれをすれば、間違いなくお姉ちゃんに怒られるから。ニュクスもお姉ちゃんを怒らせたいわけじゃないのだ。
だって。
「お姉ちゃん、怒ったら怖いから……」
『待って』
『何があったんだw』
『侵略者を怯えさせる姉がいると聞いて』
夜中にこっそりプリンを食べた。翌朝にお姉ちゃんに怒られた。ただそれだけ。
ただそれだけ、だけど……。三時間にわたる正座でのお説教は、ニュクスですら辛いものだった。自分が悪い、というのも分かっているので特に。
『お姉ちゃん最強説』
『マジですごいよあいつ』
『恐れを知らない女』
「んふ……。お姉ちゃんは、すごい。だから好き」
自分を一切恐れない。そんな人は、今までほとんどいなかったから。
機嫌良く鼻歌を歌いながら、ニュクスは小さい飛行機を亜空間に入れていく。たくさん手に入ったから、みんなで遊びたいと思う。実際に乗ってみるのもいいかもしれない。いつでも大きくできるから。ガストンにもいくつかあげよう。
さて、と。飛行機を仕舞い終わったニュクスは立ち上がって、言った。
「最後の仕上げ、だね」
また同じことがないように、釘を刺しておかないと。ニュクスは楽しそうにそう言って、その場から姿を消した。