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「どうするの、これ」
「あ、あの……その……」
「どうするの、これ」
私、彩花の目の前に並ぶのは、たくさんの人、人、人だ。みんな気を失って、中には痙攣してる人もいる。ちょっとした地獄絵図だよ。
今私たちがいるのは、洞窟の広い部屋。ニュクスが作った島にある家の地下……から繋がるダンジョンだ。いつの間に新しいダンジョンを作ったんだよと言いたくなったのは内緒。これについては後で問い詰めようと思う。
それよりも、今は目の前のこの惨状だ。
私も配信を見ていたから、この人たちが誰なのかは知ってる。中には以前からテレビで見る人もいるからね。東の国の大統領とか。
そして、この人たちがずっとニュクスを、私たちを狙っていたのも分かってる。だからニュクスもわりと怒っていて、今回のような大規模な行動をしたとは分かってるけど……。
「誰がここまでやれと言った」
「どや!」
「褒めてないが?」
「しょぼん」
『草』
『なんだこのやり取りw』
『侵略者様はどこで覚えてきたんだそんな言葉w』
ちょっといろいろ毒されてると思う。あまりよくないよ?
本当にどうしよう。とりあえず一ヶ所に集めてもらったものの……。この後のことなんて、一庶民の私にできることがあるわけがない。
首相さんには悪いけど、全部任せちゃおうかな。
そんなことを考えていたら、誰かが目を覚ましたのか起き上がったのが見えた。なんだかちょっと偉そうな、階級章みたいなのをつけてる人だ。
その人は周囲を不思議そうに見回した後、私たちを見つけてぎょっと目を剥いた。そして、その場で跪いて頭を地面に叩きつけた。こわい。
「も、申し訳ありません……!」
「あー……。とりあえず、待っていてください」
「は、はい……!」
その後も次々と目を覚ましていく人たち。みんな最初は何か叫んでいたりしたけど、すぐに静かになっていく。全員が怯えたようにニュクスの様子をうかがっていた。
私は……とりあえず首相さんに電話だ!
スマホを取り出して、首相さんに電話。驚いたことに一コールで電話に出てくれた。もしかしたら配信を見ていて待機していたのかも。
「もしもし」
「用件は分かっています。こちらの者を向かわせようと思いますが、どのように向かえばいいでしょうか?」
「…………。敬語になってる……」
「怖いので……」
ですよね。
とりあえず、一時間後にあの国会議事堂で待ってもらうことになった。ニュクスが迎えに行ってくれるらしい。とっても助かるね。
逆に言うと、あと一時間はこの場にいないといけないわけですが。
私たちが電話を終えて黙っていたら、それぞれが少しずつ会話を始めた。ただそれは……。正直、聞くに堪えない責任の押し付け合いだった。
「あなたの国が主導でしょう! 我らは何も関係ない!」
「何を………!? それを言うなら、あちらの国が発案者だ! 我らは協力したまで!」
「お前たちが我らに発議しろと言ったのだろうが!」
大の大人がみっともないというか、なんというか……。見ていてちょっと情けなくなる。こんな大人になりたくはないね。
ただ、さすがにニュクスも不愉快だったみたいで、静かに、けれどよく通る声で言った。
「黙れ」
その瞬間、ぴたりと声が止まった。今、誰の前にいるのか思い出してくれたらしい。
「あなたたちの痴態は全て配信してある」
ニュクスが側に浮かぶドローンを指差す。みんなが頬を引きつらせた。まさか配信されているとは思ってなかったらしい。
『最高のエンタメでした』
『アーカイブには残りますか!?』
『しっかり残すって言ってたぞ!』
うん。今回のものは全部記録として残しておくつもり。もしどこかから圧力がかかって消えたとしても、何度でも投稿するよ。
もっとも、私が投稿しなくても、誰かが保存したやつを投稿するだろうけど。消せば増える。これ、常識だからね。
「さて、ニュクス。言いたいことがあるならどうぞ」
「是」
私としては首相さんに丸投げだ。なのでもう知らない。あとはみんなでやってほしい。
「今回は、幻などを使った脅しなどを含めたが……」
すっと、ニュクスの視線が鋭くなった。
「あれらは全て可能なことだ。努々、忘れないように」
「だ、だが! 我らも黙ってはいられない! 我らにも領土がある! 国があるのだ!」
おお、ニュクスにしっかりと言えるのはすごいと思う。ニュクスにとってもこれは高評価なのでは……。
そう思ったけど、ニュクスは見るからに機嫌が悪そうだった。
多分、プラス評価よりもマイナス評価が飛び抜けてたんだろうね。どうしようもないぐらいに。
「以前にも伝えたが……。地球の管理権は私が持っている。この惑星は、私のものだ。いつまでも理解できないのなら、国ごと追放する」
「つ、追放……?」
「地球から放り出す。宇宙をさまようといい。もっとも、脆弱な人間ではすぐに死ぬ……」
ふと、ニュクスが言葉を止めた。どうしたんだろうとニュクスを見ると、目が合ってしまった。じっと私を見てる。私が首を傾げると、慌てたようにニュクスが言った。
「い、命の保証はしよう。宇宙を生きたままさまようといい」
「いや怖いよ。逆に怖いよ。死んだ方がましだよ」
私の、人を殺すな、というお願いを反映した結果だというのは分かってるけど……。本当に、悪化してるような気がする。もう今更だけどさ。
それ以上はさすがに誰も何も言わなかった。ニュクスの本気も伝わったらしい。
その後は約束の時間にニュクスが首相たちを迎えに行って、討伐隊や偉い人たちは引き取られていった。
きっとこの先、自分たちの国でいろいろとあるだろうけど、がんばってほしい。私たちはもう関係ないからね。
こうして、ニュクスのちょっと大きな遊びは終わったのでした。いろいろあったけど……。ニュクスが楽しそうだったので良し、ということで。